goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

JAS39Dグリペン:松島基地第四航空団F-2B補填に関するPBL方式運用基盤案

2011-10-26 23:50:01 | 防衛・安全保障

◆JAS-39高等練習機による戦闘機操縦課程の提案

 本日はコメント返事を90も作成しましたので記事は少しこれに関連したもので作成。戦闘機戦闘訓練という呼称を多用しましたが、正しくは戦闘機操縦課程でした。

Img_2129 松島基地第四航空団、津波によりF-2B支援戦闘機が打撃を受けましたが、このF-2B支援戦闘機には練習機からF-2支援戦闘機への機種転換訓練を受ける任務とともに、戦闘機の操縦とはどういうものかを実際に戦闘機という機体を操縦し、操作し、そして運用することで学ぶ戦闘機操縦課程に用いられている機体でした。

Img_4537
 航空自衛隊ではT-4練習機により戦闘k操縦基礎課程を経て、そののちに戦闘機操縦課程を実施、続いてF-2の要員要請は重ねてこの第四航空団で、F-4k種転換操縦課程は新田原基地の実戦部隊で、F-15機種転換操縦課程は同じく新田原基地にあり元実戦部隊である第202飛行隊が教育部隊として改編された第23飛行隊により実施されてきました。

Img_0400 このように、機種転換だけであれば、F-2飛行隊もF-4飛行隊のように実戦部隊により訓練を行うことは可能ですし、2000年まではF-15飛行隊も実戦部隊により機種転換訓練を行ってきました。F-2は三沢基地に二個飛行隊、築城基地に一個飛行隊という実戦部隊を有していますから、今回の津波による損耗から再生可能な六機を二機づつ各飛行隊に充当するか、築城基地に集中配備して飛行隊を強化しつつ機種転換飛行隊とすることも考えられるでしょう。

Img_9151 さしあたって、現状では戦闘機操縦要員を養成する戦闘機操縦課程をどのように継続するのか、ということが重要な問題となってきます。かつてはT-2高等練習機が担ってきた分野で、この高等練習機が中等練習機と全て区分を事実上統合してT-4に充当したため、戦闘機を運用する練習飛行隊が機種転換任務以外に必要になった訳ですので、何かは必要です。

Img_2637 そこで考えるのはF-2Bの戦闘機操縦課程を代替するためにサーブJAS39D複座戦闘機を導入する、という提案です。JAS39は輸出について、日本にユーロファイターを次期戦闘機として売り込んでいたBAEが担当しており、練習機としてJAS39を見た場合、かつてイギリス空軍はテストパイロット養成用に導入していますので事例として皆無ではありません。

Img_1167 戦闘機としてみた場合、航空自衛隊は北欧から北アフリカまでに匹敵する広大な日本の空域を七か所の基地を以て特にロシアと中国からの対領空侵犯措置任務に充てるため、広大な空域に用いる強力なレーダーと長大な航続距離を有する大型の戦闘機に在って運動性能の高い機体を必要としています。

Img_0_383従って次期戦闘機としてのグリペンの価値は、燃料が2.2tしか搭載できず、戦闘行動半径が非常に小さいことから戦闘機基地を抜本的に増大させ定数も倍増させる以外に採用の余地はなく、航空自衛隊の運用と乖離しています。他方で、練習機、特に練習に用いる戦闘機としてみた場合、現用戦闘機の中では破格の安さをなっている点を挙げましょう。

Img_0948 航空自衛隊は来年度予算に次期戦闘機4機を551億円で要求しています。これに初度調達部品と訓練費用を含めればかなり大きくなります。そして松島基地で損傷したF-2Bの修理費用が6機で800億円程度。この800億円は補正予算により捻出されることとなっています。

Img_65_92 しかし、グリペンの場合は直近の導入事例で2011年2月にタイ空軍へ配備が開始されているのですが、初度調達品と訓練費用を含め12機で邦貨換算1100億円という数字が出されています。機体価格もさることながら、初度調達品取得費用と運用維持費が非常に安価であることがグリペンの最大の特色とされているのです。

Img_9328 そしてもう一つの特色が少数運用適合性。元々、永世中立国スウェーデンが少数分散運用による国土要塞化を念頭に開発した機体ですので、少数でも必要な整備総量が少ないのです。このため、採用実績もスウェーデン空軍の160を別とすれば南アフリカに28機、チェコが24機、タイに12機、そしてハンガリーに貸与14機、販売側としては大量に売りたいでしょうが、取得側としては少数機でも一定の稼働率を維持できるのは大きな魅力といえるかもしれません。

