【三ノ宮】で新たに思い付いたことと申しますは、帰りは、姫路までは【山陽電鉄】で帰ってみようということでありました。高校時代、春・夏・冬の休みの折には必ず 日本酒で有名な【灘】の、もう大昔に店じまいされておられるのですが、阪神電車【石屋川】駅近くにありました【摂陽漬け】という奈良漬け屋さんへ 住み込みでバイトさせてもらっていた関係で、もう何回となく三ノ宮から姫路へ移動しているのでありますが、その手段は全て JR でありましたから、【山陽電鉄】には一度も乗ったことのないのです。
ではなぜ故 そういう気分になったうかと申しますと、
この産経新聞記事を目にしたことが切っ掛けで、
この本を読みまして、で これに甚く感銘を受けまして、時代は変わっているのですが その昔、作者である【椎名麟三】さんが 車掌さんとして さらには運転手さんとして 何度も何度も行き来された線路の上を通り、その沿線の風土や匂いを この肌で 実際に 嗅いでみたいと思ったからであります。
昭和30年【中央公論】に掲載され、翌年 芸術選奨文部大臣賞受賞という この【椎名麟三】さんの小説【美しい女】は、氏が 19歳のとき 兵庫-姫路間を走る関西電力の前身のひとつ【宇治川電気(株)電鉄部】、現【山陽電気鉄道(株)】に入社し、車掌を振出に、結婚を挟み 10数年後 念願の運転手となって、以後 47歳になろうとする現在(当時)に至るまでの、すなわち昭和4年~昭和33年頃までの 主人公「私」の ありのままの生き様が、
ということは、間に大東亜戦争があるのですが、氏に召集令状が来た折など、召集日前の5日間 絶食し、日に何度も銭湯に入り、当日朝には フラフラの状態となり さらにタバコ一本分煎じた水を飲み、検査で「即日帰郷」というご沙汰を得るといったことも書かれていたりしまして、地方の一鉄道会社に勤める人たちおよび主人公の息づかいが、あたかもモノクロの実写映画を見ているような感覚で、実に見事に描出されているのでありまして、愚生等の過ごした時代とは一世代強 35年ほども遡った時代の有様ながら、天皇観とかイデオロギーは別としまして、オイラは今まで読んだ どの小説よりも、遥かに身近に、それこそ 我が事であるかのように感じられた小説であったのです。
でタイトルに据えられている「美しい女」ですが、作者が憧れ抱く女性であるには違いないようなのですが、最後の最後まで出現することはなく、実際には「きみ」「克枝」「ひろ子」という、現実的な およそ「美しい女」とはほど遠い3人の女性が登場してくるのでありまして、結局のところ「美しい女」は、おりおりの局面で ふと 作者の意識の中に、さながら心象風景の如く登場して参りまして、それが 読んでいるオイラたちに 一服の清涼感とか上質感のようなものを与えているとともに、品性を保たたせしめるような効果を生み出しているように思え、で、そうですねぇ、「美しい女」とは 作者の生きる便(ヨスガ)であるのは間違いないと言えるのですが、その具体像はといいますと、作者はクリスチャンでしたから、それはマリア様だろうか?、否 そんな単純な図式ではなく、たぶん、【モネ】の 顔の造作が描かれていない、あたりの空気や空や大地や光に 風のように溶け込んでいる【日傘の女】という絵に描かれている女性のような感じなのではないだろうか、と そんなふうにオイラには思えてくるのであります。それと、
愚生は思います。「美しい女」は、男なら それがクッキリと具象化されないまでも、みんな持っているモノではないだろうかと。そうなんです。今回、三ノ宮に行ったとき、ふと思ったことはです。【石井一男】さんの描かれる【女神】像は、氏の【美しい女】ではないのだろうかと。そんな具合で 【椎名麟三】さんと【石井一男】さんが結びついたものですから、この際 間を取り持った【美しい女】の舞台となりました【山陽電鉄】さんの線路の上を 実際に ぜひ 通ってみたいと思ったのであります。
通ってみましたら 何のことはない 平凡な景色の連続でありまして、つい居眠りがついてしまったほどでありますが、今回 ネットを眺めてみますと、神戸市長田区の【山陽電鉄】さんの本社前には【椎名麟三】さんの文学碑が建っているとのことでして、またいつか 近いうちに 姫路の氏の旧居ともども 見に行けたらいいなぁ と思っている この頃であるのです。
で、皆様方に申し上げます。この小説【美しい女】は【椎名麟三】さんの代表作にして、これっしきゃ読んでいないのに よく言えるなぁと思うのですが、評論家の方々皆様が そのようにおっしゃられておりまして、まさに名作であります。特に近現代の どこにでもいそうな一市井の民の生き様を描いた小説の中では、間違いなく 出色の小説でなないだろうかと オイラには そう思えるのであります。同世代のどちら様でも お読みになられましたなら、若かりし折の会社生活のモロモロのことが、ふつふつと想い起こされてくること必定。どうですか皆様、残り少なくなりましたが 今年は生誕100年でもござりますぞ。
