病院の待ち時間等で暇つぶしに書いた、ただの愚痴です。ネットに載せるべきかどうか迷ったけど、介護の記録として残しておく意義はあるかと思い、載せました。興味なければスルーして下さい。吐き出せる場所がココしか無いのです。
☆10月3日(日)
先週、それまで使ってたスマホ(Android)はバッテリー交換が出来ないことが判明し、結局新品を購入することになりました。かくかくしかじかの理由により今なら5千いくらで買える機種(ちなみにソニーのXperia Ace II)があるというので、スペックに何のこだわりも持たない私としては安いに越したことなく、5千いくらで最短3年くらい使えれば何の文句も無いので即決断。
そういうシステムになってるんでしょうね。あの手この手で、とにかく新機種(今回はたぶん売れ残った機種)を買わせるように持っていく。まんまとハマるのはシャクだけど、まあ安いから良しとします。
ただ、機種が変わると使い勝手も変わってしまい、分からないことが色々出てくるから何度もショップに出向かなきゃいけなくなっちゃう。初めてガラケーからスマホに変えた時は使用説明書が付いてない事実に愕然としたし、今でもその理由がまったく理解出来ません。なんでなの?
この日は買い物以外は家にこもって身体を休めたかったのに、結局はそれで数時間を消費させられ、すごく損した気分。
夜は母が(背中が痛いから)居間の掘りごたつから出られなくなり、テーブル部分をズラして救出し、母を移動させる前に寝室の電灯をつけようと思って居間を離れたわずかなスキに、父がテーブルをひっくり返して乗ってた食器を派手に割ってしまい、私はまた怒号を発してしまいました。
認知症の人に対して怒っちゃいけない(怒ったところで当人は理解できない)っていう基本ルールはよく分かってるんだけど、積もり積もったストレスと、こうなることは予測出来たのに一瞬離れるくらいなら大丈夫だろうとタカをくくってしまった、自分自身の甘さ(そもそも先に食器をどかしておけば良かったのだ!)に対する苛立ちで、抑えが利きませんでした。たぶん、近所の住民たちが虐待を疑いかねないほどの声が出てたと思います。
こんなことが繰り返され、親は怒られた内容は覚えてなくても私に対する恐怖心や嫌悪感だけ貯めていくという悪循環。そして私自身にも罪悪感と自己嫌悪が蓄積されていく。これこそが認知症介護の地獄です。
で、母を寝室へ連れて行き、父のオムツを替えてまた寝室まで運んだあと、ひとりで割れた食器を拾い集め、掃除し、母の糞尿が染み込んだパジャマと下着(母はオムツを使ってくれない)を洗濯したあと、数日がかりで書いて来た『警視ーK』の記事をようやくアップ。
☆10月4日(月)
今、だいたい正午。朝、起きてまず父を居間まで運んでオムツを替え、母と二人分の食事を用意し、炊飯し、またもや糞尿が染み込んだパジャマと下着を洗濯し、ゴミ出しをし、速攻で朝メシを食らい、洗濯物を干し、まずはT病院へ。
先週、父のケアマネージャーさんの協力により何とか母に診察&検査を受けさせることが出来たので、その結果を(私ひとりで)聞きに来ただけなんだけど、待合室で待つこと約2時間。
午後からは父を市立病院へ(定期検診で)連れて行かなきゃいけないので、今、とても焦ってます。両親に昼メシを食わせる時間、そして自分が昼メシを食う時間は果たしてあるんだろうか?
ただでさえ待たされるのが大嫌いで、行列に並ばされるような店には絶対行かない私。この果てしない待ち時間がまた果てしないストレスに。だから病院って嫌い。大嫌い! 医療の現場が大変なのはよく解ってるつもりでも!
