■野心的次世代機2024年試作
F-2戦闘機の後継機となる国産戦闘機について動きがありました。対艦攻撃にあたるF-2後継の次世代機を今後数年で試作機製造まで進める野心的な計画です。
防衛省は次期戦闘機F-X、F-2戦闘機の後継機となる事実上のFSXの開発について、今月中にもその概要を明示する方針を発表しました。防衛省によれば試作機を2024年度から製造を始め、2031年度に量産を開始する方針で、現在のF-2戦闘機が2035年頃から耐用年数限界を迎え除籍が始まるのを視野に、日本主導の国際共同開発を計画しているようです。
国際共同開発はアメリカとイギリスを想定しており、イギリスは現在将来戦闘機テンペスト計画について各国へ参加を呼び掛けておりトルコなどが関心を示しています。アメリカはF-22戦闘機機体にF-35最新電子機器を搭載した日本仕様の将来戦闘機案などを既に提示しており、イギリスかアメリカか、この方針も今月中に明示されることとなるでしょう。
次期戦闘機開発はそこまで順調にゆくのだろうか、素朴な疑問はここにあります。主契約企業は三菱重工しかあり得ません、超音速機の開発実績は戦後三菱重工が一貫しており、例えばBAEシステムの戦闘機部門を川崎重工が吸収合併する、というような海外企業をそのまま引き抜くような手段でも用いぬ限り、経験のない企業には戦闘機開発は、難しい。
納期が厳しすぎる、F-2のような方式でも採らない限り納期に間に合わせることは困難です。即ち、F-35戦闘機を原型としてレーダーを国産型として機首を延長したうえで主翼面積を拡大して国産空対艦ミサイルを搭載できるよう、F-16をもとに大型化させたF-2戦闘機の手法を用いるか、F/A-18Fをいっそステルス化し日本仕様でライセンス生産するか、です。
FSX計画、1980年代に日米貿易摩擦として政治問題に発展した現在のF-2戦闘機開発ですが、あのときの勢いがあれば国産開発を政治的に進めることはできたでしょう、実際、当時を知る技術者からは、アメリカの戦闘機を超える国産戦闘機を創ってやろう、零戦の復興だ、という覇気があったといいますが、どうも1980年代の当時ほど迫力を感じません。
X-2実証機を飛行させた防衛装備庁からは、今こそ令和時代の戦闘機を国産開発しよう、という気概は聞こえてくるのですが、どうも東京より距離があると見えまして、防衛装備庁の気概に名古屋の三菱重工小牧南工場が応える木霊が、聞こえてこないのですね。実際三菱には130機導入予定のF-2が、いきなり違約金なしに91機に減らされた痛みがのこる。
T-4練習機。FSX計画当時は日本独自の国産エンジンを搭載した、純国産、といえたT-4練習機を川崎重工中心に開発しています、女性技師も大胆に参画したT-4、イギリスのホーク練習機など世界の第一線の練習機と比較し、性能はもちろん、取得費用で同水準に並んだことは当時のFSXへの自信を深めた、といえるでしょう。しかし現在の状況はどうか。
F-15戦闘機、FSX計画当時は主契約企業である三菱重工ではライセンス生産としてF-15が次々と製造され納入されていました、ライセンス生産ではあっても航空防衛産業は一定の生産実績を重ねるとともに、日本が組み上げた戦闘機でも特段問題はなく、強大なソ連空軍の圧力に対抗していた、そんな技術の裾野があったわけなのですが、いまは、と。
F-2戦闘機生産終了からまもなく十年、空白期は1945年の終戦から川崎重工がT-33練習機のライセンス生産を開始した期間に匹敵する空白がありまして、例えば日本製造業では遅れが指摘されている3Dプリンターを大胆に製造工程に導入するなどの新技術を使わねば、キャノピーや、ピトー管はじめ細かな部分から限界が現出するように危惧します。
オペレーションリサーチにより最適な戦闘機は研究しているようですが、航続距離が長く運動性に秀でた搭載能力の大きなステルス機、防衛技術シンポジウムで示される将来像は、あたかも笑い話で例えられる、十年以上の実務経験を持つ最先端技術に強い若い新卒人材を求める、というような、一種現実を欠くというか、曖昧模糊とした印象を禁じ得ません。
技師不足は大丈夫なのか。防衛装備庁と防衛産業の温度差を感じるのは、設計に当たる技師の不足です。三菱重工としてはMRJ/MSJ旅客機にかなりの技師を集めています、この開発でさえ技師不足であり、東海道本線の普通列車に車内広告で技師募集を掲げていたほどです。防衛装備庁は民間の航空設計技師や生産技師の現状を把握しているのでしょうか。
航空技師。しかし、小型旅客機MRJ/MSJの十年近くに及ぶ型式証明の遅延に継ぐ遅延と、開発が遅延するなかで顕在化した想定外の新型コロナウィルスCOVID-19、いわゆるコロナ禍下での国際的な航空需要の低下が、三菱重工が三菱航空機に三行半を突きつけるというような一種の損切りを行うならば別なのかもしれません。今後の展開を見守りましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