ではなぜ故 そういう気分になったうかと申しますと、
この産経新聞記事を目にしたことが切っ掛けで、
この本を読みまして、で これに甚く感銘を受けまして、時代は変わっているのですが その昔、作者である【椎名麟三】さんが 車掌さんとして さらには運転手さんとして 何度も何度も行き来された線路の上を通り、その沿線の風土や匂いを この肌で 実際に 嗅いでみたいと思ったからであります。
昭和30年【中央公論】に掲載され、翌年 芸術選奨文部大臣賞受賞という この【椎名麟三】さんの小説【美しい女】は、氏が 19歳のとき 兵庫-姫路間を走る関西電力の前身のひとつ【宇治川電気(株)電鉄部】、現【山陽電気鉄道(株)】に入社し、車掌を振出に、結婚を挟み 10数年後 念願の運転手となって、以後 47歳になろうとする現在(当時)に至るまでの、すなわち昭和4年~昭和33年頃までの 主人公「私」の ありのままの生き様が、
ということは、間に大東亜戦争があるのですが、氏に召集令状が来た折など、召集日前の5日間 絶食し、日に何度も銭湯に入り、当日朝には フラフラの状態となり さらにタバコ一本分煎じた水を飲み、検査で「即日帰郷」というご沙汰を得るといったことも書かれていたりしまして、地方の一鉄道会社に勤める人たちおよび主人公の息づかいが、あたかもモノクロの実写映画を見ているような感覚で、実に見事に描出されているのでありまして、愚生等の過ごした時代とは一世代強 35年ほども遡った時代の有様ながら、天皇観とかイデオロギーは別としまして、オイラは今まで読んだ どの小説よりも、遥かに身近に、それこそ 我が事であるかのように感じられた小説であったのです。
でタイトルに据えられている「美しい女」ですが、作者が憧れ抱く女性であるには違いないようなのですが、最後の最後まで出現することはなく、実際には「きみ」「克枝」「ひろ子」という、現実的な およそ「美しい女」とはほど遠い3人の女性が登場してくるのでありまして、結局のところ「美しい女」は、おりおりの局面で ふと 作者の意識の中に、さながら心象風景の如く登場して参りまして、それが 読んでいるオイラたちに 一服の清涼感とか上質感のようなものを与えているとともに、品性を保たたせしめるような効果を生み出しているように思え、で、そうですねぇ、「美しい女」とは 作者の生きる便(ヨスガ)であるのは間違いないと言えるのですが、その具体像はといいますと、作者はクリスチャンでしたから、それはマリア様だろうか?、否 そんな単純な図式ではなく、たぶん、【モネ】の 顔の造作が描かれていない、あたりの空気や空や大地や光に 風のように溶け込んでいる【日傘の女】という絵に描かれている女性のような感じなのではないだろうか、と そんなふうにオイラには思えてくるのであります。それと、
愚生は思います。「美しい女」は、男なら それがクッキリと具象化されないまでも、みんな持っているモノではないだろうかと。そうなんです。今回、三ノ宮に行ったとき、ふと思ったことはです。【石井一男】さんの描かれる【女神】像は、氏の【美しい女】ではないのだろうかと。そんな具合で 【椎名麟三】さんと【石井一男】さんが結びついたものですから、この際 間を取り持った【美しい女】の舞台となりました【山陽電鉄】さんの線路の上を 実際に ぜひ 通ってみたいと思ったのであります。
通ってみましたら 何のことはない 平凡な景色の連続でありまして、つい居眠りがついてしまったほどでありますが、今回 ネットを眺めてみますと、神戸市長田区の【山陽電鉄】さんの本社前には【椎名麟三】さんの文学碑が建っているとのことでして、またいつか 近いうちに 姫路の氏の旧居ともども 見に行けたらいいなぁ と思っている この頃であるのです。
で、皆様方に申し上げます。この小説【美しい女】は【椎名麟三】さんの代表作にして、これっしきゃ読んでいないのに よく言えるなぁと思うのですが、評論家の方々皆様が そのようにおっしゃられておりまして、まさに名作であります。特に近現代の どこにでもいそうな一市井の民の生き様を描いた小説の中では、間違いなく 出色の小説でなないだろうかと オイラには そう思えるのであります。同世代のどちら様でも お読みになられましたなら、若かりし折の会社生活のモロモロのことが、ふつふつと想い起こされてくること必定。どうですか皆様、残り少なくなりましたが 今年は生誕100年でもござりますぞ。
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