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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

カフェイン栄養剤取扱注意 ファイト!一発!陸軍航空糧食“航空元気酒”と栄養ドリンクの意外な関係

2015-12-22 21:19:10 | 防衛・安全保障
■栄養ドリンクと陸軍航空糧食
 カフェイン中毒、福岡県で一年以上仕事中の眠気払いにカフェイン飲料と錠剤を服用していた若い方がなくなる痛ましい事故がありました栄養ドリンクは便利ですが用法容量をまもらなければなりません。

 日本での栄養ドリンクの原型ですが、実は軍需品として開発されたものという事をご存知でしょうか。陸軍航空糧食として飛行兵、戦闘機や爆撃機などの搭乗員用に航空元気酒と航空葡萄酒というものが支給されていました、丁度現在の栄養ドリンク程度の小瓶に、清酒かワインに精力剤として漢方薬十数種類を添加したもので、更にブドウ糖を配合し甘味を強めた飲料です。アルコールが含有されている為、ラベル部分には空中勤務後に、つまり着陸後に服用し疲労回復に充てる事が望ましい、とされていますが、同じくラベル部分には飛行勤務時は高高度飛行での低温による氷結を考慮し、人肌で一定温度に維持できるようポケットの奥に入れるよう注意書きがありました。

 リポビタンD、1962年に発売され1999年まで医薬品として薬局でのみ販売されていまして、我が国栄養ドリンクの象徴的存在ですが、有名なテレビコマーシャルに、二人のかっこいいワカモノたちが絶壁や激流に落石等を体力で「ファイト!一発!、と乗り切ったのちに安全な場所にて、親指のみでリポビタンDの蓋を押し開け一気に服用する御馴染みの描写があります。所が面白い事に航空元気酒も栓はコルク栓ですが親指で開けて服用している飛行兵の写真などが残っていまして、瓶に入った栄養ドリンクで危機一髪を乗り越えたのちに安全なところでぐいと飲み干す描写、なかなか共通点が多いと思わせるのは私だけでしょうか。しかし、原型は航空戦での加給食、つまり、戦時の緊急用であったわけですね。

 なお、航空元気酒、というものですが、アブない成分は幸い含まれていません、心配ご無用です。アブないものと云いますと実は昔はあったのです、筆頭は旧陸軍で、当時副作用等が確認されていなかった時代、ヒロポンとしてメタンフェタミン、つまり覚醒剤が支給されていました、1949年に劇薬指定され覚せい剤取締法により所持服用販売ともに厳しく禁じられていますが、戦時中は栄養剤の一種としてヒロポン入チョコレートなども支給されています、凄い時代もあったものだなあ、と思わせるもので、ヒロポンについては、例えばイアンフレミングの007シリーズ原作等で日本での薬物傾向として紹介される描写などありました。ただ、海外ではヴェトナム戦争などで戦闘が長期間継続される状況下での覚せい剤使用の記録があります。

 海外での栄養ドリンクといいますと、意外ですが、コカコーラが1886年の発売当時栄養ドリンクという位置づけにありまして、コカの実とコーラナッツを配合した強壮剤として薬局に置かれていました、しかし、販売が爆発的に伸びたのはブドウ糖を配合し炭酸水で割ったものを冷やして頂くももので、今日では食文化の一例を構成する清涼飲料水の代名詞的存在として定着しました、コカコーラ1リットル当たりカフェイン80mgが含有されていますので、ドリンクバーでは一日5リットル以上の引用はカフェイン中毒の危険性がありますが、まあ、さすがに毎日5リットル以上服用する事は無いでしょうし、コカコーラでのカフェイン中毒の心配はありません。

 一方、カフェインによる眠気防止ですが、実際のところカフェインには致死量があります、そして眠気防止ですが、実際のところ最後の手段は眠るしかありません。前述の通り、戦争という極限状態であれば一時的に眠気防止として採用され、その次の手段として覚せい剤が使われました、戦後に覚せい剤が禁止されたのは厚生省が副作用を確認した為であり、各国軍隊では極限状態において戦死か覚せい剤副作用か、という究極の選択を強いた訳ですが、平時に非戦闘員である文民が、充分な休養を摂れない体制を採ってはなりません、労働管理側の責任として、です。戦後自衛隊では、大戦の反省から休養を戦力回復として配慮していますが、一般の認識は過労死と今回のような過剰労働での眠気防止というカフェイン中毒、一年以上続いたことは充分過労死の範疇に含まれるのではないかと思いますが、戦力回復の認識が一般では不十分です、言葉遊びで危険を強いる状況は払拭されて良い頃合いでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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