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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『特命刑事/カクホの女』2018

2019-12-01 00:00:27 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2018年冬シーズンに第1シリーズ全7話、そして2019年秋シーズンに第2シリーズがテレビ東京「金曜8時のドラマ」枠で放映中の刑事ドラマ。

名取裕子&麻生祐未という『マルホの女/保険犯罪調査員』('14)のコンビ再共演との事ですが、ストーリー上の繋がりは無いみたいです。

警視庁でずっと事務仕事を勤めて来た内勤のエキスパート=北条百合子(名取裕子)が、定年を目前にして神奈川県警本部の捜査一課・強行犯係に配属され、現場一筋の鬼班長=三浦亜矢(麻生祐未)とコンビを組むことになります。

経歴もキャラクターも対照的な熟女二人による愉快・痛快なバディ捜査物でありつつ、実はかつて婚約者(鶴見辰吾)を射殺した犯人を挙げる(あるいは復讐する?)特命を百合子は秘めており、その最有力容疑者が他ならぬ亜矢であるという、サイドストーリーと呼ぶには深刻すぎる側面もあったりします。

私は基本的に1話完結が好みで、本来ならそういう「引っ張り」を嫌うんだけど、二人のキャラクターがすこぶる魅力的なもんで、その腹の探り合い・騙し合い・ぶつかり合いの行方が気になって続きも観たくなりました。もちろんベテラン女優お二人の演技力・吸引力の賜物でもありましょう。

ほか、刑事部長に渡辺いっけい、強行犯係刑事に吉沢悠、小関裕太、鑑識課員に今野浩喜、事務員に鹿沼憂妃、百合子の謎の友人に高橋克典、死んだ婚約者の父親に伊東四朗、といったレギュラーキャスト陣。

第2シリーズでは舞台を所轄の横浜臨海警察署に移し、加藤雅也、大東駿介、正名僕蔵、長谷川初範etc…といった新メンバーが登場してます。

テレビ東京のドラマは侮れません。これもなかなか面白くなりそうで、特に熟女マニアの皆さんにオススメですw
 

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『刑事ゆがみ』2017

2019-11-28 00:00:24 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の秋シーズン、なかなか気合いの入った刑事ドラマが登場しました。フジテレビ系列の木曜夜10時「木曜劇場」枠で全10話が放映された番組で、井浦秀夫さんの人気コミックが原作になってます。

世間の価値観に左右されない天才偏屈刑事=弓神適当(ゆがみ ゆきまさ)に扮するのは、民放の連ドラ初主演となる浅野忠信。

そして正義感は強いが出世欲も強い若手刑事=羽生虎夫(童貞)に神木隆之介が扮し、全く息が合ってないようで合ってる不思議な凸凹コンビで事件を解決していきます。

二人が所属する「うきよ警察署刑事課強行犯係」の係長に稲森いずみ、同僚刑事に仁科 貴、橋本 淳、そして弓神の裏バディとも言える敏腕ハッカー「ヒズミ」に山本美月、といったレギュラーキャスト陣。

さらに第1話ゲストが杉咲 花、岡田義徳、大後寿々花、小倉優子、小倉優香。第2話ゲストが水野美紀、斎藤 工と、まずキャスティングがやたら豪華です。

そして練り込まれたストーリーは一筋縄じゃいかないし、映画的な映像や編集がとてもスタイリッシュで、センスを感じました。

キャラクターも魅力的で、飄々としていつもフザケてて、名前の通りテキトーに仕事してるようにしか見えないのに、実は刑事コロンボ顔負けの鋭い洞察力と推理力を持つ弓神適当は、マンガ原作なのにまるで浅野忠信さんに合わせて創造されたみたいな人物。おとり捜査、不法侵入、ハッキング等々、違法捜査も厭わないどころか、ほとんど違法な事しかしない外道ぶりもサイコーですw

そんな弓神に振り回されながら、容赦ないツッコミを入れて対等に渡り合う、相棒の羽生虎夫もなかなかの曲者。このコンビに、私は山さん(露口 茂)&マカロニ(萩原健一)コンビの面影を見ましたw

(以下、ネタバレになります)


