■修理費用200億から50億円へ修正
2007年12月14日の深夜、戦闘指揮所(CIC)での家庭用電気機器から出火した火災でコンピュータ部分を全損した護衛艦“しらね”、一時は除籍も考えられたが、修理の方向で動き始めた。
毎日新聞の報道によれば、2009年に除籍予定の護衛艦“はるな”(写真左の『141』とある艦)のCIC機器を“しらね”(写真右の『143』とある艦)に移植することで、当初、200億円から300億円とされた修理費用を50億円に低減することが可能となり、2009年度防衛予算概算要求に、この費用を盛り込む方向で調整する、とのことだ。
ニュースとしては、今朝0407時頃、ハワイでの訓練から帰投中の海上自衛隊最大の護衛艦である護衛艦“あたご”が千葉県の野島崎沖42kmで小型漁船“清徳丸”と衝突し、漁船が大破漂流中という情報が飛び込んできた、こちらについてはまだ、はっきりとした情報が入らないので詳述は避けたい。
さて、12月14日の護衛艦“しらね”の火災は、当初、電気機器系統のショートが原因といわれていたが、今月18日に発表された海上幕僚監部事故調査委員会の調べによれば、CICに持ち込まれた私物の保冷温庫から異常加熱により出火し、八時間に及ぶ火災となったのが原因と見られている(写真は事故の約一ヶ月前に撮影した横須賀基地の“しらね”)。
“しらね”は、当初、新型護衛艦“ひゅうが”の横須賀配備により、除籍される“はるな”の後継として舞鶴基地に配備されるとみられていたが、09年度予算に盛り込まれることで、舞鶴基地に回航し、“はるな”と“しらね”を横付けして、機器を移植する構想ではないかと、推測する。
火災が原因で、耐用年数も近いことであるし、早期除籍を検討しては、という浅はかな考えをもたれる方もいるようだが、横須賀という首都東京に最も近い基地に配備され、第七艦隊旗艦“ブルーリッジ”の姉妹艦ともなり、永きにわたり、海上自衛隊の顔として活躍した“しらね”は費用以上の伝統が練りこまれている。伝統は醸成されるもので、一朝一夕に札束を積んで買えるものではない。その象徴を火災で失うとあっては、今後五十年の汚点となるだろうが、修理されれば、単なる失火で修理として記録されるに留まるだろう。
他方で、“しらね”型と“はるな”型では、外観では共通する点が多いものの、コンピュータの配置方式など、大きな相違があり、移植はCICごとモジュールで移設すればいい、というような容易なものではない、それよりも、来月にも退役すると考えられるミサイル護衛艦“あさかぜ”(写真の『169』と書かれた艦)から、必要機器を残置し、装備修繕費を用いて早期に修理した方が早いのではないかとも思う。
間もなく、海上自衛隊六隻目のイージス艦である“あしがら”が就役し、来年にはヘリコプター運用能力を飛躍的に向上させた“ひゅうが”が、潜行能力を大きく高めた新型潜水艦“そうりゅう”が就役、次期固定翼哨戒機XP-1の運用試験も進むであろう、しかし、それを支えるのは、伝統に裏打ちされた海上自衛官に他ならないということを考えれば、旧海軍の軍艦旗を自衛艦旗と定め、自衛隊が日本型組織である以上、伝統墨守であって然るべきと信じたい。
HARUNA
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