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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑩ 決着をつける普通科の突撃

2013-06-12 23:53:10 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆土地の奪取奪還、変わり得ぬ戦闘の本質と決着

 戦闘の本質とは何か、それは土地の収奪を介してのあらゆる戦闘及び政治要求への帰結に他なりません。

Fimg_6456_1 福岡駐屯地祭、訓練展示模擬戦。情報収集に始まり特科部隊の火力制圧、戦車部隊による対戦車戦闘を経て、いよいよ戦闘に決着をつける瞬間が近づいてきます、それは奪取された土地の奪還、全ての戦闘行動はこの最終目的のために展開されるといって過言ではないでしょう。

Fimg_6460_1 突撃、軽装甲機動車による普通科部隊の迅速な展開、長い日本列島に続く狭隘で起伏に富み、都市部と農村に高山地帯が入り乱れる国土を縦横無尽に走り回るべく導入された小型装甲車がMINIMI分隊機銃を目標に定め装甲を盾としつつ俊足で前進してゆく。

Fimg_6681 普通科と機甲科の協同、我が方が陣地より展開するこの瞬間が最も危険な瞬間で、我が方の普通科部隊の突撃に対し敵部隊の突撃破砕射撃を警戒し、74式戦車は、その高度な光学監視装置を活かし脅威を先んじて監視し、発見すれば直接照準により即座な排除を行うべく鋭い監視の目を緩めない。

Fimg_6464_1 軽装甲機動車にて敵前へ展開した普通科部隊は時機を見定め降車戦闘へと移行します。軽装甲機動車は操縦手を含め降車戦闘へ展開するため、この直後から機動力は徒歩に限定されてしまう。車上からはMINIMI分隊機銃手が降車隊員を掩護するために残り、射撃を加えてゆきます。

Fimg_6676 戦車発砲、大気を引っ叩く様な衝撃と共に刹那遅れ轟音が這い寄る、戦車が射撃するとの放送が為されたはずだが、降車戦闘を集中して追う視線の先に中々気づかない。これは降車戦闘を行うべく軽装甲機動車が足を止めた瞬間に乗じた敵の反撃への兆候を確認し、機敏に105mm砲の射撃を加えたもの。

Fimg_6469_1 併せて普通科隊員も降車するや否や即座に89式小銃にて軽装甲機動車の扉を盾に油断なく脅威を排除してゆく。軽装甲機動車は7.62mm小銃弾などへの耐弾性能を有しているため、重火器さえ先制し封じてしまえば心強い盾となってくれる。

Fimg_6423_1 戦車の連続射撃は続きます、105mm砲はイギリスL-7系ライフル砲で、射程などの面で現用戦車砲よりも大きな威力を発揮、現用の120mm砲第四次中東戦争では湾岸戦争やイラク戦争で4km前後の目標に対し米軍が使用し効果を上げていますが、7km先の敵戦車をイスラエル軍が撃破した事例があります。

Fimg_6468_1 軽装甲機動車からの89式小銃とMINIMI分隊機銃の射撃も続きます。軽装甲機動車はMINIMI分隊機銃を搭載するほか、01式軽対戦車誘導弾を機動運用する車両としても活躍しますが、今回の訓練展示には人員輸送用として専ら使用されていました。

Fimg_6404 特科部隊のFH-70榴弾砲が次々攻撃準備射撃を行います。二門の火砲は短時間の効力射能力に優れたFH-70の能力を最大限発揮、155mm砲弾が敵陣地の防御機能を叩き潰し、我が方の行動を有利とします。最終弾落下が、突撃の時機、こののちは我が方の突撃を阻害するため射撃できません。

Fimg_6475_1 最終弾落下ッ!、戦機は熟した、一斉に隊員が小銃を手に駈け出してゆきます。戦闘防弾チョッキをはじめ完全装備の普通科隊員はかなりの重量の装備を着込むのですが、どれも生き延び撃破するために不可欠なもの、この瞬間から目的を達するまでの瞬間、瞬発力を維持できるよう強靭な肉体を構築してゆく、とのこと。

Fimg_6691 AH-1S対戦車ヘリコプターが特科部隊の火力支援に続いて上空から支援を行う、特科部隊の攻撃準備射撃終了とともに展開される普通科部隊の突撃に合わせ航空部隊が支援へ展開する、この瞬間の連携が失われれば、それは突撃の失敗や損耗率に跳ね返るため、連携の重要性は死活的と言えるほどに大きい。

Fimg_6380 TOW対戦車ミサイルにより3.75km先の戦車を撃破する対戦車ヘリコプターAH-1Sですが、同時に70mmロケット弾と視線同調式20mm機関砲を搭載し、正確な航空支援を行う事も出来ます。理想は支援戦闘機の近接航空支援を受ける事ですが、航空自衛隊と連携する前線航空統制員が不足しており、やはりヘリコプターという自前の支援に頼る部分が大きい、というわけです。

Fimg_6478_1 普通科部隊が戦闘に決着を点ける、とは、土地を占領した敵部隊に直接銃火を叩き込み、銃剣を突き刺し、徒手で以て泣き叫ぶ敵も両手を挙げた敵も、兎も角敵の生死を問わず陣地から引き摺りだすことによってしか為し得ないものであり、これは戦車にも火砲にも出来ない任務である、ということ。

Fimg_6675 戦車もこの瞬間からは主砲の対戦車戦闘力と同軸の連装銃の薙射の威力を封じられます、そういうもの戦車砲弾で対戦車用の徹甲弾には極超音速を発揮するための被筒を有しており、これが射撃後に分離することから戦車より前の人員へは生命の危険が生じるから。

Fimg_6502_1 戦車はこの為、突撃する普通科隊員とともに並走して進んでゆきます。実際の戦闘であれば、攻撃と同時に相手の陣地前に構築された地雷原や防御用障害物を除去するべく施設科部隊が支援します。今回の想定は、仮設敵が陣地占領と共に防御戦闘を展開したため、相手に堅牢な陣地構築の時間を与えなかった、のでしょう。

Fimg_6389 突撃を支援する96式装輪装甲車の12.7mm重機関銃、装甲車の不足が本土師団の難点であり、戦車大隊や後方支援連隊戦車直接支援隊の車両に協同する普通科隊員が乗車しています。射撃支援、親指ほどの弾薬を連射する12.7mm機銃の威力と射程は大きく、軽装甲車位ならば破壊してしまうほど。

Fimg_6514_1 MINIMI分隊機銃の支援射撃は続く、射手は弾幕が我が方の突撃を阻害しないよう、射撃訓練を積んでいる。なお、この状態で対戦車火器が残れば退避できず、後続の装甲車用の通路を空けて停車しなければならない、少々不便で、遠隔操作銃塔RWSの開発が進んでいます。これは元々軽装甲機動車が乗車戦闘のみを考えていた背系の名残り。

Fimg_6508_1 仮設敵陣地前に展開し、89式小銃による掃射を行う普通科隊員、連射の反動に銃身を持ち上げられ照準に支障を来さないよう下から突き上げるように短い点射や薙射を繰り返します。仮設敵からの反撃は滞り、我が方の突撃は成功したようです。生き残った想定の敵は敗走するか、降伏するか。

Fimg_6510_1 掃討を終えつつも、素早く小銃の弾倉を取り換え、警戒を続けます、状況終了。我が方は陣地を奪還し、訓練展示を完了しました。空包の炸裂音が止み、余韻を残しつつの状況終了、これを以てこの会場での式典と訓練展示はすべて終了しました。こののち、福岡駐屯地祭は装備品展示などへ移ってゆきます。こちらは次回の紹介としましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑨ 機甲部隊の対戦車戦闘

2013-05-31 23:14:53 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆戦車の天敵は、戦車そのもの

 特科部隊の攻撃準備射撃や攪乱射撃の支援下で我が機甲部隊は前進を開始します。

Fimg_6345 74式戦車、射撃位置へ。EOS-7Dの最大連写速度にて74式戦車を捉える、発砲焔は空包でもくっきりと映り込み、実弾では撮影不能である戦車前方に回り込んでの撮影が可能となりますので、その迫力こと訓練展示模擬戦の醍醐味であり、主役だ、と主張しても異論は殆ど出ないでしょう。

Fimg_6347 一閃!、刹那、衝撃。身をもって感じる、戦車砲の威力は音ではなく衝撃で到達します。この迫力の瞬間をカメラが切り取るには、とにかくシャッターを押し続ける胆力が必要で、シャッターが下がった瞬間瞬間に発砲焔が見えなければ、それはカメラが記録している、ということ。

Fimg_6348 衝撃、来た!。地面が戦車砲空包射撃の衝撃波で表面に砂塵がが盛り上がっているのがご確認いただけるでしょうか。戦車砲の発砲焔は空包ながら、より薬量の多い榴弾砲がその砲声の大半を天へ抜けさせるのと対照的に地面を這いよるため、より強力な印象と引っ叩く様な瞬間と寸秒音が聞こえなくなる錯覚に陥る迫力です。

Fimg_6354 やはり戦車の脅威は戦車でなければ対応できません。戦車砲は直接照準で防御された車内から正確に火力投射が可能、戦闘ヘリコプターの衝撃力は大きいですが滞空時間は限られています。対戦車ミサイルには様々な運用制限があります。即ち、我が方に戦車があれば相手は相応の対抗手段を要する、という重要な要素がある。

Fimg_6684 敵は、撃破されました。近年、冷戦後の国際平和維持活動増大を受けての戦車から装甲戦闘車への転換が、平和維持活動よりも正規戦の可能性が再興する中、進んでおり、戦車を置きかえる主役にふさわしい防御力や戦闘能力を付与する結果、その取得費用は戦車に近い高騰するものとなてしまいました。

