平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

潘基文氏、国連事務総長に

2006年10月03日 | Weblog
朝日新聞より――

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潘氏「喜び、責任感じる」 韓国、周到な計画で浸透
2006年10月03日16時17分

 「安保理理事国の信頼と支持を得て、喜びと同時に重い責任を感じる。我が国の国益にも貢献し、外交の幅が広がるよう努力したい」。潘基文(パン・ギムン)・韓国外交通商相は3日朝、語った。

 韓国のテレビやラジオは「とってもうれしいニュースです」と前置きしながら予備選の結果を「内定」「ほぼ確定」などと伝えた。外交通商省は「あくまでも予備投票。最後にひっくり返ることもありうる」とぬか喜びを心配し、主要メディアに対して「正式に決まるまでは特集記事や特別番組を控えるように」と非公式に要請しているが、すでにYTNテレビなどは長々と特集番組を放映している。

 韓国にとって、国連事務総長のイスは二つの重みがあった。先進国入りをうかがう韓国が、国際政治の舞台に初めて人材を送り出すこと。もう一つは、56年前の朝鮮戦争の際、国連軍の参戦で休戦に持ち込んで以来、恩人であり超えられない存在だった国連がやっと身近になることだ。

 そのために、大統領府と政府が団結して昨年来、周到な「当選プロジェクト」を立てた。次期事務総長をアジアから選出するよう周辺国と協調しつつ、世界の関心が集まり始めた2月に潘氏の擁立を発表。現職外相という動きやすい立場で、国連など国際会議や大統領の海外訪問随行の機会を最大限に利用し、各国首脳との面識を深めていった。国内メディアには「事務総長選に絡む報道はなるべく控えて欲しい」と再三要請し、「静かな浸透」を図った。

 潘氏自身、70年代後半から国連代表部書記官や在米大使館の参事官、公使を歴任し、国連や米国の外交官僚に太い人脈を持っていることもプラスに働いた。「韓国人が国連の中心に座ることは、全国民にとっての悲願だった。やっと現実に目の前に迫ってきた」と、ある政府関係者は感慨深く話した。
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http://www.asahi.com/international/update/1003/009.html

正直に言って、潘基文氏の国連事務総長選出に私は疑問を感じました。

国連事務総長は、国連という複雑きわまりない組織を、各国の利害を調整しつつ、中立の立場に立って、しかも理想主義を失うことなく運営しなければならないという、たいへん難しい職責です。コフィー・アナン氏はその職責を立派に果たしたと思います。

国連事務総長はまず第一に出身国の国益を離れなければなりません。国連事務総長は、たとえ出身国の国益に反しようとも、国際社会の利益を全体として増すように努力しなければなりません。国連事務総長が自国の利益のために動くようでは、事務総長に対する信頼が失われます。ところが、潘基文氏は、「我が国の国益にも貢献」することを望んでいるのです。最初からちょっと考え違いをしている感じがします。

もし国連事務総長が、その立場を利用して、韓国の利益になり、たとえば日本の利益に反する行動を取ったとしたら、日本はそういう国連事務総長を信頼できなくなります。潘基文氏が国連事務総長の職責を立派に全うしようというのであれば、何よりも国益意識を捨て、国際正義の立場で行動しなければなりません。そのとき、韓国の国益に反せざるをえない事態が生じたとき、あまりにもナショナリズム意識の強い韓国民はそれでも潘基文氏を支持するでしょうか? 潘基文氏は韓国民の評価を気にすることなく、地球的な視点で行動できるでしょうか? 残念ながら非常に疑問です。

何よりも公平性、公正性を要求される国連事務総長は、従来、いわゆる中立的な小国から選ばれるのを常としてきました。国際的に大きな地位を占めている日本人やアメリカ人や中国人は国連事務総長になれないのです。国連事務総長は何よりも、個人的な見識と能力が要求される職責です。

私には、潘基文氏の選出は、アメリカと中国の妥協の産物のように思えます。どちらも、自国にとって都合のよい人物として潘基文氏を支持したのでしょう。これに対して、イラク戦争を「国際法違反」と堂々と批判したアナン氏は、アメリカにとって非常に不愉快な人物でした。アメリカは、自国に楯突かない事務総長を求めたのです。韓国はアメリカの同盟国です。中国にとっても、韓国人は御しやすい人物に見えたのでしょう。潘基文氏はアナン氏のようにアメリカや中国の利益に反する行動を果敢に取ることはできるでしょうか? まず無理でしょう。

潘基文氏の事務総長選出が確定的になったその日に、北朝鮮が核実験をするという発表をしました。潘基文氏は、北朝鮮との同胞意識に基づいて北朝鮮に甘い態度を取ることは許されません。国際平和という立場から、北朝鮮に対して国連の毅然とした姿勢を示す必要があります。それができないようなら、潘基文氏はすぐに国際社会の信頼を失うことになるでしょう。