主人公のヨロシク(ビートたけし)やその相棒=コネコ(岸本加世子)は「少年特捜班」の刑事なので、扱う事件は主に少年犯罪。
第2話ではヨロシクの姪っ子=まどか(川上麻衣子)がツルんでるスケバングループに売春疑惑が持ち上がり、コネコと交通課婦警の桃子(山田邦子)が女子高生を装って風俗店に潜入したら、客としてやって来たのが刑事ヨロシクというw、マトモな刑事ドラマじゃ有り得ないであろう展開が見られます。
いや、マトモじゃないと言っても一応ゴールデンタイムの番組ですから、ヨロシクにも姪っ子を探しに来たという大義名分があるので、家族で観ても(多少は気まずいかも知れないけど)まあ大丈夫。
第3話ではスケバングループどうしの抗争による校内暴力が描かれますが、教師役ゲストが由利徹さんに小野ヤスシさんですからw、そんな深刻な話にはなりません。
スケバングループのリーダー格=トンビ(風見りつ子)は、コネコ刑事が幼いころ生き別れになった妹かも知れないという設定で、そんな姉妹の確執と和解がシリーズを通した縦軸になってるみたいです。
そのスケバングループと交流するツッパリグループ「虚無僧」のメンバーを演じてるのが、どうやら主題歌を担当した「朝倉紀幸&GANG」のメンバーらしく、OPタイトルでも主役コンビと一緒にディスコダンスを踊ったりなど何かとフィーチャーされてます。
フィーチャーされてると言えば、やたらヨロシクにイジられるのが庶務係のオツヤ(戸川 純)と、兄嫁の母=きんさん(菅井きん)。特にきんさんは「おい、きん! このヤロくそばば!」などとw、他の番組じゃ有り得ない扱われ方だけど、ご本人は楽しんでおられるみたいです。たけしさんも裏じゃ気を遣い、敬っておられたんじゃないでしょうか?
セクシーショットはヨロシクの姪っ子=まどか役の川上麻衣子さんと、兄嫁の妹=真弓役の風祭ゆきさん。
川上麻衣子さんは後にたけしさん=北野武監督の劇場映画デビュー作『その男、凶暴につき』に主人公=我妻刑事(たけしさん)の妹役、風祭さんは『アキレスと亀』にスナックのママ役でご出演。
そしてコネコ役の岸本加世子さんは『HANA-BI』と『菊次郎の夏』でたけしさんの妻を演じたほか、『DoIIs』『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』と北野映画の常連になられました。『太陽にほえろ!』のゲスト出演や、多部未華子さんの『ジウ』『ドS刑事』にレギュラー出演されたり等、刑事ドラマにも縁深い女優さんです。
1982年の5月から8月まで、TBS系列の日曜夜8時枠で全10話が放映された、KANOX&TBSの制作によるVTR撮りの刑事ドラマ。
主演がビートたけし、そしてメインプロデューサー兼メインディレクターが『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』等の久世光彦、と聞けばマトモな刑事ドラマじゃないことは明白。
冒頭、たけしさんがカメラに向かって、当時の時事ネタを織り混ぜながら、TVドラマのでたらめさを皮肉る毒舌トークを披露。そのあと本編が始まると一応ストーリーはあるんだけどテーマらしきものは見当たらず、とにかくビートたけしの毒舌と暴走キャラをたっぷり楽しんでもらうという、ほぼ『オレたちひょうきん族』のコント『タケちゃんマン』刑事編みたいな内容。たけしファンでなければ観るのはちょっとキツイかも知れません。
とはいえ、しっかりしたキャスト陣が脇を固めてるし、畑嶺明さんや若松了さん、山元清多さん等しっかりしたライター陣が脚本を書かれてるので、思ったよりはちゃんと刑事ドラマになってるな、っていうのが私の感想です。海外ドラマの『フライングコップ』や『俺はハマーだ!』、近年の国産ドラマだと『時効警察』シリーズや『ラストコップ』に近いノリかも知れません。
たけしさんが演じるのは、問題を起こして飛ばされた刑事たちを寄せ集めた、警視庁喜多野警察署「少年特捜班」に所属する通称「ヨロシク」こと原平太刑事。
