百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

ふらりデッパリ備忘録(3)【【ふでDEまんねん/毛筆万年筆】名工【長原宣義】さん】【10/29】

2011-11-28 12:44:35 | 日記
 私は万年筆が好きであります。マニアとは呼べませんが これだけ持っています。

左から4本は【ふでDEまんねん万年筆】    右から3本は【ペリカン】です
                      ↑↑
                      この2本は【モンブラン】です  
                ↑この長い5本は【ロトリング】の【アートペン(極細~極太)】です

現役時代はインク色を変えた万年筆を 仕事や勉強や雑事のメモ書きに使っておりましたが、会社を辞めてからは、木端絵やハガキを書くための【ロトリング極細アートペン】と【セーラー万年筆】さんの【ふでDEまんねん万年筆】を除き まったく使っておりませんで、もし子供や孫たちが「欲しい」と言ってくるならば、いつでも待たせてやろうと思っております。

この中では【ふでDEまんねん万年筆】がいちばん気に入っています。私は毛筆が苦手です。【良寛】さんのような 気取ったところの全然ない優しく飄飄(ひょうひょう)とした 愛すべき字が書きたいものだと思っているのですが、ダメでありまして、かと言って ペン字が上手いなんてことはないのですが、10数年前、文具屋さんで新発売された 写真左から3,4本目の【ふでDEまんねん】を手にしたときから、「これは良いなぁ」といっぺんに気に入りまして、さらに通販業者から万年筆タイプの通販専用商品が発売されると知るや即購入、写真左から 2本目が それでありまして、以来これを大切に使ってきているのですが、この9月中旬、ふと、明るい色のインクを入れるための【ふでDEまんねん万年筆】が もう一本欲しくなってまいりまして、【セーラー】さんのオンラインショップで、写真左端のモノを購入したのであります。

ところがその商品がオイラの期待するものと大いに違っていたのであります。書き味は「よく滑るなぁ」という感じでありましたが、その字面とくるや、エッジの効いていないダラッとした字しか書けず、ペンを立てらせて書いても細くならず、全体的に相当太いに拘わらず、寝かせて書いても あまり太くならないといった具合でしたので、がっかり感が強く襲ってまいりまして、ショップに問い合わせてみることとしたのであります。「ひょっとして商品を間違えておられるんでねぇの」と。

ショップのご担当の方は 困惑した感じながら、何回か電話を掛けてきて下さるとか、誠実に向き合って下さいました。そのなかで、10月29,30日 神戸の三ノ宮の【ジュンク堂書店】さんの3階にある【 NAGASAWA PenStyle DEN 】というお店で、セーラー万年筆“ペン先職人”「現代の名工」長原宣義(ながはらのぶよし)さんのペンクリニックがあるので 診てもらうという手もありますよという お話を受けたのであります。
            
             この↑写真は【セーラー万年筆】さんホームページからの転載です。

三ノ宮に着き まず伺いました。待っておられる方は数名、この分ならすぐ診ていただけそうと思いきや、受付番号は 29、最低 3時間は待つ必要ありとのことでしたので、【石井一男展】をやっている美術館に向かったのでありました。

今回が今年最後の関西地区でのペンクリニックということで、岐阜県や滋賀県からも患者?さんが来ておられるほど ずいぶん盛況でありまして、ただ人間のお医者さんと違って、たぶん診察時間は最低でも 6,7分、長い人なら数10分掛け、メーカー問わず 修理・調整されているのでありまして、でこれがタダときておりますから、セーラーさんは 本当にスゴイことをなさっておられると申せます。

お昼もだいぶ過ぎたころ オイラの番がやってきました。長原先生はペン先を外し研磨機に掛けたりと調整して下さり、「こんなもんで如何でしょうか、これでしばらく使ってみて下さい」と言われて渡されたのであります。で 書いてみました。少し良くなったなぁ という感じで、オイラは まだまだ不満がありました。しかしながら【現代の名工】である【長原宣義】大先生から直々に そのように言われますと、まずそれに従うしかないのが現実でありますれば、不本意ながら我慢することとした次第であります。

【 NAGASAWA PenStyle DEN 】というお店は、上級な繁華街 神戸三ノ宮商店街にふさわしい、しゃれた誠に素晴らしい専門店でありました。インクにしましても 50色ほどの品揃えのある【 Kobe INK物語 】という独自ブランドの商品を販売されておりまして、オイラは↓このインク 2壺 購入したのでありますが、今回は斯様に ホントの都会の店というものの素晴らしさを充分認識させられた旅でもあったのです。

