■戦車の運用基盤
第一機械化大隊という滝ヶ原の実在の部隊を一つの機械化部隊の理想形として前回までに同高機動旅団の構想を示しました。

この装甲機動旅団案、実行しますというなれば、第5旅団型や第11旅団型の編成を志向していますので本土に4個戦車大隊が残る構図となります、戦車中隊と戦車小隊の編成をいかにするかで大隊戦車定数は最小31両、理想は44両、戦車は124両から176両、となりますが、少なくとも本土に進行が行われる蓋然性が残る限りには、陸上自衛隊だけではなく全自衛隊の均衡と任務区分から、残さなければなりません。

戦車の北海道集中配備、一部の九州残置とは言うものの基本的に北海道へ戦車を集中させる政策は防衛上、非常に大きなリスクを将来に残すものです。戦車とは、戦車単体ではなく戦車部隊として運用し、機動打撃という陸上戦力の骨幹を構成するもので、重要なのは敵に打ち勝つことができる実力を有する部隊を整備する、ということにほかなりません。

戦車、現代の戦車は10式戦車に代表されるように、コンピュータの要塞というべき高性能な設計として完成していますので、一種錯誤に陥るかもしれませんが、戦車は乗員が操作するものであり、システム化されているとしてもその運用や戦術などの面では海空装備品と比較し、まだまだ人員の介在する部分が多く、結局練度の高さが重要となります。

戦車射撃競技会などに代表される、小隊規模の優秀な部隊の錬成と戦車中隊としての有力な部隊の錬成、さらに普通科部隊へ近年普及が完了しつつある軽装甲車両との連携など、やはり一定規模の部隊、大隊編成、複数大隊との競合などを行い、その中にて優劣を競う体制、更に戦車部隊以外の近接戦闘部隊指揮官もその協同に習熟しなければ機動打撃という選択肢を欠いた部隊体系となってしまいかねません。

実際、戦車と連携を採る運用という場合でも不整地突破能力や防御力などは実際に教導してみなければ実感できないものであり、仮に機動戦闘車のような代替装備と連携する場合でも、重装甲の装軌式機動戦闘車でも開発されるならば別なのですが、連携を戦術として一体化する事などできないのではないでしょうか。

本州からの戦車部隊撤収、これはまず戦車運用基盤が本土から失われるということになります。運用基盤は一見わかりにくいものですが、普通科部隊の装甲戦闘車をみれば理解できるところです、例えば本土の普通科部隊は現在、小銃班に2両の軽装甲機動車が配備されたところで、その整備や運用に非常に負担を抱えている、という視点がありました。

そして高機動車が一番、と。高機動車によってはじめて普通科部隊の長距離機動が現実的になった、とも。たしかに、1t半トラックの時代と異なり安定していますし、演習場内の気宇道に加えまして高速道路での安定走行でも1t半トラックの時代よりも進んでいます、運転席と後方の連絡が容易ですし、悪路でもある種多少は個人差があるでしょうが、寝ることが出来ますし、ね。

高機動車に比べますと、軽装甲機動車は整備に重量が大きいぶん負担がりますし、車両数が二倍となりますので少なくとも隊や交換などの負担も二倍、さらには燃費も重量が装甲により増大した分大きくなり、燃料補給の負担も大きい、と。もちろん、装甲の重要性は理解している場合でも、演習では装甲の重要性が反映されにくい点もありますが。

そこで本土普通科部隊の方に率直により大型の96式装輪装甲車について問うてみますと、さすがに整備負担が大きすぎるため、仮に配備されたとしても手に負えないのではないか、少なくとも現在の整備補給基盤は装甲車を前提としていない、というものでした。戦車へ随伴するにも、実感として機動打撃は戦果拡張の範疇で、長距離の機動打撃は想定できない、とのこと。

人間は経験に依拠する論理体系を構築してゆきますので、想定できないというものは、机上の論理としてわかっているつもりであっても実運用において対応可能な能力が追加付与された場合に対処することが出来なくなります、この為に技術の習慣化が求められるものなのですから。

しかし、北海道でこの点を問うてみますと、特に第7師団などは機甲師団の呼び名の通り、運動戦により相手に防衛線構築の暇を与えない、背後に回り込むには速度が重要で戦車に随伴し戦車を援護する能力、施設科部隊と一体となった打撃、などの回答で、装甲車の負担はあるものの、装甲車がなければ運動戦は非常に短距離の躍進で終わってしまうだろう、という。

