細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●サンセット傑作座、7月、夏の夜は郷愁の美酒『田舎の日曜日』の香りに酔う。

2016年08月06日 | Weblog

7月のニコタマ・サンセット傑作座(自宅)上映ベストテン

 

*1・『田舎の日曜日』84(ベルトラン・タベルニエ)主演・ルイ・デュクレ<LD> ★★★★☆☆

    パリ郊外に住む実家に、久しぶりに息子家族や、独身オールドミスの娘たちが帰って来たが、夕暮れの庭にひとり残された老いた父は、孤独の時間に戻る秀作。

 

*2・『カサブランカ』43<カラー・リアライズバージョンLD> (マイケル・カーティス)主演・ハンフリー・ボガート <LD> ★★★★☆

    ワーナーとUCLAの映像研究室が開発したカラーデジタル転換映像によって甦る、あの悲恋とイングリッド・バーグマンの頬の上気する色合いにはシビレが甦る至福。

 

*3・『ポイント・ブランク』97(ジョージ・アーミテージ)主演・ジョン・キューザック<DVD> ★★★★

    下請けの殺し屋ヒットマンが、故郷のハイスクールのクラス会に身を隠すが、ダン・エイクロイドの組織の殺し屋が学園にまで殺し合いに来るクレイジー・コメディ。

 

*4・『蜃気楼』65(エドワード・ドミトリク)主演・グレゴリー・ペック <VHS> ★★★☆☆☆

   新しいテクノロジー装置を開発したエンジニアのペックは、ニューヨークの本社ビルでの停電で階段を下りている最中に記憶を喪失してしまう異色心理サスペンス。

 

*5・『ファイト・クラブ』99(デヴィッド・フィンチャー)主演・エドワード・ノートン <DVD> ★★★☆☆

   不眠症のノートンが会った異様なファイター、ブラッド・ピットは一体何者だったのか?いや、もともと彼などは存在していなかったのじゃないか?という不気味。

 

*6・『いぬ』63(ジャン=ピエール・メルビル)主演・ジャン=ポール・ベルモンド <DVD>

*7・『イグアナの夜』64(ジョン・ヒューストン)主演・エヴァ・ガードナー <VHS>

*8・『クライム&ダイヤモンド』02(クリス・バーヴェル)主演・クリスチャン・スレーター <DVD>

*9・『成功の甘き香り』57(アレキサンダー・マッケンドリック)主演・バート・ランカスター <VHS>

*10『摩天楼』49(キング・ヴィドア)主演・ゲイリー・クーパー <VHS>

 

★近所の109二子玉川シネコンが、夏休みのアニメ・ドリーなどの人気に反動の記憶喪失クラシック大会。

他に見た傑作は

●『殺しが静かにやってくる』66・ジャン=ルイ・トランティニアン

●『踊る海賊』48・ジーン・ケリー

●『大運河』56・フランソワーズ・アルヌール

●『星のない男』55・カーク・ダグラス

●『世界を彼の腕に』52・アン・ブライス・・・・という具合に、かなり低俗マニアック。 


●異色の多重カメラによる『イレブン・ミニッツ』が、7月の試写ベスト。

2016年08月04日 | Weblog

7月に見た新作試写ベスト3

 

*1・『イレブン・ミニッツ』(イエジー・スコリモフスキー)主演・リチャード・ドーマー ★★★☆☆

   たった11分の間に起こった高層ビルでの転落事故に関わるトラブルを様々なアングルのカメラで描いた、まさに監視カメラ的な78才巨匠の斬新な映像感覚。

 

*2・『ロスト・バケーション』(ジャウマ・コレット=セラ)主演・ブレイク・ライブリー ★★★☆☆

   バカンスで南の島にひとりで来た女医が、サーフィンの休憩で休んでいた岩礁に巨大なジョーズが現れて、一昼夜の間も救助の連絡も取れずに孤軍奮闘のサスペンス。

 

*3・『コロニア』(フロリアン・ガレンベルガー)主演・エマ・ワトスン ★★★☆

   南米チリの内乱で、ナチス残党のコロニーに拉致された恋人を救うために、勇気あるフライト・アテンダントは単身で山奥の拠点に救出に向かう傑作「アルゴ」の女性版。

 

*4・『ゴーストバスターズ』(ポール・フェイグ)主演・クリスティン・ウィグ ★★★☆

   30年前のヒット作を、ダン・エイクロイドやビル・マーレイがバックアップして、またもマンハッタンに現れたゴースト達を、女傑4人のパワーで退治する痛快コメディ。

 

*5・『白い帽子の女』(監督・主演アンジェリーナ・ブラッド・ピット)共演・ブラッド・ピット ★★★

   70年代の南仏保養地に休暇で訪れた中年カップルは、ほとんど別の行動をとるが、見ているうちにワイフが重度のウツになっていて、その治療のバカンスだったのが見えて来る。

 

*その他に見た新作は、どれも凡作・・・だった。

●「アンヌとアントワーヌ・愛の前奏曲」クロード・ルルーシュ

●「永い言い訳」西川美和

●「ペット」クリス・ルノー

●「BFG」スティーブン・スピルバーグ

●「あの場所で君を待っている」シュ・ジンレイ・・・などでいずれもマアマア・・。  


●『BFG<ビッグ・フレンドリー・ジャイアント>』との夢の世界の大冒険。

2016年08月03日 | Weblog

7月28日(木)13-00 虎ノ門<オズワルド試写室>

M-097『BFG*ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』" B F G " (2016) Walt Disney Studio / Amblin Entertainment / Reliance / Walden Media

製作・監督・スティーブン・スピルバーグ 主演・マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル <118分・シネマスコープ> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

