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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『リミット/刑事の現場2』2009―1

2019-06-18 00:00:08 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2009年夏、NHKの「土曜ドラマ」枠で全5話が放映された、NHK名古屋放送局の制作による刑事ドラマ。

前年に放映された『刑事の現場』の続編ですが、主人公=加藤啓吾(森山未來)が愛知県警・東和署から名古屋中央署へと転属になった設定で、彼以外の登場人物は一新されてます。

名古屋中央署の癌細胞と云われるやさぐれ警部補=梅木 拳に武田鉄矢、検挙率アップしか頭に無い刑事課長=東野警視に杉本哲太、鬼軍曹キャラの課長代理=太宰警部に伊武雅刀、嫌われ者の梅木にただ一人理解を示す庶務係=筒井警部補に若村麻由美、そして啓吾と同棲中の婚約者=茉莉亜に加藤あい、といったレギュラーキャスト陣。

顔ぶれも変われば作風もガラリと変わり、今回は人間という生きものの本質にとことん迫る、超シリアスかつダークな内容となってます。それもその筈、脚本を書かれたのは当時あの問題作『女王の教室』で注目されたばかりで、この後『家政婦のミタ』で驚異的な高視聴率を弾き出し、朝ドラ『純と愛』で賛否両論を巻き起こす事にもなる、遊川和彦さん。

決して好きとは言い難いライターさんだけど、本作にはハマりました。これは現時点における遊川さんの最高傑作だと私は思うし、'00年代刑事ドラマのベスト1と言っても過言じゃありません。

とにかく武田鉄矢さん演じる梅木刑事のやさぐれぶりがハンパなく素晴らしい!w

第1話の冒頭、駅前で通りすがりの女性を背後からナイフで刺し、逃走して追い詰められた通り魔を、説得するかと思いきや力技でねじ伏せ、本気で絞め殺そうとする登場シーンでさっそく私はハートを鷲掴みされちゃいましたw まさか今の時代に、しかもNHKさんのドラマで、こんなムチャクチャな暴走刑事が見られるとは!w

その梅木とコンビを組まされる羽目になった主人公=啓吾は、犯罪者にもそれぞれ事情があり、とことん話せば解り合えると信じてる理想主義者。それには殉職刑事である父親の影響もあり、『太陽にほえろ!』で言えばジーパン(松田優作)とボン(宮内 淳)を足して二で割ったようなタイプ。

刑事になった理由を問われて「市民を守る為です」と答える初々しい啓吾に、定年間近の梅木は言い放ちます。

「警察という組織は市民なんか守ろうと思っちゃいねえ。警察は警察という組織を守りたいだけだ。皆その組織の中での出世のことだけしか考えてない」

実際、二人の上司である東野課長は検挙率アップに夢中で、問題児の梅木に足を引っ張られないよう、彼を監視させる為に啓吾を東和署から呼び寄せたのでした。

だけど梅木の暴走は誰にも止められない。県警本部の管理官(本田博太郎)に監視されながら、取り調べで自らの不遇を訴える通り魔に、梅木は言い放ちます。

「だから何だ? 自分が如何に虐げられ孤独だったかを泣きながら話せば誰かがじっと聞いてくれるとでも思ったか? お前はただ、強いヤツに向かっていくのが怖かった。だから弱い人を選んで刺し殺した。ただそれだけだ!」

お前なんかに何が解る!?と激昂する通り魔に、梅木は畳み掛けます。

「分かるか馬鹿っ! おめえの気持ちなんか解ってたまるか! おめえがいくら此処で長いことくっちゃべったところでおめえの気持ちなんかだ~れも解らねえ! みんな自分の人生背負って精いっぱい忙しいんだよ! おめえの人生に、その退屈な人生につき合ってる暇はねえんだよっ!!」

徹底的に被疑者を突き放す梅木に対して、理想主義者の啓吾は異を唱えます。世の中は理不尽で不公平で、どこに救いを求めていいか分からない。一歩間違えれば自分も彼みたいになってたかも知れない。誰かが彼のSOSを受け止めてさえいれば、事件を未然に防げたかも知れない、と。