Fimg_6400 そして欧州で余剰となった第三世代戦車が広く世界の中古兵器市場へ供給され、機甲脅威は分散しつつ着実に紛争地帯への普及が続いています。この事実に目を向けるならば、装甲車は戦車の補完に他ならず、主力は戦車でも歩兵でもなく、その協同に他ならない、という実情に目を向ける必要があるやもしれません。

Fimg_6377 我が機甲部隊の攻撃により敵戦車部隊が沈黙、特科部隊の支援と共に攻撃前進へ転換、敵陣地への航空攻撃を行うべくAH-1S対戦車ヘリコプターも上空からの支援に加わりました。高い生存性と打撃力を併せ持つ対戦車ヘリコプターは緊急時の瞬発的な大打撃力を以て比類ない打撃が可能です。

Fimg_6424_1 普通科部隊の前進への障害となる火力拠点を戦車が正確な射撃支援により直接照準で無力化します。現在陸上自衛隊では各部隊の情報共有と一元化を進めており、既に第2師団や第6師団では、普通科部隊が発見しつつも独自火力では対応できない目標情報を同時に戦車と共有化し、即座に火力支援する試みが進んでいます。

Fimg_6359 AH-1Sと装甲車部隊の連携、空地一体の立体戦闘、陸上自衛隊は早い時期からこの重要性に着目し、運用研究と戦術研究を積み重ねてきました。不意遭遇を適宜航空打撃が排除しつつ、地上部隊の前進を支援する。滞空時間に限界があり、連携が遅れれば全て破綻しかねないのですが、米軍をはじめ、実運用で実績が構築されており、訓練と研究の重要性を示すもの、と言えるやもしれません。

Fimg_6390 96式装輪装甲車の前進、12.7mm重機関銃の空包を盛んに発砲しつつ進んできます。装甲車は乗員と乗車要員を砲弾片や携帯火器の攻撃から防護し、戦車等に随伴し高い進出能力を維持するための必要不可欠な装備ですが、陸上自衛隊では装甲車の運用地形よりもヘリコプターの空中機動が防衛上有利であると考え、冷遇されてきました。

Fimg_6447_1 この96式装輪装甲車は、第4戦車大隊のもの。本来普通科部隊へ広く配備する目的で装備されているものですが、冷戦時代よりその立地上機械化部隊を重視した北部方面隊は全ての普通科連隊に最低一個中隊の装甲化中隊を置いているものの、本土師団では緊急展開部隊である中央即応連隊を除けば、戦車大隊などの本部車両に装備されているのみで、普及はしていない。

Fimg_6282 普通科部隊の前進を特科部隊が支援射撃により火力支援を行います。連続射撃能力が高いFH-70は、短時間で効力射を繰り返し、実運用では効力射の度に迅速に陣地転換を行い、反撃へ備えます。特科部隊は、全陸上自衛隊で最初に情報共有が進められた機構です。

Fimg_6417_1 情報共有の先駆者、これは長射程を活かす間接照準射撃を行うため直接視界戦闘が行えず、加えて対砲兵戦などは対砲レーダ装置や標定装置との連携こそが生存さえも左右されるわけですので、ある意味当然と言え、誤解を恐れず表現するならば情報共有や共同交戦能力とは、特科部隊の手法を全部隊へ普及させるもの、と言えるでしょう。

Fimg_6429_1 戦車とともに軽装甲機動車が前進します。軽装甲機動車は一個小銃班を分散乗車させることで火力の制圧地域を増大させる観点から導入されたもので、その分取得費用が低く抑えられていることから、導入開始より十年少々ながら1500両以上が導入され、陸上自衛隊の象徴的な車両となりつつある。

Fimg_6450_1 こうして普通科部隊の攻撃前進が開始されました。敵の反撃は特科火砲と戦車砲にヘリコプターにより制圧され、散発的なものとなってゆきます。続いて地上戦闘の決着をつけるべく普通科部隊の降車戦闘へ展開してゆくこととなりますが、その様子は次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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第4施設団創設52周年・大久保駐屯地祭(2013.05.26) PowerShotG-12撮影速報

2013-05-27 23:41:42 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆中部方面隊直轄施設部隊の記念行事

 日曜日、宇治市の大久保駐屯地祭へ行ってまいりました、EOS-7Dの写真は未整理で、G-12の写真にて速報を紹介します。

Oimg_5495 大久保駐屯地の第4施設団は第6施設群、第7施設群、第304施設隊、第305施設隊、第102施設器材隊、第307ダンプ中隊を以て中部方面隊直轄施設部隊の任務に当たっており、宇治川以南の京都府と陸上自衛隊駐屯地が置かれていない奈良県の災害派遣を担当しているのも第4施設団です。

Oimg_5502 第4施設団長小野塚貴之陸将補へ敬礼する副団長兼ねて観閲部隊指揮官の池原伸浩1佐、乗車しているのは82式指揮通信車で、今回の行事に合わせ福知山駐屯地の第7普通科連隊より参加した車両、施設団はその任務の特性上から指揮通信車を装備していない。

Oimg_5519 第6施設群長大足卓也1佐、6施群は愛知県豊川駐屯地に駐屯し、群本部と本部管理中隊、築城を担当する第369施設中隊、障害構築を担当する第370施設中隊、機動支援を担当する第371施設中隊、交通維持を担当する第372施設中隊より成り、第369施設中隊は岐阜分屯地へ、第372施設中隊は鯖江駐屯地へ駐屯、これはかつての地区施設隊の名残だ。

Oimg_5523 第370施設中隊、行進しているのは道路障害作業車で、六種類のアタッチメントを用い道路上に障害を構築し敵部隊の前進を阻害する車両、クレーンなどの汎用車両として災害派遣にも活躍し、車体部分は旧称73式大型トラック、所謂3t半を用いており、よくみるとキャビン部分に防弾装甲とフロントガラス部分に防弾ガラスが装着しているのが見える。

O0img_5536 第7施設群より群長重村和幸1佐以下の観閲行進、7施群はここ大久保駐屯地に駐屯する部隊で、隷下に築城及び障害を担当する第379施設中隊と第380施設中隊、機動支援を担当する第381施設中隊と交通維持を担当する第382施設中隊、それに第304水際障害中隊が置かれている。

O0img_5544 第379施設中隊、ちなみに第7施設群は、第382施設中隊が富山駐屯地に、第304水際障害中隊が和歌山駐屯地に駐屯している。福井県に第6施設群隷下の施設中隊があり、富山県に第7施設群隷下の施設中隊がある、ということになり、少々覚えにくい。

Oimg_5559 第380施設中隊、築城と障害を担当する中隊で、施設科部隊は防御陣地やその陣地を守る地雷原を構築し、反撃に転じた際に敵地雷原や陣地防御のための障害を除去する必要がある。このほか、交通維持や機動支援は、補給路を航空攻撃や砲撃から機能維持し作戦遂行能力を支え、地形障害を突破し味方部隊の機動を支えるもの。

Oimg_5574 92式地雷原処理車、戦車用通路を地雷原に一挙に啓く爆薬を投射するもので、大型爆薬をロケットにより多数一直線等間隔に配置、爆破し周辺の地雷を誘爆させ処理するもの。もともと師団施設大隊に装備され、第一線の戦闘工兵任務に用いられたが、集中運用へ方面施設部隊へ集中配備された。

Oimg_5580 第304施設中隊の観閲行進、出雲駐屯地に駐屯している施設隊で、日本海に面するこの駐屯地には第13偵察隊を中心とする部隊が駐屯しています、もともと第13対戦車中隊が配置されていたのですが旅団改編で廃止され、偵察隊と施設隊だけの駐屯地に、長大な海岸線を有する山陰地方だけに施設隊も重要な防衛力として配置されていることは確か。

Oimg_5584 75式装甲ドーザ、第381施設中隊のもの。装甲ドーザも戦闘工兵用車両で第一線師団に配備されていたのですが、後継装備の不足から集中運用で方面隊へ召し上げられた装備です。後ろに見えるのは自走式破砕機、こうした装備は補給路維持を行う方面施設ならでは。

Oimg_5598 第305施設隊、こちらも独立施設隊という印象の強い部隊で、岡山県岡山市の三軒屋駐屯している部隊、同駐屯地は関西補給処の弾薬支処として有名。もともとは第2混成団の支援に当たる善通寺駐屯地の施設隊でしたが2008年に善通寺駐屯地から瀬戸内海を渡り三軒屋駐屯地に移駐しました。

Oimg_5609 第102施設器材隊の観閲行進、渡河器材、架線に応急架橋を行う装備を運用しており、測量データをもとに架橋開始より数時間程度、百数十分で架橋を完了させることが出来ます。部隊には迅速に架橋を行う92式浮橋と安定しており多数の車両通行を同時に担う重パネル橋を装備しています。

Oimg_5621 92式浮橋、左側に或る浮橋関節を河川上に展開させ、これを連結し端を完成させます、ただそのままでは下流に流されてしまうため、右側の動力ボートにより押しながら車両通行を維持する、というもの。90式戦車など自衛隊が装備する全ての戦闘車両を渡河させることが可能で、浮橋関節のみを艀のように分けて用いることも可能です。

O0img_5631 自走式破砕機、こちらも第102施設器材隊の装備で、岩石などを細かく砕き、道路用に用いるもの。補給路が破壊された場合、速やかに修復しなければなりませんので、手近な採石場や岩石をそのまま破砕して用います、穴があけば埋めればいいというのは埋めるものがすぐ入手できる平時の発想、有事の際には全て自前で対応せねばなりません。