ほか、相棒の「コネコ」こと花井刑事に岸本加世子、ベテランの「カラオケ」こと渋沢刑事にケーシー高峰、若手の「マックス」こと橋詰刑事に本間優二、肉体派の「チャンコ」こと田所刑事に三好鉄生、お茶汲みの「おつや」こと西事務員に戸川純、そして「カシラ」こと神波班長に梅宮辰夫。
加えて交通課婦警に山田邦子、たかだみゆき、ヨロシクが居候する家の兄夫婦ファミリーに及川ヒロオ、藤田弓子、風祭ゆき、川上麻衣子、菅井きん、そしてスナックのママに秋野暢子が扮するほか、安岡力也、奈美悦子、斉藤洋介、布施博、笹野高史、渡辺えり子etcと、さすがは久世ドラマというほかない豪華キャストがレギュラー、あるいはセミレギュラーとして登場します。
セクシーショットは岸本加世子さんと戸川純さん。岸本さんの美少女ぶりもさることながら、戸川さんのちょっとやさぐれた感じも、自分が大人になった今見ると可愛いです。
あと、ツッパリ連中の'80年代ファッションも今となっては懐かしいですね。
『太陽にほえろ!』が築いた刑事ドラマの定石をことごとく覆し、新時代のスタンダードとなった平成の大ヒット作『踊る大捜査線』('97) の全脚本を執筆された君塚良一さんが、実は『太陽~』でプロデビューされてたことはマニア間じゃ有名な話だけど、一般的にはあまり知られてないかも知れません。
『太陽~』で書かれたのはこの#423オンリーだけど、なにせデビュー作ですから君塚さんにとって忘れがたい作品みたいです。
ただしそれは、どちらかと言えば悪い意味で忘れがたいのかも? 近年NHKのBSプレミアムで放映された『太陽~』特集番組における君塚さんご自身のコメントによると、確かに君塚さんの書かれたプロットが採用されはしたんだけど、出来上がった台本を読むと「ぼくが書いたセリフやト書きは、一字一句残ってなかった」んだそうですw つまりメインライターで監修役の小川英さんに書き直され、ほとんど原型を留めてなかった。
君塚さんが書かれたのは「高校生が自殺した友人に代わって大人に復讐する」ストーリーなんだけど、それが「僕がこれをやりたいと思った核を残しつつ、全部がきちんとエンターテイメントに仕立て直された感じ」になってたそうです。
「複雑な気持ちだったけど、悔しいとは思わなかった。だって(完成作は)とても面白かったから」
そう述懐されてる君塚さんの書かれたホンが一体どんなだったか、なぜ原型を留めないほど直す必要があったのか、完成作から逆算して推理しながらレビューしたいと思います。
なお今回は、翌週に最終回を迎える『あさひが丘の大統領』で生徒役レギュラーだった田中浩二さんと星野浩司さんがゲスト出演されてるのも見どころの1つ。さらに頭師孝雄さん、西田健さん、そして『太陽~』の後番組『ジャングル』で刑事役レギュラーとなられる安原義人さん等、なにげに豪華布陣です。
☆第423話『心優しき戦士たち』
(1980.9.12.OA/脚本=小川 英&君塚良一/監督=山本迪夫)
長さん(下川辰平)が父親の法事で休暇を取り、数年振りに夫婦で帰郷しようとした朝、七曲署管内でジョギング中のサラリーマンが轢き逃げされる事件が発生。
ニュースを観るかぎり手掛かりが少なく、犯人を探すには人手がいるだろうと察した長さんは、奥さん(西 朱実)を先に出発させて自分は捜査に参加。いくら昭和のモーレツ労働者とは言え、ここまで来ちゃうとマジ病気ですw
で、その甲斐あってルポライターの村上という男(西田 健)に容疑が絞られ、その村上が事故直前に芸能プロダクションの社長=守田(頭師孝雄)と会ってたことが判り、長さんは新婚ホヤホヤなのに顔じゅう毛だらけのロッキー(木之元 亮)を連れ、守田に会いに行きます。
そしたら、その守田のプロダクション所属でただいま人気絶頂のアイドル歌手=堀川陽子(池田信子)が行方不明になって大騒ぎしてたもんだからこっちも驚いた!
