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防衛省、東日本大震災への自衛隊災害派遣体制について展望を構想

2011-04-20 22:26:03 | 防災・災害派遣

■今月末から10万動員体制を解除を検討

防衛省は今月末を目途に東日本大震災に対する自衛隊の派遣体制を現在の10万名規模から段階的に縮小する方針を検討中とのことです。

Img_8298 自衛隊の災害派遣任務は復興ではなく復旧、被害拡大を防ぐダメージコントロールという事を考えれば、そういう時期なのでしょう。史上空前の10万名という人員を派遣した東日本大震災への自衛隊災害派遣ですが、今月末での順次縮小という方針は自衛隊の規模からは完全に能力を超過した状況を強いられているとともに、自衛隊出なければ対応できないという状況が順次解消されている、ということが挙げられます。

Img_4279 自衛隊でなければできない災害派遣任務となりますと、道路復旧や被災者捜索救難、孤立被災地への人員物資輸送といった任務が考えられます。民生インフラが完全に麻痺している状況や輸送基盤などの交通機関が機能不随となっている状況では不整地突破能力や障害除去能力、空中機動や海上機動能力を有する自衛隊でなければ対応できません。

Img_2238 しかし、一ヶ月以上を経て、自衛隊の懸命の復旧により上記の任務はかなり縮小されてきたのが現状です。無論、災害派遣任務は規模を縮小して維持することとなるのでしょうが、ここからは復旧から復興へ、即ち民間会社と自治体が主力となったほうが、効率的となるわけです。トラックや建機の保有数で民間と自衛隊では桁違いに民間が多いですし、普通に輸送するならば輸送艦よりもフェリーのほうが桁違いですからね。

Img_3731 現在もなお、行方不明者の捜索や原子力災害などの面で災害は継続しており、その被害の規模は全容を未だ明らかにできていない、という状況ではあるのですが、電気やガス水道といったインフラの整備は戦闘部隊である自衛隊の任務ではありませんし、架橋や鉄道再興もその能力では対応することを想定していません。

Img_6367 そこで自衛隊から民間への移管がいよいよはじまる、というかたち。これは言い換えれば復旧がひと段落して、復興に入ることがかなったことを意味します。まだまだ復興は端緒についたばかりではあるのですが、東日本大震災はようやくダメージコントロールがひと段落しつつあるということなのでしょうね。

Img_4424 他方で、縮小されつつも任務はある、という意味なのですが、非常に残念なことに避難所での健康を害して命を落とされる方がいますので医療や輸送支援の必要性は残っており、原発事故をはじめ自衛隊や警察でなければ捜索が難しい地域があることも事実で、今後も自衛隊の行動に注目が集まることでしょう。あの阪神大震災における自衛隊災害派遣は三カ月強、今回の地震被害を考えれば師団規模の部隊が参加する大規模な災害派遣だけでもこの倍以上の期間になる可能性があります。

Img_0704 同時に、今回は多賀城駐屯地や松島基地を筆頭に自衛隊も被害を受けました。加えて大規模な災害派遣により自衛隊の教育体系にも大きな影響が及んでおり、幾つかの演習は既に中止となっています。自衛隊という組織も復興に着手しなければならない、という事も忘れてはなりません。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文および写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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はじめまして。 (mh)
2011-04-21 10:46:22
はじめまして。
自衛隊の派遣を縮小する方向で検討しているそうですね。
お聞きしたいのですが、復興に向けてどのような部隊が被災地に長く残ると思われますか?
○○科・○○班…など、教えていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
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一説によると、このままの状態が続くと5月中旬まで... (ブリンデン)
2011-04-21 15:12:37
一説によると、このままの状態が続くと5月中旬まで原隊にもどれない部隊も出てくるといわれていますから、そろそろ規模の縮小を考えた方が良いと思います。

ただ、最近の動きを見ていると、自治体などが予算がないため、「タダで使える自衛隊」に頼っているフシがあり、民間企業に委託できる業務も自衛隊に任せているような気がしてなりません。

私個人としては、被災者の方を雇い上げるなどして、民間でもできる業務は委託した方が、復興支援にもつながると思うのですが、ブログ主様はいかがお考えでしょうか。
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先日,気仙沼を訪問しましたが,大勢の自衛隊とわ... (katsu)
2011-04-21 19:12:12
先日,気仙沼を訪問しましたが,大勢の自衛隊とわずかな市民(NPO,被災者)しか見ませんでした.道路は綺麗にされておりましたが,がれきは山積みのままでした.

なぜ建設業者が仕事をしていないのか,不思議でなりませんでした.被災したと言っても海沿いの津波を被った場所だけです.少し内陸に入ればほとんど無傷です.いくらでも業者や建設機械は集められると思うのですが,そうした活動は皆無でした.

