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そうりゅう型潜水艦輸出交渉 自衛隊潜水艦豪州海軍次期潜水艦選定への優位性

2016-01-28 21:44:15 | 先端軍事テクノロジー
■日本EEZは地中海の1.78倍
 自衛隊潜水艦豪州海軍次期潜水艦選定への優位性について、一部で指摘されます海上自衛隊潜水艦乗員多さと、その背景となる航続距離や行動範囲の大きさについて。

 豪州海軍次期潜水艦選定、アメリカ政府高官の発言として“海洋進出する中国への対抗上、最も性能が高い・最も相互運用性がある・日米豪の戦略的協力が加速される・日本の敗北は中国の外交、戦略的勝利を意味する”という視点から日本製潜水艦を強く推すものがあった、とのこと。欧州各国の緒方潜水艦建造経験の少なさ、過去の建造したスウェーデン設計のコリンズ級潜水艦がスウェーデンコックムス社のヴェステルイェトランド級という1100t級潜水艦を3000t級に大型化し豪州国内にて建造することで問題を生じさせたという背景を考えれば、最初から3000t級潜水艦として設計され建造と運用実績を持つ型式の強さが垣間見えます。

 この中で、日本の潜水艦は乗員が多く自動化が遅れている、との難点が一部で指摘されているようですが、今回はその背景を考えてみましょう。豪州潜水艦輸出選定で欧州潜水艦、特にドイツ艦の乗員が非常に少なく、自動化を進めている点を強調しているところから、その背景を考えてみたのですが、ドイツ潜水艦はその任務として沿岸哨戒任務に潜水艦の運用を限定しており航海期間も数日間という短期から乗員を二交代体制として運用している、というものがあるもよう、現在の212型AIP潜水艦は乗員が増えていますが、その前の206型潜水艦の乗員は23名で対応、これも二交代体制を採っていた故なのですね、対して海上自衛隊潜水艦は三交代を採っており一回の航海も数週間となります 。

 日本のEEZ面積447万 km²、日本海の面積は約103万 km²、海上自衛隊潜水艦の航続距離や航海期間の長さはこの広い海域での哨戒任務を想定している故のもの、という点が大きく強調されるのですが、日本海、天皇の浴槽と呼ばれ内海扱いの日本海も面積はかなり大きいという印象で、特にNATOの沿岸海域の面積と比較するとそれが顕著です、バルト海面積41万5300 km²、地中海面積250万km²、黒海面積43万6400 km²、と。バルト海と黒海を併せても日本海よりも狭く、流石に地中海は広いですがそれでもスペインモロッコ沖合から南欧北アフリカ全沿岸を挟み中東レバノンシリア沖まで含めて日本海の2.5倍程度、という事実には驚かされます。

 太平洋、面積16520万km²、大西洋面積10640万 km²、太平洋と大西洋の面積もこれだけ違うものでして、日本のシーレーンもやはり長い。大井篤海軍中佐が海上護衛戦、として第二次世界大戦中の日本における海上護衛司令部勤務の回顧録を記されていますが、その中で、インドネシアやシンガポールから横浜までの航路はニューヨークとイギリス本土サウザンプトンまでの航路よりも長く、この航路の船団護衛へ連合国海軍が注力する海軍力と、帝国海軍が海上護衛司令部へ配備する艦艇数の違いが余りにも大き過ぎた、と記されていました 。

 日本の排他的経済水域は地中海の1.78倍あり、シーレーンは更に長い。海上自衛隊の潜水艦の大型化も基本的にこの長大な海域を防衛する必要上、大きくならざるを得なかった、といえるでしょう、また、オーストラリア海軍が大型潜水艦を必要とする背景もオーストラリアという広大な国土の防衛を背景として必然的に大型化した、といえるものでして、逆に考えるならば欧州製潜水艦は3交代方式の潜水艦建造の経験を持つ国はイギリスとフランス、というような原子力潜水艦を建造し長期間の運用実績を持つ国やこれらの国の通常動力潜水艦を導入した国の一部、またはオランダのような比較的大型の潜水艦を建造し沿岸とともに外洋作戦を重視した国などにかぎられる、となるのかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま
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