Oimg_5646 第307ダンプ中隊、30両以上のダンプを集中運用し、道路維持などの支援に当たります。ダンプは師団施設大隊にも装備されているのですが、自衛隊としては多数のダンプを揃えているも、民間の建設会社よりは保有数は桁が幾つか少ないのも実情、災害派遣の能力を過大評価する動きはありますが、自衛隊は戦闘任務に当たる部隊が自己完結能力を以て災害時に対応している、という認識をこうした行事の際にも思い出しておくべきでしょう。

O0img_5664 第3施設大隊の観閲行進、千僧駐屯地の第3師団隷下に或る戦闘工兵部隊ですもともと方面施設が建設工兵、第一線で任務に当たる師団施設が戦闘工兵と言われていましたが、今日では曖昧な区分となっています、この施設大隊も大久保駐屯地に駐屯、まさに中部方面隊施設部隊の中枢といえる所以でしょう。

Oimg_5671 第3施設大隊の編成は本部と三個施設中隊を以て編成、施設部隊は攻撃前進の支援などの任務で戦車部隊や普通科部隊よりも前に出て障害処理や渡河任務にあたるわけで、そのためにはもう少し装甲車両が必要なのですが、施設作業車など高度な装備がありつつ予算上数が揃わないのが泣き所です。

Oimg_5673 81式自走架橋柱、油圧駆動式の橋脚を備えた橋桁を連接させ渡河するもの、後継装備として川床地形や流速に影響を受け無い様橋脚を省いた07式機動支援橋の装備が一部部隊より開始されていますが、本装備は小分けで使えるため使い勝手の良さはある、とのこと。

Oimg_5680 トラッククレーン、重器材の設置と展開には必要な装備です。ただ、やはり戦闘工兵なのですから、96式装輪装甲車に排土板と油圧ショベルアタッチメントを装備した施設装甲車や10式戦車の車体を流用した装甲ドーザと地雷原処理装置を加えたものを本部管理中隊でもいいので装備してほしいところ。

Oimg_5717 豊川駐屯地の第49普通科連隊。同連隊は第10師団隷下の部隊ですが記念式典にも一個中隊が参加していましたので、移駐しているのでしょう。同連隊は即応予備自衛官主体の連隊で年度末に第10師団より中部方面混成団へ管理替えとなります。これで中部方面混成団も第14旅団並に二個連隊を有することに。

Oimg_5726 伊丹駐屯地より参加した第3偵察隊の87式偵察警戒車、俊足を活かして高速展開し、機関砲と暗視装置を以て偵察任務に当たる車両です。ここまで大久保駐屯地と第4施設団隷下部隊の行進でしたが、ここからは大久保駐屯地所在部隊以外の陸上自衛隊の装備紹介的な意味での観閲行進、となってゆきます。

Oimg_5738 96式装輪装甲車、今津駐屯地の第3戦車大隊より参加した車両、戦車大隊本部の車両で、大隊本部要員や戦車支援に当たる。式典の他訓練展示模擬戦にも重要な車両として参加します。また、後ろには第7普通科連隊より参加した120mm重迫撃砲RTと牽引車両が見える。

Oimg_5752 第3特殊武器防護隊の化学防護車、この時点でヘリコプターの観閲飛行も近づいてきましたが、二台カメラ同時操作で角度的に厳しいものがあったのでG-12での撮影は断念して、EOS-7Dでの撮影に集中、飛行は二機編隊でAH-1S対戦車ヘリコプターとUH-1J多用途ヘリコプターという編隊でした。

Oimg_5763 豊川駐屯地より第10特科連隊のFH-70榴弾砲、ちなみに、伊丹駐屯地祭のように正面からの角度を狙っての撮影位置確保でしたが、観閲行進の規模と式典会場の広さを考えると、もう少し前進した位置を確保したほうが良かったか、大久保駐屯地は元陸軍飛行場、かなり広い。

Oimg_5772 観閲行進の最後を飾る第3戦車大隊の74式戦車、やはり戦車の迫力は大きいが、この前進を支えるのが施設部隊の装備、こうして観閲行進は完了し、続いて訓練展示へ展開です。訓練展示は別の場所から撮影しましたが、そちらはG-12と二台撮影することは出来ず、EOS-7Dのみとなりました、その様子は別の機会に紹介しましょう。

北大路機関:はるな

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第3師団創立52周年・千僧駐屯地祭予行(2013.05.18) PowerShotG-12撮影速報

2013-05-20 23:02:56 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆本番さながらの迫力!師団祭予行一般公開!

 土曜日、第三師団創設記念行事予行へ行ってまいりました。コンパクトデジタルカメラPowerShotG-12の写真にて、取り急ぎその様子をご紹介しましょう。

Simg_4599 伊丹市の千僧駐屯地、すぐ近くの伊丹駐屯地には中部方面総監部が置かれ、京阪神地区と中日本および西日本の広域の陸上防衛を担う重要地区となっています。そして千僧駐屯地には京阪神紀伊地区を防衛警備管区とする第3師団司令部が置かれ、今回は此処の行事が行われた。

Simg_4603 千僧駐屯地祭は、まず土曜日に一般公開のもとで予行が行われ、日曜日に本番が行われます。通常予行は金曜日に非公開で行われるのですが、昨年から土曜日に一般公開と共に予行が行われるようになり、本番よりも来場者が少なく会場に余裕があるため、お子様連れの地元の方は予行を中心に足を運ばれることもあるのだとか。

Simg_4605 予行と本番の違いですが、執行者としての師団長は代理が務め、以下観閲部隊指揮官の副師団長以下の要員は本番と同じ、来賓祝辞と祝電披露に来賓紹介と感謝状贈呈は予行ではアナウンスのみで実質省略されます。このあたり、式典が短く、観閲行進と訓練展示となるため、お子様が自衛隊に興味を持つには、待ち時間を省けて効果があるのかも。

Simg_4624 副師団長以下師団高級幕僚の乗車した82式指揮通信車。観閲行進予行、式典はどの程度縮小されるかと言いますと翌日の本番と比較すると25分程度短く、親さんに頼んで自衛隊行事初挑戦、という子供たちにはあまり興味のない祝辞などの部分に対し、観閲行進準備の号令までの時間というのはあまりにも長い。

Simg_4631 第36普通科連隊徒歩部隊の観閲行進、第36普通科連隊は阪神大震災において阪急伊丹駅倒壊の一報と共に、手続きよりも良心を重視し近傍災害派遣任務に踏みきった部隊で、福知山線脱線事故にも出動していましたね。ちなみに安易に自由を縛る事で平和を実践しようとしたのが戦後日本の平和法体系、対して同じく敗戦国のドイツは指揮官の良心を重視する体系を構築し、今に至る。

Simg_4636 祝賀飛行、航空部隊の飛行は伊丹空港の航空管制を受けるため時間が限定されている。第3飛行隊と第5対戦車ヘリコプター隊に航空学校、海上自衛隊第24航空群のヘリコプター、9機が編隊飛行を行いました。航空学校からはAH-64D戦闘ヘリコプターが参加、この地域の行事ではAH-64Dは珍しくなくなりつつある。

Simg_4643 第3偵察隊、軽装甲機動車と偵察オートバイに87式偵察警戒車の車列です。ちなみに、この予行ですがお気づきの通り、スタンド席から撮影しています、このスタンド席は本番にて来賓席となるので、一般は座ることが出来ません、翌日の本場んではこの位置、航空自衛隊の将官が座っていたりしていました。

Simg_4653 87式偵察警戒車、ちなみにスタンド席下の椅子席もこの予行の日は全域が一般に開放されていたのですが、本番当日は観閲台の周囲が来賓席となっていまして、端の方のみ一般に開放されていました。ですから、撮影位置だけ、というのでしたらば予行の方がいい場所が開放されている、ということ。

Simg_4675 福知山駐屯地の第7普通科連隊より、高機動車の車列です。ちなみに、第7普通科連隊は自民党の佐藤代議士が自衛官時代に連隊長を務めた部隊、代議士はゴラン高原派遣やイラク派遣時代を筆頭に各国武官や高級指揮官との関係が深く、特に欧州では連隊長という職務の有する意味が大きいですので、元7連隊長、という肩書とともに進める外交関係は我が国に少なからず有利となっているのでしょう。

Simg_4691 第7普通科連隊重迫撃砲中隊、強力な120mm重迫撃砲RTを16門装備しています。指揮官へ敬礼、ですが、もちろんこの日の指揮官は代理の方です。ただ、予行開放が二年続いて思うのですが、警察署の一日署長さんではないですけれども、一日師団長さんを任命して予行に当たってもいいのでは、と少し。

Simg_4708 信太山第37普通科連隊の軽装甲機動車中隊、第3師団隷下には、福知山7連隊、伊丹36連隊、信太山37連隊と三個普通科連隊がありますが、全ての普通科連隊は一個中隊と本部管理中隊所要の軽装甲機動車を装備しています。しかし、やはりスタンド席からの俯瞰は色々なものが見えますね。

Simg_4718 軽装甲機動車の車上で構えているのは01式軽対戦車誘導弾で、このほか、MINIMI分隊機銃や110mm個人対戦車弾などを携行している車両がありました。G-12で広いアングルの予備写真を撮りつつ、EOS-7DとEOS-50Dでどんどんと撮影してゆきます。

Simg_4727 姫路駐屯地第3特科隊の観閲行進、FH-70榴弾砲が大きい。特科隊は、特科連隊が隷下に特科大隊を置いていたのにたいし、特科隊は特科中隊を基幹部隊としたのが編成上の特徴で、いわゆるコンパクト化編成の部隊です。ただ、お隣第10師団は第10特科連隊が年度末改編で増強され、FH-70榴弾砲60門を運用する部隊となり、第3特科隊の火砲数と三倍も開いてしまった。

