細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『レジェンド*狂気の美学』では、ふたりのトム・ハーディに翻弄される。

2016年03月18日 | Weblog

3月17日(木)12-45 京橋<テアトル試写室>

M-035『レジェンド・狂気の美学』" Legend " (2015) Studiocanal / Working Title / Anton Capital Entertainment UK

監督・ブライアン・ヘルゲランド 主演・トム・ハーディ+トム・ハーディ <131分> 配給・アルバトロス・フィルム

何しろ、あの「マッドマックス*怒りのデス・ロード」の主演で、一気に人気スターになり、「レヴェナント・蘇えりし者」ではオスカー・ノミネート。

今や,トム・ハーディの名声は、同じトムでも、トム・クルーズよりも、トム・ハンクスよりも注目されていて、出演作品へのオファーも凄いことになっている、という人気。

たしかに、あの「熱いトタン屋根の猫」のポール・ニューマンや、「乱暴者」のマーロン・ブランドよりも勢いがあって、芸域もかなり広く、マスクももちろん、声がいいのだ。

その男が、この作品では一卵性双生児の兄弟ギャングを演じていて、ダニー・ケイの「天国と地獄」のそっくりな兄弟よりも似ているが、性格はかなり違う、という悪役ギャングの二役。

これまでの合成によるダブル・シーンではなくて、まったく違和感もなく、同じスクリーン・フレームの中で共演しているので、不思議な次元の実話シーンを見ているような錯覚に酔う。

双子でも、まったく性格が別な双子の設定は、よく映画で見たが、この兄弟は二人揃っての凶悪なギャングで、しかも1960年代のロンドン、つまりビートルズ時代の実話なのだ。

アメリカン・マフィアや、実在のギャング・スター達に憧れてワルの稼業を広げたふたりは、当時のロンドンの暗黒街では、かなりの勢力を誇示したが、警察当局もシッポを掴めないでいた。

どちらかというと、眼鏡をかけた兄貴分の方が凶暴で喧嘩早く、素顔のトムの方がガールフレンドもいて、やさしさもあって、この兄弟チームのバランスを取っていたが、当然、敵の刺客も現れる。

その実録のギャング抗争を、あの「LAコンフィデンシャル」や「ペイバック」のブライアンが、わざわざハリウッドから出向して演出しているが、何しろ実話なので少々テンポはもたつく。

どうせロンドンの抗争ものなのだから「ロック、ストック、アンド・スモーキング・バレル」などのガイ・リッチーとか、ポール・ベタニーが同じロンドン・ギャングを演じた「ギャングスター・ナンバー1」の、

ポール・マクギガン監督辺りが演出した方が、もっとロンドン・ノワール感覚の、スモーキーな映像展開がスピーディになったのだろうが・・・。ま、それは余計なおせっかいか。

これは、たしかに二人のトム・ハーディを、ワン・ショットの中で共演させるという、かなり難しい画期的な演出のタイミングもあってか、その映像処理の方に、こちらも心配してしまう。

ラストで、優しい方のトムがキレて、同僚の男をメチャ刺しにして殺してしまう凄惨なシーンは、<ゴッド・ファーザー>も縮み上がるだろうが、ヒゲのトムが止めに入るシーンが凄い。

「・・・まさか、お前を殺すわけにはいかねーーだろうが。」という、ふたりのトム・ハーディの友情が絡むシーンには、思わず同じ人間が演じているのを忘れてゾッとしてしまった。

 

■いきなりのドラックバントで慌てたサードが二塁に悪送球で、ダブル・スチール成功。 ★★★☆☆

●6月18日より、新宿シネマカリテなどでロードショー