Img_2262 ただし、機種が増大すれば、その分、運用基盤構築に伴う予算と整備運用の複雑化が問題となるのではないか、こういう指摘があるでしょう。事実、機種が増大すれば、その分運用を継続させねばならないため、補給処の備蓄一つをとっても大変な増大となります。特にグリペンは類似機種を航空自衛隊は有していませんので全く新しい運用基盤が必要になるでしょう。

Img_4141 そこで注目したいのが防衛省が来年度から要人輸送ヘリコプターにおいて導入するPBL方式、兵站能力基盤方式です。これは所謂成果主義で、外注する場合に作業量等への対価支払方式というこれまでの方式ではなく、稼働率と運用能力に応じた対価支払という運用方式を意味するものです。

Img_8249 これを戦闘機で実施した場合、特に海外企業と契約を結んだ場合には有事の際に危険が迫れば海外企業では違約金を支払った上で国外退避してしまう可能性があるので、使うことはできないのですが、練習機であれば影響は戦闘機ほどは高くありません。

Img_3_166 もちろん、戦闘機操縦課程までに共感パイロットを養成する必要がありますので、時間的な問題はあります。ただ、タイ空軍の導入事例を見れば訓練費用を含め、あの範囲内に収まっていますので、第四航空団所要として概ね24機程度を新規に取得することは厳しい財政状況に際しても全く不可能とは言い切れません。

Img_2861 特に航空自衛隊が次期戦闘機としてF/A-18Eのような複座型を派生型に有する戦闘機ではなく、単座型しか開発されていないF-35を導入するのならば、戦闘機操縦課程の重要性は一層高まります。F/A-18Eの様な機体であれば、これを第四航空団に配備するという選択肢もあるのでしょうけれどもね。

Img_22_60 また、F-4後継機にF-35を導入する場合、配備まで時間を要しますので、高い躯体く能力を有するJAS-39を練習機として運用する場合にはAMRAAMも運用できますし、一つの波及効果として一定の抑止力を発揮することが出来ます。かなり突拍子のない指摘であることは自分でも認識したうえで、JAS-39高等練習機、検討の価値はあるでしょう。もっとも、本当であれば次期戦闘機をF-4代替所要二個飛行隊に加え第四航空団所要一個飛行隊分を加算できれば、いちばんなのですけれども、ね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (20)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◆◆◆重要◆◆◆ ・・・Weblog北... | トップ | 近接航空支援:陸上自衛隊独... »
最新の画像もっと見る

20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
イギリスの事例はサーブとスウェーデン空軍の施設... (Unknown)
2011-10-27 06:32:10
イギリスの事例はサーブとスウェーデン空軍の施設にイギリスのパイロットが留学したやつのことですよね?
返信する
お疲れ様です。 ()
2011-10-27 10:03:20
お疲れ様です。
昔、分裂した日本の主力戦闘機としてグリペンが採用されるゲームがありましたが、実際に空自パイロットでもグリペンは人気の高い戦闘機のようですね。
F-2ですが、空幕としては実戦部隊での教育期間を増やしたり、米国のでF-16の訓練で一時しのぎするとしているようです。
システムや搭載機器の扱いは、地上のシュミレーターで補えますが、飛行特性はやはり実機でなければ不可能です。他方で東松島との兼ね合いから基地機能の主要部隊である21飛行隊を解体するわけにもいかない現状があります。
そうなると現実的回答としてF-16中古機の導入が現時点な気がします。
ただ、飛行教導隊のアグレッサー機として一緒に導入するのならばグリペンにも一定の評価が出来るかもしれません。
返信する
現行の機種系列とはまったく違うJAS-39は?かと。 (KGB)
2011-10-27 12:43:01
現行の機種系列とはまったく違うJAS-39は?かと。
喪失F-2Bについては、既存装備との共通性が高いF-16B中古もしくはF-4EJ後継も考えるならF-16CBlock25、32中古機をアップグレードの上取得と言う方が現実的ではないでしょうか?

日本の訓練空域の遠さや有事に作戦任務補完も考えるとJAS-39の足の短さは致命的。

余談ですが、F-15の問題で露呈しましたが日本では訓練、スクランブルも増槽を常に装着したままというのも・・・・・・・・・
本当の有事にもその状態で戦うのか?
返信する
こんにちは。 (ウルトラマン)
2011-10-27 15:21:10
こんにちは。

グリペン・・・?