Saimg_4736 第3特科隊情報中隊の対砲レーダ装置と気象観測装置、共に下手な自走榴弾砲よりも遙かに高額装備でして、他方近代戦には必要不可欠のもの。自衛隊の対砲レーダ装置保有数は20基程度ですが、実はNATO諸国で新型のコブラ対砲レーダ装置の生産数を見ますと、ドイツ軍やフランス軍と同程度、陸軍50万という韓国軍の対砲レーダ装置は僅か6基ですので、縮小ではなくコンパクト化を重視している自衛隊の姿勢が良く分かってくる。

Saimg_4745 通信大隊の衛星通信装置、ちなみに写真撮影も通信大隊の任務です。無関係ですが、このG-12撮影、超コンパクト三脚にG-12を装着し、レリーズを取り付け一眼レフ装着レンズを操作する左手の小指と薬指で同時に操作するという方法で撮影です。なんか、写真の専門の方やカメラマンの方にこの方法を話すと、苦笑いされてしまうという。

Saimg_4750 第3特殊武器防護隊の生物偵察車、配備された年の訓練展示では生物兵器警戒の展示として機動展開を展示したのですが、その年当方多忙で行くことが出来ず、実は見たことが無い、という何時場が痛恨の極み。まあ、災害派遣で本車が展開する状況は絶対見たくないのですが、もちろん防衛出動でも。

Saimg_4768 第3後方支援連隊の観閲行進が始まりました。こちらは重レッカー、トラックや装甲車を拐取する際に活躍します。見た目が勇ましい78式戦車回収車も後方支援連隊の装備で、実は後ろの茂みの奥にいるのが映っているのですが、観閲行進中の故障車両に備え、こちらは行進へ参加しません。

Saimg_4763 第3衛生隊の救急車、車内は文字通り搬送用車両なのですが、医師法などの障壁が大きく、中々搬送以上の救急車を制式化できない、という泣き所。装甲救急車が欲しくともその予算が無いから無理では、ととある識者が仰っているのを聞いたことがありますが、後方支援連隊の戦車直接支援中隊に装甲車が配備されるご時世ですので、それはないか、と。

Simg_4772 第3後方支援連隊輸送隊の戦車輸送車、戦車は今津駐屯地から自走して展開することも不可能ではないのですが、車両故障と整備負担、移動速度に上限が出てくるため、このように戦車輸送車で展開することとなります。脅威が無い状況では乗員の負担も少ないですし、ね。ちなみに輸送は重車両なので深夜に行われる。

Simg_4794 第3戦車大隊の74式戦車が観閲行進の最後を飾ります。首都圏では第1戦車大隊へ10式戦車配備に伴い、様々な行事へ富士教導団や第1機甲教育隊の10式戦車とともに参加し、珍しくなくなっているようですが、こちらはもう少し74式戦車の時代がつづきそう。

Simg_4784 しかし、古くとも迫力は衰えないのが戦車というもの。運用方法次第によっては、なんとか第三世代戦車に対抗することが可能で、陸上自衛隊戦車部隊は最新型の戦車の運用研究を進めると共に、従来型戦車の性能を如何に最大値を発揮させるかについても、研究と訓練の余念がありません。

Saimg_4803 戦車撮影の重要な点は、最初の一両が通過するまでが最も撮影に適した瞬間、何故なら最初の一両が巻き上げる砂塵で航続する戦車が霞んでしまうから。観閲行進は以上の通り、予行とはいえ手抜きは一切ありません、が、第3施設大隊の車両が居ないことにお気づきの方がいるやも、実はこの日、大久保駐屯地から千僧駐屯地までの道中事故渋滞に巻き込まれ、予行に間に合わなかった、とのこと。

Simg_4837 訓練展示模擬戦の様子、オートバイドリルや格闘展示に姫路白鷺太鼓などの演奏とともに模擬戦も予行で行われました。FH-70と74式が咆哮を挙げ、機関銃と小銃が火を噴く、空包の使用量では、予行も本番も違いはありません。いつもはEOS-7DとEOS-50Dのみで頑張る訓練展示、G-12も少し頑張ってみた。

Simg_4830 やはり、同時に二台のカメラ、加熱後進のように定点撮影できるものは兎も角として、こっちは無理、難しい。ただ、昨年の北富士駐屯地祭ではG-12も結構頑張ったのですが、ね。また、富士総合火力演習ではG-12でも秒間2枚撮影というシャッター速度にて戦車の発砲焔を撮れましたので、侮ることはできない。

Simg_4839 千僧駐屯地ですが、師団駐屯地としての式典会場の狭さは見ての通りです。実は、第10師団の守山駐屯地と第1師団の練馬駐屯地も、此処よりは広いですが、此処よりは、という規模だったので、昨年の海田市駐屯地第13旅団や善通寺駐屯地第14旅団の広さには驚きました。第11旅団の真駒内駐屯地は物凄く広いと聞いていたので行っても驚きはしませんでしたが。

Simg_4841 それでも、訓練展示の迫力はEOS-7DとEOS-50Dの二台を何度も持ち替えつつ撮影する片手間に、いい写真を撮る、というのは無理でしたか。定点撮影で操作をレリーズに任せる、というやり方、他にも方法は無いのか、もう少し研究してみたいところではあります。

Simg_4840 このようなかたちで、訓練展示は想定占領された千僧台へ果敢な突撃を我が方が展開し、見事これを奪取、状況終了となったのでした。予行の写真をこのように紹介してみましたが、文字通り本番さながらの迫力、師団長は代理で式典も縮小、しかしお子様連れなどの方々には垣根が低く開放される区画も広い、興味の湧かれた方は是非来年、足を運ばれてみてはどうでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑧ 火力戦闘部隊の打撃戦

2013-05-15 23:19:10 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆特科火砲・誘導弾の展開と戦車前進

 訓練展示状況開始より情報収集を開始したわが方は戦車を含む仮設敵の抵抗へ遭遇しました。これが前回までの流れ。

Fimg_6416_1 特科!、射撃せよ!。展開した第4特科連隊のFH-70榴弾砲が空包の咆哮を響かせ、反響した砲声と衝撃波が同時にこちらへ到達します。発砲焔から耳をふさぐ間もなく轟く火砲の迫力、瞬時を切り取った明々とした焔とともに、そして飛び散る空包栓、これこそが特科火力の存在そのもの。

Fimg_6408 効力射を展示しているため、二門のFH-70は連続射撃を行います。特科部隊の任務は火力による制圧とともに対砲兵戦、仮設敵も同様であるので、攻撃準備射撃であっても突撃破砕射撃であっても攪乱射撃であっても射撃を行えば砲撃音と砲弾弾道から逆算され、反撃されることもあるため、特科大隊長の攻撃決断、決心はとても重要です。

Fimg_6290 再装填を射撃へ、並ぶ二門が交互に射撃を。FH-70榴弾砲は、牽引砲ながら半自動装填が可能で連続射撃能力に長け、長砲身による長射程と高持続射撃能力、非常に高性能で自走も可能且つ小回りも利きます。欧州共同開発で余り世界で普及しなかったのは、その高性能に見合った高価格ゆえ。

Fimg_6708 第4対舟艇対戦車隊の96式多目的誘導弾が特科火砲の火力制圧により仮設敵の攻撃がやんでいる最中を陣地展開します。本装備は射程が10km前後と射程が大きな多目的誘導弾ですが、射程が大きく間接照準射撃を行うため戦域優位を獲得する装備ながら、展開に時間を要する、というもの。

Fimg_6647 第4戦車大隊の74式戦車が続いて進入を開始します。96式多目的誘導弾と74式戦車。74式戦車は、高初速砲弾を直接照準により正確に投射し、最高度の防御力と不整地を含むすべての地形において装備体系の頂点に位置する機動力を発揮するもので、これが無ければ陸上戦闘というものが成り立ちません。

Fimg_6698 第40普通科連隊の重迫撃砲中隊が120mm重迫撃砲RTの展開を開始します。実は先ほど96式多目的誘導弾の展開開始の写真、その後ろに写っていたのが重迫撃砲を牽引する高機動車の派生、重迫牽引車で、迫撃砲を分離し、目だたないよう車両が転進したのち射撃準備を行う様子、傍らには迫撃砲弾を抱える隊員が見える。

Fimg_6652 併せて、74式戦車も準備を整えます。最高度の防御力を有する戦車ですが、74式戦車は戦後第二世代戦車、最高度の打撃力を有しつつ、攻走守のうち、対戦車ミサイル時代の到来を前に防御力過剰による車重増大を避け、機動力の充実を図った戦車で、早い話対戦車火器を避ける必要があるため地形を依拠して運用なければならない。

Fimg_6639 重迫撃砲の射撃準備完了、対砲兵戦の技術革新による迅速化に伴い、特科部隊の任務はより長距離に、そして指揮系統が複雑化した今日、射程が旧型と比べ倍以上に達する重迫撃砲は、持続射撃能力と精度で野砲には及ばないものの、普通科部隊へかつて特科部隊が供していた直掩火力を提供します。

Fimg_6654 戦車前進!、前へッ!。74式戦車が前進を開始しました。ミサイル優位時代が語られる昨今ではありますが、ミサイルは翼により誘導されて弾頭を作動させ目標を破壊するものが基本であるため、森林地帯や市街地では別のものに引っ掛かり無力化されてしまいます。このため、直接照準の高初速砲は今なお、その優位性がある。

Fimg_6346 またなにより、かなりの速度で前進する戦車に対し、十分な準備をもたない防御部隊はほぼなすすべがありません。そして、戦車には徒歩部隊では携行できない重量のある照準器などにより遠距離から正確に火力を投射できるため、その威力も無視できないでしょう。

