平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

核武装論は愚論

2006年10月18日 | Weblog
北朝鮮の核実験は、失敗だったようです。

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2006年10月17日01時11分
 ネグロポンテ米国家情報長官は16日、米国が北朝鮮の核実験発表後の11日に周辺地域で採取した大気を分析した結果として、「放射性物質が検出され、北朝鮮が9日に地下核爆発を起こしたことが確認された」との声明を出した。場所は咸鏡北道(ハムギョンプクト)豊渓里(プンゲリ)付近で、爆発規模はTNT火薬換算で1キロトン以下だったとした。

 北朝鮮が9日核実験を発表して以来、一部には通常火薬を使って核実験を偽装したなどの見方も出ていたが、米国は同長官の声明で北朝鮮の核実験を公式に確認する形になった。

 爆発規模は、初期型核兵器として通常考えられる数~20キロトンをはるかに下回ることになる。プルトニウムを使った核爆弾が完全な起爆に成功せず、「未熟核爆発」に終わった可能性が高いとみられる。

 CNNなどの米メディアは13日、情報機関が大気標本分析で放射能を検出したと伝えていた。
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http://www.asahi.com/international/update/1017/002.html

北朝鮮が核実験をしたために、日本も核武装しなければ、という声が聞こえてきていますが、「唯一の被爆国」ということはさておき、常識的に考えてみても、そんなことはできるはずはないし、してはならないことです。

(1)核拡散防止条約 NPT
 日本は核拡散防止条約に加盟しています。これは、核兵器保有国が増えることを防ぐために、核兵器保有をアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国に制限する条約です。これがきわめておかしな不平等条約であることは言うまでもありませんが、それについてはここでは論じません。NPTに加盟していないインド、パキスタンが核実験を行なったとき、アメリカはしばらく経済制裁を科しました。日本が核実験をしたら、NPTへの違犯ですし、当然、アメリカや中国から経済制裁を受けることになります。貿易に依存している日本の経済はがたがたになります。日本人にはそこまでして核武装をする心構えがありますか?
 アメリカは日本の核武装を容認するだろう、という議論もあります。しかし、アメリカが日本の核武装を認めたら、イランなど他の国の核武装に反対することができなくなります。日本の核武装は核兵器を非タブー化し、核保有国は一気に増えるでしょう。それは核がテロリストの手にわたる機会を増やし、それがアメリカ国内で使用される危険を高めます。そのようなことを考えると、アメリカは日本の核武装を認めることはありません。

(2)核ドミノ
 日本が核武装したら、当然、韓国も核武装します。台湾もするでしょう。中国は日本向けの核ミサイルを増やすでしょう。それは日本の安全を高めることにはならず、かえって危険を高めます。

(3)核では国民を守れない
 実際に中国や韓国などの近隣諸国と戦争になり、最後の手段としてお互いに核を使わざるをえない状況になった時、相手の核ミサイルは数分で日本に到達しますが、これを防ぐ手段はありません。日本が報復として敵国に核ミサイル打ち込んで、敵に大きな打撃を与えても、その前に日本も大きな被害を被っています。それを避けたいというのであれば、敵が攻撃する前に、敵国全土に核ミサイルを雨あられと撃ち込んで、敵国民を全滅させねばなりません。しかし、敵が核攻撃をするかどうかもわからないときに、日本から先に核攻撃をしかけることが許されるでしょうか? いくら「自衛」という名目であれ、そのような大量虐殺を行なえば、日本は、未来永劫、ナチス・ドイツ以上の犯罪国家のレッテルを貼られ、国際社会の中で生きていけなくなるでしょう。

冷静に考えれば、日本が核武装することは何の益もないのです。日本の核武装を肯定するような人は、ほんの少し先の国際情勢も読めない愚か者です。

もちろん、現在のように、一部の国だけが核兵器を独占しているという状況は改められねばなりません。そのためには、核保有国が真剣に核廃絶に向かわなければなりませんし、そのためのイニシアティブを日本が取らなければなりません。

北朝鮮が核を持っているのに、核兵器なしでどうやって日本を守るのか、と言う人がいるでしょう。

北朝鮮が核を持っているとしたら、どんな時に使うでしょうか? 北朝鮮がある日突然、先制攻撃的に日本に核を打ち込むなどということはありえません。そんなことをしたら、アメリカの報復によって自分が亡びることを、金正日は知っています。

色々な識者がすでに言っていることですが、北朝鮮は金正日体制を守るために、その最後の拠り所として核兵器を開発しているのです。北朝鮮が核を使うとしたら、それは自国が他国から攻め込まれ、亡びることがわかったとき、他国も地獄への道連れにするために核を使うのです。そういうことを避けたかったら、核を持っている自国には手を出すな、と北朝鮮は言っているのです。

核を使わなくても、通常のミサイルでも東京やソウルに撃ち込まれたら、多数の死傷者が出ます。

ですから、北朝鮮と戦争を起こすことは絶対に避けねばなりません。戦争になれば、装備劣悪な北朝鮮軍はすぐに敗れます。それは北朝鮮を自暴自棄に追い込み、核使用の危険性を高めます。

どんなに迂遠に思えようとも、国際社会の一致した団結によって、北朝鮮に核の放棄を迫り続けるしかありません。北朝鮮の死活を握っている中国も北朝鮮に厳しい姿勢を見せていることはよいことです。国際的な包囲網によって、いずれ北朝鮮の内部で変化が起こるのを待ちましょう。