ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あぶない刑事』#32

2022-03-15 22:33:03 | 刑事ドラマ'80年代

’80年代アイドル特集第10弾、岩間沙織さん! アイドルグループ「セイントフォー」のリーダーを務め、'87年初頭の解散を機に女優業に専念、同じ年に『あぶない刑事』と『ベイシティ刑事』、’91年には『刑事貴族2』にもゲスト出演されたほか、特撮ヒーロー物『特捜ロボ ジャンパーソン』にレギュラー出演される等、我々ワールドに縁のある女優さん。

現在はセイントフォーの復活ライブやソロ歌手、舞台俳優としての活動を続けるかたわら、介護福祉業にも力を入れておられるそうで、ずっと独身を貫くなどオリジナルな人生を満喫されてるご様子。共感せずにいられません!



☆第32話『迷路』(1987.5.17.OA/脚本=岡 芳郎/監督=成田裕介)

大企業・東日グループの重役である間杉(庄司永建)の娘=知佳子(岩間沙織)が誘拐され、港署の捜査課と少年課が合同で捜査を開始!

全員で変装して身代金の取引現場を張り込んでたら、ベンチに置いた身代金入りバッグを通りがかりの萩原聖人が置き引きしたもんだから全てがぶち壊し!



萩原聖人さん(当時15歳)は『あぶない刑事』のスタッフにスカウトされてのデビューだったそうで、これがTVドラマ初出演。後に本作と同じセントラル・アーツ制作の連ドラ『俺たちルーキーコップ!』に主演されるのも今回の縁があればこそでしょう。



で、誘拐とは無関係だった聖人くんを釈放し、自宅に送り届ける途中で発砲事件に遭遇した鷹山(舘ひろし)&大下(柴田恭兵)コンビが犯人を追跡、みごと逮捕するんだけど、そいつが途中で拳銃を道端に落としてたもんだからさぁ大変。いくら探しても見つからない!

さらに、最初の誘拐犯とは明らかに別人物から身代金の要求があったり、その取引に向かう間杉氏を乗せたバスに爆弾を仕掛けたという脅迫電話があったりと、ありとあらゆる犯罪が混在してまさに「迷路」の様相!

ちなみに間杉氏に扮したゲスト=庄司永建さんは、このブログの読者さんには「大門くぅ〜ん!」でお馴染み、二宮係長を長年演じられたお方で、今回直接の絡みは無いものの西部署で部下だった舘ひろしさんと久々の共演となりました。



さて、どうやら爆弾は刑事たちの眼を逸らすためのダミーで、バスに同乗してた若い女が身代金入りバッグを奪い、待ち構えてたバイクの男と2ケツで逃走! それを中央分離帯を挟んでバック走行のまま追跡するユージの覆面パトカー、ハコ乗りして愛銃M586を構えるタカ!



周囲を走る一般車が皆無なのが(安全対策まる出しで)興冷めではあるんだけど、それでもこれは日本のTVドラマとしては画期的なアクションシーンだと思います。『西部警察』みたいにただぶっ壊せばいいってもんじゃない!っていう『あぶデカ』スタッフの心意気が伝わる名シーンですよね。



さて、身代金を奪って逃げた若い女の正体は、皆さんお察しの通り、誘拐された筈の御令嬢=知佳子さんでした。

まどろっこしい謎解きは嫌いなもんで簡略に解説しますと、最初に誘拐をやらかした男は知佳子に抵抗されて重傷を負い(弱っ!)、そいつが死んだと思い込んで慌てた知佳子が、自ら誘拐犯になりすまして続きを自作自演してた。

で、そんな時に偶然、例の拳銃を拾った青年=深見(安藤一夫)と出逢い、なんとなく意気投合してチョメチョメし、共犯に至ったという顛末。

大下に見破られ、観念して語った知佳子の本音は、如何にも現代っ子らしい軽いもんでした。

「わたし、もう家に帰るって言ったの。そしたら急に怒り出しちゃって……彼、なんか勘違いしてたみたい。明るくないし、友達いないんじゃない?」

倉庫に隠してあった身代金は回収したものの、深見は拳銃を持ったまま逃走中。捜査課に電話してきた深見は無差別殺人を匂わせ、知佳子の身柄と身代金を再び要求して来ます。



「深見、もういいだろ。ゲームは終わりだ」

「イヤだ。まだ弾は残ってるんですよ」

「命張るようなオンナじゃないぞ、彼女は」

「分かってますよ」

じゃあ深見はいったい、何がしたいのか? 動機は何なのか?

「ひょっとしたら、その動機ってのを探してるのかも知れん」

指定場所に現れ、知佳子を拉致した深見は、鷹山&大下に追われてスターホテルの屋上まで逃げ込みます。



「何する気?」

「2人で死ぬんだ」

「馬鹿なマネはよせ」



「馬鹿なマネ……一度やってみたかったんだよ」

こんなネクラ男と心中なんてまっぴらゴメン!とばかりに逃げ出した、知佳子の背中に銃口を向ける深見!



まっすぐ向かって来る知佳子が邪魔になって、深見を撃てない鷹山!

まず1発目の銃弾を知佳子に浴びせた深見は、次に銃口を自分のこめかみに向けて……



しかし間一髪、大下の放った銃弾が深見の銃(拾い物)を弾き飛ばしました。

「死なせてたまるかよ」

結局、深見の銃(拾い物)には1発だけ弾丸が残りました。そいつを取り上げ、シリンダーを無造作に回転させた鷹山が、銃口を深見のこめかみに当てて無造作にトリガーを引き、ビビりまくった深見に一言。

「甘いんだよ、お前は」



ハードボイルド! こんなドラマはもう、この国じゃ二度と創られないかも知れません。我々は一体いつまで、刑事がただ突っ立って謎解きするだけの紙芝居につき合わなきゃいけないんでしょうか?



知佳子は足を負傷しただけで済んだものの、結局、深見ってヤツが何を考えてたのか、何をやりたかったのかは不明のまま。鷹山のセリフ通り、深見自身にもたぶん解ってないんでしょう。

’60〜’70年代のドラマでも動機なき犯罪は描かれただろうけど、’80年代からそれが顕著になりましたよね。

そもそも、貧乏だからとか、恨みがあるから罪を犯すんだとしたら、世の中が犯罪者で溢れ返っちゃう。私だってもっと金が欲しいし、殺したくなったヤツも沢山いるけど、逃げ回ったり牢屋に入ったりしたくないからブレーキがかかるワケです。

動機なんか言い訳でしかなく、ルールを破りたくて、タガを外したくて仕方ないのが人間っていう生きものなんでしょう。どっかの国の独裁者みたいに。なまじ強い権力なんか持って、裸の王様みたいになっちゃった日にゃあ、そりゃ止まりませんよ。



だから今回の深見みたいなヤツこそ、一番リアルな人間像なのかも?って、そんなことを考えさせられるストーリーでもありました。

なんとなくヤツについて行って、最後にあっさり見捨てちゃう知佳子っていう女性像も、なんかリアルやなあって私は感じちゃいました。岩間沙織さん、ハマってますよね。もちろん褒め言葉です。


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする