goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

東日本大震災 特殊作戦群投入は真剣に検討されるべきだったか

2011-03-30 23:58:41 | 防災・災害派遣

◆平時と有事、政府の切替は完全に失敗

未曽有の大災害、後知恵は失礼ではあるのですが、一つ思ったのは震災当初、交通難所に対しては特殊作戦群を迅速に投入する必要があったのかな、と今になって気付きました。

Img_9505  特殊作戦群、中央即応集団隷下の特殊戦専門部隊で、人員は300名、詳しいことは一切公開されていない部隊なのですが、米軍統合特殊戦司令部の置かれているフォートフラッグに要員を派遣し、グリーンベレーやデルタを模範として要員教育を行い部隊を編成したとのことですから、グリーンベレー並に長期間の医療教育を実施している、と考えます。

Img_5867  特殊部隊は独立した作戦を行いますので医療は自前で遂行する必要があり、浸透作戦では住民協力を得るための現地医療支援等を実施する観点から医療特技課程で55週間程度の教育を米軍では実施しています。空挺降下による浸透作戦の訓練を行っている特殊作戦群でしたら、孤立地域へ空挺降下し、携行する最小限の医療器具で最大限の医療支援が行えたのでは、と。これは孤立地域による病院機能麻痺により犠牲者が少なからず出ていた事を聞くとどうしても考えてしまいました。もっとも口述しますが現行法では不可能なので政令が必要ですが。

Img_9490  情報が不十分な状況で空挺降下を行う事はリスクが非常に大きいことは認識しています。しかし地震発生後から東北方面航空隊を筆頭に症状収集を続けている訳でして、津波により道路が完全に寸断された地域、そして交通手段である船舶を破壊され長期間孤立する離島等の地域には1戦闘小隊の十数名を派遣するだけでも、もっと助かった人命入るのではないか、これを痛感します。

Img_9610  特殊作戦群の隊員であれば、空挺降下誘導の教育を行っている可能性も高く、空中からの物資落下傘投下を指揮することが可能ですし、何よりも孤立地域の情報収集、通信の確立、必要な支援を極めて短期間で構築することが出来たでしょう。情報収集については導入計画があったRQ-4無人偵察機が配備されていれば、とか思ったりも、あれは広範囲情報を瞬時に収集できますし。また映像伝送にはUH-1では無くAH-64Dが充分な数を配備している事が出来れば、ミリ波レーダーであるロングボウレーダーが非常に夜間における情報把握に役立ったでしょう。

Img_7403_1  特にAH-64D,対戦車ヘリコプターではなく戦闘ヘリコプターと呼ばれている名称からも分かるように米軍が1990年代から2000年代までに大きく進めた情報優位に依拠した共同交戦能力付与の為の装備。したがって通信搬送や通信中継にも寄与するヘリコプターですし、高性能なロングボウレーダーの能力を最大限発揮するには最も適した装備。

Img_0438  AH-64D,五個の方面航空隊にそれぞれ一個飛行隊12機、中央即応集団に一個飛行隊12機、航空学校に6機、それだけで78機も必要になってしまいますが、あのレーダーならば地形被害情報なども全天候で把握できた。どこにどれだけの被害があり、孤立状況があるのか、UH-1よりは遥かに早く情報認識できた。機体はかなり高価であることは否めないのですが、現用の対戦車ヘリコプターAH-1Sは一個飛行隊定数が16機だったので96機取得されています、こういう地震災害があるのならば、本当にもっと揃えていればよかった。

Img_9408  しかしそれにしても有事と平時の切り替えが出来ていれば、という政府の危機管理能力があってはじめての話。武力攻撃事態法を適用でもしていればこういう手続きも迅速なのでしょうけれども、今回はそういう話さえ出なかった模様。というのも特殊作戦群の隊員が野戦衛生特技課程を出ていたとしても、医事法では野戦病院の開設の問題があり、それだけではなく医師免許を持っていないのであれば能力があっても医療行為には制約が掛かります。