今だいたい12時半、会計待ち。2時間以上待たされた挙げ句、話はほんの2〜3分で終了。「では会計前でお待ち下さい」って言われて、思わず「えっ、お金取るの?」って言っちゃいました。
母の背中の痛みや食欲減退の原因は結局判んないまま、それとはたぶん関係ない肺(水が溜まってるらしい)の検査を勧められ、また来週連れて来ることに。こっちはどうすりゃいいのか分かんないから、言われた通りにするしかありません。
今なら要介護認定が取れるかも知れないので(母は今のところ要支援)、ついでにその診察もしてもらう事に。
来週の休日もまた、自分の時間が消えた……
会計まだかよ!? 時間が無いんだよっ!ಠ益ಠ
今だいたい14時20分。あれから会計(130円!)を済ませ、急いで吉野家さんに駆け込んでアタマの大盛り+お新香セットをかっ喰らい、帰宅して両親にメシを食わせ、干してた洗濯物を片付け、家の前に停めた車まで10メートルもない距離(階段含む)を10分以上かけて父を歩かせ、四苦八苦しながら助手席に乗せて市立病院へGO!
着いたら四苦八苦しながら父を助手席から降ろし、車椅子に乗せて受付手続き、レントゲン検査、体重&血圧測定に付き添う。いつもだいたい、この時点で私はヘロヘロになっちゃう。今日はもはや放心状態。さて、これから診察までどれくらい待たされるのか?
さすがに今回は予約してたから2時間待ちってことは無かったけど、それでも40分ぐらい待たされて、ちょうど15時頃に受診。だいたいいつも「経過はまずまず」「年齢を考えればじゅうぶん元気」「現状維持で様子を見ましょう」っていう話で終わり、あとは薬を貰って帰るだけっていうパターン。
四苦八苦して父をまた助手席に乗せ、帰りにガソリン入れてスーパーで買い物して、また10分以上かけて車から家まで父を運び(帰りは上り階段だからさらにハード!)、いつもなら居間まで連れて行くんだけど今日は父もヘロヘロ状態なので、寝室に連れてって布団に寝かせました。その方が夜のオムツ替えを省略できて私もラクなんです。
今、だいたい17時15分。あとは父のショートステイ(明日から3泊4日)の準備をすれば本日の仕事、ほぼ終了。しかしこれが毎回3泊分の着替えや薬を用意して鞄にまとめ、その内容を書類に全て書き込む(紛失防止のため)という作業でなかなか面倒くさい。
こうして私の休日は暮れていくのでした。疲れた……本当に疲れた!
『シン・エヴァンゲリオン』とか『007』シリーズの新作とか観に行きたいのに、しばらくは夢のまた夢です。
正直言って、心底ウンザリしてます。父がショートステイに行くようになり、オムツ交換などをしなくていい日が出来たことにより、しなくちゃいけない日がより憂鬱になっちゃった。前はこれを毎日やってたという事実が自分でも信じられない!
父に対する敬いの気持ちは、もはやありません。今は煩わしさと憎たらしさの方が完全に上回ってる状態。メンタル面がいよいよ崩壊寸前なのが自分で判ります。
こんな気持ちで介護を続けるくらいなら、いっそ完全に施設に預ける方がお互いの為かも知れません。いずれまたケアマネさんと相談して、たぶん、遠からず、そうする事になるだろうと思います。
私ごときには到底ムリだったと、認めるしか無さそうです。私の負けです。参りました。
こちらは1983年10月28日に放映された、前年のゴリさん殉職編(#525)に次いで2本目となる『太陽にほえろ!』90分スペシャル=#571(脚本=小川英&古内一成/監督=山本迪夫)。
ついでにサブタイトルも'76年の#219に次ぎ2本目となる『誘拐』。何百本と話数があるから被っちゃうのは仕方ないにせよ、もうちょいスペシャルに相応しいキャッチーなタイトルは考えなかったの?っていう思いは当時も今もあります。創り手の生真面目さゆえなんでしょうけど、ちょっと投げやりにも感じちゃいますからね。
タイトルに凝らなかった理由は恐らく、今回は『太陽にほえろ!』初の(そして結果的に唯一無二の)原作モノっていう「売り」があったから。『太陽〜』の原典と云われるエド・マクベイン作「87分署シリーズ」の、黒澤明監督が『天国と地獄』として’63年に映画化された『キングの身代金』。これはその1983七曲署バージョンなんですよね。
’80年代という浮かれた時代、神田正輝さんや渡辺徹さんのアイドル性でなんとか人気を維持してた……つまり若い女性視聴者が番組を支えてたあの時期に、果たしてマクベインや黒澤映画がアピール材料になり得たのか?っていう疑問も今だに残りますが、まぁそういう世間ズレした感じも『太陽にほえろ!』の魅力と言えば魅力、なのかも知れません。
1983年秋当時の七曲署捜査一係メンバーは、大病からの生還を経てますます出番が減っちゃったボス(石原裕次郎)と、そのぶん副指揮官として存在感がますます増した山さん(露口 茂)、そして登場から3年経ってすっかり若手のリーダー格……を通り越して番組の中心人物となったドック(神田正輝)。
なんと、現在レビュー進行中の1980年から残ってるメンバーは、この3人だけ! わずか3年でレギュラーの顔ぶれがすっかり変わっちゃいました。
まず、退職したスニーカー(山下真司)の後釜として七曲署入りし、そのジャニーズ系のルックス(当時)で瞬く間に人気を獲得するも、殺到するファンからの差し入れを全部食って順調に大きくなりつつあるラガー(渡辺 徹)。
顔を毛むくじゃらにしながら殉職したロッキー(木之元 亮)に代わって登場し、久々にやんちゃ系のキャラで番組を盛り上げてくれたボギー(世良公則)。
俺にも死なせろ!とばかりに華々しく殉職していったゴリさん(竜 雷太)の後釜で着任したものの、どちらかと言えば警察学校教官に転職した長さん(下川辰平)のポジションに近い感じのトシさん(地井武男)。
双子の子供たちを残して顔を毛むくじゃらにしながら逝った夫=ロッキーの遺志を継ぐべく、交通課から志願して一係に異動した未亡人のマミー(長谷直美)。
そして登場したばかりのニューフェイス、これから最終回までアクション面をひとりで支えて行くことになる肉体派、すでに妻帯者でもあるブルース刑事(又野誠治)。
’80年の最強メンバーに比べると薄味になった感は否めないけど、ドック、ボギー、ラガー、ブルースと「動けるメンツ」が揃ったこの組み合わせも悪くありません。翌年春のボギー殉職までは非常にアクティブな『太陽にほえろ!』が観られて私は幸せでした。(そのあとマイコン刑事がいよいよ登場してしまい、番組は一気に失速していきます)
ゲストは、映画『天国と地獄』で三船敏郎さんが演じた靴メーカーの社長に高橋幸治さん、香川京子さんが演じた妻に岩本多代さん、三橋達也さんが演じた秘書に西岡徳馬さん、佐田豊さんが演じた運転手に山谷初男さん、といったキャスティング。
ちなみに映画では刑事たちを仲代達矢さん、石山健二郎さん、木村功さん、加藤武さん等、そして主犯を山崎努さんが演じておられました。
『キングの身代金』は後に渡辺謙さんが刑事を演じられた火曜サスペンス劇場『わが町』シリーズ(’92〜’98)でもドラマ化されてます。
靴メーカー社長宅に「子供を誘拐した」との電話が入り、警察が動き出すも幼い息子はケロッと家に帰って来る。けど一緒に遊んでたはずの運転手の息子が行方不明に。そう、誘拐犯たちは人違いでその子を拉致しちゃった。
開き直った犯人たちは「誰の子であろうがお前が身代金を払え」と要求するも、いま大金を失うと職まで失っちゃう事情を抱えた社長は断固拒否! しかし妻や刑事たちの必死の説得により……っていう序盤の展開は映画版とほぼ同じ。
だけど身代金の受け渡しに動き出して以降は『太陽〜』らしくアクション中心で、前回レビューした『西部警察スペシャル/燃える勇者たち』と同じく我らが中京地域を舞台に壮大なロケーションが展開されます。
そこは『太陽にほえろ!』ですから黒澤映画の単なる焼き直しで終わるワケがなく、仕事上の大事な取引を優先して事件から降りようとする社長を「引き止める」「引き止めない」で刑事たちが激しくぶつかり合い、そんな彼らの必死な姿を見て社長も覚悟を決め、自ら身体を張って「仲間」に加わるという青春ドラマ展開も見られ、後半はアクションに次ぐアクションで天国も地獄もへったくれもありませんw
黒澤映画は犯人側の心理描写にもかなり力を入れてた記憶があるけど、その辺り『太陽にほえろ!』は見事にスルーですからw さすがチーフプロデューサーが「犯人なんかどうでもいい!」って断言しちゃうだけの事あります。素晴らしい!w
だから、同じ原作でも『太陽にほえろ!』だとこんなになっちゃうんだ!っていう面白さはあるものの、反面、決して安くはないであろう権利料を払ってまで、マクベインや黒澤映画の名を借りるだけの価値は果たしてあったのか?っていう疑問はやっぱ残ります。そのせいで現在は権利がよそへ移ってしまい、全話コンプリートが「売り」だった筈のDVDーBOXにこの貴重な90分スペシャルが収録されてない! そんなアホな!
っていうような背景もあり、ちょっとフライング気味に’83年のエピソードを今回レビューした次第です。CS等で放映する分には問題ないらしいけど、2021年現在はそれも休止状態。言わば幻のエピソードとなってます。
石原裕次郎! 渡哲也! そして勝新太郎! なんと丹波哲郎! さらに倉田保昭! おまけに財津一郎!
……倉田さんと財津さん以外は亡くなられてるもんで、これは倉田さんが昭和スーパースターの亡霊たちと香港カラテで闘い、財津さんがいちいち「厳しぃーっ!!」と茶々を入れる新たな『魔界転生』なのかと思いきや、実は1984年の元旦に放映された『西部警察』シリーズ初の2時間スペシャル『燃える勇者たち』(脚本=峯尾基三/監督=小澤啓一) なのでした。
さらに当時の西部署メンバーとして、舘ひろし(ハト)、柴俊夫(大将)、峰竜太(イッペイ)、御木裕(ジョー)、小林昭二(長さん)、そしていつどこで見てもダサい石原良純(ジュン)も参戦! ダサい!
もちろん、ストーリーは今回もあって無いようなもの。政府要人(丹波さん)から密命を受け、木暮課長(裕次郎さん)が凶悪な国際強盗団の黒幕を炙り出すミッションに着手。団長(渡さん)率いる大門軍団の面々は名古屋刑務所へ潜入し、先に逮捕された強盗団メンバーのヘリパイロットを脱獄させるのでした。
そんな感じで序盤は後の『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(’89∼90’) を彷彿させるスパイ活劇調アクションで、コンバットスーツに身を包んだ渡さんと舘さんはまんま『ゴリラ』ですw
で、脱獄させたパイロットを巧みに騙し、彼の雇い主が矢野大サーカスでマジシャンをしてる東郷という男(勝新さん)であることを聞き出した団長たちは、三重県の四日市で公演中の矢野大サーカスに潜入し、やたらめったら大物オーラを発する得体の知れない流れ者=ミスター東郷の正体に迫るのでした。
ところが! 強盗団の罠に堕ちて絶体絶命の危機に瀕した大門団長を救ったのは、なんとミスター東郷その人だった! 実は彼も同じ密命を帯びたCIAの潜入捜査官で、しかしわざわざマジシャンに化けなくたって……とは思うんだけど、それはきっと彼の趣味なんでしょうw(『警視ーK』でもトランプばっかやってたし)
で、団長を助けたせいで敵に正体を知られてしまった東郷は、マジックショーのパートナー(大竹かおる)を人質に取られて絶体絶命! そこでついに現れた強盗団の真ボスはなんと、後にかれこれ20年以上も中古ピアノを買い取り続ける財津一郎だった!
さすがは財津さん、人質に取った大竹かおるさんのエッチな唇に、わざわざ親指をなすりつけるアドリブが無意味にいやらしくて笑えますw 単なるオールスターじゃなく、私が大好きな俳優さんばかり登場するキャスティングがホント最高!