「違う! それは違う! 人間は生きている内に、殺したいほど憎いヤツに出逢うことがある。だが普通の人は殺さない、殺せない! 相手にも親がいる。相手にも惚れた男か女がいる。そう思うとそいつが人間に見えて、だから人間は人間を殺さない、そして殺せない! だがこいつは違う! こいつは憎くもない人を、弱い人を選んで刺し殺した。なぜそんなことが出来たか? それはこいつが人間じゃないからだ! おめえもしっかり踏みとどまって、戦え! 人間なら!」

通り魔が発狂して暴れようとも、梅木はいっさい容赦しません。

「でも、もう遅いか。おめえはよ、みんなの為に死んだ方がいいな。バ~カ」

なおも人権侵害だとわめく通り魔に、おまけの一言。

「おめえに人権なんかねえ!」

私は、拍手を贈らずにいられませんw

昭和ドラマにはこんな刑事さんが沢山おられましたw 『俺たちの勲章』の中野刑事(松田優作)にしろ『非情のライセンス』の会田刑事(天知 茂)にしろ『大捜査線』の加納主任(杉 良太郎)にしろ、鉄矢さんほど弁が立たないもんで暴力という不器用な方法で表現されてましたがw、想いは同じだった事でしょう。

だけど『踊る大捜査線』以降、いくら相手が凶悪犯でも暴力行使はご法度となり、卑劣な犯人を徹底的に懲らしめることはフィクションの世界でも不可能になっちゃいました。

現実世界じゃもっと卑劣で理不尽な事件が増え続ける一方なのに、ドラマの世界ですらその鬱憤を誰も晴らしてくれない。じゃあ、溜まりに溜まったこのストレスを一体どうすりゃいいのか? そんなに犯人が憎けりゃ自分で手を下して人生を棒に振れとでも言うのか?

そんな我々小市民の叫びに対し、初めてまともな答えを示してくれたのが本作です。優作さんの肉体暴力にも決して負けてない、金八先生による言葉の暴力w 最初は出演に乗り気じゃなかった鉄矢さんを、遊川さんが全力で口説き落としたそうだけど、確かにこれは武田鉄矢でなければ成立しない、21世紀型の新しい暴力刑事の在り方かも知れません。

梅木による精神的折檻はさらにエスカレートします。件の通り魔に殺された女性の母親が自殺を図るに至り、父親(斉藤洋介)も発狂寸前になっちゃう。

「なんで娘が死ななきゃならんかったのですか!? 犯人はいったい何て言ってるんですか!?」

被害者遺族からは根掘り葉掘り色んなことを聞きながら、加害者側の情報はいっさい守秘する警察の姿勢に、不信と怒りが頂点に達した父親を見かねて、梅木はこう言うんです。

「殴れ。俺を殴れ。そしたら俺が、あいつに会わせてやるよ」

通り魔の身柄が県警本部に移されてしまったら、もう二度と直接会うことが出来なくなる。チャンスは今しか無い。

「早く殴れ! 俺をあいつだと思って殴れっ!」

かくして梅木に暴力を振るった罪で連行された父親は、留置場で通り魔と対面します。

なぜ娘が死ななきゃならなかったのか? 残された自分たちはこれからどう生きて行けばいいのか? いっそ自分も殺してくれないか?と彼に問い詰められた通り魔は、ここで初めて涙を流すのでした。

私はふと、クエンティン・タランティーノ監督の映画『イングロリアス・バスターズ』と『ジャンゴ/繋がれざる者』を思い出しました。前者はナチスに家族を皆殺しにされたユダヤ女性がヒットラー総統に復讐を果たし、後者は西部時代の黒人奴隷が白人支配者たちを退治するストーリーでした。

現実にはあり得ません。だからせめてフィクションの世界で、多くの人々が胸に溜めた恨みや鬱憤を晴らしてやろうじゃないか。それは創作者にしか出来ない魂の救済であり、究極のエンターテイメントです。

