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陸上防衛作戦部隊論(第四六回):装甲機動旅団編制案の概要 後方支援部隊整備部隊への重責

2016-02-20 21:00:00 | 防衛・安全保障
■整備に当たる武器科部隊
 需品部隊に続き今回は武器科部隊について、後方支援部隊整備部隊への重責は非常に大きくなります。

 整備部隊について、重整備と第一線整備に分かれる事となりますが、第一線整備については電子整備と機械整備が戦闘車両の重要な戦力回復任務となります、電子整備と機械整備は第一線においてはそのままモジュール化した部品を交換するか、後方へ搬送する他対応出来ませんが、装甲機動旅団は戦車定数300両を念頭とした少数の戦車を活用する無理な運用を突き通す方策であるため、可能ならば第一線において修理し戦力回復する事が望ましい。

 その上で、軽装甲機動車へ1/4tホイスト装置を後部に搭載し、電子機器やエンジン部分のエンジン以外の重量装備吊り上げを行い、換装する前線整備車両を導入する方式が望ましい。また、自衛隊戦車は自動装填装置を採用している為、弾庫への揚弾支援装置を付与した弾薬補給車両等を戦闘支援任務に用いる場合、攻撃衝力持続性の強化に直結するため、10式戦車90式戦車の特性に応じた支援車両を導入すべきです。

 後方支援部隊、重整備についての整備機材ですが、主力となる車両は戦車回収車乃至装軌車回収車となるでしょう、これは装軌車回収体制を確立し戦闘稼動率を高く維持する為の施策ですが、場合によっては障害除去や障害構築など、戦車部隊に随伴し直接支援するための装備として、戦闘支援を単なる後方支援任務の言い換えでは無く戦闘へ積極的に参加する体制の構築が必要でしょう、また、回収車以外の装備についてはより進んだ装備が必要となるやもしれません。

 戦車は250km機動毎にC整備として整備小隊による重点整備をうけ、これは乗員による整備よりも一段上の検査を受けるのですが、このC整備を迅速に行う必要があります、そこで資する一案として3t半トラックを原型に機動整備車として低姿勢化し乗員区画のみ軽装甲を施し、クレーン装置と自動化された検査機器、戦車単体の自己診断装置に加え各種画像データと音響データを用いて迅速に車体状況を判断し、必要な整備、戦闘継続に必要な状況を判断し支援する装備の開発が望まれます。

 正直なところここまで戦車の支援体制を構築するならば、戦車中隊の戦車定数に予備車を含め、戦闘時においても段列地域と第一線を交代できるよう余裕を持つことが望ましく、冷戦末期の第2戦車大隊始め北部方面隊師団の戦車大隊に上げられるような戦車小隊を5両体制とした方が、かえって全体としての装備を簡潔かつ実戦的に収める事が出来るのではないか、また、航空自衛隊にC-2輸送機に加え戦車を空輸可能な装備を配備し、縮小一個大隊程度を急速展開させる事は出来ないか、または戦車定数を上方修正する事は出来ないか、と考えますが、現実的なものは高射し合考えられません。

 機動整備車は、遠隔操作銃搭RWSを搭載する事で一定程度の自衛戦闘能力を有し、戦闘に主体的に参加する事はありませんが後方支援部隊の自衛戦闘能力を高める事により警備支援の負担を局限化できなければなりません。こうして列挙しますと、限られた戦車を最大限活用するには多くの支援車両が必要で、戦車支援の負担の増大についてですが、戦車には戦闘において最小限のものを搭載し、少ない戦車が長期的に連続した状況に対応できる戦闘支援の枠組が必要、との視点に基づくものです。

 現実的には大きな損傷を受けた戦車については、回収を戦闘事後に実施することとして、予備車を投入する、という方式が現実的なのですが、機甲戦力が限られる以上、迅速な戦力回復が求められます。予備人員を本部管理中隊から抽出し、例えば砲塔等の予備と車体の予備を補給処単位で蓄積すれば、損傷部分を迅速に換装し戦力回復させることが可能ですが、この場合、部品に分散して戦車を増勢配備する事に他なりません。

 例えば米陸軍の場合では、予備車について戦車を戦車の形のまま維持するのではなく、オハイオ州の陸軍デポに集積し部品単位に分散、必要に応じて組み立てる方式を採っています。手間はかかりますが老朽部品は組み立ての度に換装し、電装品などは旧式化すれば部品ごと廃棄し新型へ置き換える方式を採っている為、第一線部隊へは新品同様の戦車を供給できるほか、輸出に際しても中古車両を最新型に組み替えて、その分中古車両でも新造に近い費用を要するのですが、組み立てる事が出来ます、もちろん日本にはこの方式をそのまま適用できるとは規模の面で考えませんが、こうした方式もあるには、あるのです。