いきがかり上、長さんたちも陽子の行方を探すことになるんだけど、その道すがらルポライター村上との関係を尋ねても、守田社長は「今はそれどころじゃないでしょう!?」とか言って話を逸らしちゃう。
まぁ確かに、事件性があるとすれば陽子の命にも関わって来ますから、今は行方を探すしかない。聞き込みの結果、どうやら彼女は同年代の少年2人組に連れ去られたことが判って来ます。
誘拐事件ともなると長期戦を覚悟せねばならず、とりあえず長さんは着替えをしようと、いったん自宅マンションに戻るのでした。
そしたら、自分ちの食卓で見知らぬ少年2人と、見覚えある女の子1人がカップラーメンをすすってるもんだからマジ驚いた!
「なんだお前たちは!? ……おいちょ待てよ、キミは確か……」
そう、ただいま人気絶頂のアイドル歌手=堀川陽子と、彼女を拉致した犯人に違いない少年2人=修(田中浩二)と武(星野浩司)が、長さんちで勝手にくつろいでるのでした。
なぜ、彼らはここに隠れてるのか? 実は今朝、長さんがご近所さんに「法事で3日ほど留守にします」と挨拶してたのを、この区域で新聞配達をしてる修がたまたま聞いており、まさかこのお人好しそうなオジサンが刑事とは思わず、管理人室から合鍵を盗んで侵入し、アジトに使ってたワケです。
もちろん、七曲署では拳銃の常時携帯が許可されてますから、長さんは愛銃COLTローマン2インチの銃口を彼らに向け、すぐ電話でボス(石原裕次郎)に報告しようとするのですが……
「おいちょ待てよ! 電話したら今ここで死ぬ!」
「おいちょ待てよ! オレも一緒に死ぬ!」
「おいちょ待てよ! 分かった、話を聞こうじゃないか!」
彼らは持ってた果物ナイフを陽子にではなく、自分の喉元に突きつけており、彼女に危害を加えるつもりは無さそうです。そもそも彼らは今の今まで、3人仲良くカップラーメンをすすってたんです。人んちで勝手にw
自分が食うラーメンは残ってるのかどうか気にしつつ、長さんは彼らの話をとにかく聞いてみることにしました。
それで判ったのは、修と武が1年前に自殺したアイドル歌手=古城冴子の友達であること、その冴子も守田プロダクションの所属タレントだったこと、そして守田社長がタレントのギャラを搾取したり、タレントが移籍を希望しようものなら全力で脅迫したりと、札付きの悪徳マネージャーであること。
そう、古城冴子を自殺に追いやったのは守田社長であり、2人はその事実を世間に暴露するため、ルポライターの村上に調査を依頼した。
ところが、最初は正義感に燃えてた筈の村上が昨夜、急にこの件から降りると電話して来た。恐らく村上は、守田社長から多額の口止め料を貰った。だから守田は村上との関係を話したがらなかったワケです。
もう頼れる相手が誰もいなくなった修と武は、今夜テレビに生出演する予定の現役アイドル=堀川陽子を拉致し、その番組に穴を空けることで守田社長に打撃を与えようとしてる。だけど……
「そんな事をして何になる?」
「何にもならない事ぐらい初めから分かってる! こんな事すれば捕まるだけだって事も分かってるんだ!」
「でも、俺たちに出来るのはこれしか無かった。今日の番組に穴を空けてやる事しか無かったんだ!」
2人は、古城冴子が自殺した日の前夜に電話をもらい、彼女から「友達はキミたちしかいない」「死にたい」そして「マネージャーが怖い」といった言葉を聞いていた。
