未完の世界 Imperfect World

アーティスト佐々木久枝のブログ
自身の作品、生花と墨象を融合させたアートについて紹介。そして時々日々のこと。

薄い墨の色

2020-01-30 18:39:52 | 作品
今から15年ほど前、デザインの仕事に筆文字を取り入れようと、書道教室に行き、そのまま10年近く通いました。
書道教室といえども、とても自由な形の教室で、和気あいあい当時は楽しく通っていました。
そんなに長く通ったとはいえ、私自身は古典の臨書が上手くなったわけでもありませんし、美しい字が書けるようになったわけでもありません。
教室も自由に書いていいスタイルでしたし、私の性格に合っていたのだと思います。
私の根っこはきっと自由なものを欲していたのだと思います。

書道を習ったと言うのだから、美しい字くらいかけなきゃいけないかなと思ったこともあるのですが、あまりそこに興味を持てず、わけのわからない抽象画を書いていました。
当時は生け花を習っていたので、その時に墨で書いた抽象画と花を組み合わせることを思いついたのです。
そこから今に至ります。

ずっと墨象と花の組み合わせで活動していたけれど、私はなぜ墨を使っているのだろう?と、疑問を持つ瞬間が幾度もありました。
アートはどちらかというと、西洋の方が好きですし、カラフルなものも好き。
それではなぜモノクロのものを選ぶのか?
子供の頃から手習いとして書道をしていたわけでもなかったですし、墨を使う前提でアート活動をしまったので、何も考えずに制作していたからこうなっちゃったのだと思います。
このようなアート作品を作っているからといって、和のものが好きでなくてもいいとは思うのですが、書道も生け花も習ったくせに、どう言うわけか和のものはあまり興味が持てず。
他の画材を試してみましたが、あまりしっくりこず。

しかし、数年前、この作品を作っている時に、ハッとしたのです。



書いた墨象作品をぼんやりと眺めていたら、薄い墨のぼんやりとしたグラデーションや痕跡に、心が洗われるような気がしたのです。
自分の作品でそれを言うのもおかしいのですが、心のトゲトゲが溶けていくような感覚になりました。
あぁ、これだったのかと。

他の画材にもそれぞれ持ち味があるとは思いますが、私は淡墨で画仙紙に書いた時の色とにじみのグラデーションがたまらなく好きなのだと気づきました。
淡墨のグラデーションは、生まれ育った地域の冬の情景、私にとっての原風景を思い起こさせます。
雪国出身でありながら、今だに寒いのと曇天や雪は好きではありません。
好きではない原風景ではあるけれど、何か記憶を呼び覚ますものでもあるのかもしれません。


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作品を制作しながら気づいたこと

2020-01-25 11:11:02 | 作品
昨日、一昨日の記事でも書きましたが、最近は墨で描いた作品のかけらを貼って、金継ぎのように金の絵の具でその境界を描いています。

この作風は偶然からの思いつきでしたが、制作をしていくうちに自分自身のバラバラになった記憶や想いを集めていく作業みたいだなと思い始めました。
そして仕上がるといびつではあるのですが、不思議な調和がそこに現れ、あぁ、これは私自身かもしれないという発見がありました。

自分自身の不完全さ、いびつさを受け入れること、過去の傷ついたことを自分で愛でながら?修復していくことのように思えてきたのです。

そんな時にクリミナルマインドのシーズン14で(私は海外ドラマが大好きです)、いつも作家の引用文がでてくるのですが、たまたま見たエピソードに
"David Bowles”の詩が引用されていました。

それが
When wounds are healed by love,
The scars are beautiful.

傷が愛によって癒される時、その傷は美しい。

なんてドンピシャな!
とても感動して、ネットで検索して、kindleで購入しました。
詩のタイトルはまさしく"Kintsukuroi"
金継ぎの技法を、人の心に重ねて書かれていました。

そのような経緯もあり、このシリーズのタイトルは「未完の世界/Imperfect World」にしました。

私は一部で果物の「みかん」というあだ名で呼ばれていたので、ダジャレでずっとこのタイトルを使ってきたのですが、なんとなくしっくり繋がったように思います。

<未完の世界/Imperfect World #3>


<未完の世界/Imperfect World #6>


instagramも見てねー。
hisaesasakiでいます。
よかったらフォローしてくださいね。


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最近の作品の変化 ちょっとした発見

2020-01-24 16:07:57 | 作品
昨日の記事に続きます。

自分が描いたものではあるのですが、違うパーツを組み合わせると、おもしろい表情になることに気づきました。

そんな時、ネットで偶然「金継ぎ」を見かけたのです。

「金継ぎ」と言えば、日本の伝統的な、壊れた陶磁器の修復方法です。
今まできれいだなあと思ってはいたのですが、あくまで陶磁器のものだと思っておりました。
金継ぎをネットで色々調べてみると、ものすごく美しい世界が広がっていました。
そして違うパーツを合わせる「呼び継」という方法があり、そしてアートへの広がりがユニークで、たくさんの表現の可能性を見て、ますます興奮してしまいました。

そこで、この違う墨で描いた作品のパーツを金継ぎ風にしてみたらおもしろいかも!と思いついて、早速ワクワクしながら、作品を切り刻みました(笑)。

そして最初に試しに作ったのがこちらです。




昨年4月、フランスのサンリス(パリから40kmほど北にある街)で教会で展示するイベントがあり、そこに新たにこの金継ぎ風の作品を制作して参加しました。教会での展示はいつかしてみたいと思っていたので、このような形で叶って嬉しかったです。
私は現地には行けなかったのですが、パリ在住のピアニストの方が写真を撮ってくださいました。



当時は嬉々として作ったのですが、今見るともっと改良の余地がありますね。
伸びしろがあると思いたい…。

今年も4月に同じ場所でのイベントがあり、参加します。
少し進歩したのではないかと自負?してます。

ではまた明日。多分。


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最近の作品の変化

2020-01-23 18:47:04 | 作品
今日は1月23日。
いちにさん、なのでなんとなくリズミカルな感じ。
ふとブログを書いてみようかと思い立つ

さて、何を書く?

少し考えて作品のことについて書くことにしました。
これからしばらくブログも続けてみようかと思います。
(いつまで続くかわからないけど)

自分の頭の中を整理することも兼ねて。




私の作品は以前は、生花と墨で描いた抽象画と組み合わせたもの。
これらは、私のオリジナルであると自負しています。

例えばこんな感じ。


アート活動をしていくにつれて、海外の展示に参加する時、私が行けない場合や、花を使えない場合もあって、その時は写真作品を送ったりしていました。
しかし、一昨年くらいから実際に墨で描いたものを展示したいと思うようになり、花はつけられないから、上に造花でもいいから(プリザーブドフラワーだと、壊れやすいし、色素が紙についてしまうので、却下)花びらをつけてみようと思い立って、制作してみたところ、面白い感じになりました。

そして作った作品はこちら


作品は描いたものをトリミングしたのですが、トリミング後の作品を別々に組み合わせるとこんな感じに。


別々の作品なのだけど、不思議な相乗効果があっておもしろいなあと思ったのでした。

そこからまた発見がありました。

続く





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Awaken 目覚める

2018-06-24 09:42:28 | 作品
私の作品の中に「Awaken(目覚める)」というタイトルのものがあります。


Photography by Junichi Takahashi

このドットの部分は蕾で、それが一つ一つ目覚めていくかのように花開いていく様子をイメージして製作しました。
いつも展示をするときは咲いている花を使用しているので、蕾からというのが実際見れていないなあと思い、実際に蕾から朽ちるまで写真に記録して、動画にしてみました。
撮影は下手くそですが、ご覧ください。



使用している花は芍薬です。
(使用する花は好きなものならなんでもいいのですが、蕾の形や花の開き方を考えると芍薬が一番適しているからです。)

花屋さんで蕾の状態のものを購入して、毎日観察していました。
最初は簡単に考えていたのですが、割と失敗しています。
蕾が固くて開かないで終わったり(少しほぐしたりしたのですが、ダメでした。頑固な子でした)、開いてきたなと思ったら、花びらが全開にならずしぼんでしまったり。
同じ種類、色の花でも一本一本個性があり、違いがあるのだなあとあらためて思いました。
なかなか難しいなあとあくせくしていると芍薬のシーズンが終わってしまいそうになり、これが最後!と思って撮影していたら、いい具合に開花から花びらが落ちるまで見ることができました。

私の作品は花と私の墨の作品との一期一会でもあります。
自分の思い通りにならない植物と対峙し、作品の中にその生きているものの変化を見ていくものは興味深いものです。





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