しかしキャストの豪華さとは裏腹に、今回はカーチェイスも銃撃戦もやけに控えめ。サーカス会場で繰り広げられるクライマックスアクションに至っては(テント内にいるライオンや熊、象たちがパニックにならないよう)ドンパチ禁止の肉弾戦オンリー!という、これは撃ちまくってナンボの『西部警察』としてはかなりの異色作。地方ロケ編で爆破シーンが無いのも多分シリーズ唯一かと思います。
もしかすると、メインゲストである勝新太郎さんのご要望だったのかも? 自ら主演&監督された『警視ーK』では全13話通して一度たりとも銃撃戦やカーチェイスをやられてなかったですから。
それはきっと、あくまで映画は人間が主役であって欲しいっていう、確固たるポリシーがあってのことでしょう。銃撃戦ではピストルが主役、カーチェイスでは車が主役になっちゃいますから。
その点は私も大賛成で、まあ私の場合はGUNアクションも大好きだったりするんだけど、『リーサル・ウェポン』をずっとマイフェイバリット映画に挙げ続けてるのは、最終的な決着を殴り合いでつけてくれるからなんです。『太陽にほえろ!』をひたすら愛し続けるのも肉体アクションがあくまで基本だから。
『西部警察』で銃撃戦が無いのは確かに寂しくもあるんだけど、そのぶん肉体アクションにたっぷり時間を割いてくれてますから私は大満足! そのために倉田保昭さんや福本清三さん、更にウィリー・ドーシー氏(『俺たちの勲章』で松田優作さんをフルボッコにした黒人さん)まで敵側にいるワケです。
特に渡哲也VS倉田保昭の肉弾戦は迫力満点! 倉田さんの本格カラテに対して渡さんのケンカ殺法も全然負けてない! 団長が最後にショットガンじゃなくナイフで決着をつけるのも、たぶんシリーズ唯一じゃないでしょうか?
え? 日本の警察官が犯人を殺しちゃってクビにならないのかって? 貴様あーっ!! しみったれた事をほざくなぁあああーっ!! 俺はもう明日の撮影には出ねえからなあああああーーっ!! ಠ益ಠ
刑事たちがただ突っ立って謎解きするだけの刑事物しか知らない、世にも哀れな貴様たちに教えてやろう。凶悪犯は、問答無用でぶっ殺す。それが本来の刑事ドラマだ。以上。
悪そうな顔したヤツらを片っ端からぶっ殺し、なんとなく一件落着。どんでん返しも人情話もいっさい不要。石原裕次郎と勝新太郎が最後に笑顔で握手する、ただそれだけでドラマは成立するんです。それしか要らないワケです。
セクシーショットはミスター東郷のマジックパートナーを演じられた大竹かおるさん、当時22歳。8代目クラリオンガールとして注目された’82年に映画『ジェラシー・ゲーム』で女優&歌手デビュー、ヌードグラビアもその時に撮られたものと思われます。
☆第13話『マイ・シュガー・ベイブ』
(1980.13.30.OA/脚本=勝新太郎&高際和雄/監督=勝新太郎)
今宿署のガッツ警視こと賀津(勝 新太郎)の同期生で警察幹部だった大沢(佐藤 慶)が自宅の浴室で溺死し、その日たまたま大沢宅を訪ねていた、やはり同期生の新城警視正(小池朝雄)が「事件性はない」と証言したことにより、その案件は事故死として処理されます。
ところが、モデルで高級コールガールでもある梨乃(かたせ梨乃)が、大沢と新城の知られざる関係を賀津に密告して来ます。
梨乃は新城に呼び出されたラブホテルで、大金をやり取りする二人の姿を目撃していた。どうやら彼らは汚職で繋がっており、その発覚を恐れた新城が事故に見せかけて大沢を殺したに違いない。
そこで正義感溢れる賀津は梨乃と手を組み、新城から1千万円をゆすり取って2人で山分けしようと画策するのでしたw
結局、賀津が手をナイフで貫かれながら「俺が捕まえたいのはお前じゃない、お前にこんな事をやらせてるヤツらなんだ」と言って見逃してやった、新城の用心棒(安岡力也)が、賀津を救うために雇い主を射殺して事件はジ・エンド。賀津が本気で1千万をゆすり取るつもりだったか否かは不明だけど、それだけが目的じゃなかったのは確かなようです。