捜査過程の中で羽生が偶然再会した、杉咲花ちゃん扮する幼なじみの可憐な同級生。捜査に協力してくれて、恋も芽生えそうになったのに、実は彼女が真犯人だった!っていう第1話の展開は、あまりに『太陽にほえろ!』的すぎて昨今の刑事ドラマじゃ避けられて来た、昭和の王道パターンです。

しかも、傷心の羽生にあえて手錠を掛けさせ、刑事としての成長を促す弓神は、まさに21世紀の山さんだと私は思いました。

謎解きに終始するんじゃなくて、幼なじみの花ちゃんの熱心な仕事ぶりや、弓神のお節介もあって彼女に惹かれていく、羽生の心情、言わば青春模様が丁寧に描かれてるからこそ、切ないラストシーンがちゃんと活きてくる。

つまり、謎解きやトリックに合わせてキャラクターが創られる昨今の刑事ドラマ群よりも、キャラクターの成長こそを最優先に描いた『太陽にほえろ!』にずっと近いドラマ創りだと、私は感じました。

まるでフィルムで撮ったような映像の質感からしても、創り手にそういう意識があるような気がしてなりません。なにげに神木くんはよく走るし、浅野さんの外道ぶりにも昭和の匂いがプンプンしますw 彼が拳銃を持ったら一体どうなるんだろう?w

上っ面だけ昭和テイストだった前期の探偵ドラマと違って、この『刑事ゆがみ』には本物の昭和スピリットを私は感じました。


☆#02~#06

第6話は射撃訓練のシーンからスタートしたもんで、いよいよ『刑事ゆがみ』にも拳銃が登場!?って思ったのも束の間、本筋には拳銃のけの字も出ませんでしたw このドラマはそれで良いのだと思います。

とは言え、その射撃訓練中に交わされた弓神(浅野忠信)と羽生(神木隆之介)の何気ない会話が、全て今回のストーリーの伏線になってるんですよね。

ムダな描写が一切無く、全てのシーンに意味がある『刑事ゆがみ』クオリティー。だから一瞬たりとも見逃せない。もし視聴率が芳しくないのなら、原因はそこに在るかも知れません。いかに「ながら見」の視聴者が多いかって事です。

今回は殺人未遂の真犯人が容疑者の幼い孫娘だった!という意表を突いた展開でしたが、ゲストの顔ぶれを見て予想しちゃった方も多かったのでは?

何しろ孫娘を演じたのが、2017年のNHK大河ドラマと朝ドラの両方でヒロイン(幼少期)を演じた、チョー売れっ子の新井美羽ちゃん。何かあるだろうって思いますよね。

さらに辻萬長さん、新田真剣佑くん、MEGUMIさん、そして美人すぎる現役タクシードライバーの生田佳那さんと、相変わらずゲストが多彩かつ豪華。生田さんなんてたった1シーンの出番で、若社長=真剣佑くんのお抱え運転手の役でしたw

最近になって芸名に新田という名字が追加された真剣佑くんは、千葉真一さんのご子息だったんですね。つい最近まで知りませんでした。いかに私がイケメンに興味無いかですよねw(『仰げば尊し』『僕たちがやりました』等に出ておられました)

それはともかく、今回は話がウェットになり過ぎたきらいはあるけど、法に触れなければ何をやってもいいと思ってる真剣佑くんを、バレなければ何をやってもいいと思ってる弓神刑事が破滅に追い込むラストがサイコーでしたw

私はそんな「こいつだけは絶対に怒らせちゃいけない」刑事が一番好きなんですw ダーティハリーしかり、リーサル・ウェポンしかり、スコッチ刑事しかり。日本の刑事ドラマで久々に登場した本物の「あぶない刑事」ですよねw

ただありきたりな謎解き刑事を浅野忠信さんに演じさせるんじゃなくて、浅野さんならではの危ないキャラクターを生み出した企画の勝利。原作があるとは思えない位のハマりっぷりです。

その相棒に神木隆之介くん、上司に稲森いずみさんというキャスティングも完璧で、なぜか言葉を発しない(たぶん発することが出来ない)ハッカー役の山本美月さんも女優として一皮剥けたように見えます。この4人の活躍に徹底して絞った作劇も見事ですよね。

それに加えて毎回の豪華ゲスト。私は完全にハマりました。


☆最終回

最終2話は、これまで少しずつ伏線が張られて来た弓神(浅野忠信)とひずみ(山本美月)の関係、ひずみから記憶と言葉を奪った過去の事件、その真犯人(オダギリジョー)との対決が描かれました。