冴子は「もう歌は唄えない」と言い、「歌って、人間が好きでなきゃ唄えない。人間が怖くちゃ唄えない」とも言っていた。大好きだったことがいつしか苦痛になり、彼女は生き甲斐を失ったワケです。
「あの子は守田社長に殺されたんだ!」
その上、2人と一緒に戦ってくれる筈だった村上も、結局は守田に買収されてしまった。
「俺たちが守田マネージャーに少しでも打撃を与えるには、これしか無かったんです!」
「お願いします、番組が終わるまで待って下さい! それだけでいいんです! お願いします!」
「……いや、それは出来ん……お前たちがやったことは誘拐なんだよ。誘拐はな、殺人の次に罪が重いんだ」
「でも!」
「言いたいことがあれば法廷で言うしか無いんだ。手記を出すことだって出来るだろう?」
「そんな事したって誰も聞いてくれやしない! 汚ないヤツらはそんな事したって平気なんだ! だから俺たちは……」
「それでもそれしか無いんだっ! それが、この世のルールだっ!!」
自らの迷いを吹っ切るように怒鳴った長さんに、今度は被害者である筈の陽子がたたみ掛けます。
「この人たち、誘拐なんかしてません! 私、自分でこの人たちについて来たんです。誘拐されたんじゃありません!」
「キミ……」
陽子もまた、守田から生き甲斐を奪われた操り人形の1人であり、もう人前で唄いたくないと思い詰めてるのでした。
「自分が我慢すればいいと思って来ました……でも、もう笑顔は作れません」
「…………」
「お願いです、今夜の番組が終わるまで待って下さい。刑事さん! 待って下さい!」
「…………」
涙を流して訴える美少女に、さすがの長さんも職務を忘れかけます。あと3時間……わずか3時間、待ってやるだけの事だ……
それで一旦、長さんは彼らに協力することを決意するんだけど、もちろんチョー生真面目ドラマ『太陽にほえろ!』がそんなことを許すワケがありません。悩みに悩んだ末、長さんは前言を撤回します。
「やはり……見逃すワケにはいかん」
再び長さんが拳銃を手にし、ボスに電話をかけたもんだから修と武は逆上します。
「畜生、騙したなっ!?」
ルポライターの村上に裏切られ、今度は刑事にまで裏切られたんだから逆上するのも無理ありません。長さんは2人がかりでフルボッコにされ、痛みに耐えながら彼らに手錠を掛けます。身体の痛みよりも、心の痛みの方がずっと堪えたに違いない長さんなのでした。
「なぜですか? なぜあの人たちを騙したんですか?」
テレビ局へと向かう車内で陽子に問われ、長さんはこう答えました。
「……騙したりはせん。迷っただけだよ」
「…………」
「あの子たちに今それを言っても、嘘としか思わんだろうが……しかしそれでいいんだ。それが、我々の仕事だ」
「でも私、もう今夜の番組には出たくないんです。唄いたくないんです! 守田さんのプロダクションが作ったあんな歌……」
「しかしね、その歌も堀川陽子も、プロダクションのものじゃないだろう? たくさんのファンのものだと私は思う」
「…………」
「その人たちに、キミは今夜唄うことを約束したんだろ? 約束は守らなきゃいかん。それが、キミの仕事だ」
「…………」
