平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

えほんのくに(2006年3月)

2006年04月01日 | バックナンバー
 今年五月二十、二十一日、絵本に関する様々なイベントを展開する「南阿蘇えほんのくに二〇〇六」という行事が、熊本県で開催される予定だ。

 熊本県といえば、絵本作家・葉祥明氏の出身地である。阿蘇山のふもとには美しく雄大な風景が広がるが、葉さんの絵に出てくる自然は、この南阿蘇が原点なのだろう。葉さんは数年前、この地にご自分の「葉祥明阿蘇高原絵本美術館」を建設した。この美術館もイベントの会場の一つである。

 絵本はもちろん子供のための本である。子供とは大人より劣った存在ではない。筆者自身や筆者の子供の生育を振り返ってみても、未知なものに接したときの驚きや感動は、幼かったときのほうがはるかに大きかったような気がする。また、人々や動植物に対する思いやりも、子供のときのほうがずっと純粋であったかもしれない。

 絵本は、絵と言葉を通して、子供の心に働きかけ、感受性を育てる。大人でも、そういう絵本をながめているうちに、自分の中に、忘れていた子供の感受性が、また浮かび上がってくることがある。葉さんの絵本の世界をそのまま建物にしたような美術館を訪れると、今まで悩んでいた問題が解決したり、肉体的な痛みが軽減したりする人もいるという。それは、ストレスでがんじがらめになっていた大人が、子供のような素直な心を取り戻したからではないだろうか。

 葉さんの絵は、美しいだけではなく、スピリチュアルで不思議な雰囲気が満ちている。葉さんは、クジラを描くときはクジラの気持ちになり、イルカを描くときにはイルカの気持ちになるという。

 そして、葉さんはまた詩人でもある。葉さんは、

 「〔ある時から〕言葉そのものが、ふっと思い浮かぶというか、どこからともなくやって来るようになったのです。例えば、《あなたは今日微笑みましたか、喜びを感じましたか、優しい心になれましたか、美しいものに心を向けましたか》というように。それがやって来るのはどんな時かというと、仕事が忙しい時、人間関係で悩んでいる時、ローンを負担に感じている時などの辛い時でした」

 と述べている。霊的に言えば、この言葉は、人間を背後で守っている守護霊のメッセージであり、本心・真我のひびきであろう。

 「お金がすべて」という風潮の今の世の中では、微笑みも喜びも優しさも、無価値なものとしてかえりみられないことが多い。しかし、それらのない人生は、なんと無味乾燥で、殺伐としたものだろう。葉さんの絵本は、「美しいもの」を通して、柔和でうるおいある心をよみがえらせてくれるのである。

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