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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ノルウェーP-8A導入とスペイン初建造イザークペルル,イギリスアンソン進水

2021-07-12 20:11:04 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回は海軍関係の話題を中心に、特に潜水艦や哨戒機に重点を置いて。もう少し日本はP-1哨戒機や潜水艦の輸出を頑張ってほしい。

 ノルウェー軍が導入するボーイングP-8Aポセイドン哨戒機の初号機がアメリカのボーイング社工場において組立を開始した、ボーイング社が4月13日に発表しました。初号機は2021年後半にも納入される計画です。ノルウェー軍は2017年3月にP-8A哨戒機の導入を決定しており、5機のP-8A哨戒機を17億5000万ドルで取得することとしています。

 P-8Aポセイドン哨戒機の17億5000万ドルに上る契約には、搭載するAN/APY-10レーダーや機体用予備エンジン、戦術システムソフトウェア費用等が含まれており、今回ボーイング社が組立を開始したのは、その中枢部分にあたる胴体部分です。組立はカンザス州ウィチタの工場で行われ、ここにはボーイング737各種の組立ラインなどが置かれています。

 ノルウェー軍には現在、P-3C哨戒機6機とDA-20ファルコン海洋哨戒機3機が配備されており、5機のP-8A哨戒機はこれら9機を置換えることとなるもよう。ボーイング社は現在19機のP-8A哨戒機を製造しており、10機がアメリカ海軍向け、4機がイギリス軍向け、そして5機がノルウェー軍向けといい、機体そのものは24億6000万ドルとのことでした。
■ノルウェーが212型6隻発注
 日本の潜水艦を売り込みたいところですが。

 ドイツ海軍とノルウェー海軍は3月22日に212型潜水艦改良型6隻をティッセンクルップ社へ発注しました。ティッセンクルップ社の212型潜水艦はAIP非待機依存型潜水艦として燃料電池を搭載する世界初の潜水艦として建造されましたが、今回建造されるものは最新型で212CD型潜水艦といい、これはドイツとノルウェーの共通設計型となっています。

 212CD型潜水艦はディーゼル発電機とバッテリーに加え燃料電池を搭載する事で水中航行時間は三週間に達するといい、スターリング機関ほど高温となりません。ノルウェー海軍は4隻を、ドイツ海軍は2隻導入します。建造は今後開始され、ノルウェー海軍への竣工が2029年から、ドイツ海軍は一番艦を2031年と二番艦が2034年竣工となる計画です。

 ティッセンクルップ社は今回、6隻というまとまった発注を受け、キールにある造船施設の一部を拡張しており、また整備施設はノルウェーにも建設される為、ドイツとノルウェーの防衛協力強化にも寄与する事となります。なお、交渉は難航していたため、導入は決定しましたがドイツ政府は予算がまだ連邦議会で確定しておらず、今後の展開を見守りたい。
■原子力潜水艦ペルルの修理
 火災被害と云うと護衛艦しらね火災事故を思い出しますがフランスのペルルは被害が大き過ぎた。

 フランス海軍は2020年大規模火災により前半分を全損した原子力潜水艦ペルルの修理を進めています。ペルルは船殻部分が骨組みだけとなる重大な火災被害に見舞われましたが原子炉への火災延焼による最悪の事態は食い止められました。ペルルは貴重なリュビ級攻撃型原潜の一隻であり、フランス海軍は攻撃型原潜の部隊規模維持へ修理を決定しました。

 ペルル修理は既に除籍された同じリュビ級攻撃型原潜のサフィール船体前部を切り離してペルルに装着するという、潜水艦では前例のない修理が実施されますが、2021年4月にペルルの切り離し工事とサフィールの切り離し工事が完了し、いよいよ接合作業へ入ります。この改修では全長が1.4m延伸する事となり、改リュビ級、という様相となるのでしょう。