続々とヒット作を連打するディズニー・スタジオが、ロアルド・ダール原作「オ・ヤサシ巨人BFG」を、「E.T.」のスピルバーグの監督で製作した、ということで想像はつくだろう。

「ジャックと豆の木」や「ガリバー旅行記」など、巨人たちとの冒険や友情を描いたテーマは童話には多いが、このイギリス人作家ダールの原作はディズニーご本人が直接に預かった話だという。

従って、このスピルバーグの<アンブリン・エンターテイメント>とのジョイントとなるこのテーマは、ただの思いつきではなくて、かなり運命的な構想だったのだと察せられる。

たしかにスピルバーグ本人も「E.T.」や「A.I.」でのキャリアの中で、子供と異星人やロボットとの交流などを好んで映画化してきたので、この企画には必然性すら感じられた。

実際に198センチもの長身だったというダールは、孫娘のソフィーにこの原作を捧げたというだけに、別の著作の、あのティム・バートン版「チョコレート工場の秘密」よりはプライベートなテーマ。

ロンドンの児童養護施設で育てられた10才のソフィーは、眠れない夜に暗い市街を見ていたときに、突然現れた巨人にさらわれてジャイアントたちの不思議な世界に連れて行かれる。

ということだから、これは孤独な少女の見た拡大したイメージの夢ものがたりで、健全な少女の<進撃の巨人>ということになろうが、そこはさすがにスピルバーグ・ブランド。

まさに「ジャングル・ブック」のモーグリ少年が、大きなゴリラに育てられて密林の野獣たちと戦う構図が、ここでは少女のイメージと視線で語られる分、<夢の国>は可憐なる世界だ。

そこは手慣れたCGアニメーターのデジタル・テクニックを駆使して、老練ながらスピルバーグは、いつもの斬新なヴィジュアルで少女の夢の世界を展開していく。

前作「ブリッジ・オブ・スパイ」で主演して、あの本命スタローンを逆転うっちゃりでオスカーを受賞したマーク・ライアンスが、キリンのような大きな耳でやさしいジャイアントを好演。

あきらかに少女をターゲットにした作為は、控えめなスピルバーグの演出でスロー・テンポを意識してか、とても「インディ・ジョーンズ」のような切れ味はなくて、凡長なのが歯がゆい。

ま、そこはテーマが少女向けなのだから、監督も孫娘に語るような口調の作品になるのは仕方がないだろう・・・と、かなり退屈した少女コミックの印象だった。

 

■高く上がりすぎたセンターフライが、セカンドまで戻される。 ★★★

●9月17日より、全国ロードショー 


●『あの場所で君を待っている』の東欧プラハのあの場所が美しい。

2016年08月01日 | Weblog

7月26日(火)20-00 <自宅>PR用、サンプル視聴DVD <MUSA+ミッドシップ提供>

M-096『あの場所で君を待っている』" Somewhere Only We Know "(2015) Beijing Kaila Pictures Company Ltd. 中国

監督・シュー・ジンレイ 主演・クリス・ウー、ワン・リークン <109分> 配給・コムストック・グループ

今月末には急遽本邦公開が決まったために、試写室でのマスコミ試写は不可能になったので、サンプルDVDが送られて来たので、突然、自宅で見た。

本国の中国では、公開時に初登場での興収ナンバーワンという、大ヒット作品で、昨年の東京国際映画祭でもチケット・ソールドアウトの人気作品(なそうだ)。

面白いのは、中国映画製作なのに、全編が東欧チェコスロバキアの大都市プラハでローケーション撮影されていて、現地の俳優もドラマに絡んで来るという国際ドラマなのだ。

突然の失恋でハートブレイクのヒロイン、ワン・リークンは、最近急逝した祖母が残した過去のラブレターの差し出し主が、このプラハに住んでいるというので、そのひとにも会ってみたかった。

もちろん、高齢な祖母の幻の恋人なので、その手紙の住所にいるわけもなく、だいいち、まだ生きているかどうかもわからないが、失恋したワンには運命的な心の治療の手がかりなのだ。

パーティの席でチェロを演奏していたイケメン好青年クリスと会話をするうちに、次第に傷心のハートが癒えて来たが、彼にはひとり娘がいて、複雑な家庭の過去を抱えていた。

ドラマは、ワンのプラハ滞在中に、その祖母の残したラブレターの差出人を探すプロセスで、美しいプラハの街や田園地帯の風景が紹介されて、あの「旅愁」のような展開となる。

彼女の悲恋と傷と、クリスの現実のトラブルが交錯して、このラブストーリーも、多くの中国や韓国の悲恋ドラマのパターンで、涙を誘う苦難なトラブルに直面するが、意外な急転ラストを迎える。

全編が美しいプラハのロケーションなので、作品はアジア色はなく、監督は「見知らぬ女からの手紙」でのキャリアを活かして、甘すぎる傾向のストーリーにも苦味も加えて行く。

それは、クリスの母の傲慢なエゴイズムによって、彼の性格が多少歪んでいるところが、ドラマにも厚みを見せていて、退屈はしないが、ま、ハッピーエンドも納得できる。

マルチェロ・マストロヤンニ主演の「黒い瞳」も、プラハだったか、それに近いロシアだったか、とにかく東欧のユニークな市街や丘陵の風景には独特の魅力があって魅せるのだ。

悲恋のヒロインを演じたワンは、ハリウッドの「トリプルX」や、リュック・ベッソンの新作にも抜擢されたとか、今後に期待のもてる個性的な美貌だ。

 

■セカンドの横を抜けるゴロのヒット。 ★★★+

●8月27日より、シネマート新宿などでロードショー