ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#323

2020-02-27 00:00:20 | 刑事ドラマ'70年代










 
日本テレビ開局25周年記念作品ってことで、'78年秋の改編期の目玉番組として制作された『太陽にほえろ!』北海道ロケ2部作、その前編です。

当初はこのタイミングでボン(宮内 淳)が殉職する予定だったそうで、その延期が決まった身代わりに相方=ロッキー(木之元 亮)が死にかけることになりますw

もちろん人気者の先輩を差し置いて毛むくじゃらの後輩が先に死ぬことはあり得ないんだけど、このエピソードで「山男」というロッキー刑事の設定が初めて本格的に活かされ、またその活躍により初めてロッキーが格好良く見えたことは、今回最大のトピックと言えるかも知れません。

けれど主役はやっぱり人気者のボンでw、切ないロマンスや犯人への共感などボン活躍編のエッセンスが全て詰まった集大成とも言える作品。ゲスト=清水健太郎&純アリスという華のあるキャスティングも見逃せない、'78年の『太陽にほえろ!』イチオシのエピソードです。


☆第323話『愛は何処へ』(1978.10.6.OA/脚本=小川 英&四十物光男/監督=竹林 進)

ボンが、最近つき合い始めたカノジョ=白城幸子(純アリス)と公園で待ち合わせ、さぁこれからデートしてチョメチョメしちゃうゾ!ってところに他の男が乱入、幸子にナイフを突きつけて拉致するもんだから驚いた!

もちろんボンは必死に後を追うんだけど、交差点で左折して来たトラックにぶつかってあえなく撃沈。

そんなワケで七曲署・藤堂チームは急遽、白城幸子の身辺調査を開始。するとボンが知らなかった彼女の特異な背景が次々と浮かび上がって来ます。

まず、幸子は北海道旭川にある児童福祉施設の出身であること。そして彼女を拉致したのは同じ施設で同時期に育った男、つまり幼なじみの尾形清(清水健太郎)であることも判明。道理で、幸子は拉致される時にあまり抵抗しなかったワケです。

困惑するボンに、ボス(石原裕次郎)が追い打ちをかけます。

「ボン、お前が知らなかったことがもう1つある。白城幸子は、北海道の女子刑務所で生まれた」

「!?」

幸子の父親はアメリカ兵であり、母親はそいつに捨てられ、無理心中を図ろうとして逮捕され、刑務所で幸子を産んだ直後に病死したという、今となってはリアリティーが感じづらい壮絶人生。('78年当時でもギリギリだったかも知れません)

「彼女がどこで生まれようと、俺の気持ちに変わりありません。俺を頼ろうとしていた彼女の気持ちにも、嘘は無いはずです」

思えば、これまで惚れて来た女性たちのほとんどにそういうハードな背景があり、もはやボンも慣れっこ。かえって普通の女の子じゃ満足できない体質になってるかも知れませんw

じゃあ、これならどうだ?とばかりに、さらにハードな仕打ちがボンを襲います。

マルチ商法で悪名高い投資会社「ワールドドラッグ」の事務所から隠し金300万円が強奪され、目撃した警備員の証言により主犯は尾形清、そして逃走車を運転してた女が白城幸子そっくりであることが判明しちゃうのでした。

いよいよ言葉を失うボンに、ゴリさん(竜 雷太)は「きっと尾形清に脅されて無理やり協力させられたんだ」と言葉をかけるのですが……

そのとき幸子は、やはり清と一緒にいました。二人は港で並んで北海道行きのフェリーを眺めており、幸子が清に脅されてるようには到底見えません。

「やっぱり、こうするしか無いのね。私たち……」

「ああ、こうするしか無いんだ。俺たちはな、違うんだ。世間の連中と同じ事しようとしたって、そうはいかないんだ。絶対にな……」

「でも私……田口刑事、好きだった」

「分かってる」

「あの人となら、きっと幸せになれる……そう思ったの」

「分かってる」

「ごめんね、逆らったりして」

「もういい。あの男のことは忘れろ」

「はい、お兄ちゃん。もうそんなことクヨクヨ考えてるヒマ無いもんね。私たちの村が出来るんだもん」

二人は兄妹じゃないんだけど「お兄ちゃん」という呼び方には肉親以上の強い絆が感じられます。

「ああ、とうとう実現するんだ。俺たちの村、俺たちの牧場……これだけは誰にも邪魔させない!」

そう、清の目的は、仲間たちと一緒に自分たちの牧場を北海道に作ること。その為に必死に貯めて投資した金をワールドドラッグ社に踏み倒され、カッとなって盗みに入ったのでした。

そのいきさつは捜査によって刑事たちも知る事となりますが、だからと言って強盗の罪が許される筈もなく、特に恋人を目の前で奪われたボンの怒りは治まる気配がありません。

射撃訓練所で黙々とCOLTローマンを撃ちまくるボンが、人型ターゲットの左胸ばかり狙ってるのを見て、相棒のロッキーは戦慄を覚えます。まさか先輩、にっくき恋敵をぶっ殺すつもりでは !?