謎解きだけで終わらせず、誰かを守る為なら手段を選ばない弓神のダーティーさ、底抜けの優しさが事件の核になっており、最後まで「キャラクタードラマ」であり続けた作劇が本当に素晴らしいと思いました。

弓神のみならず、彼に影響されて立派なダーティーコップに成長したチェリート羽生(神木隆之介)、そんな二人を厳しく叱咤しながらフォローする菅能係長(稲森いずみ)等もすこぶる魅力的に描かれ、ずっと浸っていたくなる心地好い世界観を築いてくれました。

そしてオダギリジョーはじめゲスト出演者もやたら豪華。毎回そうだったけど最終2話は特にそうで、他殺死体の第一発見者兼「犯人を見た家政婦」に二階堂ふみ、鑑識課員に真野恵里菜、うそ発見器のオペレーターに中村静香、さらに酒井美紀、仁科亜季子ら豪華女優陣がチョイ役で次々と登場する贅沢さ。

二階堂さんや真野さんのクレジットは「友情出演」、つまりほとんどノーギャラだった筈で、もちろん実際に友情もありつつ、ギャラ無しでも出たいと思わせる魅力が『刑事ゆがみ』という作品にはあったって事でしょう。

こういう玄人好みの番組は得てして視聴率には恵まれないけど、それでも映画化された『鈴木先生』の例もあるし、犯人のオダギリくんは逃走したままですから、映画かシーズン2か、少なくともスペシャルドラマは創られるだろうと思います。

その時、制服巡査に降格させられた弓神がどうやって捜査に加わるのか、悪くなった羽生は果たしてチェリートを卒業出来るのか、そしてどんなゲストが登場してくれるか、今からとても楽しみです。


☆補足の追記

「チェリート」というのは同シーズンにテレビ朝日系列で放映された深夜ドラマ『オトナ高校』において、三浦春馬くんが演じた主人公のあだ名。「エリートのチェリーボーイ」を略した造語です。

放映当時、私は超「おバカ」ドラマである『オトナ高校』にもハマってて、フジテレビの番組である『刑事ゆがみ』で浅野忠信さんが(おそらくアドリブで)ネタにされたのには驚くと同時に、とても嬉しかった思い出があります。

そのあと『オトナ高校』でもお返しに『刑事ゆがみ』ネタをやってましたw 同じ局の番組ならともかく、他局で放映中の番組をネタにするのは純粋なファン表明、言わばラブコールですから、見てて微笑ましいし、どちらも自分がハマってる作品なので誇らしくもありました。

だけど両番組とも視聴率は芳しくなく、2019年現在のところ続編や劇場版の制作には至らずじまい。作品の質と視聴率が比例しない現実にもすっかり慣れてしまい、もはや驚きもしません。
 

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『警視庁いきもの係』2017

2019-11-27 00:00:17 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の夏シーズン、フジテレビ系列の日曜夜9時枠で全10話が放映された、フジテレビ&共同テレビの制作によるコメディータッチのミステリードラマ。大倉崇裕さんの同名小説を映像化した作品です。

警視庁総務部総務課・動植物管理係という架空の部署に赴任した、元捜査一課の鬼刑事=須藤警部補(渡部篤郎)と、獣医学部卒のアニマルおたく=薄 圭子 巡査(橋本環奈)がコンビを組み、動物絡みの事件を解決していきます。

ほか、かつて捜査一課で須藤の相棒だった刑事に三浦翔平、管理官に寺島 進、事務担当に浅野温子、定年退職した元刑事にでんでん、警察博物館の受付嬢に石川 恋、といったレギュラーキャスト陣。

様々な動物、それぞれの持つ習性とか、専門家しか知り得ない知識が殺人事件の謎を解くヒントになるという、着眼点は素晴らしいと思います。

「特殊能力」だの「天才的○○」だの「貴族」だの、我々凡人とかけ離れた「特別な人」のドラマはもうウンザリだけど、動物好きが高じて得た知識、例えば「さかなくん」みたいに純粋な「マニア」が活躍してくれるなら、私も素直に共感出来ます。

