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【日曜特集】アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港【2】ウダロイ級駆逐艦の高度対潜能力(2012-08-30)

2017-02-05 21:35:24 | 世界の艦艇
■アドミラルパンテレーエフ
 アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港、第二回はソ連時代に設計された大型対潜艦ウダロイ級駆逐艦の甲板に並ぶ強力な兵装を視てゆきましょう。

 アドミラルパンテレーエフ、満載排水量8500t、全長163.5m、全幅19.3m、比較的大型艦で、AK-100艦砲にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、RBU-6000対潜ロケット12連発射機、533mm 4連装長魚雷発射機、AK-630CIWS、武装満載過積載のソ連艦らしい一隻です。

 カイトスクリーチ型レーダーが艦橋マスト上部へ装備されていますが、これが100mm艦砲用射撃管制レーダーで、一基が確認できます、ただ、AK-100は独自の砲側光学照準器が採用されており、光学照準と併用する事で二門が複数目標同時射撃能力を有している訳です。

 SS-N-14/RPK-3対潜ミサイルは、艦橋直下四連装発射機に搭載されています。射程90kmの対潜ロケットで、海上自衛隊も運用するアスロック対潜ロケットと同じ発想のシステムで短魚雷を遠方へ投射する対潜魚雷運搬用ロケットですがアスロックよりも射程が大きい。

 艦橋直下四連装発射機に搭載されていますSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルを視ますと本型が大型対潜艦と呼称されている通り、一番目立つ装備です。射程は55km、改良型は90kmという長射程を誇り、仏伊共同開発のミラス/アスピーデ対潜ロケットと並び強力な装備です。

 SS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、90km先の潜水艦を捕捉するにはソナーと艦載機を含む航空機の協力が必要ですが、このほかに例えば潜水艦によるハープーンミサイル攻撃を受けた際に即座にミサイル発射海域へ発射し潜水艦を攪乱、続く攻撃を牽制する運用も可能だ。

 MGK-355統合ソナーシステムは、艦首MGK-335ソナーとHS可変深度ソナー及び搭載する2機のKa-27対潜ヘリコプターにより潜水艦情報を収集、解析し目標位置を標定します。無論条件次第ではありますがMGK-335ソナーは50km圏内での索敵が可能とされます。

 90kmの射程を誇るSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルですが、改良型は対艦攻撃へも対応可能で、巡航高度が500m程度と対艦ミサイルに比べ高く捕捉されやすい一方、多用途性の一つと云える。後期艦はSSN-N-14に換えSS-N-22モスキート対艦ミサイルを搭載しました。

 多目的ミサイルといえるSSN-N-14ですが、対艦攻撃型と対潜攻撃型は当然暖冬が異なります、対潜型は弾頭部分にE53-72対潜魚雷を搭載し、対艦攻撃型は185kgの成形炸薬弾頭を搭載、決して対潜魚雷をロケットで直接敵水上戦闘艦に命中させる訳ではありません。

 アイボウル型レーダーはSSN-N-14の誘導用に搭載されているもので、艦橋上部マストに沿って左右2基が設置されています。このアイボウルレーダーはアンテナアレイ部分が大きく、それゆえにロシア艦らしさ、即ち凶暴な攻撃性の形状一端を担っているようですね。

 近代化改修により対水上打撃力が100mm砲のみであったウダロイ級はSS-N-14の改良型により対潜ロケットを水上目標へ転用する事で対艦打撃力を代替する状況を改善するべく、2013年からSS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイル搭載の近代化改修が順次実施中です。

 ウダロイ級のSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルは元々、クレスタ級ミサイル巡洋艦へ搭載が計画されたもので、これはソ連海軍がアメリカの戦略ミサイル原潜によるソ連本土付近からの核攻撃を阻止するべく広い沿岸を防護可能な長距離対潜打撃力を必要としていた為です。

 しかし、クレスタ級ミサイル巡洋艦は対艦ミサイルを搭載し、対水上打撃力を重視した艦艇として完成しましたが、これは対潜型の開発が間に合わず、併せて潜水艦発射弾道弾の射程が延伸し、SUNでの弾道ミサイル発射措置という概念が時代遅れとなった為でした。

