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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】新空母ジェラルドRフォード試験とPA-NG次期空母,クイーンエリザベス随伴艦

2021-10-26 20:09:26 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回は航空母艦を中心にフリゲイトや駆逐艦と潜水艦に航空機など海軍関係の話題最新10論点をお伝えします。

 アメリカ海軍は6月18日、新型空母ジェラルドRフォードへの耐衝撃試験を実施したとのこと。耐衝撃試験はフロリダ州沖で実施、近距離での18tの爆薬を用い戦闘中の爆発などから原子炉を含む船体主要部分が充分機能するかを試験しましたが、この爆発でUSGSアメリカ地質学研究所はフロリダ沖海上でマグニチュード3.9の地震を観測したとのこと。

 ジェラルドRフォードはジェラルドRフォード級原子力空母の一番艦で電磁カタパルトや炉心交換不要の新型原子炉等の新機軸を盛り込んだ最新鋭艦ですが、建造費がニミッツ級原子力空母の倍以上の100億ドルを超えた、アメリカ海軍初の100億ドル戦闘艦となっています。国防総省によれば試験は海洋生物等に十分留意し調査観測を経て実施したという。
■仏,PA-NG次期空母船体研究
 PA-NG次期航空母艦船体研究としてフランスの将来空母計画が動き始めました、日本のヘリコプター搭載護衛艦の3倍という大型艦です。

 フランス国防省は5月25日、PA-NG次期航空母艦船体研究についての最新情報を発表しました。これはフランス海軍公式Twitterに掲載されたもので、船体部分の縮尺模型を用い、船体流体性能実験施設での航行試験の様子を示しました。縮尺模型は全長10m程度、こうした試験の実施から船体形状は現行のシャルルドゴールよりも一変していましょう。

 現在運用している原子力空母シャルルドゴールはフランス国産のラファール戦闘機24機を運用していますが、この後継機としてドイツとの間で次世代ステルス戦闘機FCASを開発中です。FCASはエンジン技術をフランス製とし、全体設計もフランスが担うと共に電子部品などにはドイツが参画し、開発費を分担、アメリカ製に依存しない欧州戦闘機を目指す。

 PA-NG次期航空母艦は全長330mと全幅80mで満載排水量75000tとフランス海軍史上最大の艦艇となる計画で乗員は2000名、艦載機は30機、最高速力は27ノットを計画しています。ただ、起工は2025年、竣工は2038年を予定しており、起工式まで4年となっていますが船体形状試験を2021年に行っていて大丈夫なのかという気がしないでもありません。
■ズムウォルト級定期整備
 ズムウォルト級駆逐艦の定期整備に関する話題です、日本の護衛艦に見慣れていますとステルス性を極限まで研究した結果で原子力空母並の建造費を許容したアメリカは凄い。

 アメリカ海軍はズムウォルト級駆逐艦の定期整備に関してBAEと9000万ドルの契約を締結しました。これは七月にズムウォルトと二番艦マイケルモンスーアの定期整備に関する情報として発表されたもので、実際の作業はBAEのグループ会社であるBAEシステムズサンディエゴシップリペアーが担当、定期整備は、2023年9月に完了する計画です。

 ズムウォルト級駆逐艦は沿岸作戦を重視した海軍作戦構想“フロム・ザ・シー”にもとづき設計されていますが、艦砲として現在搭載する155mmAGS先進艦砲は当初計画で、レールガンへ置き換えられる計画でした。しかし、レールガンは紆余曲折有り巡航ミサイルなどの脅威を極超高初速砲にて迎撃する新装備体系へ統合されてゆきました。しかしです。

 オールドメインドクトリン、レールガン計画は艦砲対地射撃から巡航ミサイル迎撃へ主眼が転換したのちに、情報共有をピコ秒単位で実現するオールドメインドクトリンの進展により、従来型艦砲からのGPS誘導弾によっても迎撃が可能と結論付けられます。この為、ズムウォルト級は155mm艦砲を廃止し、極超音速兵器搭載艦へ転換が構想されています。
■英艦ダイヤモンド機関故障
 イギリスのクイーンエリザベス空母戦闘群随伴艦であるダイヤモンドに関する話題を一つ。

