「術」とは、学術的にいうと「術数」のことですが、総説の中で三浦先生は以下のように書いていらっしゃいます。
……「数」(ここには十干十二支をはじめ陰陽五行も含まれる)と「占」とが合体した特有の「知」というのが一応の定義になるだろう。
医学以外にも風水、出産、仙術、呪術、、、、と幅広いテーマが扱われ、どの篇もとても興味深い論文集です。
術数に全く初めて触れる臨床家の場合、始めの総説から103頁までの、以下の部分を読むと理解しやすいのではないかなと思います。
三浦國雄先生の総説 …………..
相い雑わること錦のごとしー「術」の五行…………….加藤千恵
火極まれば水に似るー「素問玄機原病式」と運気論医学 …………三鬼丈知
特に三鬼先生の論文は劉完素の思想を理解するのにとても良いです。
劉完素といえば、私達臨床家は「寒涼派」「防風通聖散」などのキーワードを思い浮かべます。この論文を読むまでは、なんでもかんでも冷やして治す、瀉法が得意な、日本漢方的なシンプルな理論なのかなと思っていました。
しかし、この「素問玄機原病式」は、「素問」のいわゆる運気七篇である至真要大論篇中の「病機十九条」を元にして発展させたものですので、その概念を理解するには運気論医学を理解していなくてはなりません。
劉完素は道教についても深い知識があったけれど宗教的な修養や医療に流されることはなく、また、運気論を医学に応用するけれども占のように安易に応用することなく新しい理論を構築しました。
劉完素の理論である「火熱論」は、
“多くの病は火熱に起因する”
というものですが、当時の「局方」は温補剤が多く、それが乱用されることが多かったようです。きっと寒熱の間違えによる誤治も多かったことでしょう。そのことに対する警鐘として、時代の風潮に反するこのような理論を打ち立てたのだと思います。
「火熱の気が極まると、それを克するはずの寒水の気に似た様相を呈する、だから真の病源は火熱である」
という考え方で、病の本質を見抜いた上で寒薬を用いるわけです。
他にも劉完素の診断理論の元になる「亢害承制理論」についてもわかりやすく書いてくださっていて、いずれ素問玄機原病式も読んでみたいと興味がわきました。

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