戦車の運用基盤について特に考えさせられるのは、本土と北海道の重装備に関する普通科部隊のこの温度差で、現時点では本土と北海道の普通科部隊に関する温度差の話題ですが、戦車を本格的に本土から省いた場合、陸上自衛隊の北部以外の方面隊において重装備に関する大きな温度差、これが現場が実感できないことにより生じる可能性が無視できません。
北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
第一機械化大隊という滝ヶ原の実在の部隊を一つの機械化部隊の理想形として前回までに同高機動旅団の構想を示しました。

この装甲機動旅団案、実行しますというなれば、第5旅団型や第11旅団型の編成を志向していますので本土に4個戦車大隊が残る構図となります、戦車中隊と戦車小隊の編成をいかにするかで大隊戦車定数は最小31両、理想は44両、戦車は124両から176両、となりますが、少なくとも本土に進行が行われる蓋然性が残る限りには、陸上自衛隊だけではなく全自衛隊の均衡と任務区分から、残さなければなりません。

戦車の北海道集中配備、一部の九州残置とは言うものの基本的に北海道へ戦車を集中させる政策は防衛上、非常に大きなリスクを将来に残すものです。戦車とは、戦車単体ではなく戦車部隊として運用し、機動打撃という陸上戦力の骨幹を構成するもので、重要なのは敵に打ち勝つことができる実力を有する部隊を整備する、ということにほかなりません。

戦車、現代の戦車は10式戦車に代表されるように、コンピュータの要塞というべき高性能な設計として完成していますので、一種錯誤に陥るかもしれませんが、戦車は乗員が操作するものであり、システム化されているとしてもその運用や戦術などの面では海空装備品と比較し、まだまだ人員の介在する部分が多く、結局練度の高さが重要となります。

戦車射撃競技会などに代表される、小隊規模の優秀な部隊の錬成と戦車中隊としての有力な部隊の錬成、さらに普通科部隊へ近年普及が完了しつつある軽装甲車両との連携など、やはり一定規模の部隊、大隊編成、複数大隊との競合などを行い、その中にて優劣を競う体制、更に戦車部隊以外の近接戦闘部隊指揮官もその協同に習熟しなければ機動打撃という選択肢を欠いた部隊体系となってしまいかねません。

実際、戦車と連携を採る運用という場合でも不整地突破能力や防御力などは実際に教導してみなければ実感できないものであり、仮に機動戦闘車のような代替装備と連携する場合でも、重装甲の装軌式機動戦闘車でも開発されるならば別なのですが、連携を戦術として一体化する事などできないのではないでしょうか。

本州からの戦車部隊撤収、これはまず戦車運用基盤が本土から失われるということになります。運用基盤は一見わかりにくいものですが、普通科部隊の装甲戦闘車をみれば理解できるところです、例えば本土の普通科部隊は現在、小銃班に2両の軽装甲機動車が配備されたところで、その整備や運用に非常に負担を抱えている、という視点がありました。

そして高機動車が一番、と。高機動車によってはじめて普通科部隊の長距離機動が現実的になった、とも。たしかに、1t半トラックの時代と異なり安定していますし、演習場内の気宇道に加えまして高速道路での安定走行でも1t半トラックの時代よりも進んでいます、運転席と後方の連絡が容易ですし、悪路でもある種多少は個人差があるでしょうが、寝ることが出来ますし、ね。

高機動車に比べますと、軽装甲機動車は整備に重量が大きいぶん負担がりますし、車両数が二倍となりますので少なくとも隊や交換などの負担も二倍、さらには燃費も重量が装甲により増大した分大きくなり、燃料補給の負担も大きい、と。もちろん、装甲の重要性は理解している場合でも、演習では装甲の重要性が反映されにくい点もありますが。

そこで本土普通科部隊の方に率直により大型の96式装輪装甲車について問うてみますと、さすがに整備負担が大きすぎるため、仮に配備されたとしても手に負えないのではないか、少なくとも現在の整備補給基盤は装甲車を前提としていない、というものでした。戦車へ随伴するにも、実感として機動打撃は戦果拡張の範疇で、長距離の機動打撃は想定できない、とのこと。

人間は経験に依拠する論理体系を構築してゆきますので、想定できないというものは、机上の論理としてわかっているつもりであっても実運用において対応可能な能力が追加付与された場合に対処することが出来なくなります、この為に技術の習慣化が求められるものなのですから。

しかし、北海道でこの点を問うてみますと、特に第7師団などは機甲師団の呼び名の通り、運動戦により相手に防衛線構築の暇を与えない、背後に回り込むには速度が重要で戦車に随伴し戦車を援護する能力、施設科部隊と一体となった打撃、などの回答で、装甲車の負担はあるものの、装甲車がなければ運動戦は非常に短距離の躍進で終わってしまうだろう、という。

