北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】スイスF/A-18延命改修とインドネシアラファール導入,アメリカのイーグル拡張運用

2023-05-01 20:23:56 | インポート
■防衛フォーラム


 スイス空軍は旧式化と老朽化が進むF/A-18C/Dホーネット戦闘攻撃機の延命改修を完了しました。これは飛行耐用年数を一機当たり6000時間に延長するという計画の一環です。計画では費用として4憶5000万スイスフランが投じられ、特に主翼構成部品の交換など構造寿命の延命に重点が置かれていました。この改修により2030年代まで運用が可能となる。

 F/A-18C/Dホーネット戦闘攻撃機、これはレガシーホーネットという現在製造が維持されているスーパーホーネットよりは古い初期型の改良型ですが、スイス空軍は単座型のF/A-18Cホーネット戦闘攻撃機を26機、複座型のF/A-18Dホーネット戦闘攻撃機を8機導入しています。この戦闘機は旧式化したフランス製ミラージュⅢ戦闘機を置換えました。

 スイス空軍はF-35ライトニング戦闘機を導入予定であり、現在、国内でのFACO最終組み立て施設誘致が可能かに関する議論と調整が続けられています、ただ、スイス議会はF-35戦闘機調達を可決しており導入計画が覆る可能性は今のところありません、F/A-18C/Dホーネット戦闘攻撃機はそれまで運用を続けるよう、延命改修を行ったというかたちです。
■インドネシアラファール
ストライクイーグルとラファール同時導入というかなり思い切った事を進めるインドネシアです。

 インドネシア空軍はフランスへラファール戦闘機操縦訓練生を派遣しました。これはインドネシア空軍が次期戦闘機として導入するラファール戦闘機の操縦要員機種転換訓練が目的であり、先ず6名の要員がフランスに派遣されています。インドネシア空軍参謀総長のファジャールプラセチョ元帥によれば、フランスでの機種転換訓練は三ヶ月間という。

 ラファール戦闘機について、インドネシア政府は2022年1月22日にフランスとの間で42機の調達を正式契約しており、単座型30機と複座型12機を取得する計画です。ラファール戦闘機はフランスが誇る第4.5世代戦闘機であり、完成当初は輸出面において伸び悩みましたが近年ではインドやエジプトにアラブ首長国連邦など国際販路を拡大しています。

 インドネシアは更にF-15戦闘爆撃機も取得します。F-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機は当初フランスのラファール戦闘機とのあいだで次期戦闘機を競う構図となっていましたが、結果的にインドネシアは一機種に戦闘機を絞るのではなく、欧州とアメリカ、ラファールもストライクイーグルも両方とも導入するという費用面で大胆な決定を下しました。
■T-7A量産開始遅延
 アメリカはT-38練習機の老朽化が凄いことになっていますが日本も余所事ではないT-4の問題があります。

 アメリカ空軍はT-7Aレッドホーク高等練習機の量産開始を2024年に延期する方針を示しました。T-7Aレッドホーク練習機は旧式化とともに老朽化が看過できないほどに進んでいるT-38タロン練習機の後継と位置づけられており、スウェーデンのサーブ社が開発したJAS-39グリペン戦闘機の技術を流用し第五世代機要員用に新しく開発された練習機です。

 T-7Aレッドホーク練習機はデジタルファースト方式という、完全なペーパーレス方式での迅速な開発を進めたことで知られていますが、機体は完成したものの迅速な能力化という試みは今回の遅延により2年の延期となりました。空軍によれば製造を担当のボーイング社との間で製造費用について調整が必要になったとされています。T-38老朽化は深刻です。
■アグニⅢ中距離弾道弾
 日本の反撃能力もこの水準まで進むのでしょうか。

 インド軍は11月23日、新型のアグニⅢ中距離弾道ミサイルの発射実験に成功しました。アグニⅢは多段式ミサイルであり一段目が32tと二段目が10t、試験用に10基弱が製造されていて、2011年から開発が継続されているミサイルであり、その射程は3000kmから5000km、現行のアグニⅡ弾道ミサイルの後継装備として開発が進められているものです。