F-2戦闘機の後継機となる国産戦闘機について動きがありました。対艦攻撃にあたるF-2後継の次世代機を今後数年で試作機製造まで進める野心的な計画です。
防衛省は次期戦闘機F-X、F-2戦闘機の後継機となる事実上のFSXの開発について、今月中にもその概要を明示する方針を発表しました。防衛省によれば試作機を2024年度から製造を始め、2031年度に量産を開始する方針で、現在のF-2戦闘機が2035年頃から耐用年数限界を迎え除籍が始まるのを視野に、日本主導の国際共同開発を計画しているようです。
国際共同開発はアメリカとイギリスを想定しており、イギリスは現在将来戦闘機テンペスト計画について各国へ参加を呼び掛けておりトルコなどが関心を示しています。アメリカはF-22戦闘機機体にF-35最新電子機器を搭載した日本仕様の将来戦闘機案などを既に提示しており、イギリスかアメリカか、この方針も今月中に明示されることとなるでしょう。
次期戦闘機開発はそこまで順調にゆくのだろうか、素朴な疑問はここにあります。主契約企業は三菱重工しかあり得ません、超音速機の開発実績は戦後三菱重工が一貫しており、例えばBAEシステムの戦闘機部門を川崎重工が吸収合併する、というような海外企業をそのまま引き抜くような手段でも用いぬ限り、経験のない企業には戦闘機開発は、難しい。
納期が厳しすぎる、F-2のような方式でも採らない限り納期に間に合わせることは困難です。即ち、F-35戦闘機を原型としてレーダーを国産型として機首を延長したうえで主翼面積を拡大して国産空対艦ミサイルを搭載できるよう、F-16をもとに大型化させたF-2戦闘機の手法を用いるか、F/A-18Fをいっそステルス化し日本仕様でライセンス生産するか、です。
FSX計画、1980年代に日米貿易摩擦として政治問題に発展した現在のF-2戦闘機開発ですが、あのときの勢いがあれば国産開発を政治的に進めることはできたでしょう、実際、当時を知る技術者からは、アメリカの戦闘機を超える国産戦闘機を創ってやろう、零戦の復興だ、という覇気があったといいますが、どうも1980年代の当時ほど迫力を感じません。
X-2実証機を飛行させた防衛装備庁からは、今こそ令和時代の戦闘機を国産開発しよう、という気概は聞こえてくるのですが、どうも東京より距離があると見えまして、防衛装備庁の気概に名古屋の三菱重工小牧南工場が応える木霊が、聞こえてこないのですね。実際三菱には130機導入予定のF-2が、いきなり違約金なしに91機に減らされた痛みがのこる。
T-4練習機。FSX計画当時は日本独自の国産エンジンを搭載した、純国産、といえたT-4練習機を川崎重工中心に開発しています、女性技師も大胆に参画したT-4、イギリスのホーク練習機など世界の第一線の練習機と比較し、性能はもちろん、取得費用で同水準に並んだことは当時のFSXへの自信を深めた、といえるでしょう。しかし現在の状況はどうか。
F-15戦闘機、FSX計画当時は主契約企業である三菱重工ではライセンス生産としてF-15が次々と製造され納入されていました、ライセンス生産ではあっても航空防衛産業は一定の生産実績を重ねるとともに、日本が組み上げた戦闘機でも特段問題はなく、強大なソ連空軍の圧力に対抗していた、そんな技術の裾野があったわけなのですが、いまは、と。
F-2戦闘機生産終了からまもなく十年、空白期は1945年の終戦から川崎重工がT-33練習機のライセンス生産を開始した期間に匹敵する空白がありまして、例えば日本製造業では遅れが指摘されている3Dプリンターを大胆に製造工程に導入するなどの新技術を使わねば、キャノピーや、ピトー管はじめ細かな部分から限界が現出するように危惧します。
オペレーションリサーチにより最適な戦闘機は研究しているようですが、航続距離が長く運動性に秀でた搭載能力の大きなステルス機、防衛技術シンポジウムで示される将来像は、あたかも笑い話で例えられる、十年以上の実務経験を持つ最先端技術に強い若い新卒人材を求める、というような、一種現実を欠くというか、曖昧模糊とした印象を禁じ得ません。
技師不足は大丈夫なのか。防衛装備庁と防衛産業の温度差を感じるのは、設計に当たる技師の不足です。三菱重工としてはMRJ/MSJ旅客機にかなりの技師を集めています、この開発でさえ技師不足であり、東海道本線の普通列車に車内広告で技師募集を掲げていたほどです。防衛装備庁は民間の航空設計技師や生産技師の現状を把握しているのでしょうか。
航空技師。しかし、小型旅客機MRJ/MSJの十年近くに及ぶ型式証明の遅延に継ぐ遅延と、開発が遅延するなかで顕在化した想定外の新型コロナウィルスCOVID-19、いわゆるコロナ禍下での国際的な航空需要の低下が、三菱重工が三菱航空機に三行半を突きつけるというような一種の損切りを行うならば別なのかもしれません。今後の展開を見守りましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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