細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『セルフ/レス*覚醒した記憶』で、あの「セコンド」の驚愕が甦るか。

2016年08月22日 | Weblog

8月19日(金)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-103『セルフ/レス*覚醒した記憶』SELF/LESS(2015) Focus Features / Enogame Entertainment / Filmnations.

監督・ターセム・シン 主演・ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー <117分・シネマスコープ> 配給・キノ・フィルムズ

ニューヨークの実業家で建築家のベンは、高齢ながら現役で実務に君臨していたが、余命半年の末期がんの宣告を医者から受けて、覚悟を決めていた。

そこに、関係会社で頭脳医学研究所の責任者からの極秘の連絡で、高額な費用はかかるが、あなたの頭脳はそのまま保存して、死に行く体を若くする実験が可能だという。

バカな話だと聞き流していたが、いよいよ死期を感じると、やはり自分の記憶は残しつつ、体は健康な30代の<人間>に代われるものなら、その実験を受けてみたい、と同意する。

この話、前にもあったなーーと思い出したのは、ジョン・フランケンハイマー監督1970年の傑作「セコンド」で、ロック・ハドソンが主演の傑作だ。

あの作品では、高齢になった男が、高額な支度金を秘密組織に払って、行方不明を装い体を若返りして、遠い土地で新しい生活をするが、結局は老妻のもとに戻ろうとして始末された。

実に画期的で当時の映画ファンには評判になったが、昨年にやっとDVDが発売されて、また見直して、そのユニークな発想と、誰もが思いつく欲望の儚さに感動した。

しかし、この新作では、心と頭脳は残しつつ、外見的に体だけを取り替えるという、「ジキルとハイド」的な着想を、多額な医療実験でやってしまうという。

で、死期の近いベンは実験室のベッドに寝かされて、睡眠薬で安楽死させられ、同時に若い特殊部隊の戦闘で仮死状態だった若いライアン・レイノルズの肉体にスライドするのだ。

老練な知性を残しつつ、肉体は強靭な30代の青年に戻った、新しい知性<転送>人間は、その拒絶反応を緩和するために処方された特別な処方薬を日常的に飲むのだが、違和感を感じ出す。

つい最近も「秘密・トップシークレット」という大沢監督の不思議な頭脳僣入サスペンスがあったが、いかがわしい手術室が出ない分、こちらの作品の設定には説得力がある。

しかし日時が経過するにつれて、若い肉体には、彼が過去に体験した不思議な出来事が、一種の体のクセとして残っていて、その体はただのクローンではなく、ある女性の伴侶だった過去が甦り出す。

という具合で、その改造人間にはふたつの記憶があったことになっていくという、実に奇妙なミステリー構造は、ま、ネタバレになるので書かないが、実に意外な展開となるのは面白い。

ま、あくまで<二重人格>に悩んで行く男の話なので、マジなライアンに、またも「デッド・プール」のような面白い人格は期待できないが、実にユニークな発想、といえよう。

 

■ショート後方へのフライをレフトも前進して譲り合い、ポテンヒット。 ★★★☆

●9月1日より、TOHOシネマズ、シャンテほかでロードショー