Fimg_6687 第40普通科連隊の軽装甲機動車、戦車部隊の前進と共に、そして普通科部隊も戦車を支援するべく前進を開始しました。戦車は対戦車火器を有する敵歩兵に脆弱性を有するため、どうしても普通科隊員が随伴して直協支援を行わなければなりません。こうして、5.56mm機銃MINIMIを射撃しつつ前進を開始しました。

Fimg_6658 74式戦車の前進、本車も砲安定装置と弾道コンピュータを搭載し、車体の位置秘匿を行う油気圧懸架装置の採用で不足する防御力を地形防御により補う戦車で、古くはなりましたが、新型砲弾の採用と情報伝送装置の後日搭載実施と研究により、暗視装置と防御力以外では今なお第一線の能力があります。

Fimg_6683 我が方が火力制圧の支援下に戦車部隊を含む機械化部隊の攻撃前進を開始した状況に対し、仮設敵も戦車を前進させました、戦車は装甲機動部隊として防御線をその衝撃力により突き破るため、敵も防御線を維持するためには、この状況を何とか阻止しなくてはなりません。

Fimg_6662 戦車と共に軽装甲機動車が前進、そしてこれを阻止するべく展開した仮設敵戦車部隊に対し、いよいよ戦車対戦車、戦車による対戦車戦闘が始まります。この様子については、次回の第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報にて紹介することとします、お楽しみに。

北大路機関:はるな

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木更津駐屯地創設45周年記念行事・木更津航空祭2013PowerShotG-12撮影速報

2013-05-14 23:41:12 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆世界最大級大型ヘリ部隊&世界最痛の対戦車道

 日曜日に木更津駐屯地へ行ってまいりました。EOS-7DとEOS-50Dの写真は整理中ですので、G-12の写真にて紹介しましょう。

Himg_3853 木更津駐屯地には中央即応集団第1ヘリコプター団と東部方面航空隊第4対戦車ヘリコプター隊が駐屯している航空部隊駐屯地で、32機のCH-47J/JA大型輸送ヘリコプター、16機のAH-1S対戦車ヘリコプターのほか、数年前よりUH-60JA多用途ヘリコプターの配備が開始され、世界的に見ても大きなヘリコプター部隊駐屯地です。

Himg_4176 AH-1S対戦車ヘリコプターは、一機で装甲戦闘車の十倍に匹敵する取得費用、それに見合う航空打撃力を発揮できるもので、陸上自衛隊は空中打撃力強化へ1980年代より96機を取得、全国の北部、東北、東部、中部、西部の各方面隊へ対戦車ヘリコプター隊を編成しました。

Himg_3844 そして痛コブラと呼ばれる独特の記念塗装を行う部隊としても知られ、三年前のAH-1Sホブラより始まり、今年では北関東で女子高生が戦車の戦術技量を競う戦車道の話題が盛んとなるなか、木更津では対戦車道として空中打撃力により戦車を迅速に無力化する競技が盛んとなっているとのこと。

Kimg_4160 木更津は陸上自衛隊輸送ヘリコプター部隊の中心で、V-107ヘリコプター時代は40機を集中運用していました。それがこんにちはCH-47J/JAの32機に置き換えられ、今に至ります。このV-107は保存展示機で、VIP輸送用として用いられていたもの。歴史の舞台に幾度も要人を運んだ、貴重な一機です。

Himg_3863 第1ヘリコプター団長田中重伸陸将補。木更津のお隣千葉県富津出身で、第2飛行隊長や八尾駐屯地司令兼中部方面航空隊長などを務め、第1ヘリコプター団長に着任されています。また、2008年に北大路機関が特集した八尾駐屯地創設記念行事に中部方面航空隊長として式典に臨んでいます。

Himg_3859 記念式典には浜田元防衛大臣も出席し、隊員を激励しました。第1ヘリコプター団は有事の際には最大の空中機動部隊として部隊を長距離展開させる部隊であり、実任務の経験についても福島第一原発への放水任務にもあたった、世界で最も修羅場を潜った部隊と言って過言ではありません。

Himg_3879 式典が完了し、観閲飛行準備の号令が掛かると共に整列した隊員が航空機へ向かいます。その背景に海上保安庁のDHC-8が到着、地上展示へ展開したもの。同機はMA-722みずなぎ、東日本大震災当日に仙台空港のジャムコへ定期整備で入っていた機体で、電気系統が津波により破壊されましたが、格納庫内に配置されていたため流失を免れ、ボンバルディア社と日本飛行機の最大の努力により、世界初の津波被害復旧機となりました。

Himg_4068 観閲飛行準備へ、飛行場地区のヘリコプターは次々と離陸してゆきました。前回、初めて木更津へ足を運んだ2006年は、ここで撮影位置を読み誤り、凄く条件の悪いところを選んで撮影、ようやく満足いくアングルにて撮影できるということに、思えばあれから七年、ようやく来れて、ちょっと嬉しい。

Himg_3954 祝賀飛行、離陸したヘリコプターの編隊は東京湾上空を経て横浜方面に進み、三浦半島方面から変態を整え、木更津駐屯地上空へ。大編隊は前日土曜日の嵐のような荒天と視界不良が嘘のように晴れ渡った青空を背景にこちら側へ近づいてくるのがしっかりとみえる。

Himg_3998 観閲飛行の編隊は先頭を指揮官機OH-6D一機、第一群を第1ヘリコプター団102飛行隊UH-60JA三機、第二群を第4対戦車ヘリコプター隊AH-1S四機とOH-1二機、第三群に1ヘリコプター団103飛行隊CH-47J/JA三機、第四群に1ヘリコプター団104飛行隊CH-47J/JA三機、とまだまだ続く。

Himg_4008 第五群に1ヘリコプター団105飛行隊CH-47J/JA三機、第六群に1ヘリコプター団106飛行隊CH-47J/JA三機、編隊飛行は一航過のみなので、撮影は一回でしっかりと納めなければならないが、見上げる大編隊に驚き、やはり大型ヘリと対戦車ヘリを中心に計22機の編隊飛行は凄い。

Himg_4031 編隊は観閲飛行を終えると駐屯地の滑走路延長線上で再度海側へ大きく旋回し、そのまま着陸態勢へと移る。UH-1でこの規模の編隊飛行ならば見れないこともないけれども、CH-47だけで12機編隊、やはり陸上自衛隊はヘリコプターを重視しているのだ、という事を端的に感じることができるひととき。

Himg_4040 CH-47は一機で96式装輪装甲車50両分の調達費がかかる、一個中隊14両とすれば三個中隊分と連隊本部所要8両分、つまりほとんど一個普通科連隊を装甲化させられる機体で、地皺の多い起伏に富んだ日本列島を守るには、空中機動の重要性を認識していたから、という事を改めて考えされられ、また、有事と言っても武力攻撃事態ではなかったけれども、東日本大震災にてその能力が命を救う、考え得るもっとも良心的な立場を担ったのが自衛隊のヘリといえるやも。

Himg_4052 訓練展示模擬戦は、第1空挺団を主力とする空中機動で、迫力があったのだけれども、やはりどうしてもG-12では追随できない、EOS-7DとEOS-50Dの撮影に特化した。続いて正午過ぎにAH-1S対戦車ヘリコプターとOH-1観測ヘリコプターの編隊機動飛行展示が。こうした飛行展示の連続は陸上自衛隊の航空祭として珍しい。

Himg_4069 全ての行事が完了すると、ヘリコプター地上滑走体験と抽選の体験飛行が。なにしろ、ヘリコプターの数が桁外れに多いことから、対象者も一桁多く乗ることが出来ました。同行の友人がどうせ乗れないから帰ろうか、と言ってきたので、相槌を打ち、そうだよ先着2000名とのことだし、というと、踵を返し友人は何やってるんだ並ぶぞ、と。

Himg_4128 ヘリコプター体験飛行は、自衛隊員以外のヘリコプターに慣れていない一般の多数の方を安全に素早く運ぶ、一つの訓練にもなっている、とのことで、我々は空の旅を体験するとともに、こうして地使われた貴重なノウハウが災害派遣時などでの避難支援などに活かされているとのこと、なるほど。

Kimg_4168 地上展示機で初めて間近にみたのが、このEC-225要人輸送ヘリコプター、以前のAS-332よりも全長が延伸し、胴体が広くなったほか、ローターが五枚翼となり、操縦性が向上したそうです。前回木更津に足を運んだ際には、まだAS-332が現役でした。東京都内を飛行している様子や空挺降下訓練始めでは見たことあったけれども、間近に見たのは今回が初めて。

Himg_4169 地上展示機で最も注目したのは、警視庁航空隊のS-92ヘリコプター、国際共同開発で昨年三月に入ったばかりのヘリコプター、通称ヘリバス。整備の方や操縦士の方とお話が出来たので、EH-101やベル412の話を交えて気になったことをいろいろと聞いてみまして、話題に海上自衛隊の方も入ってきて楽しく過ごせました。

Kimg_4178 LR-1連絡偵察機、あとわずかに残るのみの陸上自衛隊固定翼機、導入当時は機関銃を搭載して軽攻撃機に使う訓練、また写真偵察機としても活躍しました。毎回見るたびに、これが最後でLR-1ともお別れ、と思ったりするのですが、また今回も。後継機は隣のLR-2ですが、個人的には同程度の胴体を有するAW-609可動翼機を推したい。

Kimg_4177 AH-64D戦闘ヘリコプターも地上展示機へ展開していました。なんとか当初計画の60機を揃えれば、一個飛行隊が12機として五個ヘリコプター隊を充足させられます。予備機と教育所要機がありませんが、現行のAH-64Dをそちらに充て、実任務機をAH-64Eとしてでも、なんとかAH-1Sを置き換え、空中打撃力を維持してほしいところ。

