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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『絶対零度/未解決事件特命捜査』2010

2019-07-04 12:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY







 
2010年の春シーズン、フジテレビ系列の火曜夜10時枠で全11話が放映された刑事ドラマ。翌年春にスペシャル版、夏に第2シリーズ『絶対零度/特殊犯罪潜入捜査』(全11話) 、そして2018年には沢村一樹の主演による第3シリーズ『絶対零度/未然犯罪潜入捜査』(全10話) も放映されてます。

この第1シリーズは、現実の警視庁に新設された「コールドケース」をモデルとする「特命捜査対策室」に、新米刑事の上戸 彩が配属され、北大路欣也、杉本哲太、中原丈雄、山口紗弥加、北川弘美、宮迫博之らと未解決事件を捜査し、成長していく姿が描かれます。

放映当時は「ありきたりな設定のありきたりな人情捜査物」と思ってスルーしてたんだけど、今あらためて観るとけっこう面白い。それは多分、ここ数年の刑事ドラマ……に限らずTVドラマ全体が質を落としてるせいかと思われます。

偉そうな言い方をすれば、今よりは全然マシやん!って事です。本放映当時は凡庸に思えた作品が、今となっては眩しく見えてしまう。刑事物は特にそう。よりによってEXILEなんかと結婚しちゃう前の、上戸彩さんが輝いてる時期を捉えた作品としても貴重かと思います。

2014年の科学捜査ドラマ『ホワイト・ラボ』では鼻についた宮迫博之さんの二枚目気取り演技も、まだ本作ではそれほど浮いてません。やっぱり大根役者も使い方次第で、宮迫さんは謹慎させとくのが一番です。

翌年の第2シリーズはガラリと趣を変え、スリリングな潜入捜査が描かれましたが、これも当時はNHKの力作『外事警察』のパクリと思って私はスルーしてました。今観たらまた感じ方が違うかも知れません。

それだけ現在は、不作の時代。特に刑事ドラマはどん底のど真ん中……なら、まだ良いんです。後は上って行くしか無いから。

最悪なのは、どん底と思って観てる現在の番組を数年経ってから観直した時に、今より全然マシやん!って、また言わなきゃならないこと。

もしそうなったら、私は絶対にEXILEを許しません。
 

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『853/刑事・加茂信之介』2010

2019-07-04 00:00:15 | 刑事ドラマ HISTORY








 
2010年の冬シーズン、テレビ朝日系列の木曜夜8時「木曜ミステリー」枠で全8話が放映された刑事ドラマ。

『刑事貴族』シリーズと『相棒』で水谷 豊さんのサポートを長年務められた寺脇康文さんの、初となる連ドラ単独主演作って事で、並々ならぬ気迫が伝わって来ます。

犯人を射殺したことで所轄署へ左遷されてた昭和気質の熱血刑事・加茂伸之介が、10年振りに853(京都府警本部を指す隠語)の捜査一課にめでたく帰還するも、徹底した合理主義のエリート係長・武藤(田辺誠一)と全くソリが合わず、ことごとく対立し、孤立しちゃう。

そんな二人がぶつかり合いながら、互いを理解していく人間ドラマを軸にしつつ、型破りな加茂刑事の昭和テイスト溢れる熱血捜査が描かれていきます。

創り手が目指すものはズバリ、『太陽にほえろ!』オマージュかと思われます。寺脇さんの要望だったんでしょうか?

まずテーマ曲が「太陽にほえろ!メインテーマ」のイントロにそっくりだし、主人公が留置場から初出勤するシチュエーションも明らかにジーパン刑事(松田優作)へのオマージュ。ジーパンは無銭飲食でしたが、加茂刑事の場合は買春容疑w(そういう店とは知らずに飲んでてガサ入れを食らっちゃった)

加えて、係長すなわちボスのデスクを刑事たちが囲む捜査会議の構図(画像3枚目)が『太陽~』のそれ(通称Aポジ)とよく似てます。他の刑事ドラマがずっと避けて来た「太陽にほえろ!と似たようなこと」を今あえてやる理由って、オマージュ以外には考えられません。

そのせいか、ロケ場所も都会的スポットばかりで、わざわざ京都を舞台にした意味が解りませんw 登場人物たちも全員、標準語で喋ってるしw

こうして京都を舞台にしたドラマが定期的に創られるのは、背景が東京ばかりじゃ画的にマンネリなのと、京都の撮影所も(時代劇が激減した分、他のジャンルで)使ってあげないと経営が成り立たないとか、色んな理由があるんだろうと思います。

