北大路機関

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑧ 火力戦闘部隊の打撃戦

2013-05-15 23:19:10 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆特科火砲・誘導弾の展開と戦車前進

 訓練展示状況開始より情報収集を開始したわが方は戦車を含む仮設敵の抵抗へ遭遇しました。これが前回までの流れ。

Fimg_6416_1 特科!、射撃せよ!。展開した第4特科連隊のFH-70榴弾砲が空包の咆哮を響かせ、反響した砲声と衝撃波が同時にこちらへ到達します。発砲焔から耳をふさぐ間もなく轟く火砲の迫力、瞬時を切り取った明々とした焔とともに、そして飛び散る空包栓、これこそが特科火力の存在そのもの。

Fimg_6408 効力射を展示しているため、二門のFH-70は連続射撃を行います。特科部隊の任務は火力による制圧とともに対砲兵戦、仮設敵も同様であるので、攻撃準備射撃であっても突撃破砕射撃であっても攪乱射撃であっても射撃を行えば砲撃音と砲弾弾道から逆算され、反撃されることもあるため、特科大隊長の攻撃決断、決心はとても重要です。

Fimg_6290 再装填を射撃へ、並ぶ二門が交互に射撃を。FH-70榴弾砲は、牽引砲ながら半自動装填が可能で連続射撃能力に長け、長砲身による長射程と高持続射撃能力、非常に高性能で自走も可能且つ小回りも利きます。欧州共同開発で余り世界で普及しなかったのは、その高性能に見合った高価格ゆえ。

Fimg_6708 第4対舟艇対戦車隊の96式多目的誘導弾が特科火砲の火力制圧により仮設敵の攻撃がやんでいる最中を陣地展開します。本装備は射程が10km前後と射程が大きな多目的誘導弾ですが、射程が大きく間接照準射撃を行うため戦域優位を獲得する装備ながら、展開に時間を要する、というもの。

Fimg_6647 第4戦車大隊の74式戦車が続いて進入を開始します。96式多目的誘導弾と74式戦車。74式戦車は、高初速砲弾を直接照準により正確に投射し、最高度の防御力と不整地を含むすべての地形において装備体系の頂点に位置する機動力を発揮するもので、これが無ければ陸上戦闘というものが成り立ちません。

Fimg_6698 第40普通科連隊の重迫撃砲中隊が120mm重迫撃砲RTの展開を開始します。実は先ほど96式多目的誘導弾の展開開始の写真、その後ろに写っていたのが重迫撃砲を牽引する高機動車の派生、重迫牽引車で、迫撃砲を分離し、目だたないよう車両が転進したのち射撃準備を行う様子、傍らには迫撃砲弾を抱える隊員が見える。

Fimg_6652 併せて、74式戦車も準備を整えます。最高度の防御力を有する戦車ですが、74式戦車は戦後第二世代戦車、最高度の打撃力を有しつつ、攻走守のうち、対戦車ミサイル時代の到来を前に防御力過剰による車重増大を避け、機動力の充実を図った戦車で、早い話対戦車火器を避ける必要があるため地形を依拠して運用なければならない。

Fimg_6639 重迫撃砲の射撃準備完了、対砲兵戦の技術革新による迅速化に伴い、特科部隊の任務はより長距離に、そして指揮系統が複雑化した今日、射程が旧型と比べ倍以上に達する重迫撃砲は、持続射撃能力と精度で野砲には及ばないものの、普通科部隊へかつて特科部隊が供していた直掩火力を提供します。

Fimg_6654 戦車前進!、前へッ!。74式戦車が前進を開始しました。ミサイル優位時代が語られる昨今ではありますが、ミサイルは翼により誘導されて弾頭を作動させ目標を破壊するものが基本であるため、森林地帯や市街地では別のものに引っ掛かり無力化されてしまいます。このため、直接照準の高初速砲は今なお、その優位性がある。

Fimg_6346 またなにより、かなりの速度で前進する戦車に対し、十分な準備をもたない防御部隊はほぼなすすべがありません。そして、戦車には徒歩部隊では携行できない重量のある照準器などにより遠距離から正確に火力を投射できるため、その威力も無視できないでしょう。

Fimg_6687 第40普通科連隊の軽装甲機動車、戦車部隊の前進と共に、そして普通科部隊も戦車を支援するべく前進を開始しました。戦車は対戦車火器を有する敵歩兵に脆弱性を有するため、どうしても普通科隊員が随伴して直協支援を行わなければなりません。こうして、5.56mm機銃MINIMIを射撃しつつ前進を開始しました。

Fimg_6658 74式戦車の前進、本車も砲安定装置と弾道コンピュータを搭載し、車体の位置秘匿を行う油気圧懸架装置の採用で不足する防御力を地形防御により補う戦車で、古くはなりましたが、新型砲弾の採用と情報伝送装置の後日搭載実施と研究により、暗視装置と防御力以外では今なお第一線の能力があります。

Fimg_6683 我が方が火力制圧の支援下に戦車部隊を含む機械化部隊の攻撃前進を開始した状況に対し、仮設敵も戦車を前進させました、戦車は装甲機動部隊として防御線をその衝撃力により突き破るため、敵も防御線を維持するためには、この状況を何とか阻止しなくてはなりません。

Fimg_6662 戦車と共に軽装甲機動車が前進、そしてこれを阻止するべく展開した仮設敵戦車部隊に対し、いよいよ戦車対戦車、戦車による対戦車戦闘が始まります。この様子については、次回の第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報にて紹介することとします、お楽しみに。

北大路機関:はるな

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2 コメント

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 戦車の空砲撃っている後の高層アパートのベラン... (久我山のチ那ッピー)
2013-05-16 15:54:40
 戦車の空砲撃っている後の高層アパートのベランダに布団が干してあるのが、なにやら、陸自のおかれている状況を表しているよね。
 オスプレイ配備より、多用途ヘリUH-1JをOH-1の
エンジンとローターハブ移植して、もっと静かな
ヘリに仕上げて欲しいな。
 10km先からも、UH-1Jが接近しているのが分かる。
 エンジントラブルのときに、双発エンジンの方が
安全だし、洋上運用にも使える。
 4枚ローターでバランスもいいだろう。 
 大体、日本で相手戦車に上陸許して、戦車戦なんぞになったら終わりです。
 伊勢、日向を元に、強襲揚陸艦を作って、海兵隊
組織にするべきだな。
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久我山のチ那ッピー 様 (はるな)
2013-05-16 21:44:43
久我山のチ那ッピー 様

もともと陸上自衛隊の施設は基地ではなく駐屯地、ですからね。

UH-1Jですが、通常の飛行では高高度を飛行しているため音に気付くだけです、東富士演習場や先日の木更津駐屯地祭では、低空を飛行していますので、少し離れると本当にヘリコプターの気配が消えることに驚かされます。
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