 ダイヤモンドがクイーンエリザベス空母戦闘群を離れた、イギリスBBCが報道しています。ダイヤモンドは45型駆逐艦で機関部に統合電気推進を採用していますが、今回の離脱は機関部の問題とされています。統合電気推進は推進力から艦内動力まですべてを電気によりまかなう方式ですが、45型駆逐艦は搭載する2基の発電器電力不足が指摘されている。

 ノースロップグラマン・ロールスロイスWR-21発電器、これを現在の2基から3基とする模索が2015年になされていましたが、膨大な費用を要することから計画を断念しています。また中間冷却器が熱帯での冷却機能に問題を与えているともされ、7月6日にスエズ運河を通過し真夏のアラビア海へ入った45型駆逐艦には厳しい環境といえるのかもしれません。

 クイーンエリザベス空母戦闘群のイギリス海軍防空艦はダイヤモンドとドラゴンの2隻、そして同盟国のミサイルフリゲイトやイージス艦が支援していますが、ドラゴンについては同じ45型駆逐艦であり、このほかフリゲイトのケントとリッチモンドが随伴していますが僚艦防空能力はなく、イギリス海軍艦隊防空能力の厳しい現実を突きつけています。
■豪州,パース近代化改修完了
 パースといいますと第二次世界大戦時代の軽巡洋艦が有名ですが現役艦にもフリゲイトのパースが居ます。

 オーストラリア海軍はアンザック級フリゲイトのパース近代化改修を完了させたと発表しました。これはオーストラリア西部のオーストラリアンマリーンコンプレックスヘンダーソン造船にて実施されていた改修で、ドライドックにて実施された改修が7月1日、再度海上に展開したとのこと。レーダーや通信システム、居住区画の改修が行われました。

 パースはアンザック級フリゲイトの8番艦、ドイツの輸出用フリゲイトMEKO200の豪州ニュージーランド仕様艦で満載排水量は3600t、元来は哨戒フリゲイトとして軽武装設計でしたが、南太平洋での周辺情勢緊張を受けCEAFAR多機能レーダー搭載を軸とした近代化改修を行っています。パースとは第二次大戦中に活躍した軽巡洋艦の艦名を継承したもの。
■インドP-8I哨戒機10号機
 P-8Iポセイドン哨戒機に関する話題です。対潜哨戒機や洋上哨戒機としてはP-1哨戒機の方が高性能に見えますが、平時の警戒監視にはこちらの方が優れているようにも。

 インド国防省はアメリカ製ボーイングP-8Iポセイドン哨戒機の10号機を受領したと発表しました。インド海軍は旧式化したソ連製Tu-95ベア対潜哨戒機型の後継機としてP-8哨戒機を2013年導入発表、2016年に最初の4機の受領を以て既に飛行時間にして3万時間以上運用しており、導入発表8年目にして保有数が二桁に至った事をしめしています。

 P-8Iポセイドン哨戒機はボーイング737を原型とする哨戒機で、開発当時は対潜能力よりも監視能力を重視し、低空飛行能力などの不足が指摘されていましたが、アメリカでは無人偵察機との連携、高高度からの投下可能な新型ソノブイの開発を50km以上滑空しGPS誘導により正確に目標潜水艦上空へ投下可能な魚雷投射システム等が開発されています。
■三井E&Sの哨戒艦構想
 情報が短期間だけ開示されますと様々な憶測が浮かんでしまうものなのですけれども今回は如何に。

 三井E&Sホールディングス三井造船は7月初旬、哨戒艦の概念図を動画配信サイトを通じ発表しました。これは海外販売を想定した哨戒艦であるか、海上自衛隊が導入する哨戒艦の候補であるかは明言されておらず、動画は短期間で非公開となりました。全長は73mで全幅10m、最大速力は22ノットと航続距離は16ノットで5400km、乗員は61名です。