「1つ、頼みがあるんだがね。出来れば、あの子たちの友達になってやってくれないか? 警察を恨むのは構わんが、キミとあの子たちが仲良くしてると思うと、私も楽しいんでね」
「……はい」
どうやら長さんの想いは陽子に通じたらしく、彼女は予定通り生放送に出演し、画面越しに明るい笑顔を見せてくれました。
この時に彼女が唄ったのは『スター誕生!』出身の歌手=浦部雅美さんが'77年にリリースされた『ふるさとは春です』という楽曲。浦部さんのレコード音源に合わせた口パクみたいです。
陽子役の池田信子さん、決して悪くはないんだけど、アイドル歌手を演じるには華が足りないよなあって、私は正直思いました。なんで本物のアイドルを呼ばないんだろう?って。まあ今回は悪徳プロダクション所属って設定だから無理としても、『太陽~』のキャスティングにはそういう不満が常にありました。たとえば大映制作の刑事ドラマだと山口百恵さんとかアグネス・ラムさん等がよくゲスト出演されてましたからね。
それはともかく、さて……完成作から逆算して君塚良一さんが書かれた本来のストーリーを推理する、なんて豪語しちゃいましたけど、ちょっとムリでしたねw
完成作は如何にも『太陽にほえろ!』らしい内容で、ほんと君塚さんの仰った通り「高校生が自殺した友人に代わって大人に復讐する」っていう「核」しか残ってないんでしょう。
もしかすると原案では、長さんが最後まで少年たちに協力しちゃってたのかも?って思ったりもしたけど、もしそれがこのストーリーの「核」だったなら、たぶん採用されてないと思うんですよね。
じゃあ、君塚さんが書かれたストーリーの、一体どこが『太陽~』制作陣の眼にとまったのか?
私が思うに、今回のエピソードで一番ユニークだったのは「長さんが自宅に戻ったら、犯人たちが勝手に上がりこんでメシを食ってた」っていうシチュエーションじゃないかとw そういうのって多分ベテラン作家には出来ない発想で、意外と眼を引くんじゃないかと私は思ったんだけど、如何なもんでしょう?
もしそうだとしたら、原案はもっとコメディー寄りだったのかも知れません。『踊る大捜査線』も基本はコメディーだし、君塚さんは萩本欽一さんのお弟子さんでもありますから、その可能性はけっこう高いんじゃないかと、私は思います。
☆第422話『令子、俺を思い出せ!!』
(1980.9.5.OA/脚本=小川 英&尾西兼一/監督=竹林 進)
先月ロッキー(木之元 亮)と結婚したばかりの交通課婦警=令子さん(長谷直美)が、新婚わずか1ヶ月にして記憶喪失になっちゃったもんだからおいちょ待てよ!
愛する妻に「あなた誰?」と言われ、いきなり今夜からチョメチョメ出来なくなっちゃうロッキーも気の毒だけど、眼の前に立ってる顔じゅう毛だらけの古臭くてダサい大男が、自分の結婚相手だといきなり聞かされた令子さんの心痛たるや想像を絶しますw
そもそも令子さんがこうなっちゃったのも、その爆毛男のせいなんです。すこぶる質の悪いヘロインが街に出回り、中毒患者が相次いでショック死する緊急事態の中、藤堂チームは売人の高岡(沖田駿一)を必死に探してました。
で、ロッキーはアパートに帰ってもその手配写真と睨めっこ。当然、狭い部屋で一緒に暮らす令子の眼にも入っちゃうワケです。警察官どうしの夫婦とはいえ、捜査情報の漏洩には当たらないんでしょうか?
