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北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第三二回》はるな型護衛艦とスプルーアンス級駆逐艦建造前夜

2017-12-16 20:09:43 | 先端軍事テクノロジー
■一九七〇年代の将来水上戦闘艦
 海上自衛隊が二品独自の航空対潜装備体系構築へ進んでいた当時、アメリカ海軍でも駆逐艦の転換期を迎えつつありました。

 ヘリコプター搭載護衛艦はるな、は1973年に就役しました。そして以外にもアメリカ海軍が新造時から駆逐艦へヘリコプター運用能力を標準装備した水上戦闘艦はスプルーアンス級駆逐艦からです。スプルーアンス級駆逐艦は大型の船体に充実した将来発展性能を盛り込む新世代駆逐艦として一番艦が1975年、はるな就役の2年後に一番艦が就役しました。

 スプルーアンス級駆逐艦は基準排水量5826t、満載排水量7800tという大型の駆逐艦で徹底したモジュール設計により大型ながら建造費を抑え、米大型水上戦闘艦として初のオールガスタービン推進方式を採用、HSS-2にあたるSH-1対潜哨戒ヘリコプターならば1機、小型のSH-2や後のSH-60哨戒ヘリコプターならば2機を格納庫に搭載する事が可能です。

 カナダ海軍において研究されていたベアトラップ着艦拘束装置を海上自衛隊が採用したのは、アメリカ海軍の趨勢を見極めていては海上自衛隊が巡洋艦でも建造しない限り、ヘリコプターの艦載運用を行う事が出来なかった為です。アメリカ海軍は多数の対潜空母と攻撃空母を装備し、駆逐艦にヘリコプターを搭載する必然性が無かった点も大きいでしょう。

 アメリカ海軍には駆逐艦にヘリコプターを搭載する必要が無い、というよりも大量の第二次大戦型駆逐艦が残っており、これを近代化改修する事で東西冷戦の中期まで対応出来た事情があります。第二次世界大戦、大昔のように見えますが、1945年まで戦争していました。終戦後二十年を経て1965年、即ちヴェトナム戦争時代も十分現役に耐えられたのです。

 ベンソン級駆逐艦32隻、基準排水量1620t。リヴァモア級駆逐艦64隻、基準排水量1630t。フレッチャー級駆逐艦175隻、基準排水量2277t。アレンMサムナー級駆逐艦58隻、基準排水量2535t。ギアリング級駆逐艦105隻、基準排水量2637t。アメリカ海軍が1940年以降量産した艦隊駆逐艦は膨大な数です、この他に護衛駆逐艦は1000隻近く量産している。

 FRAM艦隊近代化改修計画としてフレッチャー級駆逐艦175隻の一部には無人ヘリ運用能力や対潜魚雷運用能力とロケット爆雷砲追加が行われました。アレンMサムナー級駆逐艦58隻の一部には飛行甲板の追加とレーダー及びソナーの換装と追加などが実施されました。FRAMで1970年代まで第一線で通用し一部には輸出後2000年代まで使われた事例もある。

 ギアリング級駆逐艦105隻、この一部には艦隊防空用のテリアミサイルと14発の弾庫追加改修、無人ヘリコプター運用能力と魚雷ロケットアスロック発射装置の追加等数種類の改修が行われました。ギアリング級改造のカーペンター級駆逐艦新造に続く戦後初の設計はフォレストシャーマン級が建造の1955年を待たねばならず、駆逐艦が余っていたのです。

 チャールズFアダムス級ミサイル駆逐艦、画期的なターターミサイルシステムを搭載した基準排水量3200t、満載排水量4500tの就役が1960年より開始されましたが、設計は艦隊防空重視、ヘリコプター運用は想定されていません。第二次大戦中の駆逐艦はFRAM近代化改修を重ねるも対潜ヘリコプター施設追加の設計余裕は流石になく空母に頼っています。

 海上自衛隊がカナダ海軍の駆逐艦でのヘリコプター運用装置に注目し導入実験を経てヘリコプター搭載護衛艦はるな建造に反映させた背景には、アメリカ一辺倒の技術提供に依存しては艦隊運用に限界があった事を示しています。ただ、はるな型護衛艦が最初から完成型として構想された訳ではなく、この背景にも様々な試行錯誤と研究は重ねられています。

北大路機関:はるな くらま
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