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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

岐阜-長野大雨特別警報!異常な前線停滞,九州豪雨本州拡大と更なる拡大懸念の大気不安定

2020-07-08 20:09:07 | 防災・災害派遣
■全容不明,治水計画限界越える
 九州豪雨災害は今朝突如として本州中部の岐阜県と長野県へ波及しました。これにより浸水被害や孤立地域などが発生しています。

 南九州豪雨災害として熊本県を中心に深刻な被害が広がったのが7月3日、それが4日から宮崎県の大淀川水系に豪雨被害が広がり、新たな前線が北九州へと広がり筑後川水系に被害を及ぼし九州豪雨という状況となりましたが、7日夜から前線は大きく伸びて本州岐阜県長野県に及び、本州九州豪雨というべき状況となりました、被害全容は未だ判明しません。

 異常な前線の停滞、気象庁は本日午後の記者会見において、今月三日から続き梅雨前線の停滞しており、少なくとも今週一杯はこの前線の停滞が続くとみられています。異常な前線の停滞、その原因は太平洋高気圧の位置と勢力の異常です。高気圧の勢力が強まる事で例年は梅雨前線が北に押し上げられ梅雨明けとなるのですが、今年の太平洋高気圧は違う。

 太平洋高気圧が強まらず、この結果、梅雨前線が長期間にわたり日本列島上空に留まっているのです。前線の停滞から西日本と東日本に掛けて局地的には維持置換に50mm以上の降水量が見込まれるとされ、九州や四国と近畿地方で24時間雨量は局地的に200mm、東海地方で180mm、また関東地方でも多い所で150mmの雨量が見込まれるとしています。

 本日0630時、気象庁は岐阜県に対し大雨特別警報を発令、続いて0641時に長野県に対しても大雨特別警報は追加発令されました。幸い前線は長時間停滞する事は無く、特別警報は1130時に大雨洪水警報へ切替えられましたが、木曽川水系と神通川水系、また長良川水系でも大量の雨が河川に流れ込み、木曽川水系と神通川では氾濫危険水位に達しています。

 大気不安定という状況はしかし、明日から週末にかけて日本列島周辺に停滞するものとみられており、今夏にも新たな前線からまとまった雨量が降るとの予報も示されており、既に堤防や山間部には相当な雨量が蓄積されているとして、少しの雨量でも堤防の破損による洪水や土砂災害が発生する懸念がある事から、気象庁は厳重な警戒を呼び掛けています。

 岐阜県と長野県では相次ぐ土石流や土砂崩れなどにより、国道や県道が通行できない地点が多く、岐阜県高山市と下呂市を中心に4000名が孤立しているとのこと。また長野県でも上高地を中心にリゾート施設が300名が孤立しています、なお現時点では幸いにして食料などの備蓄が数日分程度ならば確保されているとのこと。県では道路啓開に務めています。

 熊本県では既に55名死亡しています。球磨村の渡地区で特別養護老人ホーム14名が死亡するとともに村内ではほかに3名が亡くなり、山鹿市では2名が死亡、熊本県内の死者は人吉市で18名、芦北町で10名、八代市で4名、そして津奈木町で1名が死亡していまして、この他10名が行方不明とともに人吉市では更に18名が連絡を執れない状況という。

 九州全域では58名が死亡し行方不明者が17名、捜索が続いています。警察消防と自衛隊による孤立地域救助と行方不明者捜索は継続していますが、今夜九州の西方海上には小さな低気圧が渦を巻く予報が出されており、台風まで発達する可能性はなさそうですが、この渦を巻く体威圧が明日、九州北部、続いて九州南部に活発な雨雲が掛かる見通しです。

 治水計画の想定を超えた豪雨である。今回の九州本州豪雨のみならず近年は想定外の膨大な雨量により堤防を筆頭とした治水設備、ダムの貯水量や堤防が限界を越える事で大規模な水害発生へ繋がる事例が増えており、これは治水計画において想定した最悪の降雨量を凌駕する規模の豪雨が頻発するようになっている事が一つの原因として指摘されています。

 気候変動による降雨量増大、というものも挙げられますが、少なくとも1970年代から大きくダム建設が進められ、ダム依存や公共事業過多として批判され、治水事業の政策的優先度が、結果論として低く訂正されています。しかし、考えれば1960年代初頭までは千人単位の人命が失われる台風による水害などが発生していた為、この認識の変化が考えられる。

