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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ルーマニア多機能コルベット中止とCH-53Kキングスタリオン追加調達,航空母艦福建建造状況とストーンフィッシュ機雷

2023-11-28 20:01:11 | インポート
■防衛フォーラム
 今週は海軍関連の話題を紹介しますが先ずはフランスとルーマニアの将来水上戦闘艦が微妙な状況となった話題から。

 ルーマニア海軍はフランスとのナーバルグループとの間の多機能コルベット建造入札の終了を通告しました。終了の背景にはフランス側が建造計画に遅れが生じており、2019年に7年間の整備計画として開始されるものの2020年の新型コロナウィルス感染症COVID-19感染拡大により金融危機なども生じ、この計画が大きく停滞していました。

 ルーマニア海軍は多機能コルベット4隻を導入する計画で、ナーバルグループとの契約以前にはオランダよりシグマ級コルベットシグマ10514型を4隻16億ユーロにより取得する計画でしたが、2019年にフランスのナーバルグループが4隻の建造費を12億ユーロとして提示し安価として変更、ゴーウィンド型コルベットが建造される計画でした。

 ゴーウィンド型コルベットは4隻の内1隻をフランスで建造し残る3隻をルーマニアのコンスタンツァ造船所において建造する計画でしたが、上記の理由から建造開始が遅延、6月にはナーバル社の遅延をルーマニアのアンヘルティルバル国防大臣が批判していました。そして就役予定の2026年に間に合う可能性が皆無として打ち切られた構図です。
■CH-53Kキングスタリオン
 CH-53Kは大口調達先と思われたドイツが不採用としたことがどう影響するのか。

 アメリカ海軍はCH-53Kキングスタリオンヘリコプター35機を導入します。ただ、これは掃海ヘリコプターとして海軍が導入するのではなくアメリカ海兵隊及びイスラエル航空宇宙軍向けの調達となります。具体的には海兵隊向けの第七次契約12機と第八次契約15機、そしてイスラエル航空宇宙軍向けのFMS有償軍事供与用8機を含んだもの。

 CH-53Kキングスタリオンヘリコプターについて、アメリカ海兵隊は最大200機を調達する構想です。他方でシコルスキー社は潜在的需要として海上自衛隊とドイツ空軍を見込んでいるという、具体的にはMCH-101掃海輸送ヘリコプター後継機などですが、海上自衛隊はMCH-101を増強予定であり、後継機は20年以上先、ドイツはCH-47を調達します。
■航空母艦福建
 日中で空母競争のような状況となりつつある。

 中国海軍が建造を進める航空母艦福建について衛星写真などからその建造状況進捗度が判明しています。江南造船所において建造されている空母福建、8月に撮影された写真は6月までに撮影された写真からカタパルト装置の設置が進み、夏までに完了したアングルドデッキ整備に加え、8月までに艦首側の電磁カタパルト整備がほぼ完了したもよう。

 江南造船所の空撮映像では舷側からの排気が確認できる様子が確認でき、これはディーゼル発電機の試運転が開始されていることを意味します。空母福建は従来のSTOVL式空母からカタパルトにより航空機を発進させるCTOL方式空母として中国が初めて建造するもの、発電能力から一日当たりの発着数は不明ですが、インド太平洋諸国注目の的です。
■ファサル2戦略巡航ミサイル
 北朝鮮は潜水艦国産化も進めておりこうした核兵器の運搬手段を前に日本がどう向き合うかが問われつつある。

北朝鮮は巡航ミサイル発射実験に併せ新型のアムノク級コルベット映像を公開しました。アムノク級は旧式化が進み殆ど航行が確認されていないラジン級コルベットの後継艦で満載排水量は1500t前後と推測、ステルス形状に配慮した船体形状を採用、レーダーは中国製362型対空レーダーを、またファサル2戦略巡航ミサイルを搭載しています。