百歩譲って殺人犯にも人権があり、警察にはその身柄を守る義務があるとしても、被害者遺族だけは別格でいいんじゃないの?って、人間なら誰でも思うはず。なのに現実社会においては絶対に許されない。だったらせめてドラマでやっちゃおうぜ!っていう心意気。

だけどルールはルールとして守るべきだし、犯人にも更正するチャンスを与えるべきだと宣う、良識派の声も無視するワケにはいきません。

だから理想主義者の啓吾が、本部に移送されていく通り魔に声を掛けるんですよね。

「キミは独りじゃないから! 俺が此処にいるから!」

……虚しいですw 通り魔の心にちゃんと届いたのか怪しいもんだし、少なくとも私の心には全く響いて来ませんw 他にも啓吾はいっぱい耳障りの良い正論を言うし、森山未來くんが熱演してくれるんだけど、記憶に残るのは鉄矢さんの毒舌ばかりですw

それは役者・武田鉄矢の凄さもあるけど、何よりも作者・遊川和彦の本音が圧倒的に梅木というキャラクターに込められてるからでしょう。

現実世界に梅木みたいな刑事がいれば即クビだけど、だからこそヒーローなんですよね。ダーティハリーと同じです。もしこんな刑事がいてくれたら…っていう、本当の意味での理想。

その証拠に、登場時からずっと虚ろだった父親の眼に、ラストシーンではすっかり生気が戻ってるんですよね。

現実には、殺した女の父親に詰め寄られようがガイキチ殺人鬼は何も感じないかも知れないし、それで肉親の気が晴れることも無いかも知れない。だけどいいんです。これはドラマなんだから。それが出来るのはドラマだけなんだから!

「梅木さんは、何のために刑事やってるんですか?」

さて、いくらドラマ世界とは言え、梅木がそこまで極端に殺人者を憎み、そこまで捨て身になれるのには、実はヒーローには程遠いヤバ過ぎる理由があるのでした。啓吾に問われて、梅木はこう答えます。

「人を、殺すためだ。あるヤツを、殺す」

彼はやっぱり、単にイカれた短足オヤジなんでしょうか?w

(つづく)
 
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『BOSS』シリーズ '09~'11

2019-06-17 00:00:18 | 刑事ドラマ HISTORY







 
2009年の春シーズン、フジテレビ系列の木曜夜10時枠で全11話が放映された刑事ドラマ。2011年春にも2ndシーズン全11話が放映されてます。

警視庁に新設された「特別犯罪対策室」に赴任する、アメリカ帰りのキャリア室長=大澤絵里子、人呼んで「ボス」に、天海祐希。

その部下に戸田恵梨香、玉山鉄二、溝端淳平、ケンドーコバヤシ、温水洋一。刑事部のキャリアに竹野内豊、光石研、相島一之。科捜研の女に吉瀬美智子。捜査第一課13係の刑事に塩見三省、長谷川博己と、実にゴージャスなキャスティング。

2ndシーズンでは戸田さんに代わり長谷川京子さんがチームに加入するほか、成海璃子、西田敏行、大森南朋、木南晴夏etc…といったキャストが登場します。

天海祐希さんの重厚さと軽妙さを兼ね備えたボスっぷりは勿論、戸田恵梨香さんの美しさと初々しさも光ってましたね。自閉症チックなキャラクターにも抜群の存在感があり、眼を惹かれます。

とにかく刑事ドラマのキャスティングがすっかり地味になっちゃった現状を思うと、これだけのメンツを揃えてくれただけで「素晴らしい」と言わざるを得ません。武田鉄矢さんや反町隆史さんなどゲストの顔ぶれも豪華でした。

刑事物はやっぱり、スターを揃えてナンボです。やる事はどうせ似たり寄ったりなんだから、如何にスターの個性を活かして格好良く見せるか、そこに全力を注ぐべきなんです。謎解きなんかホントどーでもいい!