それはともかく、最近はあまり見かけなくなった熱血型のハミダシ刑事は、私にとって心地好いキャラクター。だけどやっぱり時代にそぐわなかったのか、残念なからシリーズ化には至りませんでした。

捜査一課の同僚刑事に富田靖子、菅原大吉、戸次重幸、林 剛史、新谷真弓、課長に金田明夫、といったレギュラーキャスト陣。セクシーショットは総務課婦警役の小川奈那さんです。
 
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『外事警察』2009

2019-07-01 00:00:29 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2009年の11月から12月にかけてNHK「土曜ドラマ」枠にて全6話が放映された、麻生幾 原作、古沢良太 脚本によるサスペンスドラマ。2012年には同キャスト&スタッフによる劇場版も公開されてます。

刑事物というよりはスパイ物で、日本のCIAとも言える警視庁公安部外事4課の対国際テロ捜査、決して表には出ない諜報活動が非常に渋いタッチで描かれてます。

外事第4課作業班の冷酷な班長・住本警部補に渡部篤郎、美人でもブスでもない無個性が買われて公安に抜擢される所轄刑事・松沢巡査長に尾野真千子、第4課メンバーに片岡礼子、北見敏之、滝藤賢一、渋川清彦、山本浩司、斎藤 歩、警視庁警備局の局長に石橋 凌、理事官に遠藤憲一、内閣官房長官に余 貴美子、そして「協力者」として住本らに利用されるヒロイン・愛子に石田ゆり子、といったレギュラーキャスト陣。新米役の尾野さんと民間人役の石田さんを除けば、何を考えてるのか判んない怪しい顔の人ばかりですw

だけどそれもリアリティーなんですよね。警察内部でも捜査内容を決して漏らさず、時には味方をも欺き、国益の為なら一般市民も躊躇なく利用し、用済みになれば切り捨てるという非道な世界でずっと生きてたら、そりゃあヘビみたいな眼つきにもなるってもんです。

キャストの顔だけじゃなくドラマの作りそのものがドキュメントタッチで、全編隠しカメラで撮ってるようなブレまくりの映像、ライティングを最小限に抑えた暗い画面、そして起承転結がハッキリしないストーリーと、これで演技が全部アドリブならまるで『警視―K』ですw

ただ、そこはさすが『相棒』や『ゴンゾウ/伝説の刑事』等で高評価を得てきた古沢良太さんの脚本で、行き当たりばったりに見えて実は計算ずくのストーリー、ハイテンポな展開、そして実質の主人公である松沢=オノマチさんの成長ドラマ等、『警視―K』と違ってしっかりとした軸がありますw

目的の為なら手段を選ばず、まだピュアな松沢の正義感さえ利用しちゃう住本班長と、そんな上司に翻弄され、反発しつつも影響されていく松沢との関係は、古沢さんが後に手掛けられるフジテレビの連ドラ『リーガルハイ』シリーズの古美門弁護士(堺 雅人)とその助手・黛(新垣結衣)の関係にも似てる気がします。

とは言え、今回の古沢さんは強力な武器の1つである弾けたユーモアを完全封印。徹底的にシリアスで、映像のトーンと同じく内容もこの上なく暗い! 同じNHK土曜ドラマの『リミット/刑事の現場2』も暗かったけど、その比じゃないくらいに暗い。

だから私は、その徹底したリアリズムと臨場感に圧倒されながらも、次回が楽しみになるほどハマることは無く、最終回までは観なかったし劇場版も観てません。同じ古沢作品なら『リーガルハイ』や『鈴木先生』『デート/恋とはどんなものかしら』の方が絶対的に好きです。

しかしそれはもう、まったくもって好みの問題ですから、コメディよりシリアスなドラマ、リアルな作品がお好きな方には『外事警察』をオススメします。
 

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『東京DOGS』2009

2019-06-20 00:00:10 | 刑事ドラマ HISTORY







 
2009年の秋シーズンに、フジテレビ系列の月曜夜9時「月9」枠で全10話が放映された刑事ドラマです。

ニューヨーク市警から警視庁特殊捜査課に飛ばされたカタブツ刑事=高倉に小栗 旬、その相棒となる元ヤン刑事=工藤に水嶋ヒロ、二人が追う犯罪組織に命を狙われる記憶喪失の女=由岐に吉高由里子が扮するほか、特殊捜査課の課長に三浦友和、係長に大塚寧々、同僚刑事に勝地 涼、東 幹久、志賀廣太郎、高倉の母に田中好子、妹に川口春奈、加えて臼田あさ美、ともさかりえ、水上剣星etc…といったレギュラーキャスト陣。

さらに第1話ゲストが成宮寛貴、第2話が杉本哲太、中村ゆり。さすが月9だけあって当時の旬、あるいは売り出し中のスター達をズラリ揃えてます。

でも本放映の時は、初回だけ観て「ダメだこりゃ」と切り捨てました。ニューヨーク・ロケから始まるゴージャスさは良いんだけど、とにかくギャグがつまんない、ストーリーに深みが無い、そして小栗くんも水嶋くんも拳銃が全然似合わない。ないない尽くしで、やっぱ日本でアクションドラマはもう無理なんだって、破滅を実感したもんです。

今あらためて観ても、印象はそんなに変わりません。けど、同じ小栗くん主演のアクション物でも『CRISIS』や『BORDER』みたいに重苦しくない、こういう気楽に観られる娯楽系の刑事アクションが絶滅しちゃった現状の中だと、ついハードルは低く、点数も甘くせざるを得ません。こういう企画を形にしてくれただけでも有難いって、思っちゃうんですねどうしても。

脚本は、あの『勇者ヨシヒコ』シリーズや『コドモ警察』『スーパーサラリーマン左江内氏』等の福田雄一さん。道理で下らないギャグが満載なワケですw

私は福田雄一さんの下らない世界観が決して嫌いじゃありません。『コドモ警察』にはハマったし、『スーパーサラリーマン~』はそのシーズンの連ドラNo.1に選んだくらい、むしろ大好きです。

だけど『東京DOGS』は笑えません。演出が福田さんご自身でなかったせいもあるでしょうが、それより何よりストーリーのシリアスさと、福田さんの下らないギャグが全然噛み合ってない。

福田ギャグの下らなさは、良くも悪くも「幼稚」なんですよね。言い換えれば「うんこドリル」的な面白さ。『勇者ヨシヒコ~』『コドモ警察』『スーパーサラリーマン~』みたいに作品の題材や世界観そのものが「うんこドリル」だとバシッとハマるけど、『東京DOGS』みたいに人の生死を扱う本格的な刑事ドラマとなると、ギャグの幼稚さが浮いちゃうワケです。

だったらこれも『コドモ警察』みたいなパロディなんだと、最初から「うんこドリル」なんだと割り切って観ればいいじゃないかって話だけど、そうすると今度は真面目にやってるシーンが浮いて来ちゃう。せっかくのアクションシーンこそが幼稚に見えるワケです。

もしかすると、ノーマルな刑事ドラマに愛着が無い人や、アクションに興味が無い人なら全然フツーに『東京DOGS』を楽しめるのかも知れませんが、私はダメですね。刑事アクションに幼稚さを持ち込んで欲しくない!

例えば『あぶない刑事』も、舘ひろしさんと柴田恭兵さんのアダルトなユーモアが魅力だったのに、だんだん浅野温子さんの幼稚なノリに作品全体が汚染されて私は引いちゃいました。刑事ドラマが幼稚になっちゃダメなんです、絶対に。

小栗くんは笑いのセンスが無いワケじゃないと思うけど、幼稚なノリは似合わない。水嶋くんは論外で、最初からセンスが感じられません。早くに引退されたのは賢明です。

で、二人とも拳銃が似合わない。だいたい日本人が使うには銃がゴツ過ぎるんですよ! ちゃんと身の丈に合った機種を使いなはれと言いたいです。これは『CRISIS』にも言える事で、撃たない方針で行くならあんなゴツいオートマチック拳銃じゃなく、スナブノーズをYOU、使っちゃいなよ!って思いました。装弾数5発で充分やろって。ふたつでじゅうぶんですよって。

まして『東京DOGS』の時は二人とも若かったですから、ガキンチョのごっこ遊びにしか見えませんでした。ただし、小栗くんの格闘アクションだけは当時からキマってました。小栗くん、相当好きみたいですね。