 ファサル2戦略巡航ミサイルは北朝鮮が戦力化を急ぐ核巡航ミサイルであり、アムノク級コルベットそのものの性能は限られますが、核弾頭搭載可能巡航ミサイル搭載艦を遊弋させることで、核のリスクを突き付ける運用は平時には大きな不確定要素となります。アムノク級コルベットは2隻が建造、トゥマン級コルベットとともに艦隊を編成します。
■中古のP-3C哨戒機
 P-3Cは今後どの程度アップデートと現役維持が可能となるのでしょうかね。

 ポルトガル軍はドイツ軍より中古のP-3C哨戒機を取得します。導入されるのはP-3C哨戒機6機とMLUミッドライフアップグレード延命改修セット、及び予備部品とフライトシミュレータ等を含むもので4500万ユーロの中古品売却となるもよう。ドイツ海軍がP-3Cを導入したのは2006年に中古機を取得したもの、短期間の運用となりました。

 P-3C哨戒機を売却するのはドイツ海軍が2025年よりアメリカ製P-8A哨戒機の受領を開始するためで、ただ現在ドイツ海軍が運用しているP-3C哨戒機は4機であり、予備機を含めた機体の譲渡が行われる場合、その稼働率は難しいものとなるかもしれません。ポルトガルは2024年から機体受領を開始するため、ドイツには哨戒機空白期間も生まれる。

 ポルトガル軍としては歓迎する要素があり、それはポルトガル空軍も現在オランダから中古で取得したP-3C哨戒機を5機運用しているためです、機体はベージャ空軍基地の第601飛行隊に配備されていますが、老朽化が進んでおり、これらを機体を部品取りに利用することでドイツからのオランダ海軍中古P-3C哨戒機を活用できる可能性があるのです。
■ストーンフィッシュ機雷
 機雷は最も費用対効果が高いと強調される事が多い。

 オーストラリア海軍は大量のスマート機雷を導入します。導入されるスマート機雷はラインメタルイタリア社が製造するものでその調達数は非開示ですが、数百万ユーロ規模の契約になるとともに今後数年間で更なる増備契約に繋がる可能性があるとのこと。オーストラリア海軍は従来、イギリス製ストーンフィッシュ機雷を採用していました。

 ストーンフィッシュ機雷は知能化機雷であり、音響や感圧及び磁気などから水上戦闘艦や潜水艦など付加価値の高い目標か機雷掃討艇などの脅威度の高い目標を識別し爆発するもので、BAE社が製造しています。今回導入されるのはラインメタルイタリア社製であり、同等程度の威力を有すると考えられ、またそれが安価であったとされています。
■原潜デュゲイトルアン
 フランスは原潜建造に時間がかかり過ぎる印象が。

 フランス海軍はシュフラン級攻撃型原潜デュゲイトルアンを受領しました。デュゲイトルアンは2023年3月より公試を実施しており、この試験の完了を以てフランス海軍潜水艦として正式に就役、ブレスト海軍基地へ配備されたとのこと。一番艦シュフランは2020年11月に就役しており、フランス海軍にとって3年ぶりの潜水艦竣工となりました。

 シュフラン級攻撃型原潜は水中排水量5300t、現在運用されている世界最小の攻撃型原潜であるリュビ級攻撃型原潜の2600tを大幅に上回り、バラクーダ計画として進められている潜水艦計画で、この通常動力推進型がオーストラリアへアタック級潜水艦として計画されていて、オーストラリアのキャンセルにより政治問題化したことは記憶に新しい。
■052DL型駆逐艦29番艦
 日本は汎用護衛艦定数を20隻と区切って持続的に更新しているのですが中国経済はこれらの艦艇が老朽化する2040年代にどこまで成長を維持できているのでしょうかね。