Img_6017  この制約は平時のものであるので有事には緩和する、というような政令を一つ出せば問題は無いのですが、海外からの緊急人道援助隊医療チーム、日本の医師免許を持っていないという事で地震発生から最初の一週間は活動を政府が認めなかったとのこと、これでは駄目です。またAH-64Dにしても通信搬送等必要な情報収集を行うにも電波法の帯域制限がありますので、これを有事という事で情報収集に必要な72時間程度を緊急に緩和する政令を出さなければ何ともならない。

Img_9344  戦後最大の国難、と菅総理は震災当日の記者会見で表明していたのですが、表明している割には行動と一致していなかった。戦後最大の国難には平時にない手法で対処することが必要でしょうに、平時と有事の区分と切り替えは前述の通り海外からの援助隊受け入れの時点で失敗していますので、政府がしっかりしていなければ資材も活用できない、という事になってしまうのかも。それにしても、今回の震災、特殊作戦群、投入していれば孤立地域で助かった人命は多かったように、思ってしまうのです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 福島第一原発(東北地方太平洋... | トップ | 東北地方太平洋沖地震に対す... »
最新の画像もっと見る

10 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
残念ながら無能な現在の政府では、大災害を含む有... (軍事オタク)
2011-04-01 16:50:18
残念ながら無能な現在の政府では、大災害を含む有事に、まともな対応は無理でした。

前もって災害を含む有事を想定し、理想的な大災害や有事想定した有事立法の成立を含めた、自衛隊出身者を中心にした緊急事態庁等の創設等、
自衛隊等が一番動きやすい体制を即座にとれるよう、演習も含めて国全体で準備しておくべきでしょう。

30万人以上の予備自衛官やその機材の準備(武器・車両等の装備も含む)、大型空母3隻、2万トン以上の輸送艦を12隻、小型輸送艦50隻、補給艦8隻、大型病院船3隻、C-2輸送機 60機 C-17輸送機 10機 空中給油兼輸送機15機 オスプレーを含む大型ヘリを追加で50機(木更津では大きな津波は防御できないので、火山噴火の影響が少なく、津波も来ないような場所に) 消防飛行艇 15機 各種無人機多数 このくらいは揃えないと日本に起こりうる大災害には対応できないんじゃないんですかね。

公務員や教員になるためには、自衛隊で2年間の課程を義務付けて、終了したものだけに、採用試験を行なうようにしましょう、公務員や教員になれなかった人も含めて、予備自衛官として、登録してもらいましょう。

教育期間3ヶ月で、うだつのあがらない若者が見違えるように変貌する自衛隊教育を有効に使わない手はない。

国家斉唱しない先生や、やわな先生がいなくなり、大幅に教育水準が上がります。
公務員も、ボケた公務員がいなくなり、規律や、根性がついて、いざ鎌倉いざ災害・有事にも機敏に対応できます。民間にも自衛隊経験者が大幅に増え、腹の据わった、国を支える男や女性が増える。

震災でいろんなものを失ったが、この際、仕組みから変え、日本を良き伝統や文化に裏づけされた、ゆるぎない国にするよう、自衛隊を大いに利用すべきでしょう。
返信する
事オタク  様 こんにちは (はるな)
2011-04-06 12:49:15
事オタク  様 こんにちは

緊急事態庁ですが、しかし自衛官OBだけで創設してしまうと、有事の際に肝心の自衛官が招集されてしまって、機能不随になってしまうようにも。

予備自衛官制度ですが、雇用体系の中に制度として定着していませんからね・・・、常備自衛官の増勢を真剣に検討する必要があるようにも。

教員ですが、教職課程の学生を見ていますと、とても自衛官と兼任で出来るほどの時間はありません。むしろ、一定期間、民間の新卒年齢制限を考えると二年くらいでしょうか、自衛官に任官した人を対象に学費全額を給付式奨学金で賄えるような、これはアメリカの州兵制度と同じ方式なのですが、あり得るのかな、と。
返信する
 はじめまして。 (ポポイ)
2011-04-07 15:57:54
 はじめまして。
 色々と参考にさせて頂いております。

