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尾台榕堂の「方伎雑誌」より
「刺絡は。即効あるものにて。人により。薬治よりも捷径の効ある事あり。
余,壮年の時は。この術を行い殊効を得たり。......余が治療中に人事不省になるもの六人ありき。......病人の鬱冒昏倒するなどは。面白き程にて有りしが,年老いたれば刺絡はいやに成りたり。第一気絶など見るがいや也。気魄の衰えたる。笑うべき事にあらずや。」
(若い頃はよく刺絡をやり,なかには気絶したり,吐いたりする患者もいた。
しかしそういった患者ほど著しい効果が出るため,面白がっていたほどだった。
しかし,年老いた今,刺絡はいやになった。第一,人が気絶するのを見るなどいやである。
若い頃にはあった強い精神力が衰えたことは,笑わずにはいられない。)
最後は自嘲気味なこの本音トークに,静かなショックを受けました。
「老化」ってこういうことなのかな.....と。
今,面白いと思っている刺絡を面倒くさいと思う日が来るのかと。
古方家の刺絡の治験例は
「二,三合の血が出た後,嘘のように治った」
「頭全体から刺絡したら噴水のように血が噴き出して治った」
など,過激で読んでいて面白いものが多いのですが,
このような
「疲れちゃった....」
というのを読んだのは初めてです。
しかし,
「私も昔はやってたけど,面倒くさくてやめた」
という声は何人かの先生(いずれもある程度年配の先生)から聞いたことがあります。
年老いて気力が衰えたら,刺絡は若手に任せるのがいいのかもしれません。