北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第十八回):航空防衛力、島嶼部等暫定分屯基地展開

2015-10-19 22:11:33 | 防衛・安全保障
■島嶼部等暫定分屯基地展開
航空防衛力に関して、防衛力の集中と分散配置をここまで提示してきました。

全国の要撃に当たる航空団を一旦航空隊に縮小し、その航空隊数個を以て少数の大型航空団を創設する、という試案、航空団は78機の戦闘機を3個航空隊へ配置します。この案を進めますと、北部航空方面隊と中部航空方面隊に西部航空方面隊及び南西方面航空混成団へ配置した場合、所要の戦闘機数は312機、となります。航空自衛隊の戦闘機数が330機となりますので、なんとかなりそう、と錯覚するところですが、在場予備機と技術実験所要の航空機が必要となりますので、実際は330機のもとでは不可能ではあります。

ただ、那覇基地の第83航空隊を第9航空団に改編する際、当面現在の一個飛行隊20機の定数を二個飛行隊基幹とした場合、編制完結に関して必要となる戦闘機は274機、一個飛行隊定数を26機の2個航空隊基幹とした場合では3個航空団と併せ所要は286機となります。現在の防衛大綱における戦闘機定数は280機ですので、274機か286機ならば、一応約280機、として対応出来るやもしれません。

防空の維持と制空戦勝利の要素は如何に早く空港を応急基地化出来るかにかかっています、南西諸島の空港としては那覇空港、粟国空港、伊江島空港、久米島空港、慶良間空港、北大東空港、南大東空港、宮古空港、下地島空港、多良間空港、新石垣空港、波照間空港、与那国空港、種子島空港、屋久島空港、奄美空港、喜界空港、徳之島空港、沖永良部空港、与論空港、薩摩硫黄島飛行場、21か所に上る。基地として確保する事は同時に相手が占領し敵の基地として使用させないという意味でも重要性があり、またこれら空港は非戦闘員疎開の交通拠点でもあり、防御する必要があります。

地方空港への緊急展開に際しては、まず初動に必要な、具体的には着陸した戦闘機を再整備させ数回分の戦闘空中哨戒に必要な燃料コンテナと最低1回分の再武装に必要な弾薬、航空管制を早期警戒管制機などに依存し最小限の陸上通信機材、可搬式通信装置、空港事務所や近隣自治体との連絡用小型車両、初動警備用の最小限の機関銃と要員、C-130H輸送機3機に搭載可能とし、その後、増強する方式を採れば迅速に展開可能です。

一方、整備車両や通信車両に起重機や施設機材と牽引機材等車両は、従来の飛行場において運用するものとは別に、航空団規模で空輸に適した軽量な車両を開発し配備する事も重要で、緊急展開するのだ、という認識を、整備機材まで含めて大規模な部隊を遠隔地に展開させる支援装備体系へ昇華させ、併せて航空団に緊急展開用人員の部隊を配置する必要があります。

もちろん、輸送任務は統合任務部隊として陸海く協同で行う他、武力攻撃事態法による指定協力企業の貨物輸送機や民間フェリーによる展開、可能であれば南西諸島を念頭とする場合、本州と北海道の部隊を沖縄本島の米軍基地まで、米軍による輸送支援を要請する、という選択肢も考えなければなりません。

靭強な防空戦闘を展開するには、まず基点となる航空基地を一つでも多く確保し、一カ所に集まる事の弊害、滑走路破壊による基地機能麻痺の損失を防ぐと共に、南西諸島を舞台とする場合には各飛行場に攻撃側が飽和攻撃を試みる場合でも、逆に飛行場適地を多数配置する事で相手に充分な攻撃を行わせない、という抑止機能を発揮させることが可能で、この他、ペトリオットミサイル部隊の展開による防空拠点、海将自衛隊哨戒機部隊、これは固定翼とヘリコプターともにですが臨時着陸と給油の拠点として、活用できるでしょう。

他方、一時退避先の飛行場として即座に発着する飛行場施設、数回の理発着を想定する臨時分屯基地としての飛行場、分屯基地として主要基地が機能を回復するまでの間に運用する飛行場施設とを明確に分けなければなりません、何故ならば、即座に完全な分屯基地機能を発揮させることは理想的であったとしても現実的には不可能なので、まず段階的に必要な要素を追加してゆく柔軟性が重要な位置を占めるでしょう。

これは同時に、地方空港として21か所の飛行場と滑走路、この中で那覇空港は自衛隊設備がありますが、これ以外の飛行場は絶対に敵空挺部隊及び水陸両用特殊戦部隊による破壊と占領から防護しなければなりません、これら飛行場は我が国防衛の重要な資産であると共に侵攻側としても遠隔地での制空戦には空中給油機等の支援が絶対必要であり、それよりも我が国の飛行場を奪取する選択肢は当然考えられます。

そして利用できないならば破壊、という相手の選択肢も封じなければなりません。この為には空挺部隊か空中機動部隊による陣地展開と空港防護体制が必要となります、小隊規模であっても軽装甲機動車等を予め展開しておくことである程度までは抑止できるでしょう、しかし航空自衛隊へ空挺連隊を編成し那覇ヘリコプター空輸隊等により空輸する、という選択肢は現実的では無い為、那覇の第15旅団の空中機動能力と普通科部隊強化により達成する事が現実的です。

北大路機関:はるな くらま
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1 コメント

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Unknown (ドナルド)
2015-10-20 01:20:41
はるなさま

まず、興味にまかせて滑走路の長さを調べてみました。(ただし、日本の基準では滑走路の前後にスペースが必要なため、実際の滑走路はこの数字よりもちょっと長い)

<沖縄県で1500m以上の滑走路=10こ>
那覇空港、3000x45 *自衛隊既存
伊江島空港、1500x45 1
久米島空港、2000x45 2
北大東空港、1500x45 *200kmほど東方
南大東空港、1500x45 *200kmほど東方
宮古空港、2000x45 *警備隊配備検討中
下地島空港、3000x60 *宮古島と近接
多良間空港、1500x45 3
新石垣空港、2000x45 *警備隊配備検討中
与那国空港、2000x45 *警備隊配備進行中

粟国空港、800x25:慶良間空港、800x25:波照間空港、800x25:

<鹿児島県南西諸島部で1500m以上の滑走路=5こ>
種子島空港、2000x45 *九州に近い
屋久島空港、1500x45 *九州に近い
奄美空港、2000x45 *警備隊配備計画進行中
徳之島空港、2000x45 4

喜界空港、1200x30:沖永良部空港、1,350×45:与論空港、1200x30:薩摩硫黄島飛行場、600x25

まず、空港の警備という視点で言えば、上記のように1500m以上の滑走路を持つ空港15このうち、無防備でかつ対策の検討がなされていないのは、4箇所ですね。この対策をどうするか。

一方で、那覇以外に自衛隊が配備されうる箇所が、宮古+下地、石垣、与那国、奄美の4箇所5空港なので、まずはこれらの空港、あるいは陸自基地に、空自の支援部隊展開の「事前備蓄」を置く手もあります。

航空機整備機材で特に重いものや、滑走路補修装備を備蓄できれば、C130やC2で展開するのがかなり楽になりますよね?
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