予定外の1クール打ち切りで、これは最終回の為に用意されたストーリーじゃないのかも知れないけど、勝新さんが本来やりたかったのは、こういうハードボイルドに徹した話だったんじゃないかと思います。
前回レビューした親子愛の話 (#11) について、私は「これを撮る為に勝新さんはこの仕事を引き受けたのかも?」って書きましたけど、思えばアレは主役の刑事と犯人の心情がもろにリンクするという、勝新さんが一番避けたかった筈の『太陽にほえろ!』式王道ストーリーですから、実は本意じゃなかったのかも?って気もします。
けど、いずれにせよ両方すこぶる面白くて見応えありましたから、勝新太郎という俳優、そして監督の実力は間違いなくホンモノだと、私はあらためて確信しました。素晴らしい! そりゃ多少はヤンチャでも許すしかありませんw
ところで、前回のレビューで中村玉緒さん扮する賀津の元妻=玉美が「金持ちの男とくっついた」って書いちゃいましたけど、誤解だったみたいです>.<
この最終回では実業家として忙しく働く玉美の姿が描かれており、どうやら彼女は立派に自立したキャリアウーマン。なるほど、そういうことなら演じる玉緒さんも納得でしょう。
説明的なセリフや描写は全て排除する!っていうクリエイティブな姿勢はホント素晴らしいんだけど、こういう誤解を生んじゃうリスクもあるんですよね。決して私の理解力が乏しいせいじゃありませんw
で、あれから玉美は賀津のキャンピングカーに出入りするようになったらしく、ラストシーンでは彼女と正美(奥村真粧美)に目玉焼きを料理してやる賀津の姿が描かれ、寄りを戻すであろう近い未来が暗示されてます。
めでたしめでたし、ですね。前回の切なさがあればこそ、じんわりとハッピーな気持ちになれる、見事なシリーズ構成だと思います。本来ならもっと回数をかけて、じっくり描きたかったのかも知れないけど。
なお今回、サイドストーリーって程じゃないけど、賀津の子分である「ピピ」こと水口刑事(水口晴幸)が正美にプロポーズすべく、「殴らないで下さい」と前置きしてから親分に許しを乞う場面も見られました。
もちろん、賀津は「お前ならいいよ」と笑いながら本気のパンチを浴びせますw こんな人を「お父さん」って呼ぼうとするんだから、ピピもなかなかクレイジーな男ですw がんばれ!
今回も中村玉緒さん、小池朝雄さんを筆頭に、かたせ梨乃さん、佐藤慶さん、安岡力也さんと豪華な顔ぶれ。初回のメインゲストだった石橋蓮司さんもワンカットだけカメオ出演されてます。(ズラを被ると井浦新さんに激似!)
セクシーショットはもちろん、かたせ梨乃さん。当時23歳でボインぼよよ~ん!
モデル出身で深夜バラエティー番組『11PM』のカバーガールとして注目され、やがて映画『極道の妻たち』シリーズや『吉原炎上』『肉体の門』等の文芸大作でも大活躍、ボインぼよよ~ん!とメリハリボディを惜しげもなく披露して下さった神女優。
刑事ドラマへの単発ゲストは(少なくとも’70〜’80年代は)この『警視ーK』最終回が恐らく唯一で、勝新さんの熱意あればこそのレアな出演と思われます。天真爛漫なコールガール役で、すっぴん&ノーブラ姿でベッドの上をボインぼよよ~ん!と跳ね回ったり、ここでも過剰なほどのサービス精神を発揮してくれて、萌えますw
これは名作です。主演の勝新太郎さんが自ら監督され、愛娘の奥村真粧美さん、そして愛妻の中村玉緒さんとのファミリー共演を果たされたメモリアルなエピソード。
さすがに気合いが入ってます。勝新さんはもしかしたら、このストーリーを撮るために『警視ーK』の仕事を引き受けられたのかも?って思うくらい。
一言で要約すれば「玉緒よ、真粧美はお前なんかより俺のことを愛してるんだぞ」っていうお話w この内容でゲスト出演を引き受けられた中村玉緒さんはホントに凄い!っていうのが私の感想ですw
☆第11話『その人は…ママ』
(1980.12.16.OA/脚本=勝 新太郎&高際和雄/監督=勝 新太郎)