 後方支援部隊については以上の通りです、重要な部分は装甲機動旅団は常に前進という攻撃前進、限られた装備を最大限活用する手段としての防衛省が示した施策、統合機動防衛力を具現化するには部隊が常に動く必要がありますので、必要な支援はどうしても大型化し、戦車定数を最低限以下の水準に抑える事は予備車両を省く意味があるのですから稼動率を最大限高める為の施策が必要となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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4 コメント

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Unknown (ドナルド)
2016-02-21 20:58:24
はるなさま

整備部隊の拡張は、必須と思います。

拠点基地から出撃するのなら、整備部隊はその基地にいる部隊で十分でしょうが、それでは機動的な運用はできない。そもそも「拠点基地から動かない」という発想自体が、用兵の原則に反しています。冷戦時は、自衛隊は時間稼ぎの遅延後退作戦だけを考え、機動的=増援部隊による反撃は全面的に米軍に依存する発想だったのだろうと思います(戦車の北方重視も説明できる)。

脅威が西にも現れた今、(少数の現地部隊はむろん遅延後退をするとしても)主力は機動しなくては、各個撃破でやられるだけです。

そも意味で、整備部隊の装甲化は本当に必要でしょうか?もちろん3t半のキャビンを軽く装甲することに反対しているわけではありませんが、より大規模にしようとすると、整備部隊そのものが重くなり、その整備の手間が無視できなくなります。無装甲 or 軽装甲でよいので整備部隊を迅速に配備することが、大事なのではないでしょうか?

そもそも、この手の整備部隊を装甲化している軍隊は、どれくらいあるのでしょうか?アフガンであれば、後方部隊もIED対応があるので装甲化はされているかもしれませんが、、、。

なお、整備部隊の人員は前線戦闘部隊を削減することで捻出するしかないわけですが、戦略機動のできない前線部隊はただの遊兵=用兵上無価値な存在なので、私は一定の戦略機動の力を得るまで、前線を削って整備・兵站を強化することは、全体の戦力の向上に寄与する正しい方法と考えます。

#なにしろ、「攻撃側の迅速な機動により、防衛側に遊兵を作らせる」ことこそ、攻勢側の戦略の基本ですから、現状の陸自はまさにその作戦にはまってしまうと思うので。。。
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予備車さえ潤沢にあるならば (はるな)
2016-03-03 20:39:58
ドナルド 様 こんばんは

整備部隊の装甲化、程度の問題であれ、必要と考えます、ただ、キャビン部分の防弾化、配布部隊のみ装甲化、と程度の差は必要なのでしょうけれども

諸外国でこの種の装甲化を進めている国は確かにありませんが、着上陸後に対応を開始する専守防衛を掲げつつ、周辺が友好的とは言い難い陸軍国ばかりで、しかし、戦車数に非常に厳しいという諸外国の実例も、またないのではないでしょうか

10式戦車と90式戦車、共に自動装填装置を採用していますので、99式自走榴弾砲と99式給弾車、というような関係の車両は必要とは思うのですが、それ以上に、予備車を戦車定数300両の数量外で計算し、第一線配備戦車300両、とできるならば、この心配はないのですが、ね

・・・、もしくはC-17輸送機を25機ほど買って、予備車両を迅速に展開できる態勢の構築なのですが、C-17輸送機25機分で本土師団20個戦車大隊分の費用を要する訳ですので
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Unknown (ドナルド)
2016-03-04 19:46:59
はるな様

>諸外国でこの種の装甲化を進めている国は確かにありませんが

であれば、装甲化には反対です。まず、ソフトスキンで良いので、体制を立ち上げるべきと思います。キャビンの装甲化程度であれば、後付けでもできますので。

歩兵の装甲化すら進まない陸自ですから、「装甲化を必須」として話を進めれば、結局、整備部隊そのものすら編成されずに終わると危惧します。

悲観的かもしれませんが、「現実的」と思っております。
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10式戦車の自動装填装置 (はるな)
2016-03-17 21:55:38
ドナルド 様 こんばんは

諸外国では、という視点ですが、その前提として諸外国には装甲戦車支援車両は無くとも、日本のような自動装填装置を採用した戦車はフランスのルクレルク戦車や戦力化の端緒についた韓国のK-2戦車程度です

戦車支援車両には自動装填装置への給弾という任務も含まれますが、戦車ではなく自動装填装置を有する車両、と考えますと、砲側弾薬車両というものの装備は基本ですし、自走榴弾砲等装甲化された車両への砲側弾薬車は基本装甲車両を使用しています
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