                  


  < ポストスクリプト( H25.1.22 記 ) >
               
 【毛筆万年筆】は 現時点、↑この 4本 所持しております。【銀座国文館】さんの通販で、上記【長原宣義】さんのご長男【長原幸夫】さん作【毛筆万年筆】、セーラーさん言うところの【ふでDEまんねん】に、アイボリーとワインが追加されましたので 取り寄せ、夫々(それぞれ) ↓これらのインクを入れ 使い分けを楽しんでおりますが、この毛筆万年筆は本当に素晴らしい筆記具でして、有り体(ありてい)に申せば、クールジャパン商品となり得る まさに世界に誇れる名品ではなかろうか と思っているのであります。
 




 


 
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【石井一男】さんの【女神】と【椎名麟三】さんの【美しい女】

2011-11-17 14:25:09 | 日記
 【三ノ宮】で新たに思い付いたことと申しますは、帰りは、姫路までは【山陽電鉄】で帰ってみようということでありました。高校時代、春・夏・冬の休みの折には必ず 日本酒で有名な【灘】の、もう大昔に店じまいされておられるのですが、阪神電車【石屋川】駅近くにありました【摂陽漬け】という奈良漬け屋さんへ 住み込みでバイトさせてもらっていた関係で、もう何回となく三ノ宮から姫路へ移動しているのでありますが、その手段は全て JR でありましたから、【山陽電鉄】には一度も乗ったことのないのです。

ではなぜ故 そういう気分になったうかと申しますと、

この産経新聞記事を目にしたことが切っ掛けで、
                 
この本を読みまして、で これに甚く感銘を受けまして、時代は変わっているのですが その昔、作者である【椎名麟三】さんが 車掌さんとして さらには運転手さんとして 何度も何度も行き来された線路の上を通り、その沿線の風土や匂いを この肌で 実際に 嗅いでみたいと思ったからであります。

昭和30年【中央公論】に掲載され、翌年 芸術選奨文部大臣賞受賞という この【椎名麟三】さんの小説【美しい女】は、氏が 19歳のとき 兵庫-姫路間を走る関西電力の前身のひとつ【宇治川電気(株)電鉄部】、現【山陽電気鉄道(株)】に入社し、車掌を振出に、結婚を挟み 10数年後 念願の運転手となって、以後 47歳になろうとする現在(当時)に至るまでの、すなわち昭和4年~昭和33年頃までの 主人公「私」の ありのままの生き様が、

ということは、間に大東亜戦争があるのですが、氏に召集令状が来た折など、召集日前の5日間 絶食し、日に何度も銭湯に入り、当日朝には フラフラの状態となり さらにタバコ一本分煎じた水を飲み、検査で「即日帰郷」というご沙汰を得るといったことも書かれていたりしまして、地方の一鉄道会社に勤める人たちおよび主人公の息づかいが、あたかもモノクロの実写映画を見ているような感覚で、実に見事に描出されているのでありまして、愚生等の過ごした時代とは一世代強 35年ほども遡った時代の有様ながら、天皇観とかイデオロギーは別としまして、オイラは今まで読んだ どの小説よりも、遥かに身近に、それこそ 我が事であるかのように感じられた小説であったのです。

でタイトルに据えられている「美しい女」ですが、作者が憧れ抱く女性であるには違いないようなのですが、最後の最後まで出現することはなく、実際には「きみ」「克枝」「ひろ子」という、現実的な およそ「美しい女」とはほど遠い3人の女性が登場してくるのでありまして、結局のところ「美しい女」は、おりおりの局面で ふと 作者の意識の中に、さながら心象風景の如く登場して参りまして、それが 読んでいるオイラたちに 一服の清涼感とか上質感のようなものを与えているとともに、品性を保たたせしめるような効果を生み出しているように思え、で、そうですねぇ、「美しい女」とは 作者の生きる便(ヨスガ)であるのは間違いないと言えるのですが、その具体像はといいますと、作者はクリスチャンでしたから、それはマリア様だろうか?、否 そんな単純な図式ではなく、たぶん、【モネ】の 顔の造作が描かれていない、あたりの空気や空や大地や光に 風のように溶け込んでいる【日傘の女】という絵に描かれている女性のような感じなのではないだろうか、と そんなふうにオイラには思えてくるのであります。それと、