Himg_4163 AH-1S対戦車ヘリコプター、先ほど機動飛行展示を行ったヘリコプターと同型ですが般若の面が第4対戦車ヘリコプター隊のマークですけれども、何か違うカラーリングを施している、これこそ木更津が誇る痛コブラです。大人気といいますか、凄い注目を集めている機体です。

Himg_3867 AH-1Sがここまでcわが国で注目を集めたのは久しぶり、というほど一部の方の間で知名度が上がり、何故か海外からも木更津へ撮影に足を運ばれた方もいるほどでしたが、上から怒られ、とばっちりをうけた某出版社が本省出入り禁止か、と騒がれたこともあり、今年で終了とのこと。

Himg_4186 遊んでいるように見えるかもしれませんが、再発進展示と武装搭載展示を行っていまして、このイラストは注目を引くための手段でしかありません、大真面目に展示を行っていました。こうして、一通り撮影を完了し、当方一行は木更津をあとにしたのでした。帰りはアクアラインが大渋滞でしたが、なかなか貴重なものを見ることが出来た一日です。

北大路機関:はるな

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俯瞰風景 目達原駐屯地、陸上自衛隊唯一のアパッチロングボウ配備実戦部隊

2013-05-06 23:15:08 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆空からしか見たことのない場所

 本日も旅客機からの風景写真、目達原駐屯地の初撮影です。実際に行ったことが無い自衛隊の施設、2011年8月7日付記事で大湊基地を紹介しましたが、今回は目達原です。

Himg_3504 目達原駐屯地、西部方面後方支援隊本部が置かれているほか、第4師団隷下の第4飛行隊、西部方面航空隊西部方面ヘリコプター隊や第3対戦車ヘリコプター隊が展開する航空駐屯地で、滑走路から当方も気づいたところ。目達原駐屯地はヘリ御プター部隊の駐屯地であるため、滑走路は660mのものです。
Himg_3506_2 目達原駐屯地の第3対戦車ヘリコプター隊はAH-1S対戦車ヘリコプターを運用する部隊ですが、2010年より飛行隊を分け、一部をAH-64D戦闘ヘリコプターにより代替しています。通称アパッチロングボウと呼ばれるこの機体は航続距離が大きく、索敵能力と情報伝送能力が非常に大きいため、南西諸島を警備管区とする西部方面隊へ必要な装備と考えられたのでしょう。

Himg_3505 駐屯地は吉野ケ里町にあり、1943年に陸軍航空隊太刀洗飛行学校目達原分校として創設されました。写真上には高速道路のようなものが見えますが、これが長崎自動車道で、確認しづらいですが駐屯地と高速道路の間に長崎本線、そして吉野ケ里公園前駅があります。

北大路機関:はるな

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑦ 訓練展示状況開始!

2013-04-29 23:32:43 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆航空偵察と偵察隊の情報収集開始

 福岡駐屯地祭特集も第七回を迎え、前回までに観閲行進を特集、今回から訓練展示の紹介を始めましょう。

Fimg_6176 状況開始、情報収集へ偵察隊と飛行隊の前進が始まります。情報収集は何時の時代も空から、ではありますが勢いよくジャンプする第4偵察隊斥候小隊の偵察オートバイ、偵察隊は如何なる地形も踏破するべく非常に厳しい地形を訓練地として鍛錬を積み、徒歩でなければ突破できないような地形へも迅速に進出可能です。

Fimg_6166 第4飛行隊のOH-6D観測ヘリコプター、観測とは特科火砲が榴弾砲による長距離射撃を行う際に着弾地域を観測し、その精度を高めるべく修正する空中観測点を供する装備ですが、OH-6は観測員の機動のほかにも後部座席を用いて指揮官連絡や負傷者搬送任務に就くことが出来、簡便な装備は野戦運用に最適、情報収集にも重宝される。

Fimg_6179 偵察隊の斥候オートバイ、やはり人の五感は偵察に重要で、エンジン音や排気の匂いに微かな土煙と轍等の痕跡を以て情報収集を行うことは、今日、熱線暗視装置や戦場レーダ装置などの著しい発展を遂げる今日でも一定の意義があります。もっとも、技術発展は著しいため、折衷というものは必要なのでしょうが。

Fimg_6596 OH-6Dは上空から敵の兆候把握に努めます。近年は肉眼で発見できる範囲内に敵が浸透した場合、携帯地対空ミサイルや重機関銃により容易に撃墜されるため、数が必要な観測ヘリコプターにも遠距離から監視するFLIRなどの装備が搭載される趨勢があり、この種の装備の価格高騰を招いています。アメリカはRAH-66にARH-70と立て続けに計画が頓挫、自衛隊もOH-1の調達が中断、現状で自衛隊は低空飛行能力を磨き、技術で生存性を辛うじて補っているところ。

Fimg_6200 偵察でのオートバイも警戒に走り回る迫力は凄いのですが、オートバイに搭載できる装備は音声通信用無線機程度で、僅かに画像伝送能力が研究されているものの、大型の監視装置を搭載できないため、近年では装甲車に大型の観測器材を搭載するものや、装甲戦闘車や戦車が情報伝送能力を有するに至り、偵察任務を事実上兼ねている趨勢が訪れつつあります。

Fimg_6160 仮設敵部隊、敵装甲車が偵察隊の目の前に姿を現します、軽装甲車の車上から仮設敵は軽機関銃により我が偵察隊へ攻撃を開始してきます。偵察隊の偵察任務とは、敵の有無を計る斥候に対し、実際に敵と戦火を交え、その抵抗の度合いから敵戦力の規模を図ることに或る。

Fimg_6211 偵察隊員は、素早く車両ごと地面に伏せ、射撃姿勢に移行する。緊急時には車上から流鏑馬の如く射撃を行うことも可能だが、見た目の勇ましさと反面全身を敵に曝すため、伏せて車体を盾とし、抵抗が大きい場合には機動力を活かし俊敏に撤収を図り、次の偵察任務へ繋げる、これが斥候小隊の戦い。

Fimg_6223 敵装甲車の発見という一報に接し、偵察隊長は87式偵察警戒車による威力偵察を命じました。87式偵察警戒車は25mm機関砲と微光増倍方式暗視装置を搭載し、威力偵察と情報収集にあたります。必要に応じ地上レーダ装置を砲塔に搭載して電子情報偵察も可能とのこと。

Fimg_6588 仮設敵の軽装甲車が偵察警戒車との間で戦闘が繰り広げられる、が、流石に小銃弾を用いる軽機関銃を車体上から射撃する軽装甲車では、火器管制装置により正確な射撃を加える25mm機関砲、軽装甲車や低空のヘリコプターに対して大きな威力を発揮する中口径機関砲の威力を前に非常に不利だ。

Fimg_6213 オートバイ斥候の隊員は総員、伏せて小銃により適宜反撃の射撃を加えます。ちなみに、普通のバイクでは車体を傾けると燃料があふれる場合があるそうですが、偵察隊へ配備されている車両は傾けた場合でも燃料が溢れないよう、改修されたものを装備している、とのこと。

Fimg_6218 空中機動部隊前へ。我が部隊指揮官は、軽装甲車による攻撃や、その周辺からの射撃などの情報から、その周辺に敵が陣地占領を行っていると判断、更なる情報収集と共に攪乱戦闘を行うべくレンジャー隊員の投入を決意、12.7mm重機関銃を搭載した多用途ヘリコプターUH-1の支援下で空中機動を行う。

Fimg_6539_1 UH-1J多用途ヘリコプターは富士重工においてライセンス生産していたUH-1Hを元にエンジン出力の強化などの改良措置を加え導入したもので、師団飛行隊には4機程度が装備されています。11名の空中機動が可能で、弾薬輸送や空中消火に情報伝送や映像情報収集などなど、文字通り多用途に活躍する。

Fimg_6220 UH-1Jに搭載されている12.7mm重機関銃M-2,現在米軍ではM-2の派生型で発射速度を倍増させたM-3を装備しています、航空機上は安定しないため、命中させるにはそれだけ多くの弾薬を使う必要がある実情の反映で、発射速度が高くないM-2を用いる自衛隊は、射撃精度の向上とヘリコプターの低速飛行、それだけ訓練と危険を冒さねばなりません。

Fimg_6192 軽装甲車との射撃先頭に際し、偵察警戒車が牽制している中を、斥候のオートバイは迅速に離脱を図ります。オートバイを盾にしているとはいえ、オートバイは当然ながら防弾性が無く、盾と言っても遮蔽物程度でしかありませんので、適宜離脱する機動性と判断こそが重要、というわけ。

Fimg_6228 87式偵察警戒車は、導入当時、陸上自衛隊は普通科部隊の装甲化は夢のまた夢で自動車化を進めている最中にあり、そこにこれまでジープのような車両とオートバイのみであった偵察隊へ装甲車両が導入された意味は大きかったものの、近年ではより高い情報収集器材を搭載する車両か、戦闘能力の大きな装甲車両が望まれるようになってきました。

Fimg_6157 そういうのも、戦車などと遭遇した際に、近年のしぇん瀉法の精度は大きく向上し、火器管制装置の能力向上により遠距離から照準し射撃するため、対処できないためです。偵察警戒車との戦闘に際し、仮設敵は軽装甲車を一旦後方に下げ、戦車を前進させてきました。戦車は高い防御力と火力に機動力を併せ持つもの、戦車の前進を前に、偵察警戒車の対応では限界となります。機関砲で軽装甲車に優位に立った偵察隊ですが、戦車が出てくると分が悪いのは否めません。