 中国海軍は052DL型駆逐艦29番艦の進水式を挙行した。昆明型駆逐艦拡大型である052DL型駆逐艦は、現在大連造船所だけで5隻が量産されており、29番艦は一番艦昆明から数えて29番艦、バッチ4にあたる拡大改良型で8月28日に進水式を行ったとのことで、大連造船所が担当する5隻のうち、27番艦と28番艦が紳士意識を終えています。

 29番艦は2025年にも竣工するものとみられています。またこのほか大連造船所が担当するのは31番艦と32番艦、こちらは2024年初頭にも進水式を迎えるとされています。052型駆逐艦は満載排水量7500t、海上自衛隊あさひ型護衛艦よりも一回り大きく、2014年に一番艦昆明が竣工して以降猛烈な速度で量産が続いている新時代の中国軍主力艦です。
■沱江級コルベット
 空母キラーといわれる装備ですが相手はコルベットキラーを無数に保有している為やはり大型水上戦闘艦の方が重要ではと思う。

 中華民国台湾海軍は沱江級コルベットを追加発注しました。龍徳造船がMJPマリンジェットパワー社とともに建造する沱江級コルベットは、今回の建造計画に基づき龍徳造船とMJPマリンジェットパワー社とのパートナーシップ協定が継続することを意味します。試作試験艦的要素が強い一番艦沱江が2019年に竣工し評価試験を実施しました。

 沱江の評価に依拠して量産艦として塔江、富江、旭江、武江、と量産型の建造が進められていますが、この秋にも続く追加艦艇が起工する見通し。沱江級コルベットは双胴船型船体を採用する高速ミサイル艇で、一番艦の満載排水量は600t、量産型の満載排水量は685t、MTU社製ディーゼルエンジンにより8600kwの出力を発揮し40ノット以上を発揮します。

 沱江級コルベットは、双胴形状の利点である上部構造物の広さを活かし重武装で、76mm艦砲に加え雄風II型対艦ミサイルと雄風III型対艦ミサイルを合計12発搭載し、また海剣Ⅱ型艦対空ミサイル、コルベットとしては比較的射程が長い射程30㎞の艦対空ミサイル16発、20mmCIWSなどを搭載、対潜装備こそ有しませんが高い打撃力を有しています。
■原子力潜水艦タングの起工
 ヴァージニア級の命名基準が分り難い。

 アメリカのジェネラルダイナミクスエレクトリックボート社は原子力潜水艦タングの起工式を挙行しました。8月24日、クオンセットポイント造船所においてヴァージニア級攻撃型原潜SSN-805の起工式が行われ、その際に新潜水艦の艦名はタングと命名、第二次世界大戦中のパラオ級潜水艦の艦名を攻撃型原潜の艦名として継承しました。

 タングは第二次世界大戦中、14か月間に5回の任務を担い33隻の目標を撃沈したとアメリカ海軍最強の潜水艦という栄冠を勝ち取っています。なお、この際に撃沈した相手は現在の同盟国の艦艇です。一部には海上自衛隊艦艇の艦名が中国の国民感情に配慮していない、という批判があるようですが、タング命名の通り武勲艦の名は継承されるのが標準だ。
■麻薬密輸ボート方式
 日本でも孤立した島嶼部での補給問題がある。

 アメリカ海兵隊は封鎖海域での海上輸送に麻薬密輸ボート方式を検討しています。突飛な案とおもわれるものですが、アメリカへ中南米地域からの麻薬密輸を行う麻薬カルテルは自律航行式の半没輸送船を用いており、麻薬監視任務にあたるDAE麻薬取締局やアメリカ沿岸警備隊、協力するアメリカ海軍の厳重な警戒監視を潜り抜け密輸しています。

 自律低背船、という海兵隊が研究する新しい補給方式は、現在すでに試作船が評価試験中で、NSM対艦ミサイル2発を輸送することが可能です。アメリカ海兵隊の統合戦闘開発部副司令官カルステンヘックル中将によれば、海軍が見つけにくい方式は敵にも見つけにくいものだとして、また極めて安価であるため消耗品として使える点を強調しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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