愚生は思います。「美しい女」は、男なら それがクッキリと具象化されないまでも、みんな持っているモノではないだろうかと。そうなんです。今回、三ノ宮に行ったとき、ふと思ったことはです。【石井一男】さんの描かれる【女神】像は、氏の【美しい女】ではないのだろうかと。そんな具合で 【椎名麟三】さんと【石井一男】さんが結びついたものですから、この際 間を取り持った【美しい女】の舞台となりました【山陽電鉄】さんの線路の上を 実際に ぜひ 通ってみたいと思ったのであります。

通ってみましたら 何のことはない 平凡な景色の連続でありまして、つい居眠りがついてしまったほどでありますが、今回 ネットを眺めてみますと、神戸市長田区の【山陽電鉄】さんの本社前には【椎名麟三】さんの文学碑が建っているとのことでして、またいつか 近いうちに 姫路の氏の旧居ともども 見に行けたらいいなぁ と思っている この頃であるのです。

で、皆様方に申し上げます。この小説【美しい女】は【椎名麟三】さんの代表作にして、これっしきゃ読んでいないのに よく言えるなぁと思うのですが、評論家の方々皆様が そのようにおっしゃられておりまして、まさに名作であります。特に近現代の どこにでもいそうな一市井の民の生き様を描いた小説の中では、間違いなく 出色の小説でなないだろうかと オイラには そう思えるのであります。同世代のどちら様でも お読みになられましたなら、若かりし折の会社生活のモロモロのことが、ふつふつと想い起こされてくること必定。どうですか皆様、残り少なくなりましたが 今年は生誕100年でもござりますぞ。  
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ふらりデッパリ備忘録(2)【【無垢の画家 石井一男】 展】【10/29】

2011-11-06 15:12:00 | 日記

この産経新聞の記事を読みまして 神戸の【BBプラザ美術館】へ行きました。これから順次 投稿するつもりですが、神戸 三ノ宮での もうひとつの用件も、タイミングが一致し 生じてきましたし、さらにふと 現地で思い付いた別件も 加わったりしましたので、今回の神戸行きは、合計 3件の用事を処理するといった、会社時代顔負けの 実に 効果的・能率的な出張? と なった次第にございます。
                 
愚生は【石井一男】さんて方については この本 および この【産経抄】を読んでいて識っておりますが、ナマの絵には まだ接触できておりません。半年ほど前になりますか、何かの帰りに この本に書かれているギャラリーへ寄ってみたことはあるのですが、氏の絵は 一枚も 展示されてはいませんでした。

会期は明日までという日 でありましたが、想いのほか混んでませんで、ゆったり見ることができました。縦:20数センチ 横:15,6センチほどの小さなサイズの絵が ほとんどでありまして、作品のタイトルは、女神の絵:40点ほど、鳥:6点、花:7点、ひとり立つ:7点、その他:15点ほどという内訳でありまして、〆て75作品ほど、かなりの数の個人蔵の作品も含め 比較的ゆったりと展示されておりました。
                   
氏の「女神」をモチーフとした作品は、今では すぐに売れてしまうそうですが、今展示品のなかでは、
オイラは、展示室入口にセッティングされていた この【女神】に一番強く惹きつけられたのであります。本作品は、本の表紙に使われている絵と比較しますと、禁欲的でなく、明るく、ずっと美人に感じられるうえ、特に言えますことは、胸の膨らみなんかも感じ取れますし、顔の表情も何か色っぽく、充足感すら漂っているように感じられますので、この絵のほうが ずっといいなぁ と思えるのであります。

やはり この女神像が一番魅力的なのでしょうか、本展示会のビラにも 実物大の写真が採用されておりましたので、オイラは それを 5枚ほど 余分に頂いて帰ったのであります。で、それを切り抜きまして、色紙に貼り付け 部屋へ飾ろうとしたのであります。しかしながら、紙と木と土でできた古ぼけた我が苫屋の壁とかの表舞台に飾るには どうしても違和感が拭い切れないのでありまして、結局 部屋の隅っことかに さりげなく置くしか 置き様がなかったのであります。

そこでオイラは思いました。石井さんに 和風の女神を描いていただけないものかと。従来この需要には多分に観音様が応えてきていたのだと思いますが、石井さんには 新しい現代の観音様を描いていただけないものかと思うのであります。これですと和風の部屋に飾りましても ぴったりフィットするに違いないと思うからであります。それにしましても、絵を描きたいというエネルギーが こんこんと湧き出で続けておられるのでしょう、何十年間も ずぅーっと描き続けておられる石井さんは、もうそれだけで本物の絵描きさんであろうと思うのでありまして、ぜひ 変わらずに 描き続けていただきますよう願わずにはおられないのであります。