だから放映当時、私はこのドラマに大ハマり……するかと思いきや、実は全然好きになれませんでした。今あらためて観てもやっぱり好きになれませんm(__)m

人物描写は薄っぺらいし、落ち着きの無いカメラワーク&カッティング(当時の流行り)も鬱陶しいし、何より笑いのセンスが気に入らない。温水洋一さん扮する山村刑事が「落としの山さん」と呼ばれる理由を「よく落とし物をするから」だとするギャグの幼稚さには辟易したし、何の罪もない温水さんに殺意さえ覚えましたw

偏見かも知れないけど、如何にもゲーム世代、インターネット世代が作った刑事ドラマのように私は感じました。全てにおいて、何かが微妙に違うんですね、私が愛する刑事ドラマとは。刑事という職業を扱った、全然違うジャンルのドラマみたい。

でも、それは言い換えれば新しいって事だし、若い世代に観てもらう為の工夫と捉えれば、決して軽んじることは出来ません。

実際ヒットして刑事ドラマの可能性を広げてくれましたから、そこは素直に感謝しなくちゃいけません。年配層しか観ないジャンルになっちゃったら、質がいくら高くても未来は無いですから。
 
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『臨場』シリーズ '09~'10

2019-06-16 00:00:08 | 刑事ドラマ HISTORY






 
2009年の春シーズン、テレビ朝日系列の水曜夜9時枠で全10話が放映された、横山秀夫原作による刑事ドラマ。好評につき2010年春に第2シリーズ全11話が放映され、2012年には劇場版も公開されました。

警視庁刑事部鑑識課のはみ出し検視官・倉石義夫(内野聖陽)が、初動捜査における現場検証、すなわち「臨場」で死者のメッセージを読み取り、その生きざまや事件の背景を浮き彫りにしていく、捜査ドラマというよりは検証ドラマ。

同僚の検視官に松下由樹、渡辺 大、捜査一課の管理官に高嶋政伸、事件記者に金子さやか、亡くなった倉石の妻に京野ことみが扮するほか、隆 大介、伊武雅刀、益岡 徹、松金よね子、伊藤裕子etc…といったレギュラーキャスト陣。

初回では、密室で発見された男の遺体に残るためらい傷から「自殺」と見立てる倉石と、壁に残ったダイイング・メッセージから「他殺」と断定する管理官が真っ向から対立。

密室で、死者本人が誰かを名指しするメッセージを残してたら、誰でも殺人事件と判断しちゃうけど、それを主人公が如何にしてひっくり返すのか? 興味深く、見応えある内容でした。

もう二度と喋れない死者の身体からメッセージを拾い上げる鑑識や監察のドラマと言えば『きらきらひかる』『科捜研の女』等の科学捜査物を連想しますが、それを初動捜査の段階で(現場における観察と洞察だけで)やっちゃうのが本作ならではの特長かと思います。

残念だったのは、自信家でちょっと横柄な倉石を嫌う(けどやがて心酔して行くであろう)若手検視官を演じる、渡辺大くんの演技があまりに凡庸でつまんないこと。

渡辺大って、一体どこの馬の骨やねん?って思って調べたら、あの渡辺 謙さんの息子(そして杏さんの弟)なんですね! 現在は成長されて立派な俳優さんになられてるかも知れないけど、この作品における演技には全く魅力が感じられず、残念ながら典型的な「親の七光り」と言わざるを得ません。

当人は「渡辺謙の息子」という眼で見られるのを嫌がってるそうだけど、謙さんの息子でなければこんなメジャー作品に、それも準主役でレギュラー出演なんて、絶対に有り得ないことをもっと真摯に自覚すべきじゃないかと私は思います。

基本的にはありがちなミステリー物なので、それくらいしか言いたい事はありません。
 
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『ハンチョウ/神南署安積班』シリーズ '09~'11

2019-06-15 00:00:31 | 刑事ドラマ HISTORY









 
今野敏さんの警察小説『安積班シリーズ』を原作とする『ハンチョウ/神南署安積班』は、第1シリーズ全15話が2009年の春シーズン、第2シリーズ全11話が2010年の冬シーズン、第3シリーズ全12話が2010年の夏シーズン、第4シリーズ全12話が2011年の春シーズン、いずれもTBS系列の月曜夜8時「パナソニック・ドラマシアター」枠にて放映されました。

