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陸上防衛作戦部隊論(第四八回):装甲機動旅団編制案の概要 総括,装甲機動力の基盤

2016-03-20 22:22:20 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団編制案
 装甲機動旅団編制案の概要 総括,装甲機動力の基盤について、後方支援部隊音楽隊とともに全体を俯瞰してみましょう。

 音楽隊を旅団はその編成に含みますが、音楽隊は現在の任務として平時における音楽演奏による士気高揚との任務を持つと同時に、有事の際には指揮所警備の任務を有しています。この点については様々な視点があるのでしょうが、競技会等を見た限り、音楽隊による士気高揚は重要な任務であり、民心安定も含め、指揮所警備任務には専門の警備部隊、例えば警務隊等を当て、音楽隊は有事に際しても本来任務に充てる必要があると考えます。

 総括として装甲機動旅団編制を俯瞰します。普通科連隊は3個普通科連隊を基幹とします。各普通科連隊は伝統的な基盤的防衛力構想に基づく、本部管理中隊、2個普通科大隊、重火器中隊を基幹とし、普通科大隊の一方が現役要員を基幹として装甲機動旅団隷下となり、もう一個大隊は即応予備自衛官及び共通教育中隊を基幹として有事には方面混成団へ配属する。

 普通科連隊長は機動運用部隊となる現役大隊と地域防備の主力となる予備大隊を隷下に置く重厚な編成とします。普通科連隊は旅団隷下においては事実上一個大隊の編成となりますが、現役大隊は2個装甲普通科中隊と1個軽装甲機動車中隊を基幹とし、装甲普通科中隊は戦車へ協同し機動打撃力を展開可能となるよう、装甲戦闘車を装備します。89式装甲戦闘車は数が不足しています、この為に装甲戦闘車を増勢しなければなりません。

 装甲機動旅団編制の目的は、限られた戦車を最大限能力を発揮できるよう、戦車中隊に2個装甲普通科中隊を配属し、機械化大隊を編成する事に主眼を置く。軽装甲機動車中隊は小隊ごとに小銃班を複数車両へ分散し、車両数を多く出来る特性を活かし、先鋒部隊として情報収集と威力偵察、防御戦闘時には軽対戦車誘導弾や機関銃など、各種火器を搭載し前地戦闘を担う。

 普通科連隊の変則的な編成は、連隊としての規模、旅団としての能力と連隊長の位置づけを考えての上です。軽装甲機動車中隊は主陣地での戦闘に際する後方の段列地域との連絡線を維持する、重火器中隊は120mm重迫撃砲RTと中距離多目的誘導弾等対戦車ミサイルを装備し、必要であれば軽装甲機動車中隊と共に重火器中隊を組み込む機動大隊を編成可能、というものとしました。

 戦車大隊は装甲機動旅団の骨幹戦力で、41両の戦車を装備します。この戦車の配備は、全国の各方面隊へ戦車を配備し機動打撃力基盤を維持するために重要な施策です。戦車大隊は、3個戦車中隊を基幹とし、各中隊は3個小隊を基幹とする、戦車小隊は小隊長と小隊陸曹とに分遣運用を視野に置き4両編成とし、戦車小隊所要と中隊長車を合計で各戦車中隊は13両を装備、中隊長車は中隊予備車両としても運用します。

 戦車大隊本部には、大隊直轄車両として2両の戦車を配備し、3個戦車中隊39両と併せ41両が理想的編成と結論付けています。戦車は10式戦車がネットワークシステムを採用しており、90式戦車にも広域多用途無線機の搭載により順次その性能が追加されています、装甲戦闘車への端末搭載や、中距離多目的誘導弾システムとの連接により第一線から後方に掛けての広範な情報協同体制が形成できるでしょう。

 戦車の装甲戦闘車との連携ですが、現在90式戦車と10式戦車乗員は装填手の自動装填装置への自動化により陸曹と幹部の乗員で構成されており、陸士乗員はいません、この為長期的に戦車乗員が縮小され戦車数もさらに縮小されるならば、戦車部隊を維持する事が出来なくなるため、機関砲を搭載する装甲戦闘車を配備する事で装軌車操縦要員と火器管制装置運用に習熟した要員を普通科と連携し養成できる利点もあるかもしれません。

 偵察隊は、偵察小隊及び無人偵察機小隊を基幹とし、偵察小隊は威力偵察を主眼として装甲車両を装備、無人偵察機は努めて可搬式の航空機を運用し、旅団として独立した情報収集を念頭とします。この他、特殊武器防護隊として中隊規模の化学兵器及び生物兵器や核兵器と放射線兵器に対応する情報収集、除染と治療を任務とする部隊を置き、情報は旅団司令部へ包括し集約します。

 特科部隊は野戦特科部隊と高射特科部隊を置きます。野戦特科部隊は、特科連隊に集約し、特科連隊は連隊本部、3個特科大隊、1個全般支援特科大隊を基幹とする編成とします。各特科大隊は2個特科中隊を基幹として、中隊は自走榴弾砲5門を運用、大隊は10両の自走榴弾砲を装備します。99式自走榴弾砲と火力戦闘車の装備、短期的にはFH-70榴弾砲でも任務に対応可能です。