遺体の捜索活動が終わった場所にはスプレーで印がしてありましたが,そこからどんどん片付ければいいと思うのですが.いくら自衛隊に工事能力があると言っても,通常の活動であれば民間の方がはるかに質量共に優れているのではないでしょうか.

無駄な片付け・解体作業を自衛隊にさせていないで,本務に早々に復帰して頂いた方が日本のためだと思うのですが,こういう危機的な状況下で隣国が攻めてくるはずがないと政府は高をくくっているのでしょうか?原発事故にせよ,想像力が皆無の政府首脳部にはあきれるばかりです.
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mh 様 はじめまして (はるな)
2011-04-22 13:09:39
mh 様 はじめまして

当方も余り詳しくは無いのですが、京阪神地区や南九州、山陽山陰、それに北海道の一部が予備として待機しているとのことですから、続いて投入されれば、現在の派遣部隊と交代してこちらが長く残るのかな、と。

恐らくですが、給水と衛生、これに関係する支援は継続されると思います。施設はどの程度民間に委託されるのかにより変わってくると思うのですが、これに応じて車両整備を行う武器科を始めとした部隊の状況も変わってくるとは思うのですが。

しかし、政府が自衛隊から民間へ移管するタイミング、特に自衛隊は戦闘部隊としての自己完結能力が災害の復旧に対応している、という事を理解していなければ、長期化するやも。
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ブリンデン 様 どうもです (はるな)
2011-04-22 13:13:30
ブリンデン 様 どうもです

民間企業ですが、そもそも自治体に予算が無いのは既に政府も理解しているはずでして、復興に関係する会議を集めるくらいならば、政府統括で民間企業で復興関係の企業を集約しなければ、と思うのですがね。そもそも復興事業に関する入札も行われておらず、持ち出し状態で民間が頑張っている状態に近いですからね。

被災者雇用ですが、一部地域では既に実施されているようです。これは全く的を射た判断と考えます。こういう状況では公共事業以外、被災地に雇用が無いのですからね。可能ならば被災地を構造改革特区に指定出来れば、と思いますが、変な懐疑よりはこちらの方を、人材は野党を含め選び出して実施してほしい、と。
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katsu 様 どうもです (はるな)
2011-04-22 13:19:48
katsu 様 どうもです

瓦礫ですが、元々は民間資産ですからね、まず地権者の立会、というのが原則ではあるのですが、このあたりは特措法でも無ければ勝手に勧めるのは無理だろうと思います。

遺体捜索ですが、深部までは能力的に行えていないという話も聞きますし。

民間会社へどこが公共事業として発注するのか、そして瓦礫を何処に集めるのか、かなり厳しい問題ではあると思います。

ただ、だから自衛隊を、という論調にもならないのですよね、自衛隊の任務は復旧、復興は自治体と住民の役割です。
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>なぜ建設業者が仕事をしていないのか (月虹)
2011-04-23 15:36:11
>なぜ建設業者が仕事をしていないのか

瓦礫の撤去作業ですが自治体によっては被災者への対応で手一杯でそこまで回っていないという現状がありますね。(自治体自体が多くの職員を失うなど行政機能を果たせないところも多いようですし…)ここは県が派遣されている職員を調整役として自治体と協議して民間資本を活用しての瓦礫撤去を行うべきだと思います。

ちなみに岩手県側では既に建設業者が撤去作業に当たっている箇所が増え始め、また被災された方達を現場の作業員として臨時雇用するなど復旧に向けた動きが各地で見られます。

 P・S
今回の自衛隊派遣は殉職者が出るなど補給という面で大きな課題を残したと思います。日々、行方不明者の捜索・収容など過酷な現場で活動しながら食事は冷たい缶詰だけを取る隊員の方々を見てなんだか悲しくなりました。被災者の方々がつらい思いをしているのは分かりますが自衛隊員も同じ人間です。また暖かい食事を取って英気を養うことは長期に渡って活動する上で重要だと思います。これは原発で作業されている方々にも当てはまりますが…
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月虹 様 こんにちは (はるな)
2011-04-26 12:23:19
月虹 様 こんにちは

今回の震災では現在でも行政機能が麻痺していますからね、そして道路が復旧していない地域も意外とあるようで。

この際、多少越権行為でも国が直轄事業として建設業者を集約して、予算は国が支出して自治体に配属させるという方式があってもいいのかな、と。

自衛隊ですが、ううむ、今回の問題は野外自活能力ですね、航空自衛隊のトレーラーハウス的な装備も今後は長期間になる災害派遣を見据え調達するべきなのでしょう。

・・・、交代で近郊の観光地ホテルなどを貸し切って十日間に二日程度は休養できるような体制があっても良いのでしょう、過労死が出ています、過労死対策に取り組むと言っていた民主党政府はもう少し考えても良いのでは。

原発ですが、ううむ、これも一応特殊武器防護隊が気密大型天幕を持っていますので、入浴施設や野外炊事器具を持ち込んでも誰も非難はしないでしょうに、と考えます。
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