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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ソマリア沖海賊対処第十次派遣水上部隊派遣 経団連は派遣部隊増強を提言

2011-10-19 23:48:07 | 防衛・安全保障

◆根本となる護衛艦隊増強が必要ではないか

本日、護衛艦くらま、が横須賀基地よりハワイへと出港しました。

Img_9094_1平成23年度米国派遣訓練として本日10月19日より12月5日まで、護衛艦くらま、は第二護衛隊群丸澤司令指揮下においてハワイ周辺海域の洋上訓練設備、およびハワイの陸上訓練施設を用いてその能力向上を図る訓練に展開します。今月31日にパールハーバーへ入港。来月21日にパールハーバーを出港し佐世保に帰港します。先週11日には同じ横須賀基地より海賊対処任務第十次派遣水上部隊が出港しており、海上自衛隊の任務範囲と任務水準は高まるまま推移している、というところでしょうか。

Img_861710/13日付 ニュース トップ 海賊対処10次隊 「たかなみ」など出発 :神風政務官 「高い士気で任務を」・・・ アデン湾で民間船舶の護衛活動を行っている海自海賊対処水上部隊の交代のため、10次隊として護衛艦「たかなみ」(艦長・米丸祥一2佐)、同「おおなみ」(艦長・吉野敦2佐)が10月11日、横須賀から出発した。10次隊は6護隊司令の水間貴勝1佐を指揮官に人員は約370人で、海上保安官8人も同乗している。 横須賀基地で行われた出港行事には、神風政務官や河村横須賀総監らが出席。

Img_6747派遣隊員を前に神風政務官は「これから諸君が就く護衛任務は、『人類共通の敵』海賊と闘い、海上交通路に安寧秩序をもたらす非常に尊いもの。高い士気をもって任務に励み、無事帰国を祈念する」と訓示した。 両艦は乗員が舷側に登舷礼式で整列、隊員や家族らの声援を受け離岸した。2隻は約3週間かけてアデン湾に向かい、9次隊(指揮官・大判英之1佐以下約400人)の護衛艦「さみだれ」(艦長・内藤裕之2佐)、「うみぎり」(同・佐藤正博2佐)から任務を引き継ぐhttp://www.asagumo-news.com/news/201110/111013/11101304.html

Img_9233ソマリア沖海賊対処任務ですが、民主党政権交代当初には海上保安庁に移管するべきとの提言があり、そもそも海賊の武装や船団護衛の方式はもとより各国海軍の指揮通信体系と海上保安庁巡視船がどの程度合致するのかも考えられないまま案のみが出されていた印象があったのですが、政権交代後時限立法措置であったインド洋対テロ海上阻止行動給油支援が終了するとともに、海賊対処任務に関しての継続の方針が打ち出され、今日に至っています。

Img_6592根本的な問題としてソマリアの海上治安機構の未整備と、何よりも海賊講堂には知らせる経済的要因というものがあることに着目すれば、ソマリア復興人道支援をアフリカ連合などを主体として実施するよう外交的経済的に示唆することが日本の役割、と考えているのですが、海賊発生の根本的要因への取り組みという姿勢は示されないまま、いわば出口戦略がない、いつまで護衛艦をアフリカ沖に常駐させなければならないか見通しが立たない状態での部隊派遣任務は継続しています。

Img_6612こうした境遇ではありますが、海上自衛隊による海賊対処任務は各国海軍が哨戒に重点を置いているのに対して、船団護衛というかたちで船団を安全海域に置いて編成し、その前後を護衛艦が警護し、航空機による哨戒を実施するという手堅い方式を日本は採用、現在のところ護衛対象の船舶に対する海賊被害は皆無、という状態を維持しています。他方で、海上自衛隊には海賊対処という実任務艦以外に領域警備として護衛艦の遊弋を行うことで周辺国に対する抑止力としているのですが、ここにしわ寄せが生じている現実もあるようです。

Img_0404近年任務増大によりとある海域を巡回範囲外としたところ、その海域に周辺の某国の水上戦闘艦艇が出現するようになり、懸念事項となった事案もあると聞きました。海上自衛隊は護衛艦に関して常時二隻のソマリア近海遊弋を継続していることから、常に次の派遣に備えた同数の護衛艦を訓練に置き、場合によっては交代の護衛艦との回航中を含め洋上に四隻と訓練で二隻という、護衛艦隊の二割に近い水上戦闘艦を派遣もしくは待機させなければならない状況もあり、自衛艦隊直轄護衛艦の沿岸警備任務拡大とともに海上自衛隊全体への負担は少なくないのが現状です。

Img_7338経団連、ソマリア沖海賊対策強化を提言2011.10.15 05:00・・・ 経団連は14日、近年被害が急増しているソマリア沖の海賊対策の強化を求める提言を発表した。現在自衛隊が派遣している2隻の護衛艦と2機の哨戒機の拡大を要望。給油用の補給艦派遣や現在は認められていない外国船籍への給油が可能になるよう法的な整備も求めた。日本船籍の船舶に武装した自衛隊員や海上保安庁職員を同乗させ警備を強化すべきだとしている。 同時に海賊発生の原因になっているソマリアや周辺国への支援も必要としている。

Img_8637アジアと欧州を結ぶソマリア沖のアデン湾は海上交通の要所で、原油タンカーや輸出用自動車専用船など年間5000隻を超す日本関連の船舶が航行している。近年、この海域で武装して船舶を襲撃し、数億円単位の身代金を要求する「海賊」が多発。発生件数は2007年の44件から10年は219件に急増。今年は上期だけで163件に達し、9月2日時点で23隻の船舶が拘束され349人が人質になったhttp://www.sankeibiz.jp/business/news/111015/bsg1110150502000-n1.htm

Img_3865 しかし、経団連は派遣部隊の増勢を要請しています。上記のとおりの事情があり、仮に海賊の出現が台湾海峡や南シナ海であれば、自衛艦隊直轄護衛艦の派遣も可能になりますし、何より距離的な面での派遣に伴う支障が緩和されます。ですが、現在派遣されているのは東アフリカ沖、哨戒ヘリコプターを飛行させなければならないため基本的にミサイル護衛艦は派遣できませんし、もっともミサイル護衛艦の一部には弾道ミサイル警戒での遊弋という任務もあるのですが、加えて自衛艦隊直轄護衛艦は航続距離の観点から派遣することはできません。

Img_9072 すると、経団連は派遣部隊増勢ではなく、本来は護衛艦隊の増強を直接要請するべきではないか、と考えます。そもそも、経団連は通商活動を円滑に行う観点からの必要性を説いているのですから、特に南西諸島に対する圧力が加えられている現状において、こちらの警戒を放り出して派遣する、ということはできません、結局はアフリカ近海での通商活動を円滑と出来ても日本近海でそれが途絶するような状況が発生しては無意味だからです。すると護衛艦は不足する、したがって増強をダイレクトに要請するのが妥当なのではないでしょうか。

Img_3778 これは南スーダンPKOについての昨日の記事でも記載したことですが、元々海上自衛隊にはアフリカ近海にまでシーレーン防衛を想定した能力の整備は求められていません。求められていないことから整備する必然性はなく、護衛艦定数も日本近海、この近海の葉にが延伸していることはあるのですけれども、その限られた範囲内での任務に対応する装備と人員しか、特に予算面で認められていないわけです。それならば、例えば防衛計画の大綱などにおいて、”アフリカ沿岸を含む広範なシーレーン防衛を継続的に実施するに十分な規模の艦隊を整備する”、という一文が加えられるよう、施策を行うべきなのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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