それはともかくとして翌日、令子は駐車違反の取り締まり中に高岡と出くわし、その顔をまじまじと見てしまう。慌てて逃走する高岡をミニパトで追跡した令子は、返り討ちに遭って車で撥ねられ、その衝撃で記憶を失ったのでした。
画像ではロッキーに襲われて怪我したように見えますが、順番の入れ替えによる意図的な印象操作ですw ちなみに令子さんのパンティーが写ってます。
ロッキーが手配写真を見せたりしなければ、令子もそこまで深追いはしなかったはず。なのに爆毛は反省するどころか、自分の名前すら思い出せない令子が「記憶を取り戻しつつある」というニセ情報を流し、敵を誘きだそうとします。つまり、愛する妻をオトリに使おうと。
当然、ボス(石原裕次郎)には止められるんだけど、ロッキーは毛で出来た顔をキリッとさせながら言うのでした。
「でも、あいつが記憶喪失でなければ、自分から進んでオトリになった筈です! あいつはそういうヤツなんです! あいつは!」
そんなロッキーがつくづく古臭く、ダサいですw
で、狙い通りヘロイン組織の刺客が病院に侵入し、ロッキーは令子の眼の前でそいつをフルボッコにするんだけど、今や普通の女の子に戻っちゃった令子は泣きながら叫ぶのでした。
「出てって! 出てってよ! イヤよ! 大嫌い! バカッ! ケダモノッ! 鬼っ! 毛っ! ダサい! 古臭い!」
襲われた恐怖でますます心を閉ざした令子が、自ら記憶を掘り起こすことはもはや絶望的。そんなワケでロッキー刑事の幸せは、たったの1ヶ月であっけなく終止符が打たれるのでした。
さすがにちょっと、気の毒になって来ましたw
もちろん、ここでロッキーが離婚しちゃったら、後のマミー刑事も誕生しなくなっちゃいますから、何とかしなくちゃいけません。
というワケで奮起したのが誰あろう、後輩のスニーカー(山下真司)。令子も参加した七曲署慰安旅行の集合写真(なぜかスコッチがナーコと恋人気取りw)を彼女に見せながら、愛してるからこそ、命懸けで守る覚悟があるからこそ妻をオトリに使った、昭和モーレツ男=ロッキー刑事の毛で隠された真意を、まるでラグビー部の熱血顧問みたいに涙目で訴えるのでした。
「どうしてそんなに一生懸命なの? 犯人を逮捕したいから?」
「それもある。だけど先輩が好きだから、先輩が選んだキミも好きだから……オレだけじゃない、一係の仲間は皆そうなんだ!」
「…………」
さすがは後の泣き虫先生、効果はバツグンだったようで、自分が記憶を無くした時の工事現場に連れてって欲しいと、令子はロッキーに懇願するのでした。
「いかん、それは危険過ぎる!」
「あなたが守ってくれるわ」
「…………」
「一係の人たちも守ってくれるわ。憶えてるんです、私。すぐそばに、そういう人がいるってこと」
「…………」
「それから、その人に素晴らしい仲間がいるってことも。それだけは憶えてるんです」
「令子……」
かくしてあのパンチラ現場に、あの時と同じ制服姿で戻った令子は、あの時と同じように高岡らの襲撃に遭い、もちろんロッキーとその仲間たちに守られ、事件は解決するのですが……
「さぁ令子、思い出せ! キミは今みたいに襲われたんだ! そうだなっ!?」
「分からない……分からないんです、何にも……何にも分からないんです!」
「令子……」
結局、彼女の記憶はついに戻らず、ロッキー刑事の幸せはわずか1ヶ月で終止符が打たれるのでした。
いやしかし、それじゃ番組の歴史が変わっちゃいますから、やっぱり何とかしなくちゃいけません。
ロッキーは仕方なく、せめて最後に1回だけチョメチョメしようと令子をアパートの部屋に連れ込み、とりあえずちゃぶ台の前、つまり彼女の指定席に座らせるのでした。すると……
「ねえ、創さん」
「うん。……えっ!?」
「私、どうして制服なんか着てるの?」
「れ、令子っ!?」
最初からそうすりゃ良かったね、っていうお話でしたw
