平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

フォトンベルト妄想(2)

2006年06月24日 | フォトンベルト妄想
これだけでも、渡邊氏がいかに「トンデモ」であるかがおわかりのことと思いますが、フォトンベルト信者のために、渡邊氏のデタラメぶりを以下で詳しく説明いたしましょう。

まずNASAや国立天文台は、フォトンベルトなるものは存在しない、と明言しています。しかし、フォトンベルト信者は、そういう公的組織は情報を隠蔽しているのだ、と主張します。これは、アメリカ政府がUFOや宇宙人についての情報を持っているのにそれを隠蔽している、というのと同じ性質の議論です。隠蔽しているという主張は、そう主張している側が、その証拠を明らかにする必要があります。しかし、隠蔽されているものは調べようがないので、結局、言いっぱなしになります。隠蔽している、という議論は、論理的には反証できない議論で、そうかもしれないし、そうでないかもしれない、としか言いようがありません。しかし、トンデモ論者が自分に都合の悪い時は隠蔽説に持っていく傾向があることは、わきまえておいたほうがよいでしょう。

ここでは、隠蔽説にされがちなNASAや国立天文台の発表によらず、世間に流布しているフォトンベルト論の真偽を検証していくことにします。

渡邊氏はこう述べています。

「1996年宇宙空間に浮かぶハップル宇宙望遠鏡は、宇宙の遥かかなたに存在する<フォトン・ベルト>の撮影に成功した」

これは本当でしょうか?

まず細かなことを言いますと、「ハップル宇宙望遠鏡」ではなく、「ハッブル」です。渡邊氏は有名なハッブルの名も知らない方のようですね。そのハッブル宇宙望遠鏡のサイトはここです。

http://hubblesite.org/

ここで「photon belt」で検索(search)してみてください。該当情報はありません。つまり、ハッブルはフォトンベルトなるものを撮影していないのです。

渡邊氏のいう「宇宙の遥かかなたに存在する<フォトン・ベルト>」とは、どうやらこの写真のことを言っているようです。

http://www.geocities.com/lightworkers2012/j.html

この写真では、たしかに銀河を円盤状の光が垂直の方向に取り巻いているように見えます。これはNGC 4650Aという銀河です。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した写真の中でも最も有名なものの一つで、ハッブルはこれを全然隠してなどいません。

この銀河は上記ハッブルのサイトでも紹介されています。ただし、この写真が撮影されたのは、1996年ではなく、1999年です。

http://hubblesite.org/newscenter/newsdesk/archive/releases/1999/16/image/a

その説明を邦訳してみましょう。

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約1億3千万光年のかなたにあるNGC 4650Aは、わずか100しか知られていない極リング銀河の一つです。その珍しい円盤状の構造はまだ十分に解明されていません。一つの可能性は、極リングは、はるかな過去に起こった二つの銀河の大規模な衝突の残滓であるということです。それは少なくとも10億年前のことでしょう。一つの銀河の残りは、中心部の古い赤い星々からなる内側の回転する円盤になりました。他方、あまりに近づきすぎたもう一つの小さいほうの銀河は、ひどいダメージを受けたか破壊されました。衝突中に、小さいほうの銀河から出たガスは、はぎ取られ、大きいほうの銀河に捕まり、チリ、ガス、星からなる新しいリングを形成したのでしょう。それは、内側の銀河の周囲を古い円盤に対してほぼ垂直の角度で回っているのです。

Located about 130 million light-years away, NGC 4650A is one of only 100 known polar-ring galaxies. Their unusual disk-ring structure is not yet understood fully. One possibility is that polar rings are the remnants of colossal collisions between two galaxies sometime in the distant past, probably at least 1 billion years ago. What is left of one galaxy has become the rotating inner disk of old red stars in the center. Meanwhile, another smaller galaxy which ventured too close was probably severely damaged or destroyed. During the collision the gas from the smaller galaxy would have been stripped off and captured by the larger galaxy, forming a new ring of dust, gas, and stars, which orbit around the inner galaxy almost at right angles to the old disk.
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ここからわかることは、

(1)このような「極リング」を持つ銀河は非常に珍しい
(2)極リングは「チリ、ガス、星」から構成されている

ということです。

太陽系が属するわれわれの銀河がこのような極リングを持っているかどうかわかりませんが、おそらくその可能性はないと思われます。なぜなら、そういうリングがあれば、ちょうど銀河中心部が天の川として見えるように、地球の夜空にそれが観測できるはずだからです。

たとえ私たちの銀河がそのような極リングを持っていたとしても、それは「チリ、ガス、星」であって、フォトンベルトなどではありません。

そもそもNGC 4650Aに極リングが見えるということは、光子が何かにぶつかって、地球にまで届いていることを示しています。光子が光子のままドーナツ状にぷかぷか浮かんでいるなどということはありえません。円盤状の「チリ、ガス、星」があるからこそ、それが光って見えるのです。

なお、写真の赤い小さい部分が本来の銀河であり、細長い部分が極リングです。しかし、フォトンベルト信者たちのサイトでは、写真を90度回転させ、細長い部分を銀河に、赤い部分をフォトンベルトに見せかけているように思われます。