Fimg_6237 偵察隊は実際の戦闘を交えてその抵抗からその規模を図ることですが、今回は師団行事の模擬戦なので抵抗がありました、偵察隊は独力で撃破できるのであればそのまま制圧して前進しますが、偵察隊では対応でき無い脅威に遭遇、いよいよ師団主力を以て制圧へかかることへ。

Fimg_6233 空中機動部隊と偵察部隊の連携、こうやって見てみますと、この福岡駐屯地が高層マンションのすぐ隣にある、という事が改めてわかる一コマで、こうした情景は全国の駐屯地で意外と多いのですが、沖縄の米軍施設が住宅街に隣接している、という報道に接するたびに、いや、普通ではないか、と思ったりもしたり。

Fimg_6623 戦車との戦闘が開始された中、陣地の存在が確認されたため、離れた場所へヘリボーンにてレンジャー隊員を展開させます。いや、凄く近いところに降りているではないか、と突っ込まれそうですが、実戦ではかなり離れた場所へ展開します。ここでそれやると、会場から見えないので此処へ。

Fimg_6629 レンジャー隊員は部隊戦闘に限らず、小部隊での遊撃戦闘と徒歩を含めた長距離機動と様々な技術を有する訓練課程を経て修了した隊員で、少人数であっても高い能力を発揮できます。隊員の素質は高いとの米軍の評判もありますので、前線航空統制訓練など更に新しい訓練を実施すれば、レンジャーの能力はより大きくなるでしょう。

Fimg_6253 UH-1はレンジャー隊員の投入が完了すると迅速に離脱します。レンジャー隊員はかなりの距離を重装備と共に踏破する訓練を受けていますので、敵の防空火力圏外であってもそこから降下し進出できますが、圏外とはいえ敵の存在が正確に把握できていない以上、長居は無用です。

Fimg_6260 偵察隊の情報収集と、広報に展開したレンジャーの情報により、敵部隊の規模は機甲部隊を中心とした大規模な侵攻と陣地構築が行われていると判明、我が部隊指揮官は即座に特科連隊よりFH-70榴弾砲を展開、155mm榴弾砲により長距離射撃を行い陣地の破壊と攪乱射撃、突撃破砕射撃の準備を命じました。

Fimg_6269 特科部隊は特科大隊長の命令一下、十分な離隔距離を以て射撃体制へ移行します。福岡駐屯地訓練展示模擬戦は、偵察隊の情報収集と航空偵察、レンジャーの空中機動と共に得られた情報から、いよいよ火力戦闘へ展開します。これらについては次回掲載、お楽しみに。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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久居駐屯地創設61周年記念行事(2013.04.21) PowerShotG-12撮影速報

2013-04-21 23:15:44 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆精鋭!第33普通科連隊 

 本日、三重県津市の久居駐屯地創設61周年記念行事へ行ってまいりました。その様子をG-12の写真から取り急ぎ紹介しましょう。

Himg_2381 国旗と共に連隊旗を掲げ行事へ臨む隊員。久居駐屯地は、近鉄の急行停車駅久居駅から第33普通科連隊と大書された駐屯地がすぐ隣に見える、第10師団隷下の普通科連隊で、長大な海岸線とともに紀伊山間部の峻険な地形と名古屋近郊の都市部を抱えた三重県を防衛警備管区としている普通科連隊です。

Himg_2377 第33普通科連隊は、2002年、中部方面隊で最初に軽装甲機動車を受領した普通科連隊で、イラク派遣などにも活躍しているほか、航空部隊駐屯地である明野駐屯地がほど近く、精鋭部隊で、私事ながら初めて軽装甲機動車を見た2002年の伊丹駐屯地祭でも第33普通科連隊の車両が参加していました。

Hcimg_2388 第10師団は、金沢第14普通科連隊、久居第33普通科連隊、守山第35普通科連隊、豊川第49普通科連隊、そして戦車大隊、特科連隊、高射特科大隊、施設大隊、後方支援連隊、通信大隊などを基幹部隊としています。そして普通科連隊は有事の際に戦車中隊や特科大隊などとともに連隊戦闘団を構成する、いわば師団の根幹というべきもの。

Himg_2389 第33普通科連隊長兼ねて久居駐屯地司令、古屋浩司1佐の観閲を受ける式典参加部隊、第33普通科連隊は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、対戦車中隊、重迫撃砲中隊を以て編成されており、久居駐屯地には連隊に他、支援する第10後方支援連隊第二整備大隊第二普通科直接支援中隊や久居駐屯地業務隊などが駐屯している。

Himg_2392 連隊旗を奉じる82式指揮通信車、本日はかなりの荒天が予報されていまして、事実朝の時間帯はかなりの雨量、駐屯地の式典会場も一部池のように深々と水が張り、その雨量の大きさを思い起こさせてくれましたが、開門後には雨が上がり、式典開始の時間帯では打って変わって快晴に。

Hcimg_2399 普通科隊員の観閲行進。豪雨を想定していましたので、雨具をフル装備とし、EOS-50Dと120-400mmは本日展開させず、EOS-7Dに18-200mmを装着させ主力とし、併せて広角でG-12を三脚に設置しレリーズにて薬指と小指を駆使し、EOS-7Dと同時に操作する、いつもの方式で撮影しました。雨具の出番が無かったのは本当に幸い。

Himg_2397 普通科隊員の徒歩観閲行進、背景を軽装甲機動車の車列が進んでゆくところが印象的な様子、風は強く日章旗も風に薙いでいます。当方は久居駐屯地祭、今回が三回目ですが毎回晴天に恵まれていました。ただ、聞きますと雨天となることが多いようで、今年は晴れて良かった、とのこと。

Himg_2405 三月末に入隊した自衛官候補生の観閲行進、行進も型にはまってきたところ。俯瞰する構図ですが、久居駐屯地祭ではスタンド席が一般に開放されていまして、早い時間帯に近鉄電車にて足を運びますと荒天予報があってかそこまでの混雑は無く、良い位置を確保できました。

Himg_2425 第4中隊の軽装甲機動車、14両の軽装甲機動車が粛々と会場を進んでゆきました。大型装甲車から後者展開を行うよりは小型装甲車多数を装備して分散した機動運用を行った方が火力密度を高め効率的な任務遂行が可能な装備として、開発されたもので、先ほども少し触れましたが、第33普通科連隊が中部方面隊最初の装備部隊となり、今に至ります。

Himg_2443 軽装甲機動車は、小銃のほかにMINIMI機銃か01式軽対戦車誘導弾を搭載します。火力拠点を迅速に転換でき、相手が戦車であっても地形を最大限利用することで有利に主導権を握ることが出来るのですが、装輪式で四輪駆動のため不整地突破能力に限界があり、この利点と欠点をどう動かすかが指揮官の腕の見せどころ。

Himg_2462 重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲RT,中隊に12門が装備されています。フランス製の高性能迫撃砲で制圧力と射程では従来の直掩特科火力となっていた105mm榴弾砲を越えています、持続射撃能力と命中精度では野砲には及ばないのですが、地域制圧と対砲兵戦にも対応する高性能砲で、自衛隊は500門以上というかなりの多数を配備しています。

Himg_2463 高機動車を原型とする重迫牽引車により迅速に起動する120mm重迫撃砲は、短時間の射撃による支援と反撃を回避する機動を繰り返し、普通科連隊の任務を火力支援します。ちなみに、高機動車は普通科部隊自動車化の花形として自衛隊では重宝されていますが、迫撃砲を牽引している状況では迫撃砲の備品扱いになるのだとか。

Himg_2496 対戦車中隊の79式対舟艇対戦車誘導弾、発射器12基が配備されています。射程4km、33kgと比較的大きなミサイルは戦車のみならず上陸用舟艇をも撃破可能で、元々師団対戦車隊に装備されていましたが、一部師団の普通科連隊に対戦車中隊が編制される際に集中配備されました。

Himg_2507 強力な対戦車火力ですが、このほか普通科中隊の対戦車小隊には射程2kmで簡便な87式対戦車誘導弾、小銃班には携帯式で射程1500mの01式軽対戦車誘導弾が装備されており、ミサイルは戦車砲と異なり障害物や最低射程などの制約があるものの、運用次第で重厚且つ強力な対戦車火力を構成可能だ。

Himg_2512 本部管理中隊の観閲行進、情報収集を行う情報小隊や指揮所に重火力の防護用の施設を構築する施設作業小隊や連隊と中隊の通信網を維持し電子戦をも担当する通信小隊など、連隊が独立した運用を行う上で必要な様々な支援を行う部隊です。連隊の車両による観閲行進はここまで。

Himg_2546 豊川駐屯地より展開したFH-70榴弾砲、射程と瞬間火力投射能力や持続射撃能力に瞬発交戦能力といった様々な面で高い制圧力を有する牽引砲で、欧州共同開発となった火砲ですがコストが自走榴弾砲並みに大きくなったため普及せず、他方、我が国地形と道路事情に合致し路上での戦略機動性の高さから日本で大量配備されたもの。今なおその能力は大きい。

Hcimg_2552 春日井駐屯地の第10偵察隊より参加した87式偵察警戒車、25mm機関砲と微光増倍式暗視装置を搭載し、偵察を行う車両、強行偵察を行うには少々火力が不足し、観測監視を行うには監視機材の能力が今日的にやや見劣りするのですが、こうした車両が例えば仮に火力支援用に連隊に配備されていれば心強いとおもうもの。