新婚早々に愛する妻が記憶を無くしちゃう、つまり赤の他人に戻っちゃうってのは相当切ない話で、主役がロッキーでなければ泣けたかも知れませんw
いや、しかし今回に限っては、ロマンス芝居が似合わない木之元さん&長谷さんだからこそ、かえって不器用な夫婦愛が自然に感じられたような気もします。特にラスト、令子の記憶が戻った瞬間のロッキーのリアクションにはグッと来ました。
当時は「また記憶喪失ネタかよ?」って冷めた眼で観た記憶があるけど、今あらためて観直すとこれ、なかなか良いエピソードです。令子さんと結婚させてもらえてホント良かったね、ロッキーw
ところで、この時期からロッキーの使用拳銃がS&W・M1917風のMGCハイパト・カスタムに変更されてます。スラッと長い細身のバレルが、長身のロッキーに似合っててイイ感じです。程よくマッチョになって貫禄もついて来て、結婚してからロッキーもちょっとだけ格好良くなりました。古臭いけどw
また今回、冒頭シーンの銃撃戦でロッキーがドック(神田正輝)のM59を拝借して使う描写があり、オート拳銃を構えるレアなロッキーの姿も見られます。すこぶる似合わないけどw
そのシーンでスニーカーはお馴染みのCOLTトルーパー4インチを使ってたのに、発砲する瞬間だけローマンの4インチと入れ替わるというw、昭和のアクションドラマ「あるある」も見られます。この時にトルーパーが壊れたりしたのか、次回からスニーカーの使用拳銃は『太陽~』初登場となるCOLTパイソン4インチにチェンジされ、後にラガー刑事(渡辺 徹)へと受け継がれていきます。
後に『太陽にほえろ!』でブルース刑事(又野誠治)の天真爛漫な妻=澤村泉を演じることになる、渡瀬ゆき(この当時のクレジットは渡瀬由喜子)さんのゲスト回。
TVドラマ初登場は『太陽にほえろ!』#403の『罪と罰』におけるゲスト出演(その時は本名の升本由喜子名義)で、2作目となる今回から渡哲也さんの本名である「渡瀬」姓を受け継ぐことになります。(『西部~』には続いて#68、#106にもゲスト出演)
それだけ渡さんから惚れ込まれたって事なんでしょうけど、相手役はどういうワケか石原裕次郎さんw やっぱり渡さん、照れ屋なんですねw
しかし二度目のテレビ出演にして裕次郎さんの相手役ですから、その見込みようはハンパじゃない。実際、彼女の熱演あればこその見応えあるエピソードに仕上がってます。
『太陽~』における澤村泉役も素晴らしかったし、私も大好きな女優さんなのに、メジャーと言える役はそれだけで、『太陽~』終了後はあっさり身を引いてプロデューサー業に転身された模様。それで制作プロダクションの社長にまでなられてますから、そっちの方が性に合ってたんでしょうね。
☆第48話『別離(わかれ)のブランデーグラス』(1980.9.14.OA/脚本=大野武雄/監督=宮越 澄)
西部署の表でゲン(苅谷俊介)がライフルで狙撃されちゃいます。幸い軽傷で済んだものの、ゲンが狙われた理由は不明。その時ゲンは色々あって木暮課長(石原裕次郎)のジャケットを借りて着ており、本当の狙いは自分だったんじゃないかと木暮は睨みます。
そしたら案の定、木暮を名指しに新たな狙撃予告の電話が入って来ます。犯人の動機はどうやら「ちゃりんこのユーコ」と呼ばれるスリの常習犯=夕子(渡瀬由喜子)にあるらしい。犯人は自分の恋人である夕子を木暮が寝取ったと言い張るのでした。
確かに木暮は2年前、夕子と出逢ってはいるんだけど、チョメチョメはしていない。まぁちょっと、身体検査はしたりしたけどw、チョメチョメはしてないんです。チョメチョメは。
彼女は相手が刑事とは知らず、金持ちそうな木暮から財布をスッたワケだけど、すぐに見破られて捕まっちゃった。なのに木暮は署に連行するどころか、財布を拾ってくれたお礼だと言って彼女に万札を1枚握らせた。