<追伸>
一番上の新聞記事内の【ひとり立つ】という絵でありますが、光の加減とオイラの拙い撮影技術のため、実際と まったく懸け離れた絵となってしまっておりますので、ここに 申し添えさせていただきます。

<綴じ込み付録>
オットットット、忘れるところでありました。上の本、【後藤正治】さん著【奇蹟の画家】という書籍の中、オイラが たいへん印象深く読んだ一文がありますので、それをここで ご紹介申し上げたいと思います。それはです、ある詩人が言われたという言葉でして、実際に どなたが言われたのか知りたいところでありますが、【人は自身と出会うに半生を費やす、その後に仕事がはじまる】という言葉であります。どうです? なんとも味わい深い言葉であるとは思われませんか?



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100q甚く感じ入り候記(1)【坪内稔典さん【モーロクのススメ】より】&我が詩【蛙】

2011-11-02 19:56:54 | 日記
 齢を取りますと、どしどしと 切り込む 角ばったものよりか、オブラートに包まれたように温かく、ふくやかで、行間からは いろんなコトが、人生の機微や面白味といったものが浮かびいで、しかも悠然と やり過ごしている といった感のする文章が、オイラには そういうモノが まずは書けないだけに、「いいなぁ」と 深く感じ入るのでありまして、そこで【イタクカンジイリソウロウ】「痛く感じ入り早漏」ではありません という「新タイトル」を 立ち上げ、今回 その(1) を お贈りしようか と 思う次第にございます。

まず採り上げますは、愛媛県ご出身の、オイラより ひとつ年長の俳人【坪内稔典】さんが、産経新聞に書かれております 毎金連載コラムで ご披露なすって下さった、オイラがイタク感心した詩についてであります。
   
この中で紹介されております【天野忠】さんという 今から 18年ほど前に亡くなられております詩人の3編の作品が、特に 二つ目・三つ目の詩が 実に素晴らしいと思われましたので、自分で キータッチし、ぜひ当ブログへ書き留めておきたい と思った次第にございます。上の新聞記事で読み取れるかと思うのですが、その詩は 以下の通りです。どうぞ ご鑑賞下さい。何とも いい詩であります。


    秋                  考えごと

  色がこんなに黒いのに         ねながら
  日傘をさすのは気がひけるねえー    人生について考えていたら
  鏡を見てばあさんが          額に 蠅がとまった。
  ひとりごとを呟いている。       長いこと休んで
  ひる寝のうす眼をあけたら       それから パッと
  日傘をさして             元気よく飛び立った。
  表へ出て行った。           どうやら考えがまとまったらしい。
                     俺はまだだ。


でオイラも作ったとです。なおこれはフィクションではなく、度々に実際あった話です、ハイッ。
             
    蛙
           
  まだまだ暑い夏
  田んぼのヒビ割れ目がけ
  ションベンしたら
  どっからか二三匹
  幼いカエルが寄ってきた。
  雨じゃねぇよ、ショッペェよ 
  と、オイラはゆうたんとー。

  秋たけなわに
  田んぼのヒビ割れ目指し
  ションベンしたら
  ヒビの中から二三匹
  ちっこいカエルが顔出した。
  もう寝とったん、ゴメンなぁ
  と、オイラは謝ったんとー。

          
  年がら年中
  おりおりの景色に溶けて
  タチションベン。
  田舎ぐらしの醍醐味や。
  ちっとも飛びやしないから
  跳ねっ返りに気をつけんと
  と、オイラを挟むんとー。  オイラ:ここではチンチンを指します 挟む:はさむ

  蛙のションベンなあに
  田にしたもんだとー
  タイシタモンダとー
  蛙のションベン

  オイラのションベンなあに
  チョロチョロチョロだとー
  チョロイモンダとー 
  オイラのションベン


  < 追 伸 >
上の詩の蛙は もっとも一般的な、オイラたちが昔から【クソガエル】と呼んでいる【ツチガエル】でありますが、オイラは、鳥で言えば スズメと同じように、この日本の自然に他のダレよりもピッタシ溶け込んでいるこのカエルが、カエルの中では一番好きで、一番カワイイと感じているのであります。


          

          

          

    



 


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