「私が赤ちゃんの時に抱いててくれたおばさんがいるでしょ? 多分そのおばさんだと思うんだけど、会って、ご飯ご馳走になっちゃった」
キャンピングカーで一緒に暮らす愛娘=正美(奥村真粧美) からいきなりそんな話を聞かされ、今宿署のガッツ警視こと賀津(勝 新太郎)は大いに動揺し、 仕事が手につかなくなっちゃいます。
正美が会ったのはきっと、彼女がまだ物心つかない内に別れた女房の玉美(中村玉緒)に違いない。具体的には語られないけど、どうやら玉美は自由人すぎる賀津について行けず、家を出て資産家の男と再婚したらしく、それが今になって現れたのはきっと、正美を引き取るため。娘を溺愛する賀津だけにそりゃ気が気じゃありません。
そんな折り、新宿の安アパートでみよ子というホステスの絞殺死体が発見されます。捜査はトントン拍子に進み、屋台でおでん屋をやってる夫=堀井(緒形 拳)に容疑が絞られます。
堀井はどうやら、みよ子の浮気が原因で離婚調停中だったらしく、まだ幼い一人息子の親権も争っていた。そして、みよ子の浮気相手(小林稔侍)は資産家なのでした。
「どっちが悪いんだ?」
賀津からいきなりトンチンカンな質問を受け、主任の藤枝(北見治一)は戸惑います。
「そりゃあ、いずれにせよ殺した方が……」
「殺した方が悪いなんて法律は誰が決めたんだよ?」
「………え?」
そう、賀津は今の自分と似た境遇の堀井に、知らず知らず感情移入しているのでした。
一方、正美は何も知らずに……いや、たぶん相手が自分を産んだ人だと薄々は気づきながら、玉美と毎日のように会って食事やショッピングを楽しんでました。
「お父さんって、どんな人?」
他人を装う玉美に問われ、正美は無邪気に答えます。
「最高。ステキな人。もし結婚するんだったらパパみたいな人がいいな」
実の娘にこんなセリフを言わせちゃう勝新さんはやっぱり凄い!w こんなにこっ恥ずかしいことってなかなか無いですよw
しかも、愛娘と元嫁がそんなこっ恥ずかしい会話をしてる様子を、当の賀津がこっそり立ち聞きしてるというこっ恥ずかしさ。
もしかしたら玉美は、単に美味しい食事と可愛い洋服を娘に与えたかっただけかも知れないのに、必死な賀津は天に祈り、誓います。
「今日から、一生タバコは吸いま……いや、一年間だけタバコは吸いません!」
しかしその夜、ますます元嫁になついてる愛娘からディスコに呼び出された賀津は、そこで十数年ぶりに玉美と対面し、チークタイムに二人で踊らされる羽目になるのでした。
踊りながら、正美とは「偶然会っただけなの」と言う玉美の弁明を、賀津は信じません。
「もしも、そういう話をするんだったら、事件が終わってから3人で話し合おうじゃないか。やり方が汚いんだよ、お前は」
「……あの子、あなたを愛してるのね」
「俺は正美以上にもっと愛してる。俺は、正美のことを……お前には分からないだろう」
「私もあなたに負けないくらい、この17年間、愛して来ました」
「それはお前の勝手だよ! とにかくもう正美と会わないでくれ。これは命令だぞ!」
「……あなたって本当に、変わらないのね」
そりゃあ確かに言い方は横暴かも知れないけど、娘を物心つかない内から男手1つで育てて来た賀津の苦労を思えば、そんな風にしか言えない気持ちも理解できます。
2人を見捨てて金持ちとくっついた玉美がどう見ても悪役で、それを引き受けた中村玉緒さんも凄いし、実の奥さんにやらせちゃう勝新さんもやっぱり凄い! かえって絆の強さを感じますよね。
さて、そうこうしてる間にも捜査は進み、賀津は場末のラブホテルで、幼い息子を連れて潜伏していた堀井と対面することになります。
逃げようとする素振りもなく、堀井はあっさりと罪を認め、訥々と語り始めます。
「幸せって何かなって、時々思うんですよね」
世の中の流れに乗っかれば、一般的に言う「幸せ」にはなれたのかも知れないけど、そこに自分の意思や目的はない。未来はない。堀井のそんな語らいを、賀津は黙って聞いてやるのでした。
「そんなに雄々しくはないんだけど、その流れに逆らって、生きてみたいなって……」
