ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!スペシャル/誘拐』

2021-10-10 17:07:08 | 刑事ドラマ'80年代

 
こちらは1983年10月28日に放映された、前年のゴリさん殉職編(#525)に次いで2本目となる『太陽にほえろ!』90分スペシャル=#571(脚本=小川英&古内一成/監督=山本迪夫)。

ついでにサブタイトルも'76年の#219に次ぎ2本目となる『誘拐』。何百本と話数があるから被っちゃうのは仕方ないにせよ、もうちょいスペシャルに相応しいキャッチーなタイトルは考えなかったの?っていう思いは当時も今もあります。創り手の生真面目さゆえなんでしょうけど、ちょっと投げやりにも感じちゃいますからね。

タイトルに凝らなかった理由は恐らく、今回は『太陽にほえろ!』初の(そして結果的に唯一無二の)原作モノっていう「売り」があったから。『太陽〜』の原典と云われるエド・マクベイン作「87分署シリーズ」の、黒澤明監督が『天国と地獄』として’63年に映画化された『キングの身代金』。これはその1983七曲署バージョンなんですよね。

’80年代という浮かれた時代、神田正輝さんや渡辺徹さんのアイドル性でなんとか人気を維持してた……つまり若い女性視聴者が番組を支えてたあの時期に、果たしてマクベインや黒澤映画がアピール材料になり得たのか?っていう疑問も今だに残りますが、まぁそういう世間ズレした感じも『太陽にほえろ!』の魅力と言えば魅力、なのかも知れません。



1983年秋当時の七曲署捜査一係メンバーは、大病からの生還を経てますます出番が減っちゃったボス(石原裕次郎)と、そのぶん副指揮官として存在感がますます増した山さん(露口 茂)、そして登場から3年経ってすっかり若手のリーダー格……を通り越して番組の中心人物となったドック(神田正輝)。

なんと、現在レビュー進行中の1980年から残ってるメンバーは、この3人だけ! わずか3年でレギュラーの顔ぶれがすっかり変わっちゃいました。

まず、退職したスニーカー(山下真司)の後釜として七曲署入りし、そのジャニーズ系のルックス(当時)で瞬く間に人気を獲得するも、殺到するファンからの差し入れを全部食って順調に大きくなりつつあるラガー(渡辺 徹)。

顔を毛むくじゃらにしながら殉職したロッキー(木之元 亮)に代わって登場し、久々にやんちゃ系のキャラで番組を盛り上げてくれたボギー(世良公則)。

俺にも死なせろ!とばかりに華々しく殉職していったゴリさん(竜 雷太)の後釜で着任したものの、どちらかと言えば警察学校教官に転職した長さん(下川辰平)のポジションに近い感じのトシさん(地井武男)。

双子の子供たちを残して顔を毛むくじゃらにしながら逝った夫=ロッキーの遺志を継ぐべく、交通課から志願して一係に異動した未亡人のマミー(長谷直美)。

そして登場したばかりのニューフェイス、これから最終回までアクション面をひとりで支えて行くことになる肉体派、すでに妻帯者でもあるブルース刑事(又野誠治)。

’80年の最強メンバーに比べると薄味になった感は否めないけど、ドック、ボギー、ラガー、ブルースと「動けるメンツ」が揃ったこの組み合わせも悪くありません。翌年春のボギー殉職までは非常にアクティブな『太陽にほえろ!』が観られて私は幸せでした。(そのあとマイコン刑事がいよいよ登場してしまい、番組は一気に失速していきます)



ゲストは、映画『天国と地獄』で三船敏郎さんが演じた靴メーカーの社長に高橋幸治さん、香川京子さんが演じた妻に岩本多代さん、三橋達也さんが演じた秘書に西岡徳馬さん、佐田豊さんが演じた運転手に山谷初男さん、といったキャスティング。

ちなみに映画では刑事たちを仲代達矢さん、石山健二郎さん、木村功さん、加藤武さん等、そして主犯を山崎努さんが演じておられました。

『キングの身代金』は後に渡辺謙さんが刑事を演じられた火曜サスペンス劇場『わが町』シリーズ(’92〜’98)でもドラマ化されてます。



靴メーカー社長宅に「子供を誘拐した」との電話が入り、警察が動き出すも幼い息子はケロッと家に帰って来る。けど一緒に遊んでたはずの運転手の息子が行方不明に。そう、誘拐犯たちは人違いでその子を拉致しちゃった。

開き直った犯人たちは「誰の子であろうがお前が身代金を払え」と要求するも、いま大金を失うと職まで失っちゃう事情を抱えた社長は断固拒否! しかし妻や刑事たちの必死の説得により……っていう序盤の展開は映画版とほぼ同じ。

だけど身代金の受け渡しに動き出して以降は『太陽〜』らしくアクション中心で、前回レビューした『西部警察スペシャル/燃える勇者たち』と同じく我らが中京地域を舞台に壮大なロケーションが展開されます。



そこは『太陽にほえろ!』ですから黒澤映画の単なる焼き直しで終わるワケがなく、仕事上の大事な取引を優先して事件から降りようとする社長を「引き止める」「引き止めない」で刑事たちが激しくぶつかり合い、そんな彼らの必死な姿を見て社長も覚悟を決め、自ら身体を張って「仲間」に加わるという青春ドラマ展開も見られ、後半はアクションに次ぐアクションで天国も地獄もへったくれもありませんw

黒澤映画は犯人側の心理描写にもかなり力を入れてた記憶があるけど、その辺り『太陽にほえろ!』は見事にスルーですからw さすがチーフプロデューサーが「犯人なんかどうでもいい!」って断言しちゃうだけの事あります。素晴らしい!w



だから、同じ原作でも『太陽にほえろ!』だとこんなになっちゃうんだ!っていう面白さはあるものの、反面、決して安くはないであろう権利料を払ってまで、マクベインや黒澤映画の名を借りるだけの価値は果たしてあったのか?っていう疑問はやっぱ残ります。そのせいで現在は権利がよそへ移ってしまい、全話コンプリートが「売り」だった筈のDVDーBOXにこの貴重な90分スペシャルが収録されてない! そんなアホな!

っていうような背景もあり、ちょっとフライング気味に’83年のエピソードを今回レビューした次第です。CS等で放映する分には問題ないらしいけど、2021年現在はそれも休止状態。言わば幻のエピソードとなってます。


 


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