細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『完全なるチェックメイト』の濃厚な迫真チェスマッチの壮絶心理ゲーム。

2015年11月05日 | Weblog

10月29日(木)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-138『完全なるチェックメイト』" Pawn Sacrifice" (2015) Lionsgate / Mica Entertainment / Material Pictures 

監督・エドワード・ズウィック 主演・トビー・マグワイア <115分> 配給・ギャガ

<チェス>という囲碁に似た知的ゲームは、どうも我々には縁遠いが、西欧ではトーナメント試合にも人気が高くて、これもまた事実に基づく天才勝負師の人生を見つめた新作。

「ボビー・フィッシャーを探して」という映画が、たしか数十年前にあったが、アメリカの天才的なチェスの名手ボビーの多難な謎だらけの人生もまた、かなり有名だ。

日本でなら、将棋名人の選手権のような試合があって、将棋マニア以上に、その名人戦は人気があるが、チェスも非常に一般的で、ニューヨークの公園などにはチェス盤も公園にある。

そこでは、見知らぬ他人同士でも、ごく気軽にゲームをしているが、かなり腕の立つベテランになると、数人を相手にして、同時にゲームをしたりする。

タイロン・パワーの「ミシシッピーの賭博師」は、プロのポーカー名人だったし、ポール・ニューマンの「ハスラー」は、ビリヤードの達人勝負師で全米を渡り歩いたっけ・・・。

とにかく、アメリカでは、こうしたギャンブラーが昔から富と名声を得ていたが、このチェスの場合はヨーロッパでも盛んで、まるでサッカーやラグビーのように国際トーナメントも行われる。

この映画のボビー・フィッシャーも、幼少の頃からのチェスの天才だが、同時にかなり統合失調症気味の神経質な変人だったというが、その難役を「スパイダーマン」のトビーが熱演。

何しろ、相手の作戦を、その数手も先まで予測して、その一手を阻止してしまうという知的な能力は練習で磨かれる、というよりは天才的な直感力の冴えがゲームを左右するのだ、という。

映画では、そのボビーの成長から、<IQ187>という天才で成人して多くのトーナメントに勝ち抜き、遂には全米ナンバーワンにまで輝く日々を見せて行くが、ゲームは次第にテレビ中継するまでになる。

時代はちょうどケネディ政権の冷戦時なので、ロシアの代表的な名手もヨーロッパで勝ち抜いて来て、ついにアメリカとロシアのチェス盤の上での世界大戦の死闘の瞬間を迎える。

しかし観衆が多くテレビ・スタジオに居た為に、神経衰弱なトビーはゲームを中断して、ブルガリアやアイスランドなどに逃亡したりして、その謎めいた行動は国際問題にまで発展。

クライマックスは、そのロシアの天才勝負師リーヴ・シュライバーとの睨み合いとなり、まさに次回のアカデミー賞ノミネートを狙うような演技戦が、これまた凄まじい見ものとなるのだ。

あの「ラストサムライ」のエドワード・ズウィック監督は、がらりと演出を地味なチェス盤に集中して、その心理的なナーバスな両者の表情を睨みつけて迫力充分。

 

■フルカウントからボックスを外した心理作戦で、見事な左中間スリーベース。

●12月25日より、新宿ピカデリー他で全国お正月ロードショー