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【防衛情報】T-7Aレッドホーク量産機初飛行!遅延重ねたアメリカ空軍次期高等練習機と50年代老兵T-38練習機老朽化

2023-07-25 20:09:04 | 先端軍事テクノロジー
■ボーイング/サーブT-7A
 この練習機は自衛隊のT-4練習機後継機問題に影響を及ぼすのでしょうか、T-7A練習機、写真はまあありものでF-2戦闘機とT-4練習機で誤魔化していますが遅れていたアメリカの練習機の話題です。

 アメリカ空軍次期練習機として開発をすすめていたT-7Aレッドホークが初飛行を迎えました。最新鋭練習機の初飛行は6月29日、アメリカ空軍第416試験飛行隊のブライスターナー少佐とボーイング社のテストパイロットスティーブシュミット主任がその初飛行を実現しました。同時にT-7Aレッドホークは歴史的な遅延にも見舞われていました。

 T-7Aの任務は旧式化がゆきすぎているT-38練習機の後継機です、旧式化、T-38練習機はその派生型としてF-5A戦闘機が挙げられ、決して高性能ではなく空対空戦闘能力では有視界に限られるものの超音速飛行が可能であり対地攻撃にも転用できるとともに兎に角安価ということでアメリカの同盟国、特に途上国へ大量供与された軽戦闘機でした。

 T-38練習機の初飛行は1959年、実に2020年代にあってもアメリカ空軍の高等練習機は、延命改修や補強が行われているとはいえ1950年代の航空機により支えられてきました。しかしこれ以上の改修は限界が来ており、また再生産が可能であるにしても1950年代と2020年代では養成する教育過程そのものが違う事から後継機が切望されていたのです。

 T-7Aレッドホーク練習機の初飛行は遅れている開発計画の取り戻しに一歩前進しました。もともとボーイングT-Xと呼ばれていた航空機開発はボーイング社がスウェーデンのサーブ社のJAS-39グリペン戦闘機設計を一部応用し開発したもので、機体形状は大きく変容し尾翼は一枚から二枚に増大していますが、開発リスクは本来低いはずであった。

 ボーイングT-Xとしては2016年12月20日に初飛行を迎えており、2017年には既に試験機5機の生産が開始されていました、ただ量産機の初飛行は実に6年間の遅延を生み、その背景には第五世代戦闘機養成を重視した新世代練習機のシステム開発とその安全性への調整、そして空軍とボーイングの意思疎通に関する問題が計画を遅延させます。

 初度作戦能力獲得について、当初は2023年が見込まれていましたが量産機の初飛行が2023年へ遅延したことでボーイングは2025年へ計画を下方修正しています。しかしこれも今後の量産機試験が開始されることから楽観的と見られ、2027年の初度作戦能力獲得が現実的と見られています、アメリカ会計検査院は更なる遅延を危惧し調整を求めました。

 アメリカ議会下院の2024年度国防権限法にはT-7A練習機取得加速の要求が盛り込まれています。これはA-10攻撃機やF-15C戦闘機にU-2偵察機とRQ-4無人偵察機とE-3早期警戒管制機などの旧型機の退役を進め、今後も使用に耐える比較的古い航空機の稼働率を高めるとともに新世代機の更新を行う。その為に新型練習機も開発を加速させる。

 T-7A練習機の課題は現在のところ二つあり、飛行制御プログラムの開発問題と射出座席の安全性問題が挙げられています。飛行制御ソフトの開発は修正が利かない規模のものが多く、そのためにソフト改修まで六年間を要しましたが、2023年前半までに改修が完了し、高速タキシー試験を経て初飛行に至りました、問題は射出座席の安全性というもの。

 射出座席については検証することなくT-38開発の数値がそのまま応用されましたが、T-38練習機が開発された1950年代とは異なり2020年代には様々な操縦士練習生が空軍戦闘機操縦要員を目指します、その中には女性割合が大きくなっており1950年代の設計と規格を応用するには無理があり、この為に射出座席と機体の大幅な見直しが実施中です。

 ボーイング社はT-7A練習機の戦闘機型と海外への輸出へ期待しています。この背景にはT-7A練習機の採算性が1000機程度販売できなければ赤字に陥る可能性が指摘されている一方、アメリカ空軍が想定している調達計画は351機であり、採算ラインを維持するにはアメリカ空軍の調達数と同数以上の、倍近いともいう、機体を輸出する必要がある。

 T-7A練習機はF-404エンジンを搭載しており機体設計でもサーブ社が協力した際に同社のJAS-39戦闘機の設計が応用されています。ただ、課題はF-35要員養成を要請するために特化した練習機であり、ラファールやユーロファイターの要員養成に最適化が未知数という点と、主翼強度の面などからミサイルなどの搭載が想定されていない点でしょう。

 T-7A練習機は、しかし複座座席の前席を廃止しレドームを拡張、レーダーを搭載することで単座戦闘機として転用可能ですし、空中給油受油能力も有しています、また主翼強度に限界はありますが胴体にAMRAAMなどの兵装架を追加することは可能なのかもしれません。しかしその為には何よりアメリカ空軍での練習機初度作戦能力確保が大前提です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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