 全般支援火力を特科連隊は有します、装甲機動旅団は機動打撃力を骨幹とする編成であり、全般支援特科大隊には多連装ロケットシステムMLRSを装備、陸上自衛隊の装備数から大隊は12両の縮小編制となりますが、MLRSは射程70kmのGPS誘導が可能な240mmロケット弾を装備、単弾頭型ではありますが、瞬発火力の集中は全体の攻撃力を大きく強化できることでしょう。

 高射特科部隊は、高射特科大隊を基幹とし、自走高射機関砲乃至近接地対空ミサイルを装備し連隊戦闘団へ派遣される3個高射小隊を基幹とした高射特科中隊、短距離地対空誘導弾4セットを配備し、旅団段列地区等策源地の防空にあたる全般防空支援に充てます。高射小隊は自走高射機関砲か近接戦闘車高射型を装備し、機械化大隊へ随伴して直掩防空を担う編成です。

 施設部隊は施設大隊を基幹とします、大隊本部隷下には渡河器材小隊等重装備を置き、施設中隊は隷下に3個を置きます、施設中隊は基本的に同一編成として、連隊戦闘団へ配属します。各中隊は機動支援を念頭として、地雷原処理と障害処理や築城と交通の各機能を有し、装甲ドーザや施設作業車に地雷原処理車を装備、これら施設機材とともに地雷原処理装置や排土板にウインチと小型クレーン等を装備した軽装甲車両などの装備を提示しました。

 通信大隊は2個通信小隊と電子戦小隊を隷下として電子交換装置交換装置系、幹線無線局地無線搬送装置と光伝送装置伝送装置系、移動加入基地局装置移動加入端末装置符号変換装置及び画像端末装置等端末装置系、多重データ回線連接装置系を装備、移動基地局等は電子戦により標定される為、軽装甲車両と通信中継用無人車両を運用し強靭な野外通信網を整備する、との必要性を提示しています。

 飛行隊は、可能であれば通信中継と戦域情報管理に寄与する戦闘ヘリコプターの装備が理想ではありますが、戦闘ヘリコプター数に余裕がなく、この為航空部隊の重装備は航空機動旅団へ集約装備し、装甲機動旅団は航空部隊を飛行隊として、観測ヘリコプターと軽多用途ヘリコプターを統合した航空機を10機程度装備し、可能であれば自衛戦闘能力を付与、飛行隊は空中機動は二次的に、主任務は重要装備輸送や負傷者後送等に置く、としました。

 後方支援連隊は、直接支援に当たる直接整備大隊と重整備を担う重整備大隊に区分し、直接整備大隊は装軌車直接支援中隊、火器電装直接支援中隊とします。後方支援部隊には、輸送隊、衛生隊、を置きます。PLS輸送車を中心としたコンテナ輸送を輸送の軸として、弾薬や戦闘維持物資は勿論、燃料等も可能な限り液体貨物コンテナへ積載し、電子タグによる現代的補給網を構築します。

 第一線への補給態勢維持には、直接支援中隊配布部隊を置き第一線への連絡線を構成し、装甲補給車両の必要性も提示しました。機動整備車としてトラックを原型とした直接支援車両の必要性も提示しています。衛生隊は現在の編成を基本としますが、緊急野外外科手術器材を装甲車へ車載したもの、軽装甲機動車を原型とした救急車両の必要性も提示しました。

 装甲機動旅団、人員4900名:戦車41両・装甲戦闘車90両・特科火砲30門・MLRS12門を基幹とし、編成は以下の通り。旅団司令部、司令部付隊 、普通科連隊、普通科連隊、普通科連隊、戦車大隊、偵察隊、特科連隊、特殊武器防護隊、高射特科大隊、施設大隊、通信大隊 、飛行隊、後方支援隊、音楽隊、以上です。北部方面隊の旅団編成に全般支援火力を付与し施設部隊を強化した編成といえるかもしれません。

 陸上自衛隊は戦車部隊を大幅に縮小します、しかし、本土にも脅威は及ぶ蓋然性があり、防備に限度のある地域が攻撃の脅威にさらされる、そこでこの限られた戦車の能力を最大限活かすには機械化大隊を全国の方面隊に置き、防衛基盤を普遍化しなければなりません。広域師団、として機動打撃力を統合する装甲機動旅団、緊急展開能力を統合した航空機動旅団、以上の2個旅団を基幹とする編成を提示しました。

 装甲機動旅団の編成概要については長くなりましたが以上の通りです、進出と進出掩護や防御と攻撃を必要な火力と機動力を有しつつ確保出来る装備体系を運用体系を一つの部隊に纏めた場合、こうした編成が必要となる、一案を示したわけです。次回からは、装甲機動旅団と共に機動防衛力の即応部分を担任する航空機動旅団の概略について紹介する事としましょう。

北大路機関:はるな くらま
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