◆富士学校祭へ行ってきた
先週の富士学校祭、中々写真が整理できず例によってG-12の写真を紹介しましょう。
富士学校長武村誠一陸将、第四師団長より富士学校長へ転任された方で、北大路機関では第四師団創設記念行事詳報にて紹介した方です。部隊巡閲に並ぶのは富士学校とその隷下に或る富士教導団の隊員、それに装備、富士学校は陸上自衛隊の普通科特科機甲科の装備研究と戦術研究に専門教育を行うところ。
富士教導団長市野保己陸将を先頭に観閲行進、今回の写真は当方がEOS-7DとEOS-50Dを以て撮影する最中、暇そうにしていた付き合い十年以上のマブダチであるアカさんにG-12の操作をお願いしたもの。つまり、Weblog北大路機関創設以来初めて、当方が撮った写真が一枚もない写真記事といえるかも。
教導団本部付隊の観閲行進、背後には後述する96式多目的誘導弾システムが、更にその背後にもやはり後述する89式装甲戦闘車が見える。富士教導団は、教育部隊であると共に、後方支援部隊や防空部隊を欠いているものの、装甲車や火砲と戦車を有する強力な機械化部隊でもある。
教導団本部の装備となっていた96式多目的誘導弾システム、射程が大きく遮蔽物や掩砲所からの間接式直接照準が可能な光ファイヴァー誘導方式の戦術ミサイルシステム、システム構成要素が多く複雑であるため従来の無反動砲の延長のような対戦車ミサイルほど運用は単純ではないが、発射装置三基で京都市全域に当たる地域をカバーできるもの。
偵察教導隊の87式偵察警戒車と偵察オートバイ、偵察隊は戦車部隊と同じ機甲科部隊であるので、その戦術研究や新装備試験などは、ここ富士学校で行われています。それにしても、富士学校祭は車列の後ろにまた車列が見えるため、画面に迫力がでてきますね。
軽装甲機動車、大量調達により今や陸上自衛隊の象徴的な装備となり、国際貢献任務にも派遣され知名度は高い。普通科部隊では小銃班の機動や火力拠点の分散機動運用に対戦車ミサイルの機動にも用いられ、偵察隊での偵察や航空自衛隊では基地警備等にも活躍する。
普通科教導連隊の観閲行進、広報に車両が続々続きます。富士教導団は、団本部、普通科教導連隊、特科教導隊、戦車教導隊、偵察教導隊、教育支援施設隊を中心に編成されています。連隊旗を先頭に82式指揮通信車の観閲行進が進む。
普通科教導連隊第一中隊の89式装甲戦闘車、35mm機関砲と射程4kmの対舟艇対戦車誘導弾を暗視装置を含めた火器管制装置とともに搭載し、高い機動力を有し戦車と協同するもの、防弾鋼板で40mm程度の装甲を有し、乗車戦闘を想定し装甲に防護された車内から89式小銃の射撃も可能です。
89式装甲戦闘車は上記の通り高い能力を有しており、戦車部隊との協同を最大限行うことが可能な車両で、北部方面隊へ四個連隊所要の調達が考えられていましたが冷戦後の予算縮減で戦車を中心とした第七師団の一個普通科連隊にのみ半数が充足されたのみ。
第二中隊は軽装甲機動車を装備、車上で構えているのは01式軽対戦車誘導弾、射程1500mの非冷却型熱画像誘導方式誘導弾で特に車両などの熱源を瞬時に安置し即座に照準し射撃でき、対戦車ミサイル防護を行う車両へのタンデム弾頭を搭載し、貫徹力は非常に大きい。
第三中隊は高機動車を装備、1990年代に大量配備され、普通科部隊の自動車化を一挙に推し進めたほか、多目的誘導弾や重迫撃砲に地対空誘導弾やレーダ装置などの機動力強化も一挙に推し進め、一両でも多く欲しいと部隊に言わしめた、自衛隊近代化の象徴ともいえるひとつ。