Himg_2562 観閲飛行の編隊は、第10飛行隊のUH-1J多用途ヘリコプター、航空学校のAH-64D戦闘ヘリコプター、UH-60JA多用途ヘリコプター、CH-47JA輸送ヘリコプターの四機編隊で行われました。観閲飛行は戦車の行進と重なるため、戦車と航空機、迫力の相乗効果はすごい。

Himg_2568 観閲行進の最後を飾るのは今津駐屯地より参加した第10戦車大隊の74式戦車、第1中隊と第2中隊の車両が参加、105mm戦車砲を突き出し、重機関銃を高らかに掲げる戦車が装軌車両独特の履帯音と高出力ディーゼルエンジンの合わさった轟音を響かせると、この装備だけがもつ、ある種の威圧感を生む。

Hcimg_2578 久居駐屯地祭は、この観閲行進に続いて喇叭演奏や格闘展示に続いて戦車と火砲の支援下で普通科部隊が展開する訓練展示模擬戦が行われました。ただ、この様子は縦横無尽に部隊が展開するためG-12では追随できず、EOS-7Dのみの撮影となりましたので、いづれ紹介できれば、と思います。

北大路機関:はるな

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑥ 戦車大隊・飛行隊・音楽隊

2013-04-16 23:14:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆観閲行進の最後を飾る師団の花形 

 福岡駐屯地祭、観閲行進もいよいよ大詰めとなってきました、地響きとともに師団の花形が見えてきます。

Fimg_5946 74式戦車、第4戦車大隊長前島政樹2佐以下、師団の機動打撃部隊の中枢を担う第4戦車大隊の74式戦車が堂々の行進、戦車が進む、38tの鋼鉄が720馬力のディーゼルエンジンを吹かして連なり進む、実際に地面が振動を伝え音が空気を震わせてこちらへ響く、戦車の行進は一味違う。

Fimg_5960 第4戦車大隊は大分県の玖珠駐屯地に駐屯、観閲行進では第一中隊、第二中隊、第三中隊と大隊本部車両の74式戦車が敬礼し、会場を進んでゆきます。砲塔には第4戦車大隊のマークが掲げられ、一列になり堂々と進み、会場すべての注目を一手に引き付ける。

Fimg_5980 74式戦車は、国産第二世代の戦車として従来の61式戦車の後継を担うべく開発されたもので、鋳造式の避弾性を重視した砲塔と105mm戦車砲を搭載しています。第二次大戦中の戦車の区分で中戦車を洗練させた戦後第一世代戦車に対し、世界の戦車趨勢は対戦車ミサイル時代の到来を前に装甲防御力の限界を見定め、鈍重さを排するべく機動力と打撃力に重点を置く第二世代戦車を開発しました。

Fimg_5986 この趨勢に応えるべく、第二世代戦車として必要な能力を盛り込むと共に、打撃力の根幹である主砲命中精度を向上させる観点から、搭載するL-7系105mmとともにアナログ式弾道コンピュータ及びレーザー測遠機を搭載、L-7系のライフル砲が有する現代でも第一線級の飛距離を最大限有効射程とする方式を採用しています。

Fimg_5996 専守防衛を国是とする自衛隊の74式戦車は873両が生産、併せて戦車の行動を阻害する地皺に富んだ狭隘地形という我が国土を逆に味方とするべく、車体前後を200mmづつ傾斜させる油気圧懸架装置を採用、これにより地形に車体を適合させ、敵に対する車体の暴露面積を最小限とする戦闘や、俯角仰角の制約を取り払った運用を可能とする構造です。

Fimg_6004 三菱重工が完成させたこの戦車は、登場当時に我が国の経済力が躍進を続け世界第二位の水準となったことと併せ大きな注目を浴び、この技術的基盤に依拠し、第二世代戦車が断念した防御力の飛躍的向上を目指す第三世代戦車として90式戦車を国産開発、続いて戦車の機動力を戦術戦略面から大きく高めた10式戦車の国産開発へ進んだのは御存じの通り。

Fimg_6011 この74式戦車ですが、油気圧懸架装置の整備に導入当初苦労を強いられ、今日では流石に来年で制式化40年を迎えることから旧式化し、特に暗視装置は旧式の赤外線投射型であるため近年の熱線暗視装置と比べ敵に暴露し易く、防御力も対戦車火器の普及度合いが制式化当時と比較できないほど高まっているため、古いことは否めません。

Fimg_6022 ただ、105mm砲の威力はAPFSDS弾である91式徹甲弾の制式化により今なお世界最新の戦車に対し脅威を与える水準を維持しており、地形を利用するという運用に徹する限り、まだまだ我が国への侵略の野心に対し立ちはだかる性能を有しています。もっとも、普通科隊員が戦闘防弾チョッキを身につけるように砲塔周囲に中空装甲の追加防御を施し、普通科隊員が鉄帽に暗視装置を取り付けるように砲手照準器前に暗視装置を取り付けられれば、よかったのですが。

Fimg_6027 戦車の威力は、打撃力と機動力に防御力という装備の三要素を全て高く維持している点で、打撃力はミサイルと異なり最低射程が無い直接照準方式、機動力は森林などの木々を押し倒し河川を乗り越えるもので、防御力も陸上装備体系では最も上のもの、地形を選ばず機動でき、必要な火力と投射する戦車は国土防衛に不可欠で、こちらに戦車があれば相手も戦車か相応の打撃力を用意せざるを得ません。

Fimg_6031 一部の軍事への理解が乏しい方は、日本は縦深が小さく戦車が上陸するようではすでに負け、と持論を振りまき、軍縮論者や平和愛好家に利用されるのですが、それでは戦車が貨物船などで奇襲上陸しただけで呆気なく敗北という笑える結論に至ってしまいます。日本国土は広く、高山部もあります、この国土を防衛するには戦車が必要であり、如何に海空の防衛が充実しようとも、これは不変の原理と言えるでしょう。

Fimg_6040 第4飛行隊の観閲飛行、佐賀県目達原駐屯地からの参加です。飛行隊は隊本部と飛行班に整備班より成り、観測ヘリコプターと多用途ヘリコプターを数機づつ運用しています。かつては観測ヘリコプターのみ10機程度を運用していましたが、90年代より各師団への多用途ヘリコプター配備が開始され、4機程度が装備され、観測ヘリコプターとともに飛行隊を編成しています。

Fimg_6042 OH-6D観測ヘリコプター、野戦特科部隊の榴弾砲が長距離射撃を行う際、その着弾観測を行い精度を高めると共に、指揮官連絡や軽輸送、索敵任務や災害派遣時の情報収集に活躍する機体です。着弾観測任務や情報収集任務などは、カメラの性能向上、例えば福島第一原発事故に際してはNHK報道機が30km以上離れた地域から原発への放水実施を空中撮影に成功していますが、多用途ヘリへ高度な観測器材を搭載し、遠距離からの観測や情報収集に充て、補完として無人機を併せて運用してもいいのではないか、と思うところ。

Fimg_6046 UH-1J多用途ヘリコプター、11名の完全武装要員を空中機動させ、重機関銃の搭載による地域制圧や、砲弾に斥候車両などの空輸、救急搬送に情報伝送や映像撮影など、様々な任務に対応するヘリコプターです。11名の空中機動、これを飛行隊の数機で実施するというのは心細く感じられるやもしれませんが、言い換えればレンジャー隊員を小隊規模で投入できるという意味でもあり、意義は小さくはありません。

Fimg_6061 祝賀飛行はこのように行われました。師団行事などでは編隊を組んで一挙に式典会場上空を航過飛行してしまうのですが、福岡駐屯地ではマンションの前をやや高度を下げ、一機一機式典会場を飛行してゆく、なかなか他では見られない飛行を行ってくれました。

Fimg_6086 観閲行進を第4音楽隊の隊員が会場を進み、幕を下ろしてゆきます。徒歩行進にあわせて演奏された抜刀隊と車両観閲行進のテンポと共に演奏された祝典ギャロップ、写真特集にあるように設営するにも何度も分けて掲載する行進の最中、寸秒も滞ることなく音楽演奏を続けた第4音楽隊の隊員です。

Fimg_6099 音楽隊の隊員は師団の部隊行事や師団管区内の民間行事などでの演奏を行うため、特に日曜日などは式典があれば必ず展開、もしかしたらば陸上自衛隊にあってもっとも日曜日から縁が遠い任務なのかもしれません。そして音楽を職業としているだけあり、その実力はかなりのもの。

Fimg_6109 観閲行進の修了と共に、観閲部隊指揮官である副師団長が乗車した82式指揮通信車とともに会場を後にします。そして式典会場の中央にて撮影を行っていた地元を中心とする報道陣も観閲行進の撮影を完了し、撤収を開始します。こういいますのも、観閲行進の完了と共に次の行事が始まりますから、ね。

Fimg_6113 国旗退場。式典に先立ち式典会場に掲げられた日章旗が、観閲台にあって記念式典と観閲行進を見守ったのち、この観閲行進の完了とともに観閲台より旗手とともに車両へ、そして式典会場を退場してゆき、来場者は国旗入場の時と同じく、起立して会場を後にする国旗を見送ります。

Fimg_6119 そして会場では訓練展示に向け、模擬戦の準備が開始されました。福岡駐屯地は見ての通り、マンションに囲まれており、模擬戦となれば砲声も凄いこととなるのでしょうが、先ほどの祝賀飛行の低空に降りて行った通り、周辺の方々の理解と支援があるのでしょう、災害派遣展示ではなく野戦の訓練展示が為されているのがわかる。

Fimg_6124 訓練展示準備には時間が掛かります、何故なら先ほどまで記念式典と観閲行進が行われていた場所ですからね。この時間を隊員の喇叭演奏などで有効活用します。当方は移動せずこの場所で訓練展示を撮影することとしました、訓練展示の様子は次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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