北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

八月の終戦-令和三年太平洋戦争終戦記念日【2】ふつうの国へ回帰してゆく日本の将来

2021-08-15 20:00:11 | 北大路機関特別企画
■そして日本は普通の国となる
 本日は八月十五日、今年も暑い熱い夏とともに本日無事に終戦記念日を迎える事となりました。

 終戦記念日。令和3年もこの日を迎えることとなりました。昭和史、最大の転換点は、しかし平成時代を超えて現在令和の時代を迎えています。愛変な戦争でした、しかし76年を経て、従軍した方々も多くが旅立たれ、戦後の長さというものを実感するように思うもの。今回は戦後というものの転換期を、ふつうの国、という視点から考えてみましょう。

 ふつうの国、この論点は日本憲政史上最長の長期政権を実現した安倍首相が、"戦後レジームの転換"として掲げたものです。そして、ふつうの国、というものの概念は、制度として自分の国を自分の国の決意と実力で防衛する、こうした考え方でした。しかし、日本は求めると求めざるとに関係なく、否応なしにいま"普通の国"へ収斂しつつあるのではないか。

 中国大陸の半分を制圧し、ハワイからインド洋、東南アジアからオーストラリアまで及んだ太平洋戦争時の日本の軍事力は、普通の国というには度が外れて巨大なものであったのは確かです。見敵必戦を掲げたイギリス海軍も南雲艦隊のインド洋進攻の前に退避を余儀なくされましたし、戦前戦中の中国大陸上空往く渡洋爆撃大編隊も、今では想像できない。

 戦後日本が戦争放棄を宣言し、新憲法において軍備を否定したとしても、関ヶ原の戦いの後に豊臣家が徳川幕府から警戒されたような、あの壮大巨大な軍事力は廃棄されても、巨大な軍事力を生み出した国家そのものは健在であったことは事実でした。実際、戦後日本が一度も軍事侵略を受けていない背景には、緒戦の快勝、あの戦争の奮戦があったと思う。

 在日米軍が居たからだ、こう思われるかもしれませんが、瓶と蓋論、こういいまして在日米軍が置かれているのは日本が独自の強大な軍事力を必要とする状況に持ち込まない為である、こうした説明がワシントンDCで普通に通っていたのは、キッシンジャー時代やアーミテージ時代、つまり平成時代まで続いていた為でして、この価値観こそ、戦後でした。

 中国は前の東京五輪、1964年に中華民国海軍と中華人民共和国海軍による台湾海峡での海戦を行っていますが、建国以来、1949年ウイグル併合、1952年朝鮮戦争介入、1953年チベット併合、1965年中印戦争、1969年ダマンスキー島事件、1979年中越紛争、1992年ミスチーフ環礁占領、周辺国全てに侵略していますが、唯一日本だけ攻めていないのですね。

 日本は軍備を放棄したものの、普通の国、周辺からは侵略するには過去の歴史というものがあり、例えば巨大な工業力、造船能力一つとっても必要ならばかなりの艦隊を短期間で練成し得ましたし、人口も一億を超えている。いわば、太平洋戦争の遺産というべき歴史が、不の遺産かはさておき、畏怖の遺産は、日本の平和に寄与していたこととなります。

 1968年、日本のGNPは西ドイツを追い抜き世界第二位となりました。これも、変な意味で日本を"普通の国"から遠ざけたようにも思います。なにしろ世界第二位、戦争では負けたが経済では、とは映画の台詞のようですが、なにしろ勤勉と超過勤務がGNIの数字に出た構図なのですから、経済大国、大国、当時の方々は気分の悪いことではなかったでしょう。

 金持ち喧嘩せず、こうした表現は好きではないのですが、世界第二位の経済大国であった時代の日本では、日本が戦争を望まなければ戦争は起きないのではないか、一種の札束で相手の戦意を挫く如く、不思議な奢りがあったのではないでしょうか、戦争が相互的、実際戦前日本は戦意の無い相手にも攻撃を加えているのですから戦後価値観は不思議でした。