 水害が発生しなくなったことによる治水事業、巨大ダム建設などへの拒否投入への理解度が低くなったのですが、水害は減ったのではなくそもそもが批判され停止した、ダム建設により抑えられていた、という逆因果関係を無視した世論の変化が、想定外の洪水、実は単なる洪水の再来に過ぎないものを、想定外、と認識させているのではないでしょうか。

 ダム建設による更なる治水、これしあない、とこう早合点しそうですが、問題は其処まで簡単ではありません、少子高齢化により建設業が疲弊しているのですね。具体的には公共事業の半減によりそもそも建設事業者が激減、更に少子高齢化によりダム建設を担う労働力が大きく減少、大規模な移民による工員確保でもしなければ安易にダムは増やせません。

 山間部の計画転居を進め水害を減らすべきか、これも早合点です。淀川水系や木曽川水系と筑後川水系等、移転するという事は大阪市や名古屋市近郊と久留米福岡都市圏、日本の大都市は河川沿いに発達していますので、治水計画を蔑ろとすれば、当面は山間部の問題でしょうが、将来的には大都市巨大水害の問題に発展します。長期的視野が必要なのです。

 さて。被災地の被害全容不明という報道に接します度に、RF-4戦術偵察機を今年三月に完全除籍させる前にもう少し後継機というものを真剣に検討すべきだったのではないか、と考えさせられるところです。F-2戦闘機への偵察ポッドを緊急導入するとか、開発失敗したRF-15計画を外国製偵察ポッドで代替する、若しくは最新鋭のF-35戦闘機の偵察任務投入等を。

 RF-4に拘らずとも、今回の豪雨災害は冷静に考えれば代替手段というものは多い。九州豪雨災害では第8師団の第8情報隊にスキャンイーグルがあり、今回は豪雨であり暴風ではない為、投入さえするならば偵察は可能です。岐阜県も隣の滋賀県今津駐屯地に中部方面情報隊隷下の中部方面無人偵察機隊が居る、ここにもスキャンイーグルが配備されている。

 RF-2,とまでは行かずとも偵察ポッドを搭載しての偵察、スキャンイーグルとRF-4の違いは数多いのですが、スキャンイーグルは偵察する範囲がある程度明確である場合に投入したらば、滞空時間も長く威力を発揮するでしょう、しかし、被災している地域は何処なのか、という根本的な視野から、広範囲の偵察を行うのには見ていないように思うのですね。

 偵察部隊の眼が必要だ。偵察航空隊は2020年3月に幕を閉じましたが1961年3月の偵察航空隊創設以来、偵察目標の選定や広範囲の地域から災害被災地域の明瞭な把握まで、飛行方法を訓練してきました、偵察機の訓練というものに、戦闘機の飛行とは異なる偵察機の視点を保持する訓練を実質60年間、連綿と技術と技能とを蓄積してきていた訳ですね。

 RQ-4グローバルホークが導入されたならば、RF-4のようにフィルムを現像する必要も無くリアルタイムに状況を把握できるという、RQ-4は飛行高度が旅客機よりも高く被災地上空に丸々二日間近くを滞空して必要な情報を収集できるという、高度19000mの高空からは100km以遠まで見通せる為に滞空しつつ一機のRQ-4は同時に北九州全域を見通す。

 しかし、RQ-4の偵察能力は高いものの、肝心のアメリカ軍では戦闘機偵察ポッドがまだ現役なのですよね、F/A-18Eに搭載した航空偵察ポッドによる偵察画像は、2011年東日本大震災において空母ロナルドレーガンを拠点に実に1万2000枚もの高精細写真を撮影し、我が国へ提供されています。高高度から望遠で撮影するのと、確かに低空の偵察写真は違う。

 そして、RQ-4高画質画像はRF-4の写真画像のように政府と自衛隊と自治体と住民とで共有できるものなのでしょうか、思い起こせば偵察画像の画質は偵察能力を示すものであり、特定防衛秘密に該当せず全てフリーハンドに提供できるものなのでしょうか、過去には秘密保全から新潟中越地震に陸上自衛隊のFLIR画像を提供できなかった事例がありました。

 戦闘機を改造したRF-4偵察機、戦闘機の機動力がありますので被災地域へ迅速に展開できると共に、フィルム式ではありましたが機動飛行の最中でも明確に撮影できるカメラの性能は、偵察を専門に訓練した要員、飛行計画から操縦まで、こうした体系化された戦術航空偵察という能力を構成していたのですね、本当にRQ-4は置き換えられるのか未知数です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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