2012年の第5シリーズからは舞台を本庁に移し、タイトルも『ハンチョウ/警視庁安積班』に変更、主人公以外のメンバーも総入れ替えとなります。

東京・渋谷を所轄とする神南警察署・刑事課強行犯係「安積班」は、飄々としながらも腕は確かな「班長」こと安積剛志警部補(佐々木蔵之介)、実直なサブリーダーの村雨巡査部長(中村俊介)、風貌に似合わず勘が鋭い須田巡査部長(塚地武雅)、鑑識課出身の紅一点・水野巡査部長(黒谷友香)、爽やかイケメンの黒木巡査長(賀集利樹)、新米の桜井巡査(山口翔悟)、そして課長の金子警部(田山涼成)というメンバー構成。

ほか、安積の親友である交通課係長・速水警部補(細川茂樹)、第3シリーズから登場の鑑識係長・石倉(唐十郎)、新聞記者の友紀子(安めぐみ)、小料理屋を営む杏子(奥貫 薫)、安積の別れた妻との一人娘・涼子(渋谷飛鳥)といった面々が絡んできます。

とてもオーソドックスな集団刑事物で、事件が主役の謎解き捜査物ではあるんだけど、昨今の同系統番組に底通する「ゲーム感覚」が本作には感じられません。

先にゲーム展開ありきで、それに合わせて登場人物たちを駒みたいに動かすやり方と違って、事件の被害者なり加害者なりの心情を徹底的に掘り下げ、苦しんでる人がいれば必ず最後に救済するヒューマンストーリー。

例えば第1シリーズ初回では、殺された被害者とご近所トラブルをよく起こしてた偏屈お婆さん(市原悦子)が自首して来るんだけど、安積班長は安易に納得しない。彼にはSFじみた特殊能力など何も無いけど、人を見る眼だけはずば抜けてる。

その人当たりの良さと人懐っこい笑顔を武器に、お婆さんと徹底的に向き合った安積は、彼女の偏屈さが生真面目な性格の裏返しであること、そして真犯人を庇う背景には独居老人ならではの深い孤独があることを見抜き、それを鍵にして謎を解いていく。まず先に人間ありきなんですよね。

で、事件解決後には安積班の刑事たちがお婆さんの部屋に押し掛け、ご飯をご馳走になったりしちゃう(つまり独りぼっちにさせない)アフターケアも忘れない。安積自身はそれに参加しないのがまた粋です。部下たちに指示したワケでもなく、彼らがそうするであろう事を予測して任せてる。

そんな『ハンチョウ』シリーズの徹底したヒューマニズムには『はみだし刑事情熱系』のスピリッツ(黒谷友香さんも出てる事だし)を感じます。また、安積が小料理屋の女将・杏子や新聞記者の友紀子といったイイ女たちに何となく愛されてる感じは『はぐれ刑事純情派』の世界観をも彷彿させます。それらの源流にあるのは明らかに『太陽にほえろ!』でしょう。

つまり『ハンチョウ』は2000年代に入ってすっかり絶滅したかと思ってた「本当の意味での刑事ドラマ」の系譜を、さりげなく受け継いだ作品と言えそうです。

これは下手にやると古臭い「お涙頂戴」の浪花節と受け取られかねないんだけど、肩肘張らない佐々木蔵之介さんの演技、飄々とした佇まいが絶妙にその臭みを緩和してくれてます。主役が佐々木さんでなかったらキツイ作品になってたかも知れません。

このところ『シバトラ』『交渉人』『キイナ』と引っ張りだこの売れっ子、塚地武雅さんの存在もなにげに効いてます。容姿で笑いを取りながら誰にも嫌われない人柄の良さ、それに加えて卓越した演技力ですから、引っ張りだこになるのもよく解ります。(ちなみに第1シリーズにはドランクドラゴンの相方=鈴木 拓さんも本庁の刑事役で出演されてます)

放映当時、私はTVドラマ全体に失望してたもんで『ハンチョウ』シリーズもチラッとしか観ておらず、評判を聞いてもあまり信じてなかったんだけど、あらためて観てみると確かにこれはイイ。ゲーム感覚で創られた他の謎解きドラマ群とはひと味違う、制作陣の真摯な姿勢を感じました。