 ソ連は、しかしSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルの開発を継続、完成と共にクレスタⅡ型巡洋艦への搭載を開始し、いわば本命としてクレスタⅡ型巡洋艦を対潜艦として完成させ、続くカーラ級巡洋艦、沿岸部にて運用するクリヴァク型フリゲイト、本型へ搭載しました。

 潜水艦を撃破するには射程も起きく巨大な四連装発射装置が目圧姿は心強いものですが、大きすぎるような気がしないでもありません、ソ連海軍も同様の考えで、後継装備に小型のSS-N-15ボドパド/スターフィッシュ対潜ミサイルが開発、ウダロイⅡ型へ搭載しました。

 SS-N-15ボドパド/スターフィッシュ対潜ミサイルは射程45kmの慣性誘導方式固体燃料ロケットを搭載し投射するもので、核弾頭型対潜爆雷型と対潜魚雷搭載型があり、核弾頭型はそのまま敵潜水艦周辺海域へ直撃し即座に水中爆破、潜水艦を無力化するというもの。

 ボドパドは対戦魚雷型が基本となっているようですが、ソ連崩壊後の情報公開により発射装置として533mm魚雷発射管からも投射が可能とされ、水平に発射された場合でも相当な飛距離を有している点が興味深いものです。対潜用として劣りますもののその分小型です。

 RBU-6000対潜ロケット12連発射機は海上自衛隊がかつて運用していたボフォース対潜ロケットと似たものですが近接戦闘用であり、より短射程で戦時中のヘッジボッグ対潜擲弾発射機とボフォース対潜ロケットの中間程度のものといえる装備、ソ連艦標準装備の一つ。

 潜水艦へRGB-60小型ロケット爆雷を連続投射するRBU-6000対潜ロケット12連発射機は、発射機基部へ自動装填装置が搭載され、連続射撃能力があります、小型艦に搭載されている良く似たRBU-1200対潜ロケットは次弾が人力装填で、連続発射の威力は大きい。

 RGB-60小型ロケット爆雷は沿岸部から着上陸における艦砲射撃の代用として用いる事が可能で、例えば北方艦隊での水陸機動演習では揚陸艦と共に駆逐艦やコルベットが陣形組み前進し沿岸部へ海軍歩兵大隊着上陸に先立つ面制圧任務に用いられたこともありました。

 満載排水量8500tという大型水上艦艇であるウダロイ級は運用構想として1975年よりアメリカ海軍が運用を開始し31隻配備したスプルーアンス級駆逐艦と共通性がありますが、重ねて従来外洋対潜任務を担ったカーラ級巡洋艦の能力を広範に配備させる視点があります。

 対空兵装として3K95/SA-N-9キンジャール対空ミサイルを搭載しています、9K330/SA-15トール対空ミサイルの艦載型でトールと同じく垂直発射装置VLSより運用し射程は12kmです、3R95Cレーダーにより45kmで目標を捕捉、撃ち漏らした目標はCIWSが当たる。

 AK-630CIWSはロシア艦の標準的な30mm近接防空火器です、30mm多銃身機銃がウダロイ級には4門が搭載されています、ただ、AK-630CIWSは30mm多銃身機銃2基で1セットを構成しますので4門搭載されていますが2セットが搭載されている事になります。

 自衛隊が採用するアメリカ製CIWSと比較しAK-630CIWSは非常にコンパクトにまとまっていますが、これは弾庫部分が内部化され露出している部分が砲身部分のみであり、加えてレーダー照準装置が離隔配置されている為で、1セット2門で1目標へ対処可能とのこと。

 近年の改修によりAK-630CIWSへは光学照準装置が追加されており、小型ボート等の肉薄攻撃への撃退能力、海賊船などへの警告射撃能力が追加されました。一方、改修により対空ミサイルを長射程の3K96リドゥート艦対空ミサイルへ換装する事業が推進中です。

北大路機関:はるな くらま
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