第四中隊の96式装輪装甲車、普及型装甲車といえるもので、路上での高い機動力と不整地突破能力をもつ。北部方面隊では第七師団を除く全ての師団と旅団普通科連隊に一個中隊が装備され、中央即応連隊や戦車部隊本部と後方支援連隊戦車直接支援隊などに装備されています。
対戦車中隊と重迫撃砲中隊、対戦車中隊は中距離多目的誘導弾や79式対舟艇対戦車誘導弾を装備、重迫撃砲中隊は120mm重迫撃砲RTを装備、とくに120mm重迫撃砲は射程が大きく、命中精度も高いため、普通科部隊の直掩火力として運用されている。
中距離多目的誘導弾、発射後照準や間接照準が可能な世界最深の対戦車ミサイルで、ミリ波レーダと光学照準器と共に一両に纏められている。射程と即応性に連続発射能力が高く、今後普通科中隊対戦車小隊へ広く配備される。今年度予算調達分を含め約60両が調達され、今後も続く。
こちらは79式対舟艇対戦車誘導弾、赤外線有線半自動指令誘導方式の第二世代対戦車ミサイルだけれども、弾頭重量が33kgと大きいため、戦車の他上陸用舟艇などを撃破することも出来、射程も比較的長い、が、発射装置や誘導装置は重い。
特科教導隊、第一中隊と第二中隊はFH-70榴弾砲を装備しています。スウェーデン製FH-77,アメリカ製M-198と比較され、陸上自衛隊へ導入されたもの。M-198は性能不足、FH-77は牽引時の機動力に制約が付くという形で、英独伊共同開発のFH-70が陸上自衛隊へ採用されました。
特科中隊は82式指揮通信車により指揮されていたのですが、本年度は96式装輪装甲車で観閲行進へ、特科中隊の指揮でも82式指揮通信車は車高が高いものの多数の無線機を詰め込んだ装甲車にほか成らないため、このような通常の装甲車でも代用できるもよう。
FH-70,高性能だが高価格なので、こんな高価格なら自走榴弾砲を、と開発国では普及しなかったものの、牽引砲で高性能と国土の運用に合致した陸上自衛隊は大量配備を決断、特科部隊より第一次大戦中に設計され第二次大戦中に改良された火砲を一挙に過去のものとした装備だが、後継の火力戦闘車へ将来的に置き換えられる。
特科教導隊第三中隊の99式自走榴弾砲、射程40kmの52口径砲を搭載し、自動装填装置と情報共有型火器管制装置により迅速な展開と濃密で精密な射撃に瞬時の離脱が可能、中隊指揮車両が82式指揮通信車から96式装輪装甲車に変更になっていて、これが今回気付いたこと。
99式自走榴弾砲は自走榴弾砲の運用が可能な北海道の地形に対応するべく北部方面隊の師団特科連隊と旅団特科隊に集中配備されており、従来の旧式化した75式自走榴弾砲を間もなく完全に置き換えることになる。それにしても52口径155mm榴弾砲の砲身は、本当に長い。
203mm自走榴弾砲、陸上自衛隊最大の火砲で、軽量な長砲身を有する技術的特色があり、90kgの砲弾を最大30km先まで到達させられる。設計はアメリカで空輸を想定し開放型戦闘室を採用、軽量化している。主に方面隊で運用され、高付加価値目標や施設攻撃といった重要局面などで火力支援に派遣されるもの。
多連装ロケットシステムMLRS,これは203mm自走榴弾砲の後継として装備開発され、かなり高価な装備ですが陸上自衛隊は約90両を導入、当初は面制圧火器として運用されていたが、近年は単弾頭型精密誘導弾へ置き換えられ、民生被害を局限し榴弾砲のような目標制圧能力を付与されるに至りました。
88式地対艦誘導弾、ミサイルにデジタルマップを内蔵し地形匍匐飛行で洋上に進出、射程は180kmあり内陸部に秘匿し上陸へ迫る船団を撃破でき、発射器16両で一個連隊を編成し、同時に96発を投射、三斉射分の弾薬と共に運用されています。敵からすれば、島が不沈のミサイル巡洋艦になったようなものだから、これがあれば上陸できないほど厄介でしょう。