 しかし、その経済大国としての地位も2010年代に中国に追い抜かれることとなり、毎年10%以上の経済成長を行えば7年間でGDPは倍増します、低成長とマイナス成長を続けた日本は、世界三位を維持していますが、急成長を続ける新興国の成長率には及びません、高度経済成長時代の10%成長はもちろん、安定成長期の5%も、最早昔の話となりました。

 普通の国になりつつある。すると、防衛の努力も、経済大国の時代のように札束の防護壁は構成できない時代なのですし、戦後間もない頃のような帝国陸海軍の遺産も流石に2020年代までは続いていません、戦争は1940年代の話、今の世界には1940年以降に建国された国の方が多いのですから、ね。すると、平和には相応の努力が必要となるのではないか。

 日本は平和主義を掲げていますが、世界の国で戦争主義を掲げる国はありません、此処を忘れず。そもそも正戦論というものが国際法の源流にあり、歴史上自国を侵略国と自称した国はありません、そのなかで日本が世界とどう平和のとらえ方が違うのかとすれば、世界は平和が目的である、しかし日本では憲法の運用上、平和は手段となっている点が違う。

 手段としての平和は、目的としての平和とことなり、結果的に国民が平和的生存権を享受できるかについては示していません。例えば防衛力を用いた予防外交や抑止政策が戦争を回避できる可能性はあったとしても、憲法上は陸海空軍を否定しているために、結果として戦争になっても、その時はその時に考えるという建前の政策となっています。驕りだ。

 普通の国、ふつうの国。戦争を抑止するための軍事力と、その位置づけを主権者が理解しなければ国土国民を惨禍から守ることはできません、途上国でさえ無理をして国防の支出に耐えているのは、相応の防衛力を構築しなければ普通の国は戦争に巻き込まれるか、第三国の介入により内政に影響されるのと避けられないためです、それが普通といえます。

 日本は、経済規模も人口規模も工業力も先端技術力も、充分平和的生存権を明記した憲法の人権を国民へ守るだけの国力はあります、ただ、第二次世界大戦の伝説的な軍事力の抑止力や、高度経済成長時代からの世界第二位という抜きんでた経済力の抑止力は過去のものとなりつつあり、普通の国になるのですね。すると普通の国としての覚悟が求められる。

 平和を犠牲として不戦を護るか、不戦を犠牲として平和を守るか、いずれ選択の時が来ます。ふつうの国、元々は自国の権利を自国で守る事が出来ない憲法上の制約への突き付けられた命題であったように思うのですが、そうではなく、特別な国ニッポン、ただそれだけで平和を維持する事は難しくなる時代が来ている、終戦の日、改めて考えたいものです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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九州西日本豪雨-佐賀県72時間雨量1000mm,広範囲に浸水と土砂崩れで自衛隊が災害派遣

2021-08-15 18:29:44 | 防災・災害派遣
■181万名へ避難指示が発令
 本日の第二記事は予定を変更し災害関連を。豪雨災害は台風と異なり突然始まると共に時間が経つにつれて被害が拡大するものの対応が難しくなる特色があります。

 九州西日本に、西日本豪雨や九州北部豪雨を超える雨量、特別警報の度に数十年に一度の豪雨という表現が為されますが、今回の豪雨は西日本豪雨や九州北部豪雨以上の文字通り過去最大の雨量を記録したここ数年間の雨量を超えており、広範囲に浸水被害を引き起こしています。戦後昭和の摩耶水害のような犠牲者こそ出ていませんが、死者が出ている。

 総雨量1000mmを越える豪雨、驚くべき豪雨災害が終戦記念日を前にした日本を襲いました。八月の梅雨前線と表現する他ない異常気象により九州西日本を中心に断続的な豪雨をもたらし、一部では線状降水帯を形成、気象庁は14日に佐賀県と長崎県、福岡県、広島県へ相次ぎ大雨特別警報を発令、広島県は13日に続く二日連続の特別警報発令となります。