とは言え、結局やってることは相変わらずの謎解きゲームですから、これも2~3回観れば飽きちゃうのが眼に見えてます。

となると、後はキャストの魅力に頼るしかありません。敏腕刑事だったのに銃撃によって負傷し、記憶障害が残って窓際部署に飛ばされた警部補を、さすが渡部篤郎さんは魅力的に演じてくれてます。

映画『セーラー服と機関銃/卒業』では全く魅力が感じられなかった橋本環奈さんも、素朴でハツラツとした今回の役だと輝いて見えます。

けれどやっぱり、動物の可愛さには敵わないですよね。作品の見所はどこかと問われれば、毎回登場する多種多様な動物たちって答えるしかありません。実際、それがコンセプトなんでしょうし。

過度な期待をせず、日曜の夜をのんびり気楽に過ごすにはピッタリの番組。それ以上でも以下でもない。それで良いのだと思います。そういう作品も必要です。
 

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『小さな巨人』2017

2019-11-26 00:00:07 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の春シーズン、TBS系列の日曜夜9時「日曜劇場」枠で全10話が放映された警察ドラマ。

上層部の汚職に気づいてしまい、警視庁捜査一課のエースから所轄・芝警察署の刑事課課長代理へ降格させられた主人公=香坂警部に、長谷川博己。

汚職を暴こうとする香坂の前に立ちはだかる本庁の若きエリート=山田警部補に岡田将生、香坂を尊敬する本庁人事課職員=三島巡査部長に芳根京子、芝警察署のやさぐれ刑事=渡部巡査部長に安田 顕、署長の三笠警視正に春風亭昇太、そして最大の敵となる警視庁捜査一課長=小野田警視正に、香川照之。

ほか、市川実日子、三田佳子、佐々木希、吉田 羊、中村アン、池田鉄洋、児島一哉、駿河太郎、神尾 佑、手塚とおる、高橋光臣、ユースケ・サンタマリア、桂 文枝、梅沢富美男、高橋英樹、和田アキ子etc…という、実に多彩な豪華キャスト陣。

日曜劇場は今、私が最も信用してない放映枠なんだけど、長谷川博己さん主演の刑事物を、これだけの大作感で毎週見せてくれるなら、とりあえずは「素晴らしい」と言うほかありません。

しかも、次期「警視庁・捜査一課長」確実と云われたエリート刑事が、ふと正義感にかられて取った「余計な行動」が仇となって所轄署に左遷され、現場のやさぐれ刑事(安田 顕)らと共に巨悪に立ち向かうといった筋書きは、数年前にハマった杉本哲太さんの『隠蔽捜査』を彷彿させます。

本庁と所轄の対立構図にしても、会議室のエリート=みんな悪者というワンパターンに陥らず、むしろ所轄の刑事たちの方がお役所体質で欠点が目立ったり等、けっこう目新しさもあって見直しました。

ただし! 主人公の前に立ちはだかる巨大な壁=現・警視庁捜査一課長として香川照之さんが登場した時には「またかよ!」って、正直ズッコケましたw 日曜劇場の『半沢直樹』路線において、このポジションはもはや香川さんの指定席になってますよねw

しかも長谷川さんがエリート役で、映画『シン・ゴジラ』で演じた主人公(政治家)とイメージが重なるもんだから、香川さんがゴジラみたいに見えて来ちゃうw 演技もケレン味がエスカレートして怪獣っぽくなってるしw

この日曜劇場においては香川さんが主役(ゴジラ)で、戦う相手が毎回交代してるだけというw ゴジラでさえデザインがそのつど変わるんだから、たまには他の役者さんで見せてくれよ!って、正直思います。

話の内容にしても、とにかく裏切り、どんでん返し、裏切り、どんでん返し、また裏切りと、同じパターンの果てしない繰り返し。もはや事件の内容はどーでもよくて、誰がどのタイミングでどんな顔をして裏切るかを楽しむドラマになっちゃってる。

最初から裏切りを着地点にしてストーリーを組んでるから、捜査でどんな新事実や証拠が出て来ようが、視聴者は「どうせまた裏切るんでしょ」って思うだけで誰も信用しない。

だから役者さんたちは、香川照之さんを中心に「どんな顔をして裏切るか」「裏切られてどんな顔をするか」だけに全神経を集中し、ひたすら顔を歪めながら大声を張り上げる「顔芸合戦」に終始。ほんと皆さん、おかしな顔をされてますw