後日、あちこち探し回ってそれを返しに来た夕子に、木暮は「またスリをやりたくなったら、これを見て思い出すんだ」と、利き手の人差し指にマジックペンで線を描きました。
夕子は「キザだねえ、こんなのすぐに消えるわよ」ってバカにするんだけど、木暮は「そしたら、今度は自分の意志で描くんだ」と言って、あくまで彼女を信じる姿勢を崩さなかった。
「消えたら描く。また消えたら描く。そうして自分を鍛えていくんだよ」
それから2年が経ち、夕子は大衆食堂でマジメに働いてました。その人差し指には、今もしっかりマジックペンの線が。彼女は木暮の気持ちにちゃんと応えたワケです。
そんな夕子の証言により、犯人は刑務所を出たばかりの元傷害犯=丈治(寺島達夫)であることが判明します。
確かに丈治は服役中、面会に来た夕子から木暮とのいきさつを聞いてました。そういう話を変に誤解したり、あるいは犯罪者と縁を切りたい女から「刑事と結婚する」と嘘をつかれ、それを真に受けて刑事を恨んだりするのはドラマでよくある話です。たぶんこの番組でも何度となくやってますw
だからなのか、さすがに今回はストーリーが捻られ、実は裏で麻薬の密売組織が絡んでることが大門軍団の捜査により判って来ます。麻薬取引に使ってる高級クラブ「女王蜂」が木暮に眼をつけられたもんで、多額の報酬で丈治を釣って狙撃させた。夕子の一件はカモフラージュに過ぎなかったワケです。
そこで再び木暮は「女王蜂」に潜入し、ホステスたちにせがまれて石原裕次郎の大ヒット曲『ブランデーグラス』をフルコーラス唄い上げ、裕次郎と言えばブランデーグラスとブラインドというイメージを我々に植え付けるのでしたw
そこを丈治がまた狙って来るんだけど大門軍団に阻まれ、駆けつけた夕子の目の前で組織に消されちゃう。
「丈治! 丈治! どうして!? どうしてよ!? 私を迎えに来てくれるんじゃなかったの!? 丈治ぃ!!」
「夕子……すまねえ……バカなことしちまった……あべし!(ガクッ!)」
夕子と一緒に店を持つための資金が欲しかったとはいえ、人を(しかも刑事を)殺せばまた警察に追われるのは幼稚園児でも分かることで、いくらなんでもアホすぎて私は同情できません。昭和ドラマに出てくるチンピラってホントどうしょうもないアホばっかw
一方、麻薬組織の連中は、負傷して入院した夕子をわざわざ「無事にオレたちが船に乗り込むまで人質にする」とか言って拉致しちゃう。で、その夕子が病室に残した手掛かりによってブラジル行きの船に乗ることを大門軍団に察知され、あとはいつも通り団長のショットガンで全員あの世行き。何もしなけりゃ難なく逃げられたのに、ホントいくらなんでもアホすぎる!wwwsex
まあ、それが軍団クオリティーなんですw だからこそ我々は安心して観てられるワケですw そんな『西部警察』と観比べると、このテのツッコミどころがあまり無かった『太陽にほえろ!』の脚本が如何にちゃんと練られてたかがよく分かりますw
脚本を書いてる時は細かい矛盾点に意外と気づかないもんで、それを後から直して辻褄を合わせるのって、けっこう骨の折れる作業だったりする。『太陽~』はそこで妥協しない(させない)けど『西部~』はスルーしちゃうw そのぶんアクション描写に力を入れるワケで、要は優先順位の違い。私はどっちも大好きですw
今回も穴だらけの脚本だけどw、木暮課長の優しさがよく描かれた点では良かったと思います。そして前述のとおり、渡瀬ゆき(由喜子)さんの熱演が素晴らしい! ホント、もっと売れて然るべき女優さんでした。
ところで、渡瀬ゆきさんはグラビアの仕事を一切されてなかったようなので、代わりに西部署捜査課のマスコットガール=沢井礼子役で1年間レギュラー出演された、布目ゆう子さんの水着グラビアを載せておきます。
台詞らしい台詞を与えられず、私が知るかぎりアップを撮ってもらえたことも無く、決して旨味があるとは言えない役をよくぞ1年間、文句も言わず務め上げてくれました。素晴らしい!