 哨戒艦は、武装は大口径機関砲を前甲板に配置し上部構造物はステルス設計を採用、船体後部には長大な多目的甲板を有し、無人航空機や多用途支援艦のようなコンテナ物資や小型車両の輸送を想定するもよう。武装を有しステルス化された多用途支援艦、という印象、中国海軍の重武装フリゲイトが相手ではなく沿岸監視であれば充分なのかもしれません。

 三井E&Sホールディングス三井造船が特筆される背景には、同社の防衛産業部門は遠からず三菱重工への経営統合が決定していると共に、防衛計画の大綱に明記された海上自衛隊への哨戒艦10隻の導入が、2021年内にも具体化しなければ中期防衛力整備計画などへの盛り込みが難しくなるためであり、8月下旬の防衛予算概算要求との関係があるためです。
■ポーランド軍のAW-101
 AW-101輸送ヘリコプターは良い航空機であると思うのですけれども本邦と欧州では評価が違う。

 ポーランド軍が導入を進めるAW-101輸送ヘリコプター初号機が初飛行を迎えたとのこと。AW-101は7月21日、製造されるレオナルド社のヨービル工場にて初飛行を迎えています。ポーランド軍は2019年4月に近代化の一環としてAW-101輸送ヘリコプター4機の導入を発表、海軍航空旅団へ配備し哨戒ヘリコプター及び捜索救難ヘリコプターとします。

 AW-101は開発国であるイギリスとイタリアとともに我が国海上自衛隊でも採用、NATO加盟国ではカナダ、デンマーク、ノルウェー、ポルトガルなどでも運用されていますが、東欧への配備はポーランドが初めてで、ポーランドへのAW-101導入へはイギリスとイタリア及びポーランドの参加国合同AW-101プロジェクトチームが支援にあたっています。
■韓国ソマリア沖クラスター
 COVID-19は常に緊張を強いる状況を全世界に広げていますが、なんと韓国海軍ではソマリア沖での駆逐艦にて大規模なクラスター感染が発生してしまいました。

 韓国海軍ソマリア沖派遣駆逐艦ムンムデワン艦内において乗員八割以上のCOVID-19感染爆発が発生しました。乗員301名のうち247名が感染するという、韓国軍でのクラスター感染としては最大規模のものとなっており、韓国国防省はアフリカのジブチ航空拠点へKC-330空中給油機を派遣、感染者を含む全乗員を韓国国内へ帰国させる措置をとりました。

 ソマリア沖への韓国海軍駆逐艦派遣は清海部隊としてソマリア沖海賊対処任務多国籍部隊への協力へ派遣している韓国の国際貢献任務となっていますが、今回、乗員の一部が風邪の様な症状が起きていたにも拘らず充分な検査措置を執らなかった事、乗員の八割以上が感染するクラスターを防ぐ事が出来なかったと、韓国国防省を批判する声もでています。

 ムンムデワンはイスンシン級ヘリコプター搭載駆逐艦の2番艦で、リンクス対潜ヘリコプター2機を搭載する他、スタンダードミサイルの運用能力を持ち韓国海軍の貴重な外洋作戦能力を構成しています。艦内感染について、内12名は重症とされ、韓国国防省では今後海外派遣要員へCOVID-19コロナウィルスワクチンの優先接種を検討してゆくとしています。
■212CD型潜水艦最新情報
 212型潜水艦の最新型である212CD型潜水艦に関して計画が更に一歩前進しました。

 ノルウェー海軍とドイツ海軍が2030年代に6隻を導入する212CD型潜水艦へコングスベルク社のオルカ潜水艦戦闘システム及びNSM海軍ストライクミサイルの採用が決定しました。オルカ潜水艦戦闘システムは2000年代より合弁事業の形にてティッセンクルップマリンシステムズとの協力を受け将来潜水艦戦闘システムとして整備されていたものです。

 NSM海軍ストライクミサイルはステルス性を有するGPS誘導ミサイルで対地攻撃が可能、射程は200kmから350kmで欺瞞進路を用いた迂回飛行が前者の射程で経済速度にて直進で低空飛行させた射程が350kmとされています。NSM海軍ストライクミサイルの搭載により212CD型潜水艦は従来の212型潜水艦よりも強力な対地攻撃能力を持つ事となります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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