そうなるとやっぱり、長谷川博己さんや岡田将生くんは顔のベースが整ってますから、整ってない香川さんに太刀打ち出来ませんw 皆さん相当ヘンな顔されてるんだけど、香川さんの顔がヘン過ぎて霞んじゃうワケですw

まぁ、顔は生まれついてのもんだから仕方ないとして、皆さん共通して優れた俳優さん=頭の良い人達ですから、台本を読んで「これは普通に演じたら視聴者にすぐ飽きられる」ってことを本能的に悟られたんだろうと思います。だから「みんなでヘンな顔しようぜ」ってw

マジメな話、この『小さな巨人』を観てつくづく、『半沢直樹』の大ヒットは原作と主演俳優の組み合わせによる化学反応あってこそ、だったことを痛感しました。言わば「まぐれ当たり」です。

それに当時はまだ、大銀行の内幕をリアルに描いたドラマはほとんど無かったし、主役=堺雅人さんの狂気的な芝居も一般的にはあまり知られておらず、新鮮な驚きに満ちてたんですよね。

ところが今回はあまりに手垢がつき過ぎた警察物で、しかもすっかりお馴染みのオールスターキャストですから、みんなで顔の面白さを競うぐらいしか打つ手が無かった。

実際、このドラマをずっと観て来た視聴者の脳裏には、香川さんたちのヘンな顔しか残ってない筈ですw それはそれで狙い通りなワケで、成功だったと言えましょう。

だけどTBS日曜劇場はもう、ただ既製ヒット作の定型パターンに人気俳優をはめ込むだけのドラマ作りは、ホントいい加減やめるべきです。何のメッセージも無ければチャレンジも無い、ただ「当てに行った」だけのドラマじゃ人の心は打てません。

警察幹部とか政治家が悪役になるのも、もういくら何でも飽き飽きですよ。素晴らしいアクションで魅せてくれた『CRISIS/公安機動捜査隊特捜班』も含めて全部そのパターンですからね。さすがにウンザリして来ました。

ネタの枯渇と過剰な自主規制により、どの番組を観ても同じことしかやってない現状を、制作現場にいる人達は一体どう考えておられるんでしょう?

もしかしたらその閉塞感と、いくら足掻いても現状を変えられないジレンマ、創り手たちの悲鳴が、そのままドラマ内の警察や閣僚のゴタゴタ描写に反映されてるのかも知れません。破滅です。
 

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『CRISIS/公安機動捜査隊特捜班』2017

2019-11-25 00:00:17 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の春シーズン、フジテレビ系列の火曜夜9時枠で全10話が放映された、カンテレの制作によるアクションドラマ。

そう! これは「アクションドラマ」なんです。そう呼べる作品はもはや、1年に1本あるか無いかという破滅な世の中になってしまいました。

日本の刑事ドラマからアクションシーンが無くなっちゃったワケじゃありません。けれど大抵は添え物でしかなく、見せ場は謎解きやどんでん返しっていう作品が大半を占めてる。

そんな中で毎回アクションシーン、それも相当ハードな格闘アクションを必ず見せてくれたこの『CRISIS』は、間違いなく「10年に1本」の傑作でありターニングポイントになるべき作品だったと思います。

勿論ただアクションすりゃいいってもんじゃなく、それを不自然に感じさせない世界観や緊張感の構築が必要不可欠で、そういった点に関しても本作はほぼパーフェクト。個人的には最終回の締め方にやや不満を感じたけど、それはまぁ好みの問題に過ぎません。

このドラマが具体的にどう凄かったのか、初めて観た時に味わった興奮をそのまま再現するのが一番伝わり易いと思うので、放映当時に書いたブログ記事を以下にコピペします。


☆#01

『SP/警視庁警備部警護課第四係』『BORDER/警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』の金城一紀さんが原案・脚本を担当、5年前から構想を練って来たアクション・エンターテイメントと聞けば、そりゃ期待せずにはいられません。

現実にテロの脅威が日本にも迫る中、規格外の犯罪には規格外の男たちを!ってことで集められた、格闘、射撃、爆弾処理、ハッキング等のスペシャリスト達。

メンバーは小栗 旬、西島秀俊、新木優子、野間口 徹、田中哲司の5人。刑事ドラマというよりスパイ活劇、それもチームプレーを重視した『ミッション・インポッシブル』に近い内容です。