303観測中隊、相手からの砲撃を逆算し瞬時に敵座標を標定する対砲レーダ装置や索敵用無人ヘリコプターの運用、遠距離では弾道に大きな影響を与える気象観測などを行う部隊で、写真の車両には見慣れない標定装置のようなものが見える。後ろにみえるのは気象観測用の80式徽章測定装置JMMQ-M2だ。
対砲レーダ装置JTPS-P16,師団と旅団全ての特科連隊や特科隊に装備されており、この装備密度は米軍を除けば世界的に見ても例外的、40km以内の50°の範囲を警戒し、同時に18の目標を評定し、相手の砲撃と共に火砲の位置を特定、有効な反撃が出来る。
教育支援施設隊の施設作業車、現代戦を行うには戦術研究でも施設科部隊の支援が必要だけれども、施設学校は勝田駐屯地にあり、施設科部隊の訓練体系は架橋や補給維持など全て富士学校と共通するものではなく、そして富士からは遠いため富士教導団が独自に施設教導隊とは別に隷下部隊を有していて、教育訓練を実戦的なものにしています。
同じく教育支援施設隊の81式自走架橋柱と92式地雷原処理車、戦車や装甲車は高い不整地突破能力を有するが、それを防ぐための様々な障害による地帯行動が行われるため、施設科部隊が無ければ何も進むことが出来ない、という事も。
戦車教導隊の観閲行進、戦車の機動力という概念を再構築させる機動力と、従来戦車を越える打撃力に正面を中心に側面を含め防御力を高めた陸上自衛隊最新装備、世界の戦車は防御力過多による重量化を進み身動きがとりにくくなる中、自動装填装置の採用で防御区画を効率化し生存性を高めたのがこの10式戦車ということ。
10式戦車はC4Iシステムによる情報共有と共同交戦能力を付与するとともに、既に90式戦車が採用した自動装填装置と自動追尾装置を更に高度化させ、アクティヴ式サスペンションにより衝撃を抑え高い行進間射撃の連続能力を有すると共に、無段式変速機と併せ加速力も大きく向上、理想的な戦車と言えるでしょう。
90式戦車、戦車教導隊第2中隊の戦車で、120mm滑腔砲・1500馬力エンジン・複合装甲、という第三世代戦車の三要素を有しつつ、90式戦車以外ではフランスのルクレルクやロシアのT-72/T-80戦車とその派生型が装備する自動装填装置、90式戦車以外ではイスラエルのメルカヴァⅢBAZ、メルカヴァⅣが装備する自動追尾装置を搭載する。
90式戦車は狭隘な日本国土での戦闘を想定し、重量を50tと同世代戦車より一割程度抑えており、このため正面部分の防御は極めて高いものの側面部分の防御力は同世代戦車では初期と同程度に割り切っている。その分、打撃力を重視し自動追尾装置を搭載するほか、乗員数を3名として自動化し、その分乗員区画を各国戦車の4名分よりも抑え、有人区画を複合装甲で守る構造だ。
戦車教導隊第3中隊の90式戦車、この90式戦車は第3世代戦車では比較的軽量であるものの本土では重く、北海道の北部方面隊へ集中配備されている。このため、先ほどの10式戦車は44tに抑えられており、現在の第三世代戦車は増加装甲により概ね63t程度となっているので、実に三割軽量ということになる。我が本土へ敵が侵攻した場合、重量の大きな戦車は運用地形が限られるため、相手の戦車が入れない地域から一方的に撃破できる、ということ。
74式戦車、戦車教導隊第4中隊の車両、対戦車ミサイル時代の到来に際し機動力と打撃力を重視した第二世代の戦車で、地形を利用する油気圧懸架装置により車体傾斜能力を有し、地形防御を得意とする。第二世代戦車は、第一世代対戦車ミサイルであるソ連製サガー9M14でも400mm、改良型9M14P1で520mmの装甲を貫徹するため、これに耐えられる重装甲となると機動力を確保できるエンジンが無く、動けないため、防御を絞った。