 72時間雨量が雨量三か月分を越える、この異常事態が。佐賀県嬉野市で1024 mm,長崎県雲仙岳で935.5mm,熊本県山鹿市で855.5 mm,福岡県大牟田市で855 mm,佐賀市で831.5 mm,広島市三入で502.5 mm,岐阜県下呂市萩原でmm,長野県南木曽町で390.5 mm,▽滋賀県近江八幡市で349.5 mm,まさに経験無い豪雨が九州西日本へ降り注いだこととなります。

 福岡県久留米市では住宅地への浸水被害が発生、先日大規模な土砂災害が発生した静岡県熱海市では、土砂崩れの原因となった不法な盛り土の残る一部が今回の豪雨により崩落する被害も発生しました。また佐賀県神埼市や長崎県長崎市など複数の箇所で土砂崩れが発生しています。京都市内でも清水寺と京阪清水五条駅の中間付近で石垣がつぶれる被害が。

 佐賀県武雄市周辺では大規模な浸水被害が発生しており、2019年の浸水被害よりも浸水地域が広範囲に及んだ可能性が国土交通省の現地画像情報解析により判明しています。更に佐賀県大町町では付近の病院一階部分が浸水被害を受けています、ただ、病院は孤立していますが送電網が機能しており、備蓄した医薬品や食料により対応し、消防が救助中です。

 長野県辰野町では天竜川系の大沢川が増水し住宅街の一部が浸水被害を受けている他、長野県岡谷市では土砂崩れにより死者が、また昨年豪雨災害により損傷した岐阜県下呂市の国道41号線が再度そばを流れる飛騨川の増水により剥ぎ取られ、通行止めとなっている。地域によっては八月の三倍の雨量が一度に降っており、今後とも警戒を続ける必要がある。

 自衛隊が災害派遣中です。行方不明者の出ている地域では消防警察と共に自衛隊も出動しています。60の自治体へLO連絡幹部160名を派遣、派遣要請を受け13日に雲仙での土砂災害に対し大村駐屯地の第16普通科連隊が災害派遣、更に行方不明者が出ている事から、航空自衛隊は築城基地第8航空団と芦屋基地第3術科学校より警備犬を派遣しています。

 六角川周辺で自衛隊は95名を救助したと発表しました。14日の時点で九州六角川の水害に対し西部方面航空隊より映像伝送装置を搭載したUH-1多用途ヘリコプターを派遣、更に730名の要員を待機、武雄市での水害では第4偵察戦闘大隊が情報収集、西部方面特科連隊が無人航空機による情報収集を実施、海上自衛隊から佐世保水中処分隊も参加しています。

 大町町の水害へは西部方面混成団が災害派遣に当り、小郡駐屯地の第5施設団も加入、海上自衛隊佐世保水中処分隊と併せ、ボート35隻が投入されています。陸上自衛隊には施設科部隊が渡河任務用に渡河ボートを一定数装備しており、武雄市でも孤立者救助用に渡河ボートなど7隻が派遣されているとのこと。陸海空自衛隊の災害派遣は現在も継続中です。

 181万名へ避難指示が発令されました。京都市内でも10万名以上に一時避難指示が発令されており、避難所の不足と退避におけるCOVID-19感染への危惧、難しい判断を迫らされている事でしょう。ただ、本日1300時には避難指示は徐々に緩和されていますが、Lアラート緊急安全確保がなお7万世帯17万名に対して発令されているとのことで、要警戒だ。

 土砂災害警戒情報は佐賀県、福岡県、熊本県、広島県、奈良県、岐阜県、静岡県、長野県、山梨県、神奈川県、東京都、千葉県、福島県に相次いで発令されていますが、総雨量が多く地盤が緩むまでには時間を要する為、思わぬところでの土砂災害が警戒されています。そして留意すべき点としては、今晴れていても気象庁予報では今後まだ雨が降るという。

 再び大雨の恐れが。現在西日本では雨が上がり一部で晴天となっていますが、現在は前線が太平洋上にあるためで、今夜にも前線が再び北上する見込み、前線上の低気圧が東日本を通過する事で、明日16日昼までに九州で180mm、関東甲信地方で80mmの雨量が見込まれ、17日までに西日本でもまとまった雨量が予想されています。報道発表にご注意ください。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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