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南沙諸島問題緊迫!中国南シナ海行動の考察【5】 我が国関与の一方策としてのインフラ整備

2016-03-24 21:47:32 | 国際・政治
■日本と東南アジアの経済関係
 オーストラリア大陸南方をタンカーは9630km迂回、この選択肢という無理と負担を日本国民が不戦に代える事は出来ないとして飲み込むならば、南沙諸島問題は日本と少なくとも石油輸送路については無関係となります。

 南沙諸島問題ですが、しかし完全に無関係とはなりません。南シナ海海域での紛争が終息すれば全勢力が東シナ海地域へ転進しますので、安全保障リスクは、沖縄県への軍事圧力増大と台湾海峡有事というかたちで第三次世界大戦への脅威が増大します。日本は必要に応じ、豪州大陸を迂回する事で石油だけは中東から輸入を継続できることを示しましたが、我が国程の経済での余裕がない諸国では死活的問題となるでしょう。

 また日本と東南アジアの経済関係という事を無視してはなりません、日本経済についても多国籍企業が経済の中枢を担う今日の国際経済について、日本と東南アジア諸国は多国間国際分業体制による製造業での国際的繋がりが深化しておりますので、東南アジア諸国と我が国との中間に位置する南シナ海が紛争により使用不能となった場合、東南アジアは世界の町工場というべき先端技術製造の集積地域であり、中国が世界の工場と呼ばれている半面、東南アジアからの製造物を集積し組み立てているという現状も無視できません。

 日本企業の製造業、その多くが東南アジアでの現地生産を行い、多国間国際分業として生産を多極化多国籍化させていますので、南シナ海封鎖となれば、東南アジアから日本まで豪州南方海域迂回、ということは事実上不可能と言わざるを得ません。東南アジア地域は致命的な痛打となりますし、日本以上に台湾への影響が大きく、日本はその損害を補てんする正当性を持たず、しかし、放置すれば対岸の火事が日本本土まで延焼します。

 対岸の火事が延焼する事をそのまま見ている事は、先の大戦の反省から非常に危険です、そこで、日本へ対応可能な施策を考えてみましょう。軍事インフラ輸出と防衛装備品供与や教育訓練支援を我が国が執り得る具体的施策として提示しましたが、現行法では、例えば安全保障法制や防衛技術移転三原則の範疇を出さずとも、防衛インフラ輸出として施設整備支援を行うならば政府開発援助ODAの範囲内でも可能となる部分が大きくなります。実際問題、結果論として軍事用途にもちいられる汎用品は、我が国の国際法では汎用品でしかありません。

 防衛インフラ輸出について、非常に突飛な案ですが、普天間飛行場施設を名護市のキャンプシュワブへ暫定施設を予定通り建設すると共に、例えばフィリピンへあくまで民間空港や既存港湾施設の改修という形で、在沖米軍の機能とグアムへ集約される米軍部隊の一部をフィリピンへ移転すべく、旧在比米軍基地のクラークフィールド基地とスービック海軍基地の再生する支援を我が国が防衛インフラに転用可能なインフラ整備として実施するならば、在沖米軍の台湾への介入能力を維持しつつ、南シナ海全域への米軍抑止力の投射が可能となるでしょう。

 もちろん、在沖米軍の抑止力を日本の域外へ展開させるという前提ですので、此処で生じる事となるだろう沖縄での軍事的空白に対し、自衛隊により補完する、何らかの施策は必要となります。着上陸阻止の体制を南西諸島に構築する場合、先島諸島に四国の第14旅団規模の部隊を置く、沖縄本島の第15旅団を北海道の第11旅団規模の部隊とする、これが不可能である場合には、日米間で海兵遠征群MEU部隊規模の部隊をアメリカ本土西海岸太平洋海兵隊よりフィリピン方面へ移転する、などの選択肢が考えられます。

 この部分については、我が国の憲法問題とも密接に関係する分野であり、東南アジア地域での緊張状態へ我が国は重大な関心を寄せつつ、しかしその危機的状況を防衛力により武力紛争発生を阻止できる体制が存在しない場合、東南アジア地域での海洋自由を国際公序とする主体に、特にアメリカがその場を抜け、しかしアメリカが海洋自由秩序の維持を希求する場合、海洋の閉鎖化を期する大陸からの勢力に対し、我が国が東南アジア諸国と協力する事が、防衛面においてどの程度まで可能なのか、議論の余地はあります。

北大路機関:はるな くらま
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