そんなワケで、最も愛するジャンルなだけに文句ばかり言っちゃいますが、こんな豪華布陣でまた楽しい刑事アクションをやって頂きたい気持ちは大いにあります。

チャレンジあればこその失敗。福田さんみたいなクセの強い作家に月9の脚本を任せちゃうだけのパイオニア精神が、当時のフジテレビ……に限らず、テレビ業界にはまだ有ったワケです。

『相棒』みたいに手堅い作り方を否定はしないけど、そればっかりじゃホントつまんない。むしろ、どんどん失敗するつもりで新しい事をやって頂きたい! さすれば、また愛を持って悪口書きますからw いやホントに、愛あればこその苦言です。
 
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『リミット/刑事の現場2』2009―2

2019-06-19 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
とにかくこの作品における梅木刑事(武田鉄矢)の台詞は、1つ1つが私にとって珠玉の言葉です。

第2話では公園にあったダンボールハウスが火事を起こし、そこに住んでたホームレスが焼死するんだけど、名古屋中央署の刑事課は麻薬摘発の点数稼ぎで忙しく、梅木と啓吾(森山未來)に後処理を押しつけちゃう。

啓吾は周辺住民に聞き込みし、死んだホームレス自身の火の不始末による事故、すなわち「事件性なし」と結論づけるんだけど、梅木にこう言われます。

「ホームレスなんかどーでもいいや、か?」

啓吾は近所の住民たちにばかり聞き込みをし、ホームレスの仲間たちにはいっさい話を聞こうとしなかった。

「おめえも上の連中と同じだ、この事件をナメてる。ホームレスなんか公園を不法占拠する違法居住者だと決めつけてる。そんなヤツらのために真面目に捜査するのは馬鹿馬鹿しいんだろ?」

それで考えを改めた啓吾がさらに捜査を進めると、あの火事は放火によるものだったことが判明。

その実行犯である若いチンピラを追い詰めた梅木は「なあ、熱かったろうなあ……被害者は、苦しかったろうなあ」とか言いながらそいつを火あぶりにして殺そうとし、啓吾に止められますw

そしてチンピラの自白により判明した黒幕は、穏やかな口調が印象的な町内会長=森本レオだった!

近所の子供たちが危険な道路で遊ぶ姿を見かねて、行政と掛け合ってやっと作った公園にホームレスが住み着き、住民たちからのクレームが殺到してしまい、レオは警察に訴えたけど相手にされなかった。

「ホームレスなんて不法に公共の場を占拠する犯罪者でしょう? いいじゃないですか、あの人たちの1人や2人死んだって、誰が困るんですか!?」

啓吾はレオのつらい立場に同情して何も言えなくなるんだけど、梅木には通用しません。

「あんたの言う通りかも知んねえな。あんたのその理屈、聞かせたいヤツがいるんだ。ちょっとつき合ってもらおうか」

そして梅木は病院の遺体安置所にレオを連れていき、焼け焦げた被害者の遺体と対面させるのでした。

「もういっぺんさっきのこと言ってやれよ。お前なんか死んだって悲しむヤツなんか誰もいない、お前なんか犯罪者だ、死んで当然だと言ってやれよ!」

そう、ホームレスであろうと自分と同じ人間だという認識さえあれば、こんな結果にはならなかった筈。

「こいつはゴミか? 違う、人間だ! 公園を綺麗にしたけりゃあんなチンピラに頼まないで、自分の手ぇ汚して掃除すりゃ良かったんだ! こいつのダンボールの家に火つける時だって、堂々と火つけますよと言えばこいつだって逃げるヒマがあったんだ!」

第1話の通り魔以上に梅木が……というより作者の遊川和彦さんが許せないのは、こういう正義の仮面をつけた偽善者なんだろうと思います。

「あんた、長いこと生きて来た割には大事なこと忘れてる。人間は、死ねば消えていく。だが、殺された人間は消えない。殺された人間は、死なねえんだ。殺した人間のそばで、ずうっと生きてる」

たぶんレオは発狂した事でしょうw

ところが! 偽善者はレオだけじゃなかった。彼は事前に住民たちに相談し、賛同を得た上で計画を実行した。インターネットの掲示板に「粗大ゴミは焼却すべし」などと書き込んで犯行をさんざん煽ったのは、実はごく平凡な市民たちだった!

