平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

フォトンベルト妄想(3)

2006年06月25日 | フォトンベルト妄想
渡邊氏はさらにこう述べています。

「1991年、アメリカの天文学者ロバート・スタンレー博士は人工衛星の観測データから、プレアデス星団付近にあるフォトン・ベルトの存在を科学的に突き止めている。」

渡邊氏は先に、「1996年宇宙空間に浮かぶハップル宇宙望遠鏡は、宇宙の遥かかなたに存在する<フォトン・ベルト>の撮影に成功した」と書いていました。ところが、それ以前の1991年に「アメリカの天文学者ロバート・スタンレー博士」が「プレアデス星団付近にあるフォトン・ベルトの存在を科学的に突き止めて」いたのだそうです。

変ではありませんか?

1991年にフォトンベルトの存在が科学的に突き止められていたのであれば、その時にその科学的証拠があがっていたはずです。ところが、その証拠が1996年(1999年?)の写真だというのであれば、つじつまが合いません。

渡邊氏の文を善意に解釈すれば、これは「ロバート・スタンレー博士はフォトン・ベルトの仮説を出した」ということなのでしょう。

ところが、それにしてもやっぱり変です。なぜなら、証拠写真の極リングは銀河規模で存在します。ところが、スタンレーの説はフォトンベルトはプレアデス星団付近にあるというのです。

プレアデス星団というのは、日本では「すばる」と呼ばれる星の集まりです。谷村新司の名曲「昴(すばる)」をひくまでもなく、その明るさの故に、古来より日本でも非常に有名な星です。

Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%83%87%E3%82%B9%E6%98%9F%E5%9B%A3

プレアデス星団は、地球から約400光年という、宇宙的規模では比較的近いところにある星団で、もちろんわが銀河系の内部の星団です。そんな小さな星団の周囲にできるフォトンベルトは、銀河NGC 4650Aの周囲に観測された円盤とはまったく違う性質のものに違いありません。

上記Wikipediaの写真を見てみると、星々の周囲に青い霞のようなものが見えますが、これは「星々とは元々関係のない星間ガスが、星団の光を反射しているため」です。星の周囲にガスが広がっているケースは非常に多くありますが、それは決していわゆるフォトンベルトではありません。

前にも述べたように、星や銀河の周囲に何かが光っていたとするならば、それはガスやチリです。フォトンそのものが星の周囲に浮かぶなどいうことはありえません。

しかもプレアデス星団は非常に有名ですから、その周囲に浮かぶ星間ガスの存在は、1991年以前から知られていました。それをロバート・スタンレー博士がフォトンベルトだと言うのであれば、この博士は相当なトンデモ博士です。博士号を持っている人の中にもおかしな人はたくさんいます。

ここでもう一度Wikipediaの「フォトンベルト」を参照下さい。

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・太陽系はプレアデス星団のアルシオーネを中心として約26,000年周期で回っている。地球はまもなくフォトンベルトに突入し、2000年間続く。
・フォトンベルトは銀河系に垂直に分布しており、NASAが観測に成功している。地球は約26,000年周期で銀河の中を進行しており、まもなくフォトンベルトに突入する。
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フォトンベルトには少なくとも2つの説があるのです。1つはプレアデス星団と関連づける説、もう一つは「銀河系に垂直に分布している」という説。後者の説が、NGC 4650Aの印象的な写真をもとにして作られていることは明白です。しかし、この二つは両立しません。そのスケールがあまりにも違うからです。

しかも渡邊氏はロバート・スタンレー博士の次の言葉を引用しています。

 “この濃密なフォトンは、われわれの銀河の中心から放射されている。わが太陽系は、1万1千年ごとに銀河系のこの部分に進入し、それから2000年かけて通過し、そして2万6千年の銀河の軌道を完結させる”

これによると、「フォトンは、われわれの銀河の中心から放射されている」のだそうです。そうすると、このフォトンベルトは、

(1)プレアデス星団とは直接関係はない
(2)フォトンベルトはわれわれの銀河(それはアンドロメダ星雲のように円盤状であることがわかっています)の水平面に位置しているのであって、垂直に直交しているのではない。

ということになります。

渡邊氏の叙述には、フォトンベルトについて3つの観念がごちゃ混ぜに出ています。しかし実は、これは渡邊氏の混乱であるばかりではなく、フォトンベルト説が生まれた海外の混乱がそのまま反映しているのです。