心配になったロッキーは、北海道の「俺たちの村」予定地に先回りしようとするボンに付き添うのでした。

土地が比較的に安い旭岳山麓でその場所を見つけたボン&ロッキーは、美しく広大な風景に眼を奪われ、清たちの抱く夢に思わず共感しちゃいます。

「悪くないかも知れないな……」

だからこそ、その夢は犯罪で得た金なんかで実現すべきじゃない。ボンは清たちを東京に連れ戻す決意を新たにします。

ボンが睨んだ通り、清と幸子が北海道へ渡ったことが確認され、非常線が張られるも二人は検問を強行突破して逃走! ボンはその現場へ急行し、ヘリで駆けつけたゴリさんと合流しますが、ロッキーは二人が山へ逃げ込むだろうと予想し、徒歩でひとり天人峡を目指します。

で、その野性のカンが見事に的中し、崖の上でロッキーは清&幸子と鉢合わせ。この辺りの展開は後のカナダロケ編=ロッキー殉職編と非常によく似てます。そう、ロッキーはここで……

「岩城さん!?」

一瞬、熊と出くわしたと思ったものの、相手が服を着てて幸子と顔見知りである=ボンの仲間=刑事だと悟り、清は逆上します。

「黙ってこのまま東京に帰れ! もう俺たちの邪魔はさせない!」

清は勇敢にも、服を着た熊に乱闘を挑みますが、あまりに場所が悪すぎました。すぐに足を滑らせ、崖から転落する羽目になります。なんとか岩の出っ張りに掴まったものの、とても自力で登れる崖じゃありません。

「ロープはあるか!?」

ここで山男=ロッキー刑事の本領が発揮されます。幸子が携帯してたロープを手際よく大木に結びつけ、清が掴める位置まで下ろすのですが……

「ダメだ、左手が利かない!」

転落の際に左腕を負傷したらしく、清はロープに掴まるのがやっと。右手の力だけで登ることは不可能です。

「下を見るんじゃない! 俺が行く!」

躊躇なく自分も下りていくロッキーの勇姿に、BGM「ロッキー刑事のテーマPART2」が流れます。登場してから苦節1年、ロッキーが初めて格好良く見えた瞬間です。継続は力なり!

だけど、我々を心底からシビレさせる見せ場は、この後です。ロッキーが下から清のケツを鷲掴みにして押し上げるも、ロープに掴まりながら男1人を崖上まで登らせるには時間がかかり過ぎる。そして、幸子が持ってたロープは登山用の頑丈な物じゃなかった!

「き、切れる! ロープが切れるわっ!!」

岩石との摩擦により貧弱なロープはもう、今にも千切れそうな状態。

「早く! 早く上がってっ!!」

そんなこと言われたってニッチもサッチもいきません。

「無理だ……このままじゃ二人とも落ちる!」

ロッキーは覚悟を決めます。山の必需品の1つであるナイフを取り出したロッキーは、その刃をロープに押し当てるのでした。

「……俺は落ちる」

「や、やめろ! 一緒に上がるんだ! 一緒に!」

どうやら根は悪いヤツじゃない清が必死に叫びますが……

「無理だ! ……気にするな。これは山の掟だ」

ここで、ロッキーが静かに笑うんですよね! 上の画像だけ見ると、井戸の底から毛むくじゃらの猟奇殺人鬼が迫って来てるようにしか見えないけどw、そうじゃなくてロッキーは清に罪悪感を抱かせない為に笑ってるワケです。これにはホント胸が熱くなりました。

「ロッキー、やめろーっ!! ロッキーーーっ!!」

ゴリさんと一緒にヘリで駆けつけたボンが絶叫しますが、たぶんロッキーの耳には届いてないでしょう。

かくしてロッキーは自らロープを切り、天人峡の崖下へと転落して行きます。とても人間とは思えない足の曲げ方をしながらw(現在のテレビ番組なら『これはダミー人形です』とか『特別な許可を得て落としてます』みたいなテロップが入りそうです)

もし、これで本当にロッキーが死んじゃったとしたら、刑事ドラマ史に残る衝撃シーンになったかも知れません。『太陽~』に限らず殉職エピソードは幾多あれど、自ら崖に飛び込んで死んだ刑事はたぶん空前絶後。誰かを助ける為の「自己犠牲」による殉職はありがちなれど、これはまさにその究極形ですから。

少なくともリスを守って撃たれて死んじゃうより、遥かに我々の心に残る殉職シーンになっただろうと思います。山男=ロッキー刑事にしか出来ない死に方だし、この展開は本番(殉職編)まで取っておくべきだったかも?

それはともかくとして、落ちた先が滝壺だったのと、ボンとゴリさんがすぐに救助を要請したからでしょう、ロッキーは即死を免れました。が、緊急オペを担当する医者に「もし助かったら奇跡だ」と言わしめるほどの重傷で、ボスも大急ぎで北海道まで駆けつけます。

病院の廊下で固唾を飲みながら手術の終了を待つ刑事たちの所に、1人の看護婦が飛び込んで来ます。

「岩城さんの心臓が、止まりました!」

手術の途中で看護婦さんが、わざわざそんなこと報告しに来るだろうか?っていう疑問を残しつつ、ロッキーの命運は次回へ持ち越しとなるのでした。

(つづく)
 


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