レオが逮捕されたことを知り、井戸端会議で「ほんとに放火しちゃったんでしょ?」「普通やらないわよねぇ」「怖いことするわよねぇ」なんて他人事みたいに、そして楽しそうに噂する住民たちを見て、啓吾は虚しく梅木に呟きます。

「何なんですかね、俺たちの仕事って……何ですかね、刑事って」

「刑事を長いことやってると、分かる。人間の善意や良心なんてアテにならない。俺たちの仕事は、人を憎むことだ」

「…………」

「人を本気で憎んで憎んで憎みきる。それが刑事の仕事だ。人を愛することじゃない。おめえには向いてねえな」

そして梅木は、この作品で私が最も共感する台詞を吐いてくれます。

「人間は、もう駄目かも知んねえな……」

そう! 人間はもう、破滅なんです!!

とはいえ、人がひとり焼け死んでも何とも思わない住民たちの描写には、さすがの私も「いや、そこまで酷くはないのでは?」って思っちゃいました。ドラマだから極端に描いてるにしても、十把一絡げに皆が狂ってるみたいに見せちゃうのはどうなの?って。いや、確かに人間はもう駄目かも知んないんだけどw

梅木個人がそう主張する分にはいいけど、創り手がそう決めつけちゃうのは危険じゃないの?って。本作で唯一、そこだけは引っ掛かりました。

それはさておき第3話。ストーカー被害に苦しむ女子大生(黒川芽以)が中央署に駆け込むも、例によって「それだけじゃ立件出来ない」との理由で組織は動こうとしません。

「おめえ、それでも警察官か? 何かあったら、なんてのは警察官のセリフじゃない。何かあってからじゃもう遅いんだよ! 証拠が無いんで捜査は出来ません、事件じゃないんで捜査は出来ません。そんなこと言ってたら警察なんかいらねえんだよ!」

同僚たちに放った梅木の言葉は、まさに我々小市民の言葉。さんざん彼に振り回され嫌って来た啓吾も、警察官として本当に正しいのは誰なのか判らなくなって来た様子。

で、女子大生から事情を聞いた梅木と啓吾は、彼女につきまとうストーカーに会いに行きます。なんとそいつは妻も子もいる立派な弁護士(甲本雅裕)なのでした。

刑事が訪ねて来ても全く動じず、涼しい顔で彼女の誤解だと言う弁護士を、例によって力ずくで組伏せた梅木は、その手の甲にペンを突き立てます。

「二度と彼女に近づくな。今度やったら刺すぞ。本気だかんな」

弁護士が法律を盾に反撃しても、梅木には通用しません。

「訴えたきゃ訴えろ。その替わり事務所の前に何十人、何百人とマスコミ集めてやるからな。おめえの呼び名はストーカー弁護士。自分の弁護で忙しくなるぜ、これから」

しかし相手が殺人犯ならともかく、たかがストーカーにそこまで捨て身になるか?って思うんだけど、これには深い理由があるのでした。

梅木はかつて、心から愛した婚約者をストーカーに殺された。そう、梅木が「殺す」と言ってたのは、もうすぐ出所して来るその犯人=黒川(井浦 新、当時のクレジットはARATA)のこと。

あのとき梅木は、婚約者の部屋に黒川が潜んでることに気づきながら「踏み込む前に令状を取れ」という課長(杉本哲太)の命令に従い、その手続きをしてる間に彼女の命を奪われた。だから梅木はルールを無視する暴走刑事に変貌し、そんな彼を課長はクビに出来ないでいるのでした。

そういう背景もあり、梅木は脅しでもしないかぎりストーキングは収まらないと決めつけるんだけど、啓吾は「本当に愛してるからこそ」という弁護士の言い訳を信じ、だったら彼女を苦しませるような事はすべきじゃないと懸命に説得します。

啓吾にも茉莉亜(加藤あい)という婚約者がいるんだけど、実は彼女もかつて恋人を轢き逃げで殺されており、今もその面影を引きずってる……つまり自分より死んだ元カレの方が好きなんじゃないかと、啓吾は疑心暗鬼になってる。

でも、彼女を本当に愛してるなら、信じるしかない。信じなきゃいけない。そんな自分のプライバシーまで吐露する啓吾に、心を打たれた様子の弁護士は「二度と彼女には近づきません」と約束するのですが……

もちろん、遊川和彦さんが描くキャラクターがそんな簡単に改心するワケがありませんw いや、実際ストーカーにそんな理想論は通じないでしょう。弁護士は性懲りもなく女子大生の部屋に侵入し、駆けつけた啓吾の前で無理心中しようとします。