戦車の運用基盤について特に考えさせられるのは、本土と北海道の重装備に関する普通科部隊のこの温度差で、現時点では本土と北海道の普通科部隊に関する温度差の話題ですが、戦車を本格的に本土から省いた場合、陸上自衛隊の北部以外の方面隊において重装備に関する大きな温度差、これが現場が実感できないことにより生じる可能性が無視できません。
北大路機関:はるな
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概ね賛成ですが、3点ほど気になっていることがあります。
1:機動運用部隊としての機甲部隊と、徒歩歩兵への火力支援としての少数の戦車運用では、戦術が異なるのでは?
おっしゃるような、本土部隊と第7師団の普通科の考え方の違いが表しているのは、これまで多数の戦車を本土に配備していても、実際には機甲部隊としての訓練はなされていなかった、つまり徒歩歩兵への火力支援程度の扱いだったということではないでしょうか?
2:本質はIFV/APCの装備=機械化歩兵の整備ではないでしょうか?もちろんそれを担保するだけの整備・補給部隊と燃料代などを(近接戦闘職種を削って)確保することがこそが、大事なのでは?
#ここまでは、はるなさんと同じ意見だと思っていますが。。。
一方で(私見ですが)、軽歩兵の出番は陸自では多いし、全兵力の機械化はリソース確保のための前線兵力の削減が大きすぎる思います。
3:そこで機甲部隊1/3 or 1/2 に集中し、残る部隊は「戦車と共同しない」ことに決めるべきでは?その意味ではるなさんのご提案の、戦車を持つ機甲部隊と、持たない部隊の1:1編成は、賛成です。
なお、何度もコメントしているように「戦車とIFV/APCで編成される機甲部隊」と「戦車を持たない部隊」の2本立てにする考え方は、冷戦期から現代まで含めて、欧米の陸軍では普通で、「全部隊にまんべんなく戦車を配る」のは、日本独特の発想と化していると理解しています。
そして「全部隊にまんべんなく戦車を配る」発想がありながら、「全歩兵部隊を機械化する」ことよりも「兵員数の維持」を優先したために、結果として、ほとんどの歩兵部隊が徒歩歩兵と化し、機甲部隊としての訓練を(装備も)受けていないのではないかと。。。
全ての部隊にまんべんなく、というご指摘ですが、本土に四個戦車大隊、という当方の記載を御読み頂ければ、必ずしも全ての旅団に戦車大隊を置く、というものではないとご理解いただけるのではないか、と
軽歩兵の重要性ですが、軽歩兵を主体とした部隊は装甲機動旅団と併せて提示しています航空機動旅団の編成がそれに近いものです、航空機動旅団は、空中機動を段列とし、航空打撃力を砲迫の補完とし、最大限部隊を軽量化する、というものです
・・・、四輪駆動軽装甲車という構想も併せて提示していますが・・・
お返事ありがとうございます。どうも、ものすごーーーーく誤解を招いたようなので、補足しておきます(苦笑)。
端的に言うと、私は過去の戦車配備を批判し、はるなさんの案に賛成している立場です。
はるなさんの案こそが、「戦車とIFV/APCで編成される機甲部隊」と「戦車を持たない部隊」の2本立てであり、あるべき姿だと思います。これまで、そして2015年現在の陸自の、「全部隊にまんべんなく戦車を配る」発想とは本質的に異なるものですよね。
次に、戦車を北海道に集中するのか、全国に分散するのかですが、私もどちらかと言えば、全国配備で良いと思います。もちろん「全部隊にまんべんなく戦車を配る」のではなく、全国5個程度の師団(管区師団?)に、「IFV/APCベースの機械化歩兵と戦車が有機的に連携する本当の機甲部隊」を1セットずつ配置する、というものです。
ちなみに新しい陸自のPVを見る限りでは、九州にも戦車は残るようなので、問題は本州+四国の3個"管区師団"(現状の方面隊=東北、東部、中部に対応)に、戦車大隊を有する旅団を配備するか否かだと思います。
まあ30両(14*2+2)大隊なら90両。40両(13*3+1)大隊なら120両。MCV 200両を装備するのが本気であれば、これを廃止すれば、十分捻出できる。
#単体でのコストは、MCVが戦車の半分で済むとは思えんし、105mm砲の維持、MCVの機械・電気周りの維持費、そして独立した訓練費が「完全になくなる」ことを含めれば、戦車120両に、さらにトレーラー60両をつけても、MCV200両より安価で済むかと。
#むしろMCVは、次世代IFV+重APCのベースシャーシとして使ってほしい。MAV (Mitsubishi Armoured Vihicle)の概念。装輪APCの軽い方の体系は、軽装甲なんちゃらシリーズで、それこそはるなさんのおっしゃる4輪装甲車でよいかと。。。