細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ガルボ・トーク』は、映画ファンの<見果てぬ夢>の、実現への美談。

2021年03月09日 | Weblog
●3月8日(月)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
0V-62-35『ガルボ・トーク*<夢のつづきは夢>』"Garbo Talks" (1984) MGM-UA, Diamond Jubiry, Elliot Kastner Pro.
監督・シドニー・ルメット 主演・アン・バンクロフト、ロン・シルバー <97分・ビスタサイズ>VHS  
サイレント映画時代の女優グレタ・ガルボの映画を見た事はなかったが、まだトーキーもテレビもない時代には、絶大な人気があって知らない人はいなかった。
イングリッド・バーグマンが「誰の為に鐘は鳴る」は戦後で、オードリー・ヘプバーンの登場も,その後の世界大戦のあとだから、正に<夢のまた夢・・・>。
ニューヨークで離婚したアンは、サラリーマンになっている一人息子とマンハッタンの安アパートで暮らしていたが、ある日、末期がんなのを告げられて入院。
いつも深夜テレビで、往年の大スター、グレタ・ガルボの映画を見るのだけが、楽しみで、まだビデオのない時代だから、いつもベッドの深夜放映で涙を流していた。
その母の望みを、亡くなる前に果たしてみようと、会社での課長職も投げ出して、一人息子のロンが奔走するので、とうとう妻とも離婚をしてしまう、という悲惨。
しかし、さすがに名匠ルメットは、その母親の夢を叶えるべく、日夜、ガルボの姿を求めてマンハッタンを奔走する姿を、軽いコミック・タッチで見せて行く。
ウディ・アレンが演じた『ボギー、俺も男だ!』も、あのハンフリー・ボガートに憧れたクレイジーなシネ・フリークの話しだったが、こちらは女優の<追っかけ>だ。
母の夢を叶えるべく、息子は、ガルボが名前を替えて住んでいるらしい、マンハッタン・イーストのマンションなどを探すが、当然、ガードマンに阻止される。
まるで私立探偵のように、ガルボを探しまわるタッチはコミックだが、悲惨で、とうとうフィアンセとも婚約は破棄となるが、息子の情熱はハンパじゃないのだ。
とうとう母は末期症状で病院のベッドで寝たきりだが、息子はついにグリニッチ・ヴィレッジのサンデー・オークションの古書市の雑踏で、ガルボ本人を発見。
事態の切迫で、息子とガルボは病院のベッドに駆けつけて、意識の遠のく母親にガルボを会わせて、母は夢のような幸福を最期に息を引き取っていく、という感動だ。
ま、映画ファンならではの発想だが、これもファンタジーのような、人間の<見果てぬ夢>の実現に奔走した、母と息子の感動のライト・コメディの秀作。

■意外に伸びたセンター・オーバーがフェンスを越える。 ★★★★☆☆☆
●W0W0Wでの放映VHS。

●『Mr.Lucky』のギャンブラーは、あの『泥棒成金』の青春時代なのだろう。

2021年03月05日 | Weblog
●3月5日(金)12-00 ニコタマ・サンセット傑作座
0V-58-32『ミスター・ラッキー』"Mr. Lucky (1943) 93分・モノクロ・スタンダードVHS・RKO Radio Pictures, The Nostalgia Marchant. B&W Standard.
監督・H・C・ポッター 主演・ケイリー・グラント、ラレイン・デイ、チャールズ・ビッグフォード  
ケイリー・グラントの代表的な当たり役作品だが、ちょうど太平洋戦争の集結時期に製作されて、日本では公開されたという記録はないが、・・。
彼はニューヨークのプロのギャンブラーで、極道ではないが、持ち前のハンサムでスマートな風貌で、毎晩のように有名クラブの賭場で稼いでいた。
やっていることはイカサマだが、逮捕や犯罪歴はなくて、取り締まりの警察や夜勤のお巡りとも面識はあり、まさにあの「野郎どもと女たち」の博打打ちなのだ。
つまりあのミュージカルは、ブロードウェイ界隈で夜の興行や賭場を仕切っている、あのマーロン・ブランドや、フランク・シナトラとはご同業。
しかし時代も不景気で、世界大戦争の機運で、あまり景気はよくなくて、彼はロマンスは後回しで、南米か南フランス、そしてモナコへの脱出を考えていた。
それでなくてもポリスからは動向を監視されているので、ラレインとの恋路も順調ではないし、とうとう賭場も警察の手入れもあって、彼は国外脱出を決行する。
つまり、ヒッチコックの「汚名」は、おそらくこのケイリー・グラントの後日談で、あの「泥棒成金」も、このミスター・ラッキーのリタイア後日談だと、気がついた。
これから20年近くが過ぎて、おそらくヒッチコックは、ケイリーをモナコの山荘で優雅に引退生活をしていた大泥棒を、このケイリーの悠々自適ライフとしたのだろう。
わたしは、1960年頃にヒッチコックが「サイコ」のキャンペーンで来日したときに、パーティで彼と会って一緒に写真を撮ったが、この作品のことは・・・・残念。
知っていたらぜひ、ご本人に聞きたい部分なのだが、この作品を見れば、あの「汚名」と「泥棒成金」へのケイリー・グラントの転身生活ぶりが伺えるのだ。

■ふらりと上がったレフト前のフライ。 ★★★☆☆
●ノスタルジー・マーチャント輸入版VHS

●『ラスト・シューティスト』で、ウェスターン・ムービーの完結。

2021年03月03日 | Weblog
●3月2日(火)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-055『ラスト・シューティスト』"The Shootist"(1976) Paramount Ptctures、99分<カラー・ビスタサイズ>
監督・ドン・シーゲル 主演・ジョン・ウェイン、ローレン・バコール、ジェームズ・スチュワート・・・
西部劇のヒーローを、映画生涯演じて来たジョン・ウェインの、<ラスト・シーン>を飾ろうと企画された、渾身と追想の追悼ウェスターン作品。
老齢のカウボーイの彼は、自身の末期ガンを覚って、たつて住んだカーソン・シティに住む友人医師のジェームズ・スチュワートの検診を受けた。
かつての恋人で、いまは下宿屋を営んでいるローレン・バコールの世話になり、青年に成長しているロン・ハワードと親しくなり、銃の打ち方を教えるが、
もう20世紀に突入した街には、自動車に乗ったセールスマンたちが往来していて、病身で老愛馬にのった老ガンマンの居場所は、もう、なくなったのを悟るのだった。
都市の大きな病院にかからないと治療できない老ガンマンは、友人の専門治療のすすめを断って、因縁の宿敵リチャード・ブーンの悪党一族との決闘に挑む。
その日は<フォール・スプリング>という、いわゆる<小春日和>で、決闘に向かうウェインは、少女の笑顔に励まされて、悪党一族との決闘に挑むのだった。
病身でいつも使用していた膝掛けのマットを、市内電車の運転手にプレゼントして、悪党たちの待つサロンのスイング・ドアを開けるジョン・ウェインの老雄がいい。
三人の悪党を倒したジョン・ウェインも数弾被弾して倒れて、その様子を案じた老友人のジミー・スチュワートは、その様子を窓の外から眺めていたラスト。
1962年のジョン・フォード監督「リバティ・バランスを射った男」で、ジョン・ウェインに命を救われた彼は、このシーンでは万感の表情を見せていた。
多くのウェスターン映画のヒーローの最期を見送るジミーの表情には、これが<西部劇映画の時代>の最期を見送る寛大で、温情の暖かいものが潤んで見えた。

■右中間を転々とする悠々のスリーベース ★★★★
●放映収録VHS、もしかしたらDVDでも発売かも。