全エピソードがハイクオリティーとはいかないにせよ、基本姿勢を信頼できる番組に大きなハズレは無い筈。オススメしても良さそうです。
 
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『キイナ/不可能犯罪捜査官』2009

2019-06-14 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2009年の冬シーズン、日本テレビ系列の水曜夜10時枠で全9話が放映された、日本テレビ&トータルメディアコミュニケーションの制作による謎解き刑事ドラマ。

超常現象が絡む不可思議な事件のみを担当する、警視庁捜査一課・強行犯係の「ベッパン」こと特別班に所属する刑事=春瀬キイナ(菅野美穂)の活躍が描かれます。

キイナ1人だけの特別班に不本意ながら配属される新人キャリアに平岡祐太、キイナの良き理解者である情報管理担当婦警に小池栄子、クールな係長に沢村一樹、温厚な管理官に草刈正雄、主任に金田明夫、そしてキイナの元カレである科捜研技官に塚地武雅w、といったレギュラーキャスト陣。

あからさまに『ガリレオ』と『相棒』を足して二で割ったような企画で、しかも主人公キイナは「瞬間記憶能力」の持ち主という設定。つまり刑事や探偵が特殊能力を駆使して事件の謎を解く、当時流行りだしたパターンもさっそく取り入れた、なんとも欲張りな番組。

主人公がその能力を駆使する場面ではバックに文字や数式を踊らせるCGを合成し、それを特撮ヒーローの変身シーンみたいに毎回のお約束にするパターンもこの時期に定着して来ました。わざとらしい決め台詞や決めポーズが入る刑事ドラマもこれからどんどん増えていきます。

そんなよくあるフォーマットを忠実になぞらえた番組ではあるけど、主人公を極端な変人には設定せず、特殊能力を除けばお菓子が大好きなごく普通のアラサー女子として描いてる点に好感が持てました。それを菅野美穂さんがとてもチャーミングに演じておられます。

ただし、キイナの相棒役=平岡祐太くんの演技があまりに凡庸で、菅野さんとのバランスが全然とれてないのが残念。ドラマを引っ張るコンビの掛け合いが面白くないんですよね。

それより元カレとキイナのよそよそしくも温かい関係が絶品で、塚地さんを相棒役にした方がよっぽど良かったんじゃないかと私は思うんだけど、女性視聴者を食いつかせる保険として若いイケメンを選んじゃうんですよね、今のテレビ屋さんたちは。平岡くんにせめて瑛太くんぐらいの味と実力があれば、このドラマはもっと面白くなってたと私は思います。

なのに、そんな平岡くんを主役にしたスピンオフドラマ『タケル/新人捜査官ファイル』も同時期にネット配信されてましたからワケが分かりませんw

『キイナ』で描かれる超常現象ネタは同じ日テレ系で菅野さんが出てたバラエティー番組『特命リサーチ200X』や『ザ!世界仰天ニュース』で取り上げられた実話を基にしており、『タケル』はその元ネタを紹介する内容だったそうです。

キイナの「瞬間記憶能力」も恐らくその内の1つで、そう言えば驚異的なスピードで本を読破しちゃう速読名人の存在が当時話題になってた記憶があります。本ぐらいゆっくり読みなはれって私は思うけどw、捜査活動には確かに有効な能力ですよね。

ちなみに第1話で描かれたのは、自殺したとされるドナーの心臓を移植された患者が、実は殺されてたドナーの記憶までも受け継ぎ、その証言からキイナが犯人を突き止めていくストーリーでした。これも実話が基になってるんだから驚きです。

そんな世界仰天ニュースをドラマを通して見せてくれるワケで、まぁ「それならバラエティー番組の再現ドラマでええやん」って声もありそうだけどw、ありきたりな謎解きだけで終わらせなかった創り手たちの工夫、その貪欲な制作姿勢は素晴らしいと思います。

いろいろ文句も書きましたけど、このあと爆発的に量産されていく謎解き刑事ドラマ群の中では、見所ある作品の1つに挙げられるんじゃないでしょうか。
 

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