 アグニⅢ中距離弾道ミサイルは中国内陸部の核ミサイル施設などを標的としているとされ、特に今回はミサイル本体の小型化を重視、中でも弾頭の多弾頭化を構想しており、通常弾頭に加えて核弾頭を搭載しての運搬能力としても期待されている、またインド軍ではこのアグニⅢをもととしてインド独自の弾道弾迎撃システムの開発も展望しているとされます。
■HH-60G火力強化
 戦闘救難を考えれば高い戦闘能力も求められるという事ですが、ガンシップ並みに強化されてる印象です。

 アメリカ空軍はHH-60G救難ヘリコプターの火力強化実験を実施中です。救難任務は敵対地域での墜落事案への戦闘救難任務を実施するべく一定程度の自衛能力を有していますが、今回アメリカ空軍第943救難飛行隊では新しいHH-60G救難ヘリコプターへ4丁のM-240軽機関銃の追加を行うとのこと。この機体は既にミニガン2丁を積んでいます。

 HH-60Gには2丁のGAU-2Cミニガンを搭載していますが、左右に双連装備したM-240軽機関銃を追加しました。M-240を搭載した背景にはHH-60Gの胴体設計強度が12.7mm機銃の反動に対応していない為とされ、若干時間の連射には耐えても任務遂行にわたり継続できる火力ではないということ。実験はアリゾナ州のデイビスモンサン基地で実施中だ。
■キジレルマ無人戦闘機
 トルコ空軍にはまだ一定数のファントムが残っているのですが。

 トルコのバイラクタル社は12月14日、画期的な無人戦闘機キジレルマの初飛行に成功しました。ステルス性に配慮したキジレルマ無人機はMIUS有人無人機共同計画の一環として開発が進められていたもので、トルコ空軍が運用するF-16戦闘機などの有人戦闘機を支援しステルス性を活かした情報収集や攻撃任務にあたることなどが期待されています。

 キジレルマ無人戦闘機は全備重量6000kg、最大1500kgの各種機材や爆弾とミサイルなどを搭載可能となっています。無人機ではありますが機首にはAESA方式のレーダーを搭載しており、また試作機はAI-25TLTエンジンを搭載、このエンジンを搭載した場合では亜音速飛行が限界ですが、将来的には新型エンジンを搭載し超音速飛行を計画している。

 AI-332Fエンジンとして超音速飛行用のエンジン搭載は進められており、試作二号機は超音速飛行が見込まれている。一方、期待はステルス性に配慮した形状であるものの外見の特徴としてカナード翼の採用があり、これはステルス性には不利ですが機動性を重視したとも受け取れる設計で、バイラクタル社は2023年初飛行予定を前倒し実現しました。
■韓国新AEW機選定
 E-2Dにした方が、とも思う一報でグローバルAEWはNATOでもE-3早期警戒管制機の後継機に注目されているもの。

 韓国空軍は次期早期警戒機としてグローバル6500AEW早期警戒機を選定しました。これは韓国空軍の早期警戒機強化計画を受けてのもので、現在韓国空軍はボーイングE-7A早期警戒機4機を運用していますが、北朝鮮ミサイル演習増加などの情勢緊迫を受け、さらに4機の早期警戒機を増強し8機体制を目指し機種選定をすすめてていました。

 グローバル6500AEWはアメリカのL3ハリス社が開発したカナダ製ビジネスジェットを原型とした早期警戒機で、レーダーシステムはイスラエルのIAI社が開発したものを搭載しています。搭載するグローバル6500はカナダのボンバルディア社が開発した長距離ビジネスジェットであり、航続距離は12000kmに達し、またマッハ0.9で巡航飛行が可能です。
■アルバニアTB-2
 使いやすいのでしょうがこのところウクライナでの新しい戦果を聞かないのですよね。