このため地形防御を活かすべく74式戦車は車体傾斜能力により地形の一部から砲塔を出して射撃を行う機能を持つ。なお、第三世代戦車はセラミックとチタン合金を併せ防弾鋼板換算で1000mm近い防御力を有する軽量な複合装甲が開発され、1200~1500馬力の戦車用エンジンへ技術的目処が立ったため防御力を両立させた。なお、74式は第二世代戦車では後発で開発されたため、弾道コンピュータを搭載するなど、注目点も多い。
訓練展示模擬戦、ここまでアカ氏とShin氏と並んで雑談しつつ、撮影していたのだけれども、当方は別位置へ陣地転換、G-12は元の撮影位置にて託していったので、早い話、当方が見ていない情景を見事に写し取っているもの。ズームに時間が掛かり、正直G-12で模擬戦というのはなあ、とおもっていましたが、意外と撮れるのは観ての通り。
情報収集に先行した87式偵察警戒車、暗視装置と25mm機関砲を以て敵の有無を捜索し、反応を以てその敵の規模を探す、富士教導団では偵察教導隊に装備されているもの。模擬戦だと仮設敵が限られ、実際なら偵察隊だけで撃破できそうなことも多々あったりする。
しかし、今回の仮設敵は74式戦車の小隊に支援された歩兵部隊、87式偵察警戒車は装甲車だけれども、105mm戦車砲弾は新型砲弾により今なお侮れない威力を持ち、第二世代戦車は避弾を重視した形状の砲塔を有するため25mm機関砲では対抗できず、こんなものと遭遇すれば機動力を活かして一挙に離脱するしかない。
特科部隊の射撃、訓練展示に何故か99式自走榴弾砲が参加しておらず、今年度の富士学校祭訓練展示は近年では小規模なものといえるやも。しかし、G-12,一眼レフになれるとズーム操作が遅くこれが気がかり、同じコンパクトデジカメでもFUJIFILM-X-10/X-20なんかはレンズをダイヤル式にズームするので、一眼レフのように感覚的に扱えます。
航空偵察に切り替える。ちなみにこの前日を含め数日間の有無が続いており、この日も張れるのか本当に不安だったが奇跡的に晴れたもの。それでも濃霧は近づいていたようで、観閲行進と装備品展示に航空機は参加できず、この訓練展示終了後は帰ってゆきました。

障害除去に教育支援施設隊の92式地雷原処理車が展開、ただ、広大な東千歳駐屯地を例外として普通の駐屯地では発射できないため、発射動作のみの展示となっています。処理用爆薬投射ロケットにより地雷原を一挙に無力化するというのが、この装備の任務で戦車用通路を啓開します。
96式装輪装甲車の展開、今回の訓練展示では仮設敵に74式戦車、攻撃側が90式戦車と10式戦車、双方ともに空包射撃を行いましたが、120mm滑腔砲用の新開発された空包は構造上仕方ないのですけれども音が軽く、発砲焔では74式戦車の砲が勝っていたといえるやもしれません。
降車戦闘に移行するも反撃を受け負傷者が出た、という想定で負傷者の搬送も展示されました。戦車が盾となり、装甲車が後方に搬送する、というもの。96式装輪装甲車は機動力が高い音は認めるのですが、もう少し大口径機関砲弾の直撃に耐えられるような装甲車も必要ではないでしょうか。
負傷者の改修に合わせ、富士教導団は攻撃前進に移り、増援部隊とともに相手を制圧、状況終了となりました。今年はかなりの混雑でしたが、それ以上に心配された天候がどうにかなって、当方も一定の撮影成果を収められたところ。加えて、様々な旧交を温められ、撮影を完了しました。
北大路機関:はるな
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