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いま、そのとき、かんがえつつあること。

小説『図書館戦争』

2006-04-11 | ほん
うわー、やられた。有川浩(ありかわ・ひろ)2006『図書館戦争』メディアワークスをよんだ。

328ページからは、うわっとか さけびながら おえつしてしまった。はやいはなしが、なきながら よんだと(笑)。

登場人物がそれぞれ いきていて、会話のやりとりが じつに おもしろい。章だては、「一、図書館は資料収集の自由を有する 二、図書館は資料提供の自由を有する 三、図書館は利用者の秘密を守る 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する □図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る」となっている。つまりは、日本図書館協会による「図書館の自由に関する宣言」を土台にしたもので、それぞれの項目にそった内容を展開している。それも、「公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が施行されたのは昭和最終年度」であり、「メディア良化法の検閲権に対抗する勢力となることを期待されて成立したのが通称「図書館の自由法」」でありという設定のもとに。しかも、どえらいことに このふたつの勢力は、図書館の本の攻防をめぐって どんぱちまでしてしまうという、すごい設定。比喩じゃなしに、「図書館戦争」なのでした。主人公は、図書防衛員。まけんきが つよく、いきおいばかりで理念はあれこれもっているが、素養となる知識はあんまりないという、かきみだし系のキャラ。人間模様が おもしろいし、「自由宣言」など図書館の理念をていねいに しらべたであろうことが内容にきちんと反映されていて、エンターテイメントに徹しつつも、意義ある小説にしあがっている。小説って、おもしろーい、と ひさびさに感じたですよ。めったに よまないですから、ええ。

馬場俊明(ばんば・としあき)『「自由宣言」と図書館活動』や柴谷篤弘(しばたに・あつひろ)『われらが内なる隠蔽』、ジョナサン・ローチ『表現の自由を脅すもの』などをよみかえさねばと感じた。『表現の自由を脅すもの』は、まだ てもとには ないんだけども。ともかく、わりかし興味ぶかい本なのです。図書館についての本なら かなりあるし、『図書館戦争』の巻末にも参考文献が あげられているが、税別5000円という値段でも しんどくないということであれば、日本図書館協会による『図書館ハンドブック』をよんでみてほしい。まあ、それこそ図書館を利用して よめばいいわけだし。わたしの てもとにあるのは、2005年の第6版。たとえば、岩波の『事典 日本の多言語社会』なんかをよんでるような ひとは、ぜひとも『図書館ハンドブック』も ひもといてみてほしい。世界が ひろがるから。刺激にもなるだろうしね。歴史についてのものなら、石井敦(いしい・あつし)1972『日本近代公共図書館史の研究』や、東條文規(とうじょう・ふみのり)2005『図書館の政治学』青弓社ライブラリーがあるし、てっとりばやく、内容もすぐれた本なら『新版 図書館の発見』NHKブックスがいい。

いやー、いま現在の研究テーマに関連する小説が よめるなんて、うれしいこったね。しかも、これだけの内容。

設定が非現実的だという非難もあるのかもしれないが、その物語のなかでのリアリティが いきづいていれば、それはすでに作品として成立してるんであって、作品に現実味を要求するのなら、その物語の文脈に即して判断すべきだ。わたしゃ、じゅうぶんに たのしめましたよ。

わたしが公共図書館に興味をもったのは、高校3年のころから地域の公共図書館に かよいつめてきたということもあるが、なによりも ある一部では著名な図書館員のかたから ご連絡をいただいたことが もともとだったと おもう。論文の一部引用転載をしてもよいかの確認のメールだったのだが、それ以来、すこしづつであるがメールを交換するようになった。ありがたいことだし、こうして世界は つながっていくのだなと、感慨ぶかいものがある。縁というものは、偶然のようでいて、ただの偶然ではない、いくらかの必然性をもっている。「素地」というのかな。これからも、であいをたいせつにしたいものである。だから、連絡をとりつづけねばならんね。

グーグル:「図書館戦争」