 現政権を、後知恵で「無能」「無能」と言う人は、大概、長年政権に居座った前政権のことは、およそ批判しようとしないのは何故なんだぜ?
返信する
ポポイ 様 はじめまして (はるな)
2011-04-10 11:04:26
ポポイ 様 はじめまして

自民党が民主党ほど批判されないのは、ガブリエルアーモンドの”政治システム発展的アプローチ”を念頭に考えるとわかりやすくなります。

政治システムという概念は支持者からの要求と支持が政治システムというブラックボックスを通じて
政策として出力する循環の中枢を担う概念、これをデイビットイーストンが”途上国地域の政治”として分析した理論をさらにガブリエルアーモンドが進めたものです。

政治への要求として財政支出や公共サービス、行動規制や政治参加というものが出され、対して政治には支持として物理的や法規制服従、政治参加などが行われ、これらの利益と支持の調整を政治システムが行い、具体的政策として出力される、そして出力が支持へ還元する、と論理発展させたのがアーモンドの理論です。

自民党政治を見ますと、要求と支持がうまく反映されていたので、選挙により支持を得られていたのですよね。ただし、支持層が硬直化していた、これが徐々に支持を失っていた背景にあります。

ところが、民主党政治の場合はアーモンドのモデルを見ますと、要求の部分ではマニフェストで初期の段階に大雑把なものしか要求を集めていませんでした、そしてマニフェストの内容を出力として支持につなげるように実現させることができなかったのですよね、実行すればマニフェスト以外の支持者を失うような部分から財源をねん出する必要が生じる、だからこそできなかった。

また、知識集約方法論で初歩的なつまずきがあり、意見を集約することができなくなっており、結果的に政策決定権のない閣僚や党役員があたかも政策決定のような発言を個々人で行ってしまい、これが出力として支持を一時的に集めるのですが、実際に出力されないので支持層が乖離してしまう、結果支持層が暫減して、無能無能、という非支持層が支持層を上回ることになっているのだと思います。

この点、マニフェスト画定に必要な要求の集約と政策決定への知識集約体系の一本化、これを行わない限り、自民党の公約を上回ることはできないのではないでしょうか。
返信する
>現政権「無能」論 (専ら読む側)
2011-04-12 21:09:31
>現政権「無能」論
稽古の場でしか名演技の出来無かった劇団への
当然の評価と呼ぶ他無いと判断
返信する
自衛隊法では災害派遣時に空挺降下は許可されてい... (けい)
2011-04-26 22:08:56
自衛隊法では災害派遣時に空挺降下は許可されていないのでできませんよ。
できないから仙台空港の復旧の際、米軍に頼んでるんです。
返信する
専ら読む側 様 どうもです (はるな)
2011-04-30 10:27:15
専ら読む側 様 どうもです

政権交代後の実績、というとどうしてもそうなりますね。
返信する
けい 様 こんにちは (はるな)
2011-04-30 10:29:59
けい 様 こんにちは

災害派遣における空挺降下の禁止って、何か自衛隊砲や災害対策基本法で明示、ありましたっけ・・・、当方、ちょっと記憶にないのですが、ご教授いただけると幸いです。

あと、仙台空港ですが、日米共同作業だったということと、重車両は空挺降下ではなくC-17でそのまま滑走路に運んでいたように記憶するのですが、ローダーやドーザー等、落下傘で落としていたのでしょうか、関心事なので御存知でしたらお教え頂けると嬉しいです。
返信する
完全な素人の考え ()
2014-03-01 16:14:58
完全な素人の考え


返信する
医師法上の問題はありますが、空路進入能力と野戦... (はるな)
2014-03-04 12:22:45
医師法上の問題はありますが、空路進入能力と野戦医療訓練を受けている特殊部隊は投入を検討して然るべきであったと今でも考えています
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防災・災害派遣」カテゴリの最新記事