とにかく見所は小栗旬&西島秀俊のハードアクションで、その素地が既にあったお二人が、本作の為に1年前から訓練を積んで来られたそうで、そりゃもう気合いと迫力が違います。

新幹線車内の格闘バトルは香港映画顔負けだし、マンションの5階から飛び降りる決死のスタントは、どう見ても小栗くんが自ら演じておられます。

感動しました。それだけでもう、充分ですw いやホントに、これはリアリティー云々を語っても仕方がない。アクションの醍醐味を存分に味わわなきゃ損です。

アクションが凄いのは初回だけで、第2話以降はただ突っ立って延々謎解きするだけという、詐欺みたいな番組もさんざん観て来ましたけど、本作はたぶん大丈夫。期待は裏切らないと思います。

ただし、小栗くんの過去にどうやら暗い傷があるのを、また思わせぶりに仄めかしてるけど、そういうのはもう、ホント要りません。なんか、そういう謎解き要素が無いと視聴者がついて来ないっていう、強迫観念みたいなものがあるんですかね、TVドラマ業界には?

実際はもう、みんな飽き飽きしてるんじゃないですか? 少なくとも私はウンザリです。そんな小賢しいマネしないで、各エピソード毎の面白さで勝負してみろや!って、いつも思いながら20年ぐらい経ってますw

不満は、今のところそれだけ。キャストのアンサンブルも、シリアスとユーモアのサジ加減も良い感じだし、後は新木優子さんが脱いでくれたら言うことありません。

私は特に、小栗くんのちょっとイカレた感じが『リーサル・ウェポン』を彷彿させて大好きです。生真面目な西島くんとのコントラストも面白くなりそうで、これからまた楽しみです。


☆#02~#03

毎回、眼を見張るようなアクションを見せてくれて、本当に素晴らしいドラマです。

疾走、格闘、銃撃といったアクションを盛り込んだ作品は最近でもいくつかあったと思いますが、これほどの高揚感を味わえたのは久しぶりです。

特に、初回レビューにも書いたように、小栗旬&西島秀俊の格闘アクションは、何回もリプレイして観たくなる迫力があります。

擬闘に見えないんですよね。リアルに闘ってるとしか思えないレベルの仕上がり。さすが1年間特訓を積んだだけの事あります。闘う相手役の俳優さんも、アクション指導の方も素晴らしい!

格闘を楽しむかのように、多くの手数を繰り出す小栗くんと対照的に、無駄がなく一瞬で勝負を決めちゃう西島くん。それぞれの性格がアクションに反映されてるんですよね。

それは走り方にも表れてて、西島くんの走るフォームは無駄が無さすぎて、静止画にすると全然迫力がないw 顔も無表情すぎて、ニヤけてるようにさえ見えるw でもそれがまた格好良い。

第3話ではついに拳銃が登場しましたが、撃つのはテロリスト達だけで、特捜班は最後まで1発も撃たずじまい。これもまたリアルです。

ストーリーは重く、カタルシスは期待出来ないんだけど、本作に限っては厭な感じがしません。それは多分、ジメジメしてないから。良い意味で乾いてるんですね。ハードボイルドなんです。

何より、刑事アクションに無くてはならない「緊張感」がある。特捜班メンバーの誰かが途中で殺されることもあり得そうな、リアルな緊張感があるからこそ、より一層アクションシーンが活きて来る。

これはもう、断然ハマりました。早くも今期ナンバーワン決定です。


☆#04~#08

毎回、見応えあるエピソード、迫力満点のアクションが続きますが、特に第8話は凄かった。本当に凄かった!

田丸(西島秀俊)からの依頼により、テロを企む宗教団体に潜入してた情報屋の正体がバレてしまい、彼を救出すべく特捜班がたった5人で、100人以上もの出家信者が潜むビルに突入していくクライマックス。

100人対5人の、約8分に及ぶ大立ち回りを、なんと1カットの長回しで見せてしまう! こんな凄まじいアクションがTVドラマで観られるなんて!

勿論、本当にカット割り無しであんな激しい格闘を8分間も続けたら、確実に怪我人どころか死人が出ちゃいますからw、実際はカメラをパンした瞬間にカットを切り替える等の裏技を使ったでしょうけど、それにしたって相当な手間が掛かるし、時間も予算も掛かった筈。あんなアクションシーンは映画でもなかなか観られません。

日本ではもう、本格的なアクションドラマは無理なんだと思ってたのに、おいっ! やれば出来るんやないけ!ってのが、今の私の率直な感想です。やれるのに、尻込みして誰もやらへんかっただけやんけ!って。

前述の通り、アクションシーンの撮影には手間と時間とお金が掛かるし、役者さんが怪我する可能性もあるし、女性視聴者が喜ばない=視聴率に繋がらない等、数々のリスクが伴うもんでプロデューサーやスポンサーはやりたがらない。そもそも、売れ筋の原作が無いオリジナル企画はハナから受け付けない連中です。

そんな数字でしか動かない会議室の奴らを説き伏せ、スター俳優たちをその気にさせるだけの熱意が、この『CRISIS』の創り手にはあったワケです。

それは本当に素晴らしい事だけど、じゃあ他の創り手たちは今まで一体何をやってたの?って、逆に怒りも沸いて来ちゃう。やりたくても状況が許さないんだなって、私はてっきり思い込んでましたから。

主演の小栗 旬くんが「テレビ業界に風穴を開けたと思う」って語られてたけど、確かにこれはTVドラマ史に残る作品になったと思うし、ならなきゃ破滅だとも思います。

あれだけのアクションシーンを、テレビの地上波、つまりタダで観られることが、一体どれほど凄いことなのか、これはアクション物のドラマや映画を創った経験のある人間にしか解らないかも知れません。

TVドラマ自体がどんどんリアル志向になって来たのと同じで、アクションの描かれ方も時代と共に進化して、もはや昭和ドラマのそれとは比較にならないほどリアルになってます。

一方ではCGに頼った安直なアクション物もあるんだけど、この『CRISIS』で描かれるアクションは限りなく「ガチ」に近いもので、顔面はともかくボディは本気で殴ってると思われます。顔はヤバイよ、ボディをやんなボディを!

実際、今回の大立ち回りを演じた翌朝、小栗くんは全身打撲痛で身動きが出来ず、必死に這いつくばって布団から出たそうです。

第1話におけるマンション6階からのダイビングも、ワイヤーで安全確保はしてたけど、やはり小栗くんと西島くんご本人が演じたそうです。

第1話と言えば、冒頭の新幹線車内における格闘シーン。JRさんがよく許可してくれたなぁと思ってたら、あれは車輌2つ分のセットをわざわざ造って撮影したんだそうです。たった数分のシーンの為に!

本当に良い作品、本当に迫力あるアクションドラマを創る為なら、当たり前の努力なのかも知れないけど、他の創り手たちはずっと避けて来たワケです。もう、そんなことが出来る時代じゃないからって。

ところがどっこい、本気になってやれば出来んだって事を、この『CRISIS』の創り手たちが証明しちゃった。もう言い訳は出来ません。

これだけのものを見せられたら、やっぱり今期ナンバーワンは『CRISIS』と言わざるを得ないですね。アクションだけが凄いんじゃなくて、ストーリーも緻密に練られてるし、キャラクターも多面的、重層的に描かれてて、本当に面白いです。

第8話で言えば、潜入した情報屋の妻(石田ゆり子)と、田丸とのあまりに複雑な恋愛感情。甘酸っぱくて切なくて、とても残酷な別れ。そういった背景があるからこそ、壮絶なアクションがまた活きてくる。

毎日のように悲惨なテロ事件のニュースが流れるこのご時世、実にタイムリーであると同時に、とっても危うい企画でもある。そういう面でも『CRISIS』は「攻めてる」ワケです。

誰ですか? アクションドラマは絶滅したとかテレビ業界は破滅だとか言ってるヤツはw まだまだやれますよ! それを証明してくれた、これはホントに画期的な作品だと思います。


☆最終回

『リーサル・ウェポン』第1作目のメル・ギブソンは、自分自身のダークサイドを具現化したような敵=ゲイリー・ビジーとの一騎討ちに勝利することで、過去のトラウマを克服しました。要するに最強の敵をぶっ殺してハッピーエンドという、実にアメリカ的で野蛮なやり方だけど、私は大好きですw

さすがに今の日本でそれをやるのはリアルじゃないってことで、我らが小栗 旬くんは最強の敵=金子ノブアキくんと死闘の末、同じ心の傷を持つ者どうしの共感をもって「泣き落とし」するという、私としては実に面白くない展開だけど、まぁバッドエンドで終わるよりはマシか……と思ってたら!

その直後に金子くんは(恐らくSATに)射殺され、特捜班は彼を抹殺する為のお膳立てとして、クライアントに利用されただけだったことが判明。しかも陰で糸を引いたのは、現役の内閣総理大臣(竜 雷太)だった! 何やってんだゴリさん!?

で、正義の為でもなければ国民の為でもない、ただ汚い政治家たちの立場を守る為だけに命を懸けることに、心底嫌気が差した小栗くんら特捜班のメンバー全員が、どうやらテロリストに転身しちゃったという、究極にバッドテイストな結末になりました。

これって、同じ小栗旬 主演&金城一紀 脚本コンビによる傑作ドラマ『BORDER』とよく似てます。ダークサイドからの誘惑に耐えに耐えて、けれども現状じゃ何も変えられないことを悟って、ついにアッチの世界に足を踏み入れちゃうという。

ただし『BORDER』の場合、絶対に生かしておいちゃいけない極悪人を抹殺するという、ヒーローの王道を実践した側面もありますから、後味は悪くても納得出来るものがありました。

だけど『CRISIS』の場合、テロなんか起こしたところで一体何が変わるの?っていう根本的な疑問があるから、全く共感出来ないんですよね。

なるほど、テロリストって奴はこうして生まれるワケか、っていう勉強にはなるんだけど、せっかく応援して来た主人公たちに「あんたら一体何やってんだ?」って思わなきゃいけない結末ってのは、ちょっと残念ですよね。

闇の処刑人になるならまだしも、警視庁なんか爆破して、善良な警察官や下手すりゃ一般市民まで犠牲にして、そんなの本末転倒やん!って。ただのアホやん!って、思います。

そんなモンスターを生み出しちゃう組織の罪、政治の愚かさを描きたい意図はよく解るんだけど、仮面ライダーが自分でNEWショッカーを結成しちゃうような結末は頂けません。それじゃ不快感しか残らない。

あくまでそれが暗示されただけですから、実は踏み止まって「裏刑事」になってる続編とか劇場版を用意してるのかも知れないけど、それはそれで「なんじゃ、そりゃ」ですよねw

こんな「衝撃的な結末」、私は蛇足だと思います。『007』や『ミッション・インポッシブル』を例に挙げるまでもなく、正義一直線でも充分に面白い作品になった筈。第8話なんかホント最高でした。

これが金城さんの人間観、社会観なんでしょうけど、視聴者をスカッとさせる形でそれを描くことも出来た筈です。正攻法じゃハリウッドに勝てないと思われたんでしょうか?

そんなワケで、私としてはちょっと残念な結末でしたが、日本のテレビ業界に風穴を開ける、画期的なアクションドラマだという思いに変わりはありません。

素晴らしい本物のアクションを毎回見せてくれたスタッフ&キャストの皆さんには、ホント感謝の気持ちでいっぱいです。このクオリティーで、今度は是非とも正攻法のアクション刑事ドラマを! どうか何卒お願い致します!


☆追記

かなり砕けたコメディーながら2016年には『THE LAST COP/ラストコップ』という日テレのアクションドラマがあり、『CRISIS』が放映された'17年春シーズンにはNHK土曜ドラマで『4号警備』、そして秋シーズンには日テレで金城一紀さんの原案・脚本により元スパイの主婦(綾瀬はるか)が活躍する『奥様は、取り扱い注意』というアクションドラマも制作され、テレ朝の謎解き刑事ドラマ『刑事7人』シリーズも一時期アクション描写に力を入れる等、アクションドラマ復権の予兆が確かにありました。が、残念ながら一時のささやかなブームで終わっちゃいました。

『CRISIS』にも続編や映画化の計画があった筈なのに2019年現在のところ実現には至っておらず、やはりこのジャンルに対する世間の風当たり……というより無関心は相変わらずみたいで、破滅です。いやホントに、若い世代がアクション物を好まなくなってる傾向と、この国がどんどん弱ってる事実とが全く無関係とは、私には思えません。
 
 

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