堀井は東京大学の出身でありながら、本当に好きなことをやらなきゃ生きる意味がないと思い立ち、おでん屋を始めた。妻のみよ子は、そんな彼の自由な生き方についていけず、金持ちの男とくっついてしまった。けど、堀井は浮気が許せなかったんじゃなくて、自分の作ったおでんをバカにされたことにカッとなり、気がつくと妻を……
そんないきさつを聞いて、賀津は必死で涙を堪えてる様子。東大を出ながら屋台でおでんを作ってた堀井と、警視というエリートでありながら所轄署でヒラ刑事たちと一緒に捜査する賀津。とても他人事に思えないどころか、賀津は明日の我が身を堀井に見たんでしょうw
可愛い息子を岐阜県にいる姉に預けたいと言う堀井に、賀津は言います。
「タクシーとか、ハウスっていうのかな、そういう所は手配書が配布してあるから……電車で逃げるような気は起こすなよ」
ハウスっていうのが何のことか分からないけどw、つまりこれは、電車にまで警察の手は回らないから、逃げるなら電車を使えよってことでしょう。賀津は殺人犯をわざと逃したワケです。
その夜、賀津は正美から「あの人、ママでしょ」と単刀直入に問われ、「そうだよ」と正直に答えます。
「私が生まれたからママと別れたの? 私のせい?」
「いや……そうじゃない。パパの歩く道と、ママの歩く道が、ちょっと合わなかっただけだよ」
「でも私、ラッキーだったな。もしパパとママが別れてからじゃ、私、生まれて来ないもんね」
「ママのところへ行きたいか?」
「……分かんない。急にそんなこと……神様に決めてもらう」
切ないですよね。娘の幸せを思えば、金持ちの家へ行かせてやるべきかも知れない。もっとママに甘えさせてやるべきかも知れない。
凹む賀津に追い討ちをかけるように、本庁の新城警視正(小池朝雄)が謹慎処分を言い渡します。息子を岐阜の姉に預けた後、ちゃんと自ら出頭して来た堀井が処分取り消しを訴えても、新城は「お前の自首と賀津は関係ないだろ」と聞く耳を持ちません。
刑事部屋で賀津と二人、出前のカレーライスを食べながら、堀井はまた訥々と語り始めます。
「こんな世の中に生まれて来たこと、不幸だなって思ってたけど……いや、生まれて来てよかったなって思うんです」
「…………」
「人の情けとか、世の中の情けとかって、歌謡曲とか映画とかで観たり聞いたりするんですけども……」
「…………」
「一生忘れません」
「…………」
ふだんは饒舌な賀津なのに、堀井の語らいにはいっさい口を挟まず、しんみりと聞き入っちゃう。ほんと他人とは思えないんでしょうねw
さて、エゴを捨てて自首した堀井を見習ったのか、賀津は正美を手放す決意を固めます。
「さみしくないの?」
「大丈夫だよ。お前の匂いが、この車の中にある間は」
「私の匂い、そんなに続くの?」
「ずっと続くさ」
運転手付きの高級車で迎えに来た玉美に、正美は言います。
「パパ、タバコやめたの。すごく吸ってたのに、やめたの」
「……忘れ物、ない?」
「……あっ、パパにコーヒー入れるの忘れちゃった」
「…………」
「明日、迎えに来てくれる?」
「いいわよ。……明日でも1年後でも、いつでも」
たぶん、やっぱり、正美はパパとの二人暮らしを選ぶんでしょう。
ね? 玉緒よ、真粧美はお前なんかより俺のことを愛してるんだぞ、っていうお話だったでしょう?w
それを照れもせず自ら演じちゃう勝新さんも、面白がって一緒に出ちゃう玉緒さんも真粧美さんもホントに凄い。まぁ真粧美さんはともかく、玉緒さんには少なからず葛藤があったと思うんだけど、さすがはプロの女優さん。これくらい出来なきゃ勝新太郎の妻は務まらないってことでしょう。
そんな親子3人の共演に加えて、緒形拳! 小林稔侍! 小池朝雄!という超豪華ゲスト陣。やっぱり、これは映画ですよ。だからこそ視聴率が取れなかったw
いやホントに、あくまでテレビの枠に収まってる方が数字は稼げるんです。だけどそんなことお構いなしにやりたいことやっちゃう勝新さんも、それを許した当時のテレビ業界もつくづく凄い。素晴らしい!