「もう二度と近づかないって約束したじゃないですか! 俺は信じてたのに……」

「信じて? 自分の彼女のことさえ信じられないヤツが何を言ってるんだよ! 善人みたいな顔をして綺麗事ばっかり言って、結局キミは人が自分の言いなりになるのが嬉しいだけなんだ。人のことを守るフリして自分を守ってるんだ!」

痛いところを突かれた啓吾は発狂し、あやうく弁護士を絞め殺そうして、梅木に止められますw

梅木と長い付き合いの庶務係=筒井(若村麻由美)は、啓吾が若い頃の梅木によく似てると言ってました。今の啓吾と同じように誰よりも理想を信じてたからこそ、その反動で梅木はイカれた短足オヤジになっちゃったw

「おめえの愛なんて、ただ相手を束縛してるだけだ。人の心をがんじがらめに縛り上げ、自分の思う通りに動かして喜んでるだけだ」

梅木はもしかすると、啓吾にじゃなく若い頃の自分自身に言ってるのかも知れません。

「世の中、自分しか愛していないのに、人を愛していると勘違いしてるヤツが多すぎる。これで分かったろ? おめえも、怒りや憎しみで心がいっぱいになったら、人を殺すヤツだ。俺とおんなじだよ」

「……あんたなんかとは、絶対に違う!」

そうやって強がれば強がるほど、啓吾は梅木に近づいてるのかも知れません。そう言えば啓吾の足も短くなって来たような気がしますw

それはさておき、いよいよ第4話で黒川が出所して来ます。果たして梅木は、本当に彼を殺すつもりなのか?

「殺す。俺はその為にだけ生きてきた」

一方、ストーカー弁護士と梅木にパンドラの箱を開けられてしまい、どんどん足が短くなっていく啓吾は、第5話(最終回)で愛する茉莉亜を黒川に拉致され、いよいよダークサイドに足を踏み入れようとします。

果たして、最後に勝つのは憎しみなのか? それともやっぱり愛なのか?

今回10年ぶりに観直して、本作が『スター・ウォーズ』シリーズと非常によく似てることに気づきました。(本放映の時もそう言ったかも知れないけどw)

啓吾がルーク・スカイウォーカー、梅木がアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)、茉莉亜がパドメ(アミダラ姫)、そして黒川がパルパティーン(銀河皇帝)ですよね。

あと、この10年の間に私がハマった刑事ドラマの1つである『BORDER』('14年、小栗旬 主演) の最終回が、本作のそれと酷似してる事にも気づきました。LIMITとBORDER、タイトルに込められた意味もほぼ同じです。

『BORDER』の脚本を書かれた金城一紀さんはもしかすると、遊川和彦さんが生んだ本作に魅了されながらも、その結末には不満を抱いておられたの知れません。つまり、甘い!とw

そう書くと結末はほぼ判っちゃうけど、未見の方には是非、DVDを買うなり借りるなりして観て頂きたいです。それだけの価値が充分にあります。NHKオンデマンド等でも鑑賞可能かと思います。

前回も書いた通り、私は本作を'00年代刑事ドラマのベスト1、そして遊川和彦さんの最高傑作じゃないかと思ってます。遊川さんは同じテーマをジャンルを変えて繰り返し描いておられる気がしますが、結局のところ刑事物が一番合ってるんじゃないでしょうか?

武田鉄矢さん、森山未來くんにとっても'00年代のベストワークかも知れないし、黒川を演じた井浦新さん(私は本作で初めてこの俳優さんを知りました)もまた素晴らしい!

若いイケメン俳優がこのテのイカれた殺人鬼を演じると、大抵わざとらしくてワンパターンで見てられないもんだけど、井浦さんは違ってました。リアルなのかどうかは実際に殺人鬼と会わないかぎり判らないけど、多分こんな感じだろうなと納得させる実在感がありました。

無論、その演技を引き出した渡辺一貴・松浦善之助 両ディレクターの演出もエクセレントで、リスペクトあるのみです。

どうやらまだ、刑事ドラマは滅んでない。そう思わせてくれた、近年数少ない作品の1つです。(しかしもう10年経っちゃったんですね……)

セクシーショットは、第4話ゲストの純名りささん、第3話ゲストの黒川芽以さんです。
 
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