1、私なりに考えるのは、F-15もF-2も対外領空侵犯実施部隊が教育を行うこととする。(F-4方式)
教官パイロットを多く配置して百里基地で運用。

2、基地は、同じ機種運用を避ける。F-15の燃料タンク落下処置で飛行停止処置がいまだに続いているのを見るとこうしなければ危ない。

3、T-4に練習機のみの機能しか与えなかったのが間違いだと思っていますが、T-4で戦闘機特有の機働を演錬するのはできるので問題ないでしょう。
(T-2でレーダー操作や音速飛行などは戦闘機部隊で習っても問題ないからT-2がなくなったのではないかなと。)

4、現在はシュミレーターが発達しているのでT-4から現状の戦闘機に移行するのはそれほど問題ではないのではないでしょうか。
スイスでは、pilatus pc-21(ターボプロップ)からF-18に移行可能であるとしていますから。なんならT-4をデジタル化してミサイルや機関砲のシュミレートできる装置を組み込むことだってできるでしょう。とにかく実戦部隊を多く持つようにしたいですね。

5、基地の組替え。
関西あたりに実戦部隊が欲しいですね。
四国あたりでもよいのですが。

返信する
>事例として皆無 (Unknown)
2011-10-28 07:40:22
>事例として皆無

戦闘機パイロットの養成じゃないんだ。

>取得側としては少数機でも一定の稼働率を維持できるのは大きな魅力といえるかもしれません。

意味不明。
本当にそうなのか?
輸入装備品の稼働率の低さは結構知られていると思ったが・・・

>厳しい財政状況に際しても全く不可能とは言い切れません。

でもF-2Bの再生決めたんだよな・・・

>戦闘機操縦課程の重要性は一層高まります。

その点は同意だな。

>AMRAAMも運用できますし、

だから、AAM-4との兼ね合いで、導入は無理だと・・・
君が財務省を説得してくれるわけじゃないでしょ??
返信する
2011-10-27 06:32 様 こんにちは (はるな)
2011-10-28 12:39:46
2011-10-27 06:32 様 こんにちは

仰る通りです。
返信する
鷲 様 こんにちは (はるな)
2011-10-28 12:45:44
鷲 様 こんにちは

あのゲーム、友人がはまっていましたが、戦闘機としてあの機種選定はないだろう、というのは当方はもちろん、その友人も認めていたところ。

ただ、中古F-16は状態の見極めが難しい部分と、運用コストが大きいのではないか、という点が少々気になります。

ご指摘の件は一時しのぎにはなるでしょうけれども、後記のとおり21飛行隊の再編は考えなければなりませんので、F-Xに35が採用されるのであれば、この辺りにも影響するのでは、と。・・・、18になれば気が楽ですよね、21飛行隊を18で再編すればいいので、ね。

返信する
KGB 様 こんにちは (はるな)
2011-10-28 12:50:08
KGB 様 こんにちは

ところで、ご指摘のF-16との互換性ですが、果たしてF-2とどの程度あるのでしょうかね・・・、いや、大昔のT-X選定なんかででた繋ぎ航空機のように、F-X選定の繋ぎとしてF-2増産不可能に対してF-16の話が全く出てこなかったものですから・・・。

戦闘機操縦課程での運用を考えていますので、維持費用を考え、特にリースでメーカー整備の支援の大きさを考えると、BAEは頑張っている、という話を聞いたことがあります。まあ、有事の際には逃げたという話もあるのですが。PBL方式と海外へのがいっちゅを合わせ、コストを考えた場合、ありだとは思うのですが・・・。
返信する
ウルトラマン 様 どうもです (はるな)
2011-10-28 12:55:39
ウルトラマン 様 どうもです

グリペンでございます。ラファールの二の舞にならないように次のF-Xに備えBAEとの関係を作っておく、という意味もあるのですが。トーネードの際にはドイツ側が売り込みを担当していたのですから、今、JAS-39でBAEと日本を繋いでおく、というものは長期的にみてマイナスにはならないはずです。

戦闘機操縦課程との関係を考えると、T-4は取得費用軽減のために削りすぎた部分があるのかな、と思う点があります。加えて、単座型しか開発されていないF-35が導入され、充分な機数確保できれば別なのですが、確保できなかった場合、T-4からいきなりF-35で、しかも数が十分ないなかシュミュレータだけで補完できるのかな、という難点も残ります。
返信する
2011-10-28 07:40 様 どうもです (はるな)
2011-10-28 13:01:47
2011-10-28 07:40 様 どうもです

グリペン、分散しての少数運用を念頭に、と聞くのですが、やはり中央のデポという必要性は多きのでしょうか、逆に何かご存知でしたらお教えいただけると嬉しいです。ただ、NATOの共通運用基盤に依存しなくてもよい、というのは大きいようにも。

F-2Bの再生ですが、ううむ、他の十二機も、もう少し何とかなれば、と思うのですがね。

AAM-4ですが、年間調達数が20~30でしたから、AMRAAMの運用基盤が無ければ、保管年限が10年としても戦闘機一機に一発あたりの備蓄しかできないようにも。いや、AAM-4の調達数を年間100発程度確保できれば、変わってくるのでしょうが、これはこれで・・・。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事