 アルバニア空軍はトルコ製バイラクタルTB-2無人機を導入します。これは2022年12月にアルバニアのラーマ首相が直接契約を結んだとのことで、第一段階として3機のバイラクタルTB-2を引き渡すとのこと、納入時期はまだ発表されていません。トルコのバイラクタル社によればアルバニアは27番目のバイラクタルTB-2無人機運用国となります。

 バイラクタルTB-2は1セットの構成要素が無人機6機と地上完成装置2基に地上データ中継端末3基から構成されています。比較的小型の無人航空機であり、電子ビームにより直接管制する方式であり、改良型の大型TB-3までは衛星からの運用管制にも対応していませんが、小回りが利き、対戦車弾薬も投射可能、戦術無人機として強力な装備です。
■イーグル拡張運用
 標準的にこの装備で運用する事を想定しているという。

 アメリカ空軍はF-15EXの拡張ミサイル運用能力試験を開始します。イーグルⅡとして配備が始まったF-15EXについて、ステルス機ではないF-15EXは大量の装備搭載能力が期待されているとし、特にAMRAAM空対空ミサイルの運用能力を通常の4発から8発搭載を基本とするべく新型兵装架を開発している。このほかにAIM-9を4発搭載するという。

 F-22戦闘機やF-35戦闘機は基本的に機内にミサイルを搭載するため、多数を装備することはできません、それはステルス性を損なうためです。目一杯搭載する場合、F-15の強みである空中運動性能をも損なう点が問題とされてきましたが、現在アメリカの第96飛行開発実験航空団では新型兵装架により機動性と大量搭載能力の両立を試験しています。
■スロバキアF-16V
 MiG-29はウクライナ送りですね。

 スロバキア空軍は導入開始が迫るF-16V戦闘機へ運用基盤を構成する合弁企業LOTNを開設しました。スロバキア空軍は老朽化が進む旧ソ連製MiG-29戦闘機を運用中ですが、老朽化とともにロシアウクライナ戦争に伴う経済制裁などにより、逆にMiG-29戦闘機の運用支援を受けられない状況に直面しており、後継機としてF-16V戦闘機を選定しました。

 F-16V戦闘機はbloc70の愛称、従来のF-16C戦闘機を発展させたF-16E戦闘機よりもはるかに発展したという意味でF-16Vの名称を冠しています。搭載されるレーダーはアンテナアレイ式から近代的なAESAレーダーへ切り替えられており、一部にはF-16のかたちをしたF-35という表現もあります。ただF-35戦闘機のようなステルス性はありません。

 スロバキア空軍のF-16V戦闘機導入計画は14機を16憶ドルで取得するというもの。決して経済的に余裕のないスロバキア政府にとり、この16憶ドルは軽い負担ではありません。合弁企業LOTNはF-16戦闘機の保守整備、特に重整備を国内で行うことにより費用負担軽減と国内産業への恩恵を期待するとともに、兵站情報管理技術へも参入するとの事です。
■クウェート空軍TB-2
 この種の航空機の位置づけは何とも難しいところはあるのですがもう少し小さな無人機に備えるには昨年廃止したVADSが必要と思う。

 クウェート空軍はトルコからバイラクタルTB-2無人攻撃機の導入を決定しました。この契約は3億7000万ドル規模の契約であり、機種選定は2019年より実施されてきました、参加企業の詳細は発表されていませんが、アメリカと欧州及び中国企業が参加しているとのことで、バイラクタルTB-2無人攻撃機はウクライナでの実践経験なども評価されている。

 バイラクタルTB-2無人攻撃機の導入機数については発表されていませんが、3憶7000万ドル規模の契約は年間契約全体でみた場合でもかなりの規模となっています。2022年を例に見ますとウクライナでの運用実績もあり、バイラクタルは世界中で引く手数多となり、生産数の99%以上は輸出用となったほか、その輸出契約金額は11億8000万ドルとなりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国産戦闘機開発-イギリス・イ... | トップ | 【G3X特報】第33普通科連隊創... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事