 リュビ級攻撃型原潜はフランス海軍初の攻撃型原潜となっており、水中排水量2670tと自衛隊の潜水艦はるしお型よりも小さく極めて小型である事でも知られます、これはフランス海軍がドゴール政権時代、1960年代より戦略ミサイル原潜を重視しており攻撃型潜水艦は通常動力潜水艦に妥協した為で、後継となるシュフラン級原潜はまだ計画中の段階です。
■新潜水艦S-81イザークペルル
 新潜水艦S-81イザークペルルというとフランスのペルルを思い出しますがこちらは別の潜水艦で国産第一号となる、建造は大変そうだが頑張ってほしい。

 スペイン海軍が建造を進める新潜水艦S-81イザークペルルがスペイン防衛企業ナバンティア社において間もなく進水式を迎えます。イザークペルルは陸上の造船施設により建造され、施設からレールを通じて造船所のドックで進水式へ臨むという。スペインが建造する初の国産潜水艦であり、フランスなど建造技術支援を受け潜水艦国産化に臨んでいます。

 イザークペルルは全長80.0mで水中排水量3000t、通常動力推進方式、スペイン国産潜水艦用戦闘情報処理システムを搭載すると共に推進動力にはAIP動力方式を採用していますが、建造中に船体重量に関する深刻な問題が生じ、浮力強化への船体延長工事を実施するという問題が生じ、建造が遅延しています。ナバンティア社は空母建造等で知られている。
■シーガル無人艇自律目標認識
 将来の機雷掃討任務を筆頭に無人艇というものが徐々に海軍の重要な要素となっていくのね。

 イスラエルのエルビットシステムズ社はシーガル無人哨戒艇に新型の自律目標認識機能を追加したとのこと。シーガル無人哨戒艇はプレジャーボート規模の港湾哨戒艇を無人化し、全周監視装置とRWS遠隔操作銃搭を搭載したもので、自律航行はCOLREG1972年制定国際海上予防規則に適合する高度な回避能力を有し、管制を受けず運用が可能という。

 シーガルに搭載された自律目標認識機能は、遠隔操作を受けずとも任務対応が可能とするものだ。シーガルはイスラエル海軍に2017年、竣工しており、現在武装はRWSの機銃のみだが港湾警備やデータリンク中継と云った任務に加え、機雷掃討や部分的に対潜作戦などにも対応するという。エルビットシステムズ社はシーガルを各国海軍へ提案している。
■第五世代型トマホークミサイル
 トマホークというと自衛隊装備に必要だという意見がたびたび出るものですが順次改良は続く。

 アメリカ海軍は3月25日、レイセオン社より第五世代型トマホーク巡航ミサイルであるトマホークblock5の受領を開始しました。これはトマホーク兵器システムプログラムPMA-280計画として進められているもので、アメリカ海軍に実に40年間に渡り運用されているトマホークミサイルの段階近代化を継続しており、トマホークblock5のその一環だ。

 トマホークblock5はNAV/COMM性能が向上しており、飛行中に目標情報の後進を得られるとともに弾頭部分はステルス性を配慮した形状となっています。現在配備されているトマホークBlock4は順次このblock5に改修される計画で、これはアーカンソー州のレイセオン社カムデン工場にて実施され、改修によりトマホークは15年間寿命が延伸します。
■ボノムリシャール除籍行事
 強襲揚陸艦ボノムリシャール除籍行事は原因が火災による早期除籍というそれはもう寂しものです。

 アメリカ海軍は4月14日、火災事故に見舞われた強襲揚陸艦ボノムリシャール除籍行事を実施しました。ボノムリシャールはワスプ級強襲揚陸艦5番艦であり、日本へも前方展開した事で知られます。しかし、2020年7月12日に改修工事を終えた直後のサンディエゴ基地で火災に見舞われ三日間に渡り延焼、修理不能と判断され除籍が決定しました。

 ボノムリシャールはアメリカ海軍草創期のジョンポールジョーンズ提督が乗艦した帆船フリゲイトに由来するもので、これは米英緊張下において友好関係に在ったフランスが駐仏大使であった後の大統領、ベンジャミンフランクリン大使の愛称、グッドマンリチャードをフランス語としたもので、アメリカ海軍では3番目のボノムリシャールの艦名でした。

 ワスプ級強襲揚陸艦はF-35B戦闘機運用能力を有する重要な全通飛行甲板型艦艇ですが、開催事故からの復旧には電装品全損等から修理に7年と32億ドルの費用を要する事となり、新造した方が経済的という配慮があります。しかし、代替艦の建造にも時間を要する為、今後アメリカ級強襲揚陸艦の建造の進むまでの5年間、艦隊運用に影響が生じましょう。
■CSCにシーセプターミサイル
 現在のカナダ海軍艦艇を置換えるCSC将来水上戦闘艦艇に関する最新情報です。

 カナダ海軍は建造するCSC将来水上戦闘艦艇の短距離防空ミサイルとしてイギリスが開発したシーセプターミサイルを搭載する事となりました。CSC将来水上戦闘艦艇は15隻が建造される将来のカナダ標準戦闘艦、ミサイルはCMS-330戦闘情報処理システムにより運用され、CSCがスタンダードSM-2ミサイル等を搭載するMk41-ExLSに収容されます。

 シーセプターミサイルはイギリス海軍が23型フリゲイト等に搭載するシーウルフミサイルの後継として開発され、SVL射撃方式というピストンによりVLSより射出後に点火する方式を採用、アクティヴレーダー誘導方式を採用し中間指令誘導方式のミサイルは射程が25kmに達するというもので、小型でシーウルフ用VLS一基に4発搭載する事が可能です。
■アスチュート級五番艦アンソン
 イギリス海軍の建造方式と命名式は日本と大分違うようですが艦名に伝統名称を冠するところは同じなのですね。

 イギリス海軍が導入するアスチュート級攻撃型原潜五番艦アンソンが進水式を迎えました。アンソンはカンブリア州のBAEシステムズ社バローインファーネスサイトにあるデボンシャードックホール造船所において建造が進められ、昨年12月に命名式を挙行しています。イギリスでは進水式の前に命名式を行う模様、2022年より公試を開始する計画です。

 アスチュート級攻撃型原潜は一番艦アスチュートが2010年に竣工した最新鋭の攻撃型原潜で、順次前型のトラファルガー級攻撃型原潜を置換える事となっています。水中排水量は7800tで全長97m、ロールスロイスPW-2原子炉を搭載しており、設計に全面的なデジタル化を行った世界初の潜水艦であり、また世界で最も静かな原子力潜水艦とされています。

 アンソンの先代は第二次世界大戦中に活躍したキングジョージ五世級戦艦四番艦で七年戦争で活躍し海軍大臣を務めたジョージアンソン提督の名を冠しています。戦艦アンソンは戦艦武蔵と同じ1942年に竣工、ドイツ戦艦テルピッツ攻撃に当るタングステン作戦やイタリア侵攻ハスキー作戦に参加、戦後はイギリス太平洋艦隊第1戦艦戦隊旗艦を務めました。
■マーシーへV-22可動翼機発着
 日本も病院船とまでは行かずともヘリコプター搭載護衛艦の医療支援機能を拡充するなどの施策は欲しい。

 アメリカ海軍は病院船マーシーへのV-22可動翼機発着試験を実施しました。マーシーはマーシー級病院船の一番艦でタンカーを改造した巨大な病院船には最大4000名の負傷者を収容可能ですが、船体が大きく洋上でも安定していることから船体後部に飛行甲板を有しており、これまで航空機による患者搬送はUH-60系統のヘリコプターを運用しています。

 病院船マーシーは七ヶ月艦に及ぶ定期整備を実施した際、航空機運用能力を強化しており、これによりV-22系統の航空機と新型のMH-60系統の航空機発着能力を有することとなりました。海軍支援船に所属する艦船へV-22が発着したのは今回が初ですが、航続距離が大きなV-22の運用は海軍病院船の能力を大きく冗長性を付与することともなるでしょう。

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P8Aについて (まつ)
2021-07-14 08:58:11
アメリカ製対潜哨戒機ではあるが日本との共同製造である 搭載電子機器は多数が日本製である 機体価格の半分が日本の輸出価格となってること忘れてはいけない。737はヨーロッパでも多数運用されており整備基盤があるためP1より採用されるは当然である。
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