■KC-767 岐阜基地到着
近海練習航海部隊舞鶴出港の本日2月20日、中日新聞Web版やFlightaware.comにKC-767の岐阜到着に関する情報が出ていた為、こちらの方を撮影するべく岐阜基地に展開した。マッコーネル基地から岐阜基地にそのまま飛来したようだ。
航空自衛隊が始めて装備する空中給油輸送機となったKC-767,本機は戦闘機や輸送機、将来的には早期警戒管制機に対して空中給油を行い、航続距離や滞空時間の延伸延長を行うとともに、人員や物資などを貨物機と同じように輸送することが可能な航空機である。2001~2005年の中期防衛力整備計画で4機が整備され、最終的には7機程度が整備されるといわれている。
ボーイング社によればKC-767の空中給油能力は、遠隔空中給油操作員が遠隔視野システムによりフライングブームを操作し給油する。機内には自機用の燃料を含め91.62㌧の航空燃料を搭載でき、これはF-15Eで14機強、F-16Cで29機強の燃料を満タンにでき、追加燃料タンクを機内の貨物室に搭載すれば更に18.5㌧を搭載できる。給油速度は燃料がほぼゼロのF-15Eであっても2.34分で燃料を満タン状態にすることができる。
機体後部に伸びているのがフライングブーム。なお、このKC-767は空中給油輸送機と呼ばれているところから判るように元々ボーイング767-200ERを母体としただけあってパレット輸送方式で最大34.97㌧の貨物を輸送できる他、与圧された貨物室をキャビンとした場合、座席パレットを配置して192~200名の人員を輸送することが出来、緊急人道支援任務や邦人輸送任務にも用いる事が出来る。
航続距離は貨物4.7㌧搭載の状態で1400km、31.7㌧の貨物を搭載した場合でも9250kmの航続距離がある。貨物輸送型から人員輸送型への転換は4.3時間、これを戻すのに4.2時間。貨客混合運用も可能である。なお、KC-767は航空自衛隊のほか、イタリア空軍も採用しているが、原型機であるボーイング767は51%をアメリカが生産、日本が29%、イタリアが20%生産に参加している。
KC-767は本日着陸した岐阜基地に隣接する川崎重工岐阜工場で整備を受けた後、中日新聞2月19日朝刊(Web版)によれば29日頃に防衛省に引き渡される見通しとのこと。また、配備先となる小牧基地へは出来るだけ早く行われるとされ、2号機も年度内に日本へ到着する予定。運用開始は2008年度末の見通しで、岐阜基地から約60名の空中給油輸送機実用試験隊が小牧基地に派遣され運用試験を実施、その後、小牧基地に新編される部隊が運用する計画と報じている。
KC-767日本到着は以上。昨日の護衛艦あたご船舶衝突事故について。痛ましい事故ということで哀悼の意を表すとともに、大手マスコミによる報道の偏重には首を傾げざるを得ない。本ブログに報じているように、“あたご”は舞鶴を出港し、正月返上で訓練を行い、帰国している。
事故報告の遅れが海上自衛隊の危機管理云々いわれているが、“あたご”は緊急時ということで海上保安庁への通報とともに、第63護衛隊、第3護衛隊群を飛び越して船越の護衛艦隊司令部に通報しており、衝突回避失敗に問題はあるが、事後、手続き的には問題ないように思う。吉川海上幕僚長の危機管理意識もいわれているが、吉川幕僚長は98年に“はるな”艦上から第3護衛隊群司令として日本初の海上警備行動を指揮したことで知られ、判断した彼は危機管理については第一人者である。マスコミはこの事実を知っているのだろうか。状況の進展状況を把握しなければ、それこそ防衛大臣が常時中央指揮所に詰めていなければならなくなるほどの情報が集中してしまう。あと、イージスシステムのSPY-1Dレーダーと航行に用いるOPS-28C対水上レーダーの相違に関しては、事故後半日ほど触れられていない。これについては、後日、改めて詳述したい。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
十年くらい前(もうそんなに経つのか)E-767が来た時、767貨物機に見慣れた友人が凄い違和感あるって言ってたり
ご無沙汰しています。
あたご・・・
詳細な事実関係はわかりませんが、私なりの感想を述べますと。
まず自動操舵というのが解せません。確かに民間商船ではごく普通の装備ですしコスト面からも流用したのかもしれませんが、護衛艦には不要ですよ。操舵員の腕も鈍るし、舵を握っているからこそ分かる船体や周囲の微妙な変化もあります。こういう異変を察知するカンは侮れません。ハイテクに頼ることの危険性が出たようにも感じられます。
見張りはもっと早く視認していたはずだと思いましたが、やはりそのようです。どうも見張り・伝令・レーダのうち少なくとも一人、ひょっとすると三人ともまだ経験の浅い海士だったようにも思います。当直交代直後のようなので、申し継ぎが不十分だった可能性も。ただ航海当番とCICワッチ・機関科ワッチは別に回していることも多いのですが。
あの時にどういうフォーメーションが下令されていたのか知る術はありません。ただ陣形を組んで航行中の自衛艦は陣形を崩すことを嫌がるのは事実です。結果的に避航の判断が遅れることは大いに考えられます。
ネット上で見ると一部誤解している人がいるようなのでここで指摘させて頂きます。軍艦に航行上の優先権はありません。国際的な海上ルールでもそうです。慣習法だという意見もありますが、それ以前に互いが安全に航行するよう努めるのが義務です。運動性が良好な船舶がそうではない船を避けるのがこれはもうマナーです。ただ素人のプレジャーや生活のかかった漁師さんは、けっこうムチャするのも現実です。
行方不明のお二人の無事を祈ります。
舞鶴行ってみたら、みょうこうの定期整備が来月にも終わりそうなので、あたごと揃う三月中ごろに舞鶴に行こうかな、と考える今日この頃です。
さて、その、あたご。
“あたご”は、2007年に就役し、それまで舞鶴にいた“しまかぜ”が佐世保に移る形で、3護群に配備されたんですが、この場合、“あたご”の乗員って、退役した“たちかぜ”の乗員が来たんでしょうかね(新造艦乗員選定の基準ってよくわからないのですが)、それならば、舞鶴のフネですが、横須賀の入港にはある程度慣れていたのかな(“たちかぜ”は護衛艦隊旗艦として横須賀配備)と。
自動操舵から手動に切り替えるタイミングというのは、どのくらいなのか知りませんが、事故海域が野島崎42kmということをききますと、42kmは舞鶴~経ヶ岬にあたる距離なので、これだけ離れているとまだ自動操舵のまま、という判断もあったのだろうと思います。
で、現在、まだ衝突した清徳丸の航路について海上保安庁から発表が無いので、自信はないのですが・・・
①幸運丸・・・三隻船団の先頭で、あたご直前を右舷方向から通過
②清徳丸・・・乗員の証言では緑灯がみえた、しかし、二分前に横切っているところを確認し、逆進、しかし間に合わず衝突
③金平丸・・・幸運丸とともに、“あたご”前を横切ろうとするも、危険と判断し変針、“あたご”右舷を通過
となっています(朝日新聞掲載の図を参考)。取舵では幸運丸に衝突する可能性があり、面舵では金平丸に衝突する恐れが出てきます、で、“あたご”逆進、という判断は正しかったのか、と。
ここで気になるのは清徳丸の緑灯がみえていた、という点です。
GPSのデータが回収されたものの、水中にあった為、データ解析は難航しそうですが、“あたご”の前を通過した幸運丸に続く為に直前で変針して衝突した可能性は無いのかな、と。
なにぶん、大阪湾展示訓練での神戸港におけるプレジャーボートの接近とか、沖合いの接近とかで、危ないな、と素人目にも見えましたので、そんな印象を受けてしまいました。
OPS-28対水上レーダーについては、データがあまり公表されていないので、断言できませんが、アメリカのSPS-55対水上レーダーと同程度の捜索能力があるという話を信じるならば、12分前にレーダーで漁船を発見することはできたと思います。
最近は海自の現状にも疎いので。。。
基本的に艦隊(群)でも曹士の人事は地方総監部です。慢性的な人不足の舞鶴は大湊や佐世保から人を融通してもらっているのですが、大多数は舞鶴の人間と考えて間違いないでしょう。
間違ったのは私で、あたごは単艦で行動してたようですね。陣形は関係ないようです。ただ、漁船の船団と行合船の航法の関係に入ったわけですから、もっと早く面舵とるべきでしたね。早めに対処すればロスも小さく済むものです。
なによりあそこまで他船を近づけたのがそもそもあってはならないこと。自爆テロ云々ではなく、船乗りとして失格ですよ。
レーダについては私も素人ですが、航海用レーダの有効範囲は水平線までと考えて大きな間違いはないと思います。水平線までの距離は海面からの高さによりますから、レーダアンテナはなるべく高い位置にあります。
曹士の人事が地方総監部というのは知りませんでした(まだまだ知らないことで一杯)。ということは、横須賀入港の回数はそんなに多くないのかな、と。
見えた見えないに関しては、三隻の漁船の間隔などが今後の焦点となるんでしょうか、近いとレーダー画面のエコーに隠れてしまう(フェリーのレーダーしか覗いたことありませんが・・・)ということも考えられますし。このほか、当該海域の漁船がどの程度いたのか、これは敦賀の漁船出港なんかを釣りでみたことがあるのですが、かなり多数同時に出港してますし、あと、清徳丸の進路、GPSデータの解析等など、ここらへんは海上保安庁と事故調査委員会の発表を待つしか無いのですが・・・。
あたご乗員の大部分は、横須賀入港の経験はそれほど多くはないでしょうね、おそらく。
はっきりした航跡図が明らかになるまでは真相は不明なものの、現在判明している事実からでも「あたご」が漫然と航行していたと指弾されても仕方ないようです。
はっきりいって漁船には要注意です。海自の艦船乗りなら分かっていたはずです。
海上の交通ルールについてはネット上でもにわか評論家がいろいろ言ってますけど、ほとんど的外れですね。時折傾聴すべき意見もありますが、やはり経験者の言のようです。
航海法規については最低限の決まりと理解したほうがいいですし、事実その観点から法も定められています。
同じ船が同時に避航船でもあり保持船でもあるという状況は珍しくありません。法を杓子定規にあてはめることはできませんし、法もそれを求めていません。全体を判断して最善のコースをとっていくもので、相手の船もそうです。いわばお互い「あ・うん」の呼吸で走らせているわけで、従って経験がものをいう世界なんです。これは法自体が「グッドシーマンシップ」を要求していることでも明らかです。
素人のプレジャーも迷惑なものですが、プロの漁師ならすべて理解してあえてやっているはずなんです。彼らも馬鹿ではありませんし、生活がかかっていますからね。
漁船は不規則な航行をするので衝突されないよう、要注意、という視点は確かに必要なのかもしれませんが、何分、漁協側の憶測情報を大手マスコミが事実確認をせず報じているところに、今回、いちばんの違和感を感じます。
他方、ええと、軍事評論家の岡部いさく氏が新聞などの取材に答えている話から、長期航海にともなう精神的疲労を配慮するべきではないか、として、そもそもヒューマンエラーが生じにくいローテーションを設定しては、というような話がでていました。
インド洋対テロ派遣やミサイル防衛対処訓練など、護衛艦の数は減少する中で行動海域が広域化し、長期連続の洋上勤務の期間が増加している現状を考えれば、米軍のように乗員のみを輸送機で輸送し現地で交代させるなど、これまでの海上自衛隊では考えられなかったような人的配置や勤務体制を行えるように、